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第一章

 

「少年探偵団」

=著者:滝川寛之=

 

縦書き版はKDPにて

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滝川寛之オフィシャルブログはこちらです。

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 冬の風がともしびを迎えた時、町の夜光景は幻想的焼きつきました。

 それから、夜空のお月様と言えば、きれいな満月で、あたかも山の向こうから狼たちの鳴き声が聞こえてきそうな静けささえも感じられたのです。

 時計の針はチックタックと指をさし、ここ、児童養護施設「愛育園」は、消灯の時刻が迫るころでした

 波の駆け上がりからくる砂の音さえも、少し離れた場所にあるこの施設の窓には届いており、閉じられたガラスと遮光カーテンが、その寝音をさえぎっていましたよ。

 この荘(ホームと呼ばれた)の今夜の夜勤は、菊川玲(きくかわれい)という女性で、三十代後半の美人でした。児童らに先生と呼ばれる職員は、三交代制で荘を番していたのです

 先生部屋の寝具は、ばねの利いたベッドで、とても白いシーツが身の潔白さを演出していました。

 

 スタンドランプだけが光の全てでした

 

 その中で、何やら怪しげな音が、ひそめてあったものだから、菊川玲先生と東条厚(とうじょうあつし)君は、なんだか羞恥心のようなものを感じていたのです。

 

 厚は玲先生の子供です。そう話せば丸く収まるのだが、そうもいきません

 ふたりに血縁などありませんでした。

 つながっているのは、恥じらいの肉体だけだったのです。

 

 厚は素っ裸の状態から、玲の豊満な乳房に勃起した桃色の乳首を、ちゅくちゅくと、まるでミルクを搾り取るようにしてしゃぶりついていました

 官能的に浸る玲は、はあん、とだけ吐息をこぼしたものでした。

 

 二人がどうしてこうなったのか、どうすればそんな関係になれるのか、それは本当にひょんなことからです

 

 もともと、厚は三歳から養護施設に入園しており、母親の愛情に乏しかった。

 玲はそこに母性本能をくすぶられたのですよ。

 厚はひとめぼれだった。幼きにして玲という大人の女性に惚れていたのです

 玲は最初からとにかく優しくしてくれましてね。

 厚はいつもいつも誰かに甘えたかった。母親の代わりを探していたのです。

 玲はそのことにすぐ気が付いた。

 もちろん、ただそれだけで乳房をあらわにすることなど、ありえなかったわけですが。

 しかし、昭和という時代は、そういう禁断の愛が愛情として受け止められていたために、そのときの世間体では、ありきたりのことで普通すぎたといえばそこまでです。

 しかし、そうでもなかった。

 厚はこの時、高校生だった。玲は三十五歳。これはもはや、禁じられた年の差カップルのようだった。いや、実際にそうなのだろうとおもいます。

 寮母と生徒の甘い毒生活。そういう言葉がよく似合っていました。玲は、素っ裸の厚の男根を、手でしごきながら胸を吸わせる。今夜もそれは同じでしたよ。それから69になって、厚の男根を玲はしゃぶりかえしたので

 せんせい……

 厚も官能的に吐息をこぼす。

 彼は玲のクリトリスを一生懸命にすっぷっていました。

 嗚呼、今夜も楽しめそうね。うふふ

 玲はそうつぶやき、厚に魔性の表情を見せつけたのでした。

 

「少年探偵団、結成しようぜ!」

 厚は他の園児にそう発した。

 厚は小学生にしながら読書家でした。江戸川乱歩が大好きです。あの表紙から想像する物語への先入観と、中身とのギャップに歓喜になったもの。なんてすごいんだ――?   いつもいつも、読破するたびに文学人の才能は覚醒したものでした。

 少年探偵団の構想は、だいぶ前から抱いていました。みんなで楽しいことがしたい。一致団結してなにかをしてみたい。そんな思いだった。施設の園児は、そうでなくとも団結していたが、厚は何かこう、先輩後輩という枠にとらわれるのがとても嫌いでした。年上にも年下にも同じようにふるまいたかった。そこで発案したのが少年探偵団だったのです。

 みんなでたのしもう! 同級生みたいに――

 厚はその答えを話したくて仕方がなかった。

 少年探偵団の初期一員は、入団条件に何を定めようかと考えていましたよ

 結論、そんなものは必要ないと結論に至ります

 興味のあるやつはついてこい。一緒に楽しもうぜ――

 そんな楽しいサークルでした。 

 メンバーは、厚が小学三年の頃に団結しました。そうなのです。まだ、高校生ではなかった話です。しかしながら、玲先生とは性的な結びつきがすでにありましたよ。それは、肉体関係というわけではなくて、母と子としての関係にとどまっていたのです。つまりは、まだ、乳房に勃起した乳首をおしゃぶりする程度の関係でした。玲先生はいつも言っていました。厚君、歯は立てないでね。と。

 

 少年探偵団の最初の活動は、泥団子大会だった。それは、団長を誰にするかという掟みたいなものもあったために、皆、真剣に泥団子つくりへ執着したものでした。結果は、第一期団長、東条厚だったのです。

 厚は用意周到でした。あらかじめ泥団子大会を開く前から辞典やら図鑑やら図書館で調べて、土団子にあう土質を知っていたのです。それは、なんといっても花壇の土に勝るものはなかった。花壇の土質は、砂と黒土と赤土で出来ており、その塩梅は砂三に対して土が七でした。まさに黄金比率で。彼はそれを学んでいました

 厚は勝利したとき、にんまりと微笑みました。しめたものだ! そう思ったに違いありません

 その夜、菊川玲先生に報告とご褒美をもらいました。

 桃色の乳首をすっぷって、目を閉じる――

 実に官能的な一時は天国さえ思わせました。しかし、そこは地獄の中のオアシスでしかなかった。玲はそれが可哀そうでしかたがありませんでした。

 

「隊長! 何から始める?」

 同級生の保(たもつ)が、厚に訊いてきましたよ

「みんなで決めようぜ!」

 結局のところ、そうなった。これでは隊長などいらないと言われるかもしれないが、それでも必要なのであります。ましてや、園児のみんなはグレていた。みな、捨て犬同然でした。野良犬の一団にもボスがいるように、少年探偵団にも居なければならなかったわけです。

 

 自由奔放――

 

 それがテーマだが、まとまって行動するとなると、やはり頼りにする一人が必要なので。それは皆、子供ながらに承知していました。

 園児は、すれた大人のようであったけれども、童心を決して忘れなかった。それはなぜか? 答えは明白で。帰る用意を常にしていたからでした。いつでも両親の胸元へと飛び込む余地を残していた。どんなことがあっても、たとえ捨てられても、虐待があったとしても、親は一つしかなくて、取り換えはできなかった。それが世の中ですものね。

