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目 次

        目    次

 

        まえがき

 

第1章  従来のコンピュータシステム

         コンピュータの利用史 /設置場所が一か所 /中央集権型システムの処理形態

 

第2章  ビットコインのシステム

         ビットコインシステムとは /ビットコインシステムの設計思想 

        /システム全体で二重支払い防止     

 

第3章  ビットコインシステムの革新性

         国家に頼らない通貨の創発 /管理者のいないネットワーク /参加と離脱が自由なノード

        /汎用データが取り扱える設計 /オープンソフトウェア

 

第4章  ビットコインシステムの仕組み

        ノードの自立と連携 /仮想通貨を実現した仕組み /分散台帳のイメージ 

 

第5章  ビットコインに触発されたシステム

        イーサリアムとは /ピアコインとは /リップルとは /リブラとは

 

第6章  ブロックチェーンから考えるシステム

        ブロックチェーンの革新性 /巨大IT企業のコンピュータ利用 

       /共存共栄のコンピュータ利用

 

        あとがき

 

        参考文献


まえがき

 ビットコインは、報道で相場価格の大幅な上下変動及び取引所からの資金流出で、時々話題になりました。それでも、今やビットコインに関心をよせるのは、投資家やIT技術者だけでなく、経済学者はもちろんのこと、起業家や政治家など多くの人に及んでいます。ビットコインは、謎の人物ナカモト・サトシが考案した仮想通貨(外国では暗号通貨と称す)です。ビットコインは、信用すべき金融機関なる第三者がなくとも、信頼できる送金システムとして正確に作動します。ビットコインシステムは、仮想通貨を暗号化して正確に相手へ送り、記録した台帳は事実上改ざんできません。多くの人が関心をよせるのは、通貨としての投機的なビットコインの魅力よりも、正確な分散型処理の社会性に魅了されるからです。分散型処理では、管理主体がなくともシステム全体が統一的に作動します。

 ビットコインは、従来の中央集権型処理と真逆の分散型処理です。分散型処理は、自立したコンピュータ同士がコンピュータ間連携を取りながら、統一のとれた動きをします。革新的なビットコインの仕組みが、信用すべき第三者が介在しないシステムで発生する送金問題を巧妙に解決しました。仮想通貨は電子的なものであり、取引を電子的に記録する必要があります。電子的なお金を送る行為は、お金を送るとき、そのコピーを手元に残して置いたら、何度も同じお金(=ニセ金)を使えます。ナカモト・サトシは、二重支払い問題を複数の仕組みで解決しており、送金取引処理順にバラして説明します。その仕組みは、ひとつの生態系のようであり、コンピュータとコンピュータシステムを支える人間集団が、合目的な動きをします。この合目的な作動原理に、多くの人が関心をよせるわけです。

 作動原理を支える技術が、ブロックチェーンです。従来の中央集権型処理にブロックチェーンを適用できますが、長所が生きません。ブロックチェーンは、分散型処理に適用してこそ長所が生きます。分散型処理とブロックチェーンを結び付ける考えは、共存共栄にあります。中央集権型処理に活用していたIT技術が、ビットコインによって、分散型処理にも使えることが例証されました。我々は、地球全体を覆う持続性の暗雲から文明の転換期を感じます。ビットコインの作動原理は、社会づくりを考えたうえの民による分散型処理システムであり、ブロックチェーン技術を共存共栄の作動システムに応用できます。ブロックチェーン技術を生かした共存共栄システムは、混迷及び混乱のグローバル資本主義を突破します。

 