 園児には逃げ場として養護施設に居るものもいれば、里親に出たものもいました。

 施設は、実にいろいろなゴミの最終処理場みたいなものだったのです。

 そんな中にあって、厚だけはついていた。菊川玲先生に出会えたことであります。

 玲先生の胸は最高にやわらかくて弾力があった。それでいて透き通るような白い肌。もう、なにもかもが素晴らしいものでした。 

 

 話を戻しましょう。

 

 少年探偵団はこうして厚がリーダーとなったわけですが、察しの通り、実際には団長不在であったため、始めから終わりまでまとまりがありませんでした。

 ――少年探偵団と銘打ったのだから、探偵らしくしないと。厚はそう考えていたのだが、いったい何を調査すればいいと言うのだろうか? 一つ疑問がわいてきたのです。

 

 そうだ! 施設内を探検しよう――

 

 まだ足を踏み入れたことのない領域ならいっぱいありました。この施設は、元々戦災孤児のための囲い所で、アメリカ軍によって創設された代物だったものだから、敷地が兎に角アメリカンビッグでした。建物数も非常に多い。その中でも、昔の礼拝堂のような古い建物内には入ったことがありませんでした。

 そうだ、そこからまずは探偵しようではないか。

 厚はそう決め込みましたよ。しかし、これがどうにもこうにも決まりが悪かった。この建物は幽霊屋敷と園児らには呼ばれていたからでした。

 とても恐ろしくて入れないよ!

 それがメンバーらの言い分でした

「でも、入ってみようよ。宝があるかもしれないぞ!」

 厚は震える身をひた隠しにしながら元気にそう発します

 宝があるにしろ、なんにしろ、それは探偵の仕事ではないことを重々承知していたが、幽霊調査と言えばうまいこと形が付いたかもしれません。しかし、厚はそれを考えたくはありませんでした。こんな恐ろしい場所に入るのに、幽霊のことなんか考えてたら、建物調査なんかできないじゃないか! そんな思いだったのです。

「それじゃあ、厚から入れよ! 絶対だぞ!」

 皆がそう言う。

「分かった」

 そうして少年探偵団の一団は、白いペンキがはがれた古い建物へと向かったのでした。正直怖かった。怖くて怖くて仕方がなかった。しかし、皆、我慢して何も言いませんでした。蜘蛛の巣が張り付いた外窓のステンドガラスがいかにも奇妙で、幽霊を英語表記で語るには申し分のないほど圧倒的な存在感をもたらしていました。

 厚は上等な古い木製戸をキィと音を鳴らしながら開いた。途端、冷めた空気がスッと流れてきました。その時です。

 キッキッキッ!と、室内トカゲが笑ったように喉をあたり中に響かせる。「ヒェッ!」一団の一人が泡を吹きそうにして青ざめましたよ

 

「に、にげろっ――!」

 

 厚が叫ぶ。すると、みな、一目散にバラバラとなって逃げかえりました。

 初日の少年探偵団はこうして終わりました。何とも情けない限りであります。

 少年探偵団の園児らは、それぞれ別々の荘です。荘は合計で四つありました。一号舎、二号舎、といった具合であります。園児らは通称で呼んでいたのだが、それがここでは書けない内容のものをさしていたため、あえて伏せておきましょう。

 荘にはインターフォンがあった。夜はそれで荘間連絡を取り合う。施設内の男女交際もそれを利用されていました。インターフォンは先生部屋にありましたよ。

「今日、怖かったな!」

 厚の相棒である保(たもつ)が受話器越しに発した。

「ああ、そうだな」厚がそう返す。

「キッキッキッ! て、なんだよ。本当に恐ろしいぜ!」

「俺もびっくりしたさ」

 時折、会話の中に雑音が入る。他の園児らが周囲でキャッキャッ! と遊んでいるに違いなかった。それはいつものことでした。荘は就寝までとにかくうるさかった。うるさくてテレビもまともに見れはしなかったのです

 テレビは荘に一台しかありませんでした。一荘当たりの園児は三十名であります。常に団体行動だったものだから、プライベートなど作れるはずもなかった。そこが一番つらいところではありました。もちろん、両親がいないと言う事は、悲しみのもっと特別な位置にあるわけですが。

 今夜は玲先生は非番でいませんでした。厚はさびしい思いをしたものです。彼にとって玲先生はもはやお母さんでした。姉のような存在でもあったのです。唯一、甘やかしてくれる女性です。これがもしなくなったりでもしたら、厚はどうにかなったに違いなかったが、その心配はとりあえず考えることなどありませんでした。

 

 少年探偵団はしょっぱなから行き詰っていた。

 とにかく幽霊屋敷の打開策を講じなければなるまいて。大人が話せば、そういう事だった。しかし、厚らは子供なのです。しかも下級生ときました。とにかくこわい。その一言のみで先にも向こうにも道はないように感じました。道しるべがなかったと言えばそこまでです。

 厚はとりあえず、幽霊屋敷の話題は置いておいて、別の楽しみをしようと決め込みましたよ。正直、それしか答えが探せなかったのです。だけれど、何をすればよいのだろう? ひとり、考えます。そしてひらめいたのが、少年探偵団のテーマソング作成でした。厚は実に名案だと思いました

 ――よし、つくろう! みんなで。

 その思考が支配した瞬間でもあったのです。

「みんな! 集合!」

 厚がばらついている仲間を呼び寄せた。

 彼は少年探偵団テーマソングの話を切り出しました。団員みんなは大喜びで合点。いいね! でもどうやって作るんだ? 何かの曲を盗むか? 替え歌でもよいのか? などと意見が飛び交いました。

「まあ、みんな落ち着こうぜ」

「どうするんだよ? 隊長」

 厚は考えた。そして発しました。

「とりあえず、みんなで一週間くらい考えよう」

「そうだな! やっぱりすぐには、頭、浮かばないもんな!」

 うんうん、と、皆、うなずく。

 さあ、いよいよ、少年探偵団が本格的に動きを見せてきた。と、夜に厚から報告を受けた菊川玲先生は思いました。たのしみだわね――。彼女は自身の乳首を吸う厚を感じながらそうつぶやきましたよ。私もいつかは参加する時が来るのかしらね? 自問する。それは間違いないことだ。きっとそうだろう。

 だって、この子はまだ子供なんだもの。仕方のない子。甘えん坊で乳離れしてない赤ちゃん。私はそのお母さんなのよ。ときには少年探偵団に紛れて叱ったりだとか、示しをつけたりだとか、正したりだとかしなきゃいけない時がきっと来るわ。うふふ

 

 ぼ、僕たち少年探偵団。行け行け少年探偵団。

 

 ふと、厚は口ずさみました。

 いいね! それ。

 だけど、その続きが思い浮かばないんだ。

 どうする?

 それをみんなに訊きたいんじゃないか!

 ああ! なるほど!

 バカだなぁ。

 うるせえ!

 そんな会話が少年探偵団の集会で交わされました。今日は日曜日であります。

 非常に静かな森林がすぐそこにあって、風はどこかひんやりと冷えていました。一団は今、施設の水脈ともいえる、コンクリートでできた大きな貯水タンクがある場所に居ました。辺りは一団以外にだれ一人としていません

 森林の中には、桑の木(小さいブドウが成る木)やバンシルー(グアバ)の木、百日紅(さるすべり)の木なんかもありましてね。圧巻だったのは、でいごの木であります。五月になると花を咲かすでいごの木は、何やら神秘的な言い伝えがありました。赤い花を咲かす年は、大凶なのだと。厚らは、それを信じていたものだから、今年に咲いた赤いでいごの花を見た時は、それはもう大騒ぎでした。祟りじゃぁ! 呪いじゃぁ! などと、半分冗談含みに発狂したものだった。そして、園児のズボンをパンツごとおろす事(いたずら)なんかもしていました。ほら、いっただろ? 祟りなのじゃ! と。

 園児は皆、たくましかった。

 すれていた、すさんでいた、と言えばそこまでかもしれません。しかし、そこに行きつくまでの過程には、酷く憎しみと悲しみとが入り乱れて存在していたものだから、園児らが結果論としてそうなってしまうのは仕方のないことでした。自然のことだった。当然のことなのでした。

 嗚呼、私たちはいったい、だれに憐れみを求めればいいと言うのか――

 日曜日の九時から始まる礼拝は、園児らにとって耳がかゆくなるだけで、本当のところ(本当の現実)はそうではないことを重々承知していましたし、理解していました。悟っていたのです。だからなに――? 園児らはそう暴言を牧師にいつも発したかった。

 俺たちはな、捨てられたんだよ! 誰かが叫んだことがあった。捨てられてここに居るのだということを園児の皆はあらためて考える。そして絶望の淵に追いやられたのです。

 たくましくなければ、園生活など送れるはずもなかった。皆、やるかやられるかという瀬戸際で酷くおびえていました。怖かった。しかし、負けるわけにはいかなかった。そう生きるために誰もがたくましくなっていったのでした。

 

 話を戻しましょうか。

 

 結局、その日で少年探偵団のテーマ曲は決まりませんでした。だがしかし、完成するのは時間の問題のように感じられたのです。出だしは出来上がったため、であります。

 しょ、少年探偵だぁん いけいけ進め、どこまでもぉ♪”

 よし、いい感じだ――

 皆はなにやら手ごたえのようなものをつかんだ。つづきつづき、と。そう思いを寄せては全員で出だしだけくりかえし合唱する始末でした。タンクから解散します。

 この日も、夕方から始まる野球練習の準備に男子児童らは取りかかっていました。女子児童は体育館でバレーボールの練習であります。そのほかに、夜、剣道なんかもしている園児もいました。とにかくスポーツが盛んな施設でもありました。勉強? そんなものは、ここではタブーのようでいて密かに黙ってやるようなものでした。勤勉者は嫌われたので。やじられるのである。そして、弱しいと、いじめられるのであります。

 厚はついていた。こうして毎晩のように玲先生の乳首を吸う事が出来る唯一の園児なのだから。そのことに関して、玲は厚君にほかのえんじにいっちゃだめよとだけ繰り返し言い聞かせていたのでした。うん! ぼく、せんせいのおっぱいだいすきだからだれにもいわないよう。厚は聞くたびに玲先生へそう返すのでした。

 しょ、少年探偵だぁん いけいけ進め、どこまでもぉ♪”

 ”お、おれたち少年探偵団 山かけたに越えどこまでも 幽霊屋敷怖くない♪”

 いいね――

 そういや、あれっきり幽霊屋敷行ってないな?

 きょうはいこうぜ!

 きょうかよ? いやだ!

 それより、うたのつづきかんがえようよ。

 まだつくるのか? めんどくせえ!

 一団は、幽霊屋敷を避けたかったが、テーマ曲に入った以上、いつかはまた挑戦しなければならないと言う事に感づいてはいました。意識していた。逃げられないと諦めていた。しかし、それもまあ、だいぶ先のはなしだろ? 皆、そう信じて疑わなかったのです。そう考えるしかありませんでした。

 今日もタンク場に集合する少年探偵団は、冷たいコンクリート層に体をピタリと合わせました。夏に焼けた肌が癒されるようでいて、しごく気持ちがよかった。ずっとこうしていたいよな。だれかがつぶやきました。同感でした。

 タンク場のちかくに長い滑り台と兼用して、ひろい階段がありました。一団はとりあえず、そこで今日は遊ぶことにしまし。滑り台はコンクリートでできているために、尻に敷く段ボールは必須アイテムでした。少し離れた商店から一団は段ボール箱をこしらえては、ヒューと勢いよく落ちるスリル感がとてもたまらなかった。胸元がきゅっきゅっとこわばるのもなんだか気持ちが良い。そんな昼下がりでした。

 滑り台の向こうはテニス場です。

 今日も非番の先生たちが硬式テニスを楽しんでいるのが見て取れた。こんなにも暑い中、よくやるよな。一団の一人がそう言いました。みんな、日影行こうぜ! 日影! 団長の厚を無視して一団はタンク場へと戻りました。厚は何も指揮できなかった。それに対して、彼は、まあ仕方のないことだもの。ぼくの方が年下だし。とあきらめるしかありませんでした。――でも、ぼくには玲先生がいるから全然悔しくないもん。厚君は今夜も菊川玲先生の乳房をさわりながら乳首を吸う事を楽しみにしていました。

 玲先生は、きょう、やすみだった。

 厚は愕然とした。そうだった……。今日は玲先生は休みの日だ。そう思いだしてはしゅんとするのであります。嗚呼、玲先生。玲先生。早く明日逢いたい。はやくおっぱいを吸いたいよう。彼はそう地団太にするのでした。

 次の夜、厚は玲先生にとても甘えた。せんせい、きのうさびしかったよう。ちゅうちゅうと桃色の乳首を吸いながら、厚は愛らしくそうつぶやいて見せたのです

 

 お、おれたち少年探偵団 山かけたに越えどこまでも 幽霊屋敷怖くない♪”

 

 作戦は念密に立てられました。きょうこそは幽霊屋敷を制覇してやるぞ。皆、そんな気持ちだったものだから厚は心強かった。そうではなかった。

「厚が隊長だから、厚が先な――

 彼は背筋が凍りつきました。そんな! と。しかし、示しをつけるには絶好の機会だったために、怯むわけにはいかなかったのです。

 ――こうなったら、やけっぱちだ!