第1章 従来のコンピュータシステム

 コンピュータの利用史

 1960年頃に事務処理用のコンピュータが登場しました。コンピュータの利用は、バッチ処理

でした。バッチ処理とは、データをまとめて一括に処理する意味です。企業では月1回の給与計算

、在庫管理などにコンピュータを利用しました。

 1964年(昭和39年)の東京オリンピックの後に、IBM社が当時の三井銀行の普通預金の

事務処理にコンピュータを適用しました。この時のコンピュータ利用は、オンラインリアルタイム

処理です。利用者が、支店の窓口に普通預金通帳と支払い伝票を出すと、窓口の行員が端末を操作

し、データは回線を通じて中央のコンピュータに届くと、たちどころに事務処理を終え、返答を支

店の端末に返しました。端末の操作完了から返答が来るまでの間は、即時処理され数秒です。この

成功の影響は、全国の金融機関に波及し、その後1980年代に金融機関は、第三次オンラインシ

ステムを次々と稼働させました。

 1995年にパソコンの登場により、コンピュータの利用形態に革命が起きました。しかも、パ

ソコンには今のウェブブラウザが組み込まれていました。パソコンと中央のコンピュータをインタ

ーネットで結び、パソコンと中央のコンピュータで文字情報以外の画像など複雑な処理を機能分担

することができました。この処理形態は、サービスを利用する側とサービスを提供する側の合作と

なり、クライアントサーバ処理といいます。その後、スマートフォンの登場により、サービスの提

供が多種多岐にわたり、クライアント側の利便性は一段と増しました。

 

 設置場所が一か所

 クライアントサーバーの処理形態に至っても、サービスを提供する側は、オンラインリアルタイ

ム処理と同様一か所で処理をします。しかも、サーバーを管理するのはサービス提供者です。サー

ビス提供者は企業であり、サービス提供者が利益を得るために、サーバーを管理します。

    

                                   図1:クライアントサーバの処理形態

 

 サービス提供者は、組織の都合上どうしても一か所のサーバーにデータを集め処理します。(図

1参照)サービス提供者がサービスで利益を得るために、データを集める作業及びサーバー管理を

一か所ですると、システム維持費用が大きく下がります。クライアントサーバーの処理形態は、別

名中央集権型システムといいます。従来のコンピュータシステムは、全て中央集権型システムです。

 

 中央集権型システムの処理形態

 中央集権型のシステムは、処理場所が一か所ゆえ、一か所でディスクを保管します。データは、

あらかじめサーバーのディスクに保管されます。銀行の勘定系システムを例に取れば、口座開設時

に新規に個人データがディスクに保管されます。銀行ATMから現金の引出し依頼があれば、コン

ピュータはディスクの口座残高を書き換え、つまり更新します。中央集権型システムは、コンピュ

ータ及びサーバ-の管理・保管と同時に、高度な処理も全て一か所で行います。この処理形態は、

バッチ処理から連綿と続く処理形態です。営利企業なら中央集権型システムが、当然です。


第2章 ビットコインのシステム

 ビットコインシステムとは

 ビットコインは、ナカモト・サトシという人物の名称で、2008年11月にインターネット上

に掲載された論文(論文名 ビットコイン:P2P 電子通貨システム)で、初めて世に知られる

ようになりました。ナカモト・サトシは日本人名のようですが、今も正体不明で、名前も本名では

ないと思われます。そのビットコインのシステムは、2009年1月に稼働しました。実験的に運

用が始まったビットコインは、当初ほとんど利用されず、ビットコインとして初めての商取引は、

2010年の5月にあるプログラマが、1万BTC(BTCは、ビットコインの通貨単位)とピザ

2枚を交換したことだと言われています。そして、これを契機に次第に注目を浴び、現実の通貨と

交換できる取引所及び交換所が整っていきます。今では、ビットコインに関心を寄せるのは、投資

家やIT技術者だけでなく、経済学者はもちろんのこと、起業家や政治家など幅広い人たちです。

 ビットコインシステムは、ノード(図2の白丸)がインターネットを介して最大8ノードと繋が

り、世界中におおよそ11,000か所に点在します。ノードには、利用者とビットコインシステ

ムの間を取り持つ取引所ノードと、取引データが入っているブロックの承認作業専門のマイナーノ

ードの2種類があります。図2の●は、ノードが保有しているディスクです。しかも、各ノードは

同じデータを管理及び保存します。ビットコインシステムは、各ノードが保有しているファイルを

頼りにトランザクション処理を進めます。しかも、各ノードは孤立しているのではなく、自分以外

のノードと連携しながらトランザクション処理を進めます。ビットコインシステムは、システム全

体を管理する運用管理者が不在の非中央集権型システム(=分散型システム)です。

             