 厚は結局、先陣を切って古い扉をキィと開けました。この前と同じ冷たい空気が流れ込んでくる。目の前は暗くて何も見えませんでした。ドアをあけっぱなしのまま一団は中へ入ります。目が暗さに慣れてきました。丁度手前には螺旋階段がありました。上を見上げてみると、三階まで部屋があるということが確認できたのです。しかし、そこにはどうしても上がる勇気は沸かなかった。奥へと進む。部屋扉が三つ並んであった。そのうちのひとつを開ける。キィ……

「ひぇ! で、でたぁ――!」

 目の前には人影がありました。厚が失神しそうになります。だがしかし、よくみてみるとただのマネキンではないか。一団の一人がそれに気づき「びびってやんの!」と彼を小ばかにしました。ははは! と、周囲は笑いに包まれた。恐怖が解き放たれた瞬間でもありました。

 結局のところ、この大きな部屋は物置というのが正体でした。実にいろんなものが無造作にほっぽられているかのようで、中にはワニの剥製(はくせい)やら、鹿の角やら、おおよそパプテスト教には不似合いな代物がわんさかとあったものだから、普段、施設で見たことのない、それら惨たらしいものに対して、少年探偵団はとにかく圧巻されました。すげえ――! この一言でよかったのです。事足りました。

「君たち、ここで何をやっているのかね――?」

 園長先生だ! 少年探偵団のだれもが思った。声からして振り返らずともそう悟ったのです。

「に。にげろ! ひんぎれぇ!」

 少年たちは一目散にバラバラとなって建物を飛び出し逃げました。園長先生は、やれやれ。と両手を上げてから、扉に鍵をかけました。記念すべきこの日は、幽霊屋敷の正体がわかった一日でした。幽霊はいない。いるのは園長先生だ。少年探偵団はそう結論付けたのであります。

「厚、今日たのしかったな!」

「おまえら、隊長おいて一目散に逃げるんだもんな。ぷぷ! 笑える!」

「みんなしてからかって……

 厚もまた、園長のように両手を上げて首を横に振る始末でした。

 

 お、おれたち少年探偵団 山かけたに越えどこまでも 幽霊屋敷退治した♪”

 

 少年らの顔は満面の笑みだった。

 ――ああ、面白かった。なんだか少年探偵団は楽しめそうだ。

 誰もがそう思っていました。

 この灰色で血に飢えた施設生活のなかで、少年探偵団はどのようなことをしていくのか? これからがまさにお楽しみでした。娯楽の始まりだった。一人の少年が言った。卒園まで結成したままにしておこうな! と。少年らは有無を問わず、コクリと笑顔でうなずくのでした。 

 


第二章

 

 

「玲先生、きょうね、えんちょうせんせいみたんだちゅうちゅう(乳首を吸う音)

 今夜も厚は玲の母性本能の湖の中で泳いでいるようでした。なんて夢心地なのだろう。彼は幸せいっぱいです。はあん!と吐息をこぼす玲先生がしごく官能的でした。

「厚君、先生ね、来週から昼勤に回るの。昼勤ってわかる?」

 厚はそう聞かれて何の事だかさっぱりだったものだから、乳首を吸うのをやめて、「ううん」とだけ返した。また乳首を吸った。玲は性的に感じている様子でした。

「昼勤というのはね、昼にお仕事をすると言う事なのよ。厚君、これからは夕方に先生のおっぱいをたくさん吸ってね。……はあん!」

 この乱れた関係に、正直、昼勤も夜勤も関係ありませんでした。厚はそんなことなどどうでもよかったのです。ただ、玲先生の乳首を吸えることが幸せだった。唯一の母親だった。玲はそれを重々承知していました。

 ――なんてかわいい子なの。いっそのこと、籍を変えてあげたいくらいだわ。でも、けれども、わたしの安いお給料じゃ、厚君の面倒は見きれない。そんなことは分かってる。だから先生部屋でこうしておっぱいを上げることだけにして我慢しているのじゃない。

 厚は楽しみでした。来週から早い時間に玲先生のおっぱいが吸える。なんという至福なのだろうか? そこまでは考えなかったが、そう意識していなくとも、心の中は何だかきゅんとして熱くなっていました。

 

 少年探偵団は、次なるミッションに取り掛かろうとしていました。

「次はどこに行く?」

 それだけが、一団の思いというやつでした。

 隊長の厚は考えた。どこにしようか? と。そして行き着いた答えは、大自然に川遊びでした。団員は皆、名案だな! さすが隊長! と、厚を持ち上げました。彼は正直、それがたまらなく嬉しかったのです。一団は川遊びに出かけました。

 お、おれたち少年探偵団 山かけたに越えどこまでも 川川あそび、イモリ捕り♪”

 山の中枢に、だだっ広い会員制ゴルフクラブの十八番コースがあります。そこの守衛所付近に源流はあったものだから、一団は長い坂道を徒歩ですすみ、ようやくたどり着きました。水面は非常に透き通っていて、きれいです。

「イモリのえさにする川エビ取ろうぜ!」

 一団の一人が言った。

「虫取りあみ持ってる奴、ああ、厚、おまえ、川エビ受け取る側な」

「うん、いつもみたいにで、いいんだろ?」

 この源流は初めてきたわけではなかったために、川エビの捕獲法などは皆知っていた。大きな土管の中に淡水が流れている。その中に川エビはいるのです。厚はその出口で網を用意し、向こう側から一団の一人がカシャカシャと土管を水かきしてくれば、川エビが網一杯にとれるのでした。川エビ捕獲作戦が決行されますよ。

 一団の一人がカシャカシャとする。それで水と一緒に追い出された川エビがあふれ出てきます。それを厚が掬い取って、あっというまに虫取り網は一杯いっぱいになりました。それはどれくらいかというと、網底の川エビが圧死によって白く死んでしまうほどでした。

「きょうも施設の給食センターに持っていこうぜ!」

 一人が言った。みな賛同した。

「でも、その前にイモリ捕りだろ? イモリ捕ってから帰ろうぜ」

「そうだったな! イモリの住処に行こう!」

 少年探偵団はちかくのイモリのいる沼地へと移動しました。

 イモリは気持ち悪いくらいに今日も一杯いました。昔の人はこれを食用としていたと言うが、厚らにはとても信じられませんでした。真っ黒なイモリは、どこからどうみても毒がありそうなのです。おまけに腹はオレンジ色をしているではないか。はて、こんな代物を誰が食ったと言うのか? 厚らは不思議で仕方がありませんでした。

 イモリはエビで釣ると言うよりも、むしろ、虫取り網ですくった方が手っ取り早かったものだから、けっきょくのところ、川エビなど使うはずもありません。それについて皆わかっていたことだが、誰一人としてそれを言いませんでした。とにかく話を盛り上げて楽しみたかったのです。

 あっというまに水槽タイプの虫取りかごのなかに、イモリが十匹ほど入った。それを各自、のちほど分け前として受け取ることになっていたわけだが、なにしろ普通の家庭のはなしではない為に、先生に叱られて逃がすことになるのかな? などと言ったことはみじんも考えていませんでした。少年探偵団は帰宅の途に就きます。

 

 長い長い帰り道をあるいているとき、ふと、少し離れた場所でサトウキビの収穫を農家の人が行っていました。少年探偵団はしめた!とばかりに、皆、かけあしでその農家のところへと寄ります。農家の人は愛嬌良くサトウキビをカマで切り落として厚らに分け与えてくれた。少年探偵団はそれをもらうなり、鍛え上げられた野性的あごで、厚い皮を力づよくむいてから、中の径をしゃぶしゃぶとかみつくのでした。すると、じゅわっと甘い汁が出る。それがサトウキビの醍醐味でありました。

 

 施設についた。給食センターへよる。川エビを職員に気前よく手渡し、そして皆でイモリを分配しました。それぞれのホーム(荘)へと戻ります。

 イモリをどこで飼育しようか? そんなことなど考えていなかったものだから、部屋に着くなり、みな、路頭に迷いました。そして結局、先生に言われることなくとも、庭の下水にイモリを逃がすのでした。それは今回で何度目かの失態であります。何回も何回も同じことを繰り返しているのですよ。要するに、持ち帰ることも、結局逃がすことも、全てはお遊び。それに対して、まだ幼い少年探偵団たちは、何とも思っていなかった。野生の生き物は当然として存在していて、そしてまた、どこででも生きてゆけるものだとばかり思っていたわけです。これは大人になって、笑い話では済まなくなったものだから、厚らは生涯、これに対して絶望になるのは仕方のないことだったのかもしれませんね。

 

 さてさて、少年探偵団の川遊びのはなしには欠かせないのが、とにかくも、怪我であります。その話を避けては物語が前には進みません。

 厚も怪我をした仲間の一人でありました。

 あれは痛烈に痛かった。厚は川べりで苔に滑り転倒しましてね。その際、頭をコンクリートの地面にたたきつけてしまったのであります。

 さあ、大変なことになった。頭蓋骨がジンジンとしていてずんと重い。厚の右側の頭から思い切りよく流血していました。さあ大変なことになった。大変なことになった。少年探偵団のみんなは大騒ぎしました。

 どうする? 少年探偵団のみんなは厚を囲って相談します。ここからは施設は少しだけ遠かった。一刻の猶予も許されない局面で、みんなは厚の鮮血におののいてしまっていて、何もできませんでした。少年探偵団の一人が言った。とりあえず、シャツでなんとかしよう。と。そしてシャツを脱いで厚の頭に当てがいました。ですが、それでもとにかく血が止まらないのです。恐らくは、太い血管が切れているものと思われました。

 またたくまにシャツが真っ赤に染まり、血がしたたり落ちます。これはもう急ぐしかない。厚! 歩けるか――? よし、みんなで帰ろう。厚、気分が悪くなったら言えよ! 担ぐから。厚君は自分が隊長なのに、隊長のようなみんなに、なんだか申し訳ないような気さえしたものでした。一団は川を抜け、そして道へと出ます。

 とちゅう、農家のおじさんのトラクターが横ぎってから、それを止めた。あぎじゃばよー! (なんてこった!)血がいっぱい出ているね? おじさんは発しました。

 おじさんは行動がとても速かった。

 厚を急いでトラクターに乗せると、やや遅い速度だが、それでも一生懸命に丘を下って行きました。少年探偵団の一行はそのあとを走ってついていった。

 丘を少し下ったところにある小さな売店で、おじさんはトラクターを止めて、店主から黒電話を借り、救急車を呼びました。救急車はあっという間に来ます。厚は少し意識がもうろうとしていました。

 救急車は少年探偵団と厚を乗せてから、猛スピードで病院へと一直線に向かいました。病院に着きます。ここで一行は少しだけ気持ちがほっとしました。厚は意識を失っていません。大丈夫、大丈夫。厚はみんなに言っていました。

 緊急手術をして、パックリと開いた厚君の傷口は白い糸で縫われた。麻酔など効いていなかったが、厚はそれでも悲鳴を一つも漏らしませんでした。あんた、強い子だね! がんばって! 手術台でそう言われたのを覚えている。手術は終わりました。

 厚はレントゲンを撮っていなかったために、手術後、レントゲン室で写真を撮りました。そして、小さな集中治療室で眠りにつきます。力を抜いたとたんに、やっとこさ麻酔薬が効いたのでした。

 厚が起きたのは二時間後だった。きづくと、いつのまにか点滴が打たれており、これはなんだろうと首をかしげる始末でした。病院には慣れっこではなかったわけです。あくまでも完璧なまでの健康児なのでありますから。

 少年探偵団の一行は室内に入ってきていて、厚にやさしく語りかけたりもしたが、決して大騒ぎなどしませんでした。みんな我慢していたのです。看護婦のおばさんが、大声は出さないでよ! と、くぎを刺していたからでした。そして、施設から玲先生が来ます。「厚君――!」と。

 玲先生は胸元に厚の顔ををうずくまらせてから、とにかくギュッと抱き寄せた。厚君はそのとき「おかあさん……」と、つぶやきたかったが、少年探偵団の目もあることだし、その気持ちをぐっと抑えたのです。

 もちろん、その後の病院から帰宅した施設で、玲先生は甘く狂おしく厚へやわらかいおっぱいをあげた。厚は喜んでそれをすっぷったのでした。とても至福の時であります。

 

 少年探偵団に反省と言う言葉など存在しなかったように、きょうも、皆、川遊びに夢中だった。もちろん、厚は隊長なために、当然のようにしてその中に居ました。けがはもうふさがっていて完治していたのです。

 平日こそは、少年探偵団は集結しなかったが、日曜日ともなればそれは騒いだものでした。夏になれば川泳ぎなんかもしたりしました。厚らは冬でも川遊びをしたのです。

 川遊びはなにも水の生きものだけが遊びの対象ではなかった。源流の奥にひそめている林へと辿ると、なんとコウモリが逆立ちで昼寝なんかもしていたものだから、少年探偵団はそいつに石ころを投げつけて、せっかくの睡眠の邪魔なんかもしたりした。コウモリは寝だすと絶対に起きなくて、それは石ころが例え的中しようとも、しばらくは微動だにしなかった。厚らはそれに対してむきになって、連投で石ころをぶつけるのでした。

「コウモリ、ぜったいに起きないなぁ」

「もしかして死んでるとか?!

「それはないだろ」

 一団がそう話していると、コウモリはとたんに起きだしては、はるかかなたに飛んで行きました。とても不思議な飛び方だった。そう、それはまるで、忍者のように。

 

 カントリークラブではゴルフを楽しむ大人連中がいました。ときどき、川べりにボールが飛んでくるのだが、一団の一人がそれを取ると、ゴルフ場に投げ返すのでした。こっちじゃないよ。と。一団は思い切りよく笑い転げて、おかし涙をちょろちょろと流す始末で、どうにもこうにも必然と言うか天然と言うか、とにかくみんな明るかったのです。

 

 源流から下ること百メートルくらいだろうか? そこには大きな沼がありましてね。沼とはいっても、しごく透き通るようにきれいな淡水で、ここでも少年探偵団は真夏に泳いだりした。ここにもイモリはいました。イモリだけではなかったです。

 その沼は、天然の錦鯉が、一団をいつも口を大きく開けて迎え入れてくれました。川エビが目当てだったに違いなかったのでしょうが。ほれ、やるぞ。こっちにもそれっ! そうして一団は餌を鯉に与えるのでした。とにかく綺麗な鯉だったのです。

 時々、釣具屋から盗んだ浮きづりセットで川魚を狙ったりもしてみたりした。結果はボウズで、何一つ収穫はなかったが、それでも少年探偵団は、たのしめた! おもしろかった! と、満面の笑みを浮かべたのでした。

 

 川あそびのときは鉄砲雨が兎に角多かった。

 それきたぞ――

 少年探偵団は隊長の厚を拭いと壁にして、風と共に横からも打ち付ける斜めからの鉄砲雨を避けたものでした。そのはなしを厚君は玲先生に告げ口する始末で、本当のところは彼女に彼は甘えたかっただけかもしれなかったが、その時も、ごほうびのおっぱいをちゅうちゅうとごちそうになるのであります。

「厚君、きょうもがんばったわね」

 玲先生は、自身のおっぱいをしゃぶる厚君の頭をなでながらいつも言っていた。それからはあん!と、官能的に吐息を吐くと、厚は何だか股間に熱いものを感じるようになっていたのでした。

 

 迎えた日曜日。今日も少年探偵団は川遊びに出かけた。

 そういえば、最近、探偵と言うか探検すらやっていないな――

 厚は思いました。

 それをみんなに話すると、べつにいいじゃん!と、遊びに夢中だったものだから、隊長の厚は困ったものでした。何か考えないとな――。彼は一人、川遊びの休憩がてらそれを考えたりしていた。

 ――玲先生と相談しよう。

 結局のところ、甘えたかっただけだったのだが、名案が兎に角思い付かなかった厚君は、彼女に助け舟を出してもらおうと、次回、おっぱいをもらうときに相談します。すると、

「ゴルフ場を探検すればいいじゃない。はあん!」

 と、玲先生は今日も官能的に吐息を吐くだけでした。

 

 少年探偵団は、今週の日曜日も川遊びを楽しみました。

 今日の目的はすっぽん(食用カメ、美味)です。

 まあ、この時代はすっぽんならいくらでもいました。ただ、探しつらかった。すっぽんは特性があって見つけにくいのであります。その特性とは、すこし緑に濁っている場所に生息することと、やはり岩と甲羅の形が似ていることでした。

「いたぁ! いたぞ! みんな――!」

「どこどこ?」

 団員の一人がすっぽんを捕まえる。捕まえる場所は決まっていて、かならず尻尾の方を握らなければならなかった。でないと、すっぽんの長い首からくる噛みつき攻撃に指がやられてしまうのだ。団員は余裕綽々だったが、しかしながら冷静でした。

「ほうれ――!」

 いたずらでその団員がほかの団員にスッポンを軽く投げつけた。スッポンはびっくりして顔をすっぽめる。であるからして、放られた団員が体を噛みつかれることはなかった。それらはすべて計算の内でした。本当に冗談だったのですよ。

「そうやって動物を投げるのやめろよぅ!」

 厚が怒り気味と言うか、呆れ顔でそう言いました。

「なんでい! いい子ぶっちゃってさ!」

 のちほど厚君は施設へ戻ったときに、玲先生へそれを密かに言いつけてやった。もちろん、おっぱいをちゅくちゅくと頂きながら。

「はあん! 厚君、お利巧ちゃんね。もっと強くすっぷりなさい。今日は特別許したげるわ。はあん――!」

 先生と園児のこの乱れた関係は、誰の耳にも入らなかった。すべては厚君と玲先生だけの秘密の禁断行為なのである。それについて厚は、実際のところ、少年探偵団のみんなに自慢話として言いふらしたかった。玲先生は俺のものなんだい! と。おっぱいも俺のものなんだぞ! いいだろ? と。

 玲はいつも官能的に感じていた。しかし、本当のところはもっと刺激がほしくてたまりませんでした。――嗚呼、厚君の男根がたくましくなって、それで、私の膣内をぐじゅぐじゅに突きまくってくれるのはいつごろになるのかしら? 玲先生は淫乱にそう思ったのでした。

 

 いつしか、厚君の誕生日の日、玲先生は彼だけを連れてリゾートホテルのブッフェに行ったことがあった。ブッフェとはバイキングのことを差し、もちろん、時間制の食べ放題なのだが、ホテルのレストランと言う事で、それはもう食べたことのないケーキだらけで、厚君は肉も何も食べず、一から最後までケーキを腹いっぱい平らげていたのでした。玲先生はそれを見ていて、なんだかおかしいのとかわいいのとで、くすくすと微笑んでばかりでした。

「うふふ 厚君、今日はおなかいっぱい食べた?」

「うん! いっぱいたべた!」

「お利巧ちゃんね」

「うん!」

「厚君。きょうはね、先生のおうちに泊まりに行くわよ」

「せんせいのおうち?」

「うふふ そうよ。事務方には話してあるから大丈夫。今日は一緒に寝ましょうね」

「やったぁ!」

「お風呂も一緒に入るのよ たのしみ?」

「おふろも?」

「そうよ、厚君」

 玲先生の住まいはリゾートホテルからは離れていたが、それでも厚は退屈を感じずに車内の中で座っていました。助手席です。玲先生は白のホルクスワーゲンに乗っていました。玲先生の住まいに着きます。

 部屋の中はとにかく上品そのものでした。まるで香りから異世界だったものだから、厚君はなんだか女性の部屋に慣れるまで少しばかり時間がかかりました。まるでおとぎの国に迷い込んだホームレスのようにして頭の中はカルチャーショック状態だったのです。次の瞬間でした。

「厚君、服を全部脱ぎなさい」

 玲先生が厚君に向かってそう言った。

 厚君は突然のことでおもわず、

「え――?」

 と返した。玲はほっぺたを膨らました。

「良いから早くしなさい」

 厚は顔が火照った。

「はずかしいよう!」

「先生に隠し事は駄目でしょ。厚君の全てを先生に見せるのよ。さあ、脱いで」

「う、うん」

 厚はしぶしぶ恥ずかしそうに全裸になりました。毛の生えていない子供のおちんちんはとにかくかわいく玲には映っています。玲先生はおもわず、「かわいい!」と喜ぶのでした。

「うふふ それじゃあ、先生も脱ぐわね」

 厚は何だか、さらに恥ずかしくなった。その感情がなんなのか、まだ幼い厚君にはわかりませんでした。ただ、玲先生はれっきとしった本当のお母さんではないと言う事。異性と判断できる、厚にとっては立派な一人の女性でしかなかったのであった。

 玲先生がしゅるりとワンピースを脱いだ。下着姿だけになる。

 すると、どうしたものだろうか? 玲は厚君にブラジャーの胸元を、彼の顔に近づけた。そしておぼらせるようにして厚の顔に谷間を深く深く潜らせました。

「どう? 厚君。良いにおいがする?」

 玲先生は本当に淫乱でした。彼女は厚にとって痴女的女性だったのであります。

 厚君ははふはふとしながら、せんせい、とってもいいにおいがするよう……。とつぶやきました。それを聞いて玲先生はにやりとして見せたのです。それから、厚君をたおして、今度はVラインのパンティーの匂いをかがせる始末で、どうにもこうにも厚君は、この官能的女性に脳がやられっぱなしだったものだから、ちいさなおちんちんが勃起するのも無理がありませんでした。それが男の本能だったのですから。

「ハアハアハア……、厚君、もっと強く匂いを嗅いで! はあん!」

「せ、せんせい――!」

 この淫らな性的行為は、もはや獣そのものだった。男根に飢えたメスの獣が、子供の獣に喘いでいるのです。それは相当な理性を吹き飛ばしたような淫らさだった。現実社会の破壊でした。

 結局、最終的に玲は厚君の顔面へパンティーの中から失禁しました。厚はそれを避けるようにして顔をそらそうとしたが、玲が両手で顔をつかんで阻止した。厚の顔面はぼとぼとに玲先生の聖水で濡れまくります。せ、せん、せい……。厚はもはや脱力感しかわかなかった。

 

 さあ、一緒にお風呂に入りましょう 玲先生が素っ裸になって厚君に曲線美を見せつけてからそう言いました。厚にとってはたまらない裸体でした。もはや一人の女性だったのです。お風呂の中では、玲先生はおとなしかった。まるで先ほどの痴女が嘘であったかのように、シャワー室内では厚君のお母さんでした。背中を磨き、流し、湯船の中でおっぱいをあげる。それはそれば、日常の中にある母子の関係のようなふるまい方だった。それについて、厚君は少しだけほっとしました。風呂を出た。

「厚君、お洋服はつけちゃだめよ」

「ど、どうして?」

「まだ、つ、づ、き、があるの

「つ、づ、き?」

「そうよ

「せんせい、なんだかこわいよう! うえーん!」

 厚君はとうとう泣き出しました。彼に大人の世界など理解できるはずがなかったのです。みかねて玲先生は、続きをすることをあきらめました。――やっぱり、あそこを舐めさせるのは、まだはやいわね。

「いいわ、厚君。服を着けて寝ましょう」

「いいの?」

「いいわよ 先生も着けるね

「うん!」

 そうして、玲と厚の初めての夜は終わりました。

 次の日の朝になりました。

「厚君、厚君――

 玲先生が厚君の肩を軽くたたいて起こしている。厚は何だか眠気眼で目を覚ました。せ、ん、せい……。と。それを見て玲は微笑んで魅せました。

「ほら、顔を洗ってらっしゃい。朝ごはんを一緒に食べましょう

「う、うん……

「その前に、おはようございます。おかあさん。は?」

「お、は……よう、ございます、お、か……あ、さん……

「よし いってらっしゃい

「はい……

 厚は顔を洗いに洗面所へ歩いた。そのあいだに玲は、美味しくてボリュームのある手作りサンドイッチをつくって食卓に用意しました。厚君、まだぁ? などと呼びながら。それは気持ちの良い朝でした。

「いただきます

「いただきます!」

「げんきね。うふふ

 そうして玲先生と厚君は朝食を平らげた。昨夜の話などは忘れたようにして一切語り合う事はなかったものだから、厚にとって、それはとても都合がよかったのです。

「今日も先生は昼からお仕事だから、一緒に荘へ帰ろうね 厚君

「う、うん……

 厚は何だか恥じらいを覚え始めていました。それはいつからだろうか? そう遠くはない話であります。はたしていったい? しかし、返ってきたのは、それはまぎれもなく昨日の晩でした。破壊的で、官能的で、嗚呼、なんて大人は助平なのだろうと、なんて陰険なのだろうと、只々、恥ずかしくなるばかりだった。それは自分自分に対してだけではなくて、当然ながら玲先生にも同じことを思ったのでした。

 厚は玲のことが嫌いになった。ならなかった。

 こんなにも破廉恥な母親は僕だけのもの。だれにも渡すものか。そう考え始めていたものだから、これはもう、玲先生の思うつぼであったことは言うまでもなかった。玲はとうとう厚を支配したのであります。

 

 少年探偵団はかげでひそひそと、隊長である厚のことをささやき合うようになっていた。あいつ、なんか顔つきが老けたんじゃないのか? なんだよ! 玲先生となんか関係があるのか? などと言った具合に。それに対して厚君は、相当ごまかし続けたのだった。はぐらかした。

 厚は誰にも言えなかった。

 実は玲先生のおしっこを飲んだんだ。玲先生の乳首の色を知っていて、その味もわかるんだ。僕は玲先生の裸体にくっついたんだ。などと、この幼き子供が他人様に告白することなど、どうして出来ようか? それはつまり、厚君は玲先生の完全なる下僕として烙印が押された意味でもあった。彼は決して玲の息子ではないことが、あの晩に証明されたのです。

 厚は、自分はついている人間なのか? 憑いていない人間なのか? 段々と分からなくなっていました。施設に入れられたのは不幸で、それでも玲先生はいて。それからそれから、少年探偵団はあって……。なんだか脳がぐちゃぐちゃになりそうだった。厚君の幼い感情では、この状況のことを何と呼べばいいのか、境遇のことを何と呼べばいいのか、運命のことを何と言えばいいのか、まるで見当がつきませんでした。そこまでの知性はなかったのです。だから、なおさらに頭はミキサーにかけたようにぐちゃぐちゃととろけて行っていきました。けれども、厚は思った。これは間違いなく、美味しい方のミックスジュースだ。と。

 

 せんせい、ぼく、こわいよう! ちゅうちゅう

 

 厚はそうつぶやきながら、今日も玲先生のおっぱいをちゅくちゅくとすっぷった。はあん! いいわよ、厚君。もっと強く吸いなさい。ほら、お母さんのピンクの乳首はぴんぴんに立っているでしょう? 嗚呼、吸って! 吸うのよ! 玲は徐々にだが、サディストになっていくのを恐れることなく演じるようになっていました。

 

 少年探偵団は、一同にそろって厚に問いただした。おまえ最近変だぞ! そのくせやめろ――! 何が駄目だとか、そんなのは関係なかった。みんなは只、厚が気に入らなくなっていただけのはなしでした。いつも口とんがらしやがって! おっぱいでも飲んでるのかよ? 少年探偵団の一人が訊いた。厚は何も答えない。まあ、いいさ。隊長が口とんがらかしてるんだから、俺たちもしようぜ! いっせーの! みんなはそろって口をとんがらかした。可笑しかった。可笑しくておかしくて仕方がなかった。みんなで笑いあう。そのなかに厚も含まれていました。