                                      図2:ビットコインシステムのノード間の繋がり

 

 ビットコインが目指すのは、現金のように人から人へと容易に移転できるシステムです。ビット

コインシステムは、AさんからBさんに、現金に代わり電子通貨(日本では仮想通貨、海外は暗号

通貨)を匿名で送金します。この送金データは、世界中のノードに伝達され、世界中のノードがデ

ィスクに追加しています。ビットコインシステムは、ハッカーに狙われていますが、今のところ破

られていないと言われています。ですから、ビットコインはセキュリティの強いシステムです。ち

なみに、2014年にマウントゴックスから465億円が流出、2018年にコインチェックから

580億円が流出したと報道されました。いずれも、取引所側のシステムに欠陥があり生じた事故

です。ビットコインシステムからの資金流出の事故ではありません。

 

 ビットコインシステムの設計思想

 ナカモト・サトシは、第三者の金融機関を介在させることなく仮想通貨の送金を実現しました。

従来の中央集権型システムの仕組みでも仮想通貨を問題なく執り行えるが、信頼に基づくモデルで

あるが故の脆弱性が問題になると指摘しています。つまり、金融機関には争議仲裁という避けられ

ない責任があるため、完全に不可逆的な取引の提供ができません。具体的には、電子通貨受取人が

電子通貨の所有者が過去に二重支払いしたか否かの検証ができない問題を挙げています。要は、電

子的なお金を送るとき、そのコピーを手元に残して置いたら、何度も同じお金(=ニセ金)を使え

ます。この問題が、先ほどの二重支払い問題です。ナカモト・サトシはこれを解決する方法として

、取引履歴を時間順に積み重ね、そしてそれを書き換えできない形で記録し、受取人がそれを見て

過去に使われていないことを簡単に検証できるようにすれば、二重支払いは起こらないと言ってい

ます。

 つまり、すべての取引を公開された状態にし、その一元的な取引履歴をみんなで共有するシステ

ムを作り、検証により公正な取引であるかをお互いに常にチェックし、公正な取引のみを、書き換

えできない形で綴っていくようにすればよい、と言っています。そのための工夫が随所になされ、

システム全体で二重支払い問題を解決しています。これが、従来の中央集権型システムに代わる分

散型システムのビットコインです。

ナカモト・サトシは、ビットコインシステムを信用すべき第三者がなくとも、信頼できるシステム

として実現しました。これはノーベル賞級のとてもすごいことです。

 

 システム全体で二重支払い防止

 ビットコインシステムには、銀行やカード会社のように取引を媒介する第三者がいません。つま

り、第三者がお金の利用量を管理しないから、お金をコピーする二重支払い問題が常に付きまとい

ます。その解決に、システムがすべての取引を公開された状態にし、その一元的な取引履歴をみん

なで共有するシステムを作り、検証により公正な取引であるかをお互いに常にチェックし、公正な

取引のみを、書き換えできない形で綴っていきます。これを可能にしたシステムの仕組みを、分か

りやすさから送金取引処理順にバラして概要を説明します。詳細な仕組みは、第4章で説明します。

① 新しいトランザクション(=取引)が発生すれば、全ノードに伝達されます。

② 各ノードが、新しいトランザクションを最新のブロックに取り込みます。

③ 各ノードが、そのブロックに n 個のトランザクションが集まると特殊処理(注)を始めます。

④ 各ノードは一斉に特殊処理をするが、一番最初に特殊処理に成功したノードが、そのブロック

      の承認依頼を全ノードに伝達します。

➄ 各ノードは、そのブロック内の全トランザクションが有効かつ未使用の場合のみ、承認します

      。

⑥ 各ノードは、承認と同時にブロックチェーンを完成させます。各ノードは、検証により公正な

      取引であるかを常にチェックし、公正な取引のみを、書き換えできない形で綴っていきます。

      そして、すべての取引を公開されたファイル状態にします。

 ビットコインのファイル処理は、従来の中央集権型システムと異なり、ファイルを更新せず、常

   にファイルに取引データを追加します。ファイルの追加が全てのノードで行われますから、分散

   かつ追加型です。しかも、ノードが保管しているデータは、すべての関係者が検索できます。

 (注) 特殊処理とは、プルーフオブワーク(Proof of Work:略称PoW)