 まあ、なんだかんだといって、少年探偵団は結束力がずば抜けていたものだから、厚も自分がはじかれるなどと言った、そんな事に対して心配などしていませんでした。ましてや隊長だもの。始めからありえなかった。

 川遊びも飽きてきたな――。団員の一人が言った。

 そうだな……。厚もそう思っていました。

 しかし、川エビは美味いし、持ち帰ると、給食センターによろこばれる。それがいちばんのたのしみだったはずだし、なんかこう、一つの仕事が達成感を味わえて心地よいと言うか、我ら少年探偵団の存在価値だと思っていたので、厚はもうしばらくは川遊びで楽しみたかったのです。

 今度ゴルフ場からパクったボールで俺たちもゴルフしようぜ――

 一団が言う。厚は、それには賛成でした。

 しかし、どこで? パットもないし……

 一人がぼやく。

 ガジュマル広場があるだろ? ビー玉会場。あそこ穴も掘ってるしいいんじゃねえか? 打つ棒は傘でいいだろ? それか、トイレほうき――。一団は即座にガッテンした。

 さあさあ、少年探偵団は次の遊びを見つけましたよ。これからどうなっていくのでしょう? たのしみたのしみ。玲先生は厚君から聞いた話を日記にしていた。それをいつか厚に読ませてあげるのだ。もう少し大人になったときにでも、ゆっくりとゆっくりと、感情をこめて、丁寧に、朗読するのが将来の楽しみのひとつでした。――厚君、これ覚えている? などと言った具合にして。もちろん、朗読の際は、母乳を飲ませることは言うまでもないことだが。

 


第三章

 

 

 今日の少年探偵団は、ガジュマル広場に集合していました。

 じゃんけんぽん、あいこでしょ、あいこでしょ! あいこでしょ――

 実に太い大木があるこの木陰のできた広場は、この大木であるガジュマルから由来した名前であることは言うまでもないことで、ここではビー玉遊びだとか木登りだとかして遊ぶための場所であった。

 少年探偵団がじゃんけんをしているのは、木登りのほうではなくて、ビー玉遊びの先行順番決めのために行っていたことはいうまでもないことだが、このビー玉遊びは特殊で、先行だからと言って有利になるわけではなかったものだから、実際のところはじゃんけんなど、なんの意味もなしませんでした。只の盛り上げ要素でしかないのであります。

 ビー玉遊びの穴は十字架に構成されていて、手前の穴から順に入れていく。道中、敵のビー玉にあてると、もう一回順番を待たなくともビー玉を再度、つぎの穴へと投げることができた。

 みな、手先の器用な強者ばかりだったものだから、一メートル先にある敵のビー玉なんか軽くあてることができた。現代人にとってはびっくらぽんのはなしでしょう。じつはいうと、二メートル以上離れていても、時々、少年探偵団はあてることができたのであります。であるからして、少年探偵団のだれもが息をかたくなに飲んでいた。油断大敵なのである。

 ハラハラドキドキとしながら、それを最後まで味わえるビー玉遊びは最高のゲームと言えました。お金も何もいらない。必要なのはビー玉と穴を掘れる広場だけなのである。まさに、少年探偵団のためにあるようなゲームだったのでありました。

 

 ビー玉勝負が終わると、きまってガジュマルの木で木登りをして楽しんだ。みな、危険ゾーンまで枝を進む。それには、だれが勇気があるだとか、そんな子供じみた考えなどが思考の中を支配していたからでした。ときどき、枝が折れて、地面へと体が叩きつけられる園児も当然ながらいた。しかしながら、事が済めばみな笑顔に戻るのでした。そしてまたとばかりに、再度、木登りを楽しむ。それは今日も変わることはありませんでした。

 厚は、今日は落ちなかった。すれすれのところまではいったのだけれど、ぶじ、落ちなかった。それに対して彼はほっと肩をなでおろしていました。

 

 昼さがりのごちそうと言えば、玲先生のおっぱいであります。厚君はきょうも玲の子供のままであり続けた。

 ちぇんちぇい、おっぱいほちいよう! ちゅうちゅう 

 ほうら、今日もいい子ね。それ、おかあさんの乳首をほうばりなさい はあん 

 厚君は舌で何回でも乳首を転がした。こうやってこうやれば、おかあさんは喜んで興奮する。そう考えながら。

 

 ――ずいぶん、女の体が分かってきたじゃない? 厚君たら……。はうん

 

 玲は感じる。官能的に恥部をぐじゅぐじゅに濡らしました。愛液がどっと初潮のようにして、パンティーの中へたれ落ちる。彼女はそれを厚君にしゃぶりつかせたかった。できなかった。厚君にはまだ早いものね。そう悟っていたからだ。

 

 今は、これ以上のご褒美はなしよ。おかあさんはちょっとずつ厚君にご褒美をあげるの。それでよくて?

 

 今日と言う日曜日も少年探偵団はガジュマル広場に居た。

 それ、ビー玉遊びだ! やれ、木登りだ――

 そんな具合で、みな笑顔で盛り上がっていました。

 園児らはとにかく年上や大人に対するブラックジョークが好きでした。ガジュマル広場のそばにある広い通路には、つねに、園長先生やら、職員やら、園の高校生ら、が行きかいしていたものだから、それらにむけてジョークを発するのです。それから木によじ登って逃げると言うのがとにかく面白くて楽しかった。

「ファックユー!」

 施設と親交のある米軍ボランティア団体に向けてそう叫ぶと、職員が真っ赤な顔をして園児らを追いかけた。

 こんどは玲先生が通る。彼女はこれから出勤だった。

「玲先生――!」

 玲はみんなから好かれており、それはそれはイメージが清楚でやさしいものだから、玲先生もそれを誰にでも演じていました。この演じていたと言うのは、厚のイメージであって、実のところ、玲はそういう女だった。もともと素が、清楚で、真面目で、やさしいのである。でなければ、厚君とそうなっているはずがなかった。もともとは厚君のお母さんを演じることから淫らな深い関係は始まったのだから。

「厚君、あとでね

「う、うん……

 そうして、玲先生は荘に消えて行った。

 しばらくして、園児の一人である女子高生が向こうの正門から歩いてきた。

 

「みんな!  おーみちゃーだっ――!」

 

 おーみちゃーとは、その女子高生のあだ名で、本名はどうでもよいと言うほど、園児らは知らなかった。只、おーみちゃーには中学生のイケメンの弟がいて、その弟のあだ名がとんみーと言った。おーみちゃーは神に相当嫌われたのか、毒物を飲んだのかは知らないが、顔がダイオキシンを服用したようにボコボコで、酷いあばた顔でした