              です。PoWは、後程説明します。

 


第3章 ビットコインシステムの革新性

 国家に頼らない通貨の創発

 通貨の本質は交換の媒介であり、発行主体が何であるかは、あまり本質的ではありません。それ

でも長い間に、通貨の発行主体は国家であるとの固定観念が出来上がっています。一部の経済学者

は、通貨の発行主体が国家でなくてもよいと論じてきましたが、実現に至りません。通貨の物理的

性質としては、腐らないこと、朽ちないこと、複製できないことが重要です。それさえ満たせれば

電子情報でも構いません。言うは易し、実現は非常に困難です。ナカモト・サトシは、通貨の本質

を熟知したうえでコロンブスの卵的発想から、仮想通貨を構想しました。それは、完全なpeer

 to peer(注)電子通貨の実現により、金融機関の介在無しに、利用者同志の直接的なオ

ンライン決済が可能なシステムを生みました。ここに、国家に頼らない通貨(=ビットコイン)が

創発されました。ビットコインは、送金を介して通貨の交換を果たしています。

(注)人から人への直接的な移転をピア・トゥ・ピア(peer to peer)といいます。

 

 管理者のいないネットワーク 

 従来の中央集権型システムは、いずれも管理者が必須でした。ビットコインシステムは、世界中

にノードがおおよそ11,000か所に点在します。それぞれのノードは、世界中に分散し対等で

す。確固たる管理者不在でも、ノードはバラバラではありません。ナカモト・サトシの理念を継承

したシステムの開発集団(=コア開発者)が、ビットコインシステムを先導しています。

 コア開発集団は、ノード保有者からのビットコインの仕様改善などの意見調整を図り、ビットコ

インの仕様を変更します。コア開発者は、従来の中央集権型システムの管理者ごときですが、無償

奉仕です。このゆるい組織が、システムの維持及びソフトウェアの更新をします。企業は利益獲得

集団であり、上下関係がピラミッドのようになっています。しかし、コア開発集団を中心とするノ

ード仲間と利用者は、共存共栄の関係にあります。

 

 参加と離脱が自由なノード

 ビットコインシステムは、世界中にノードがおおよそ11,000か所に点在します。それぞれ

のノードは、参加が自由なら離脱も自由です。ノードの参加及び離脱は、ノード設置者の自由意思

で決めることができます。ノードの参加及び離脱が自由ゆえに、悪意のある人がネットワークに参

入してくることを想定しなければなりません。ビットコインシステムは、信用できない人がネット

ワークに参入してきても、信用できるシステムとして機能するように工夫しています。各ノードが

、ブロックチェーンのデータを検証し、悪意のあるノードからのデータを見つけ出し拒否します。

この仕組みは簡単ではないが、その仕組みにより、ノード全体がまるでひとつの生態系のような動

きをします。

 

 汎用データが取り扱える設計

 ビットコインシステムのトランザクションで使われるスクリプトには、様々なオペレーション

コードと呼ばれる命令コマンドがあります。特筆すべき命令コマンドが、OP_RETURNです

。OP_RETURNは、トランザクション処理のアウトプットに送金以外の任意のデータを格納

しても、通常の送金トランザクションと同様に、ブロックチェーンなる台帳に書き込みができます

。つまり、事実上改ざんできない仕組みの台帳が、金融以外の用途に利用できます。この機能によ

って、あらるゆる分野に応用できます。つまり、ビットコインのような共存共栄のシステムが、あ

らゆる分野で実現できます。

 

 オープンソフトウェア

 ビットコインのプログラムは、誰でも無料で複製でき、改変も自由にできるオープンソフトウェ

アです。ビットコインのノード保有者を多く募る必要性から、偉大な発明を無償公開したと思われ

ます。ただし、ソースコードを理解するには、とても高い技術力が必要です。



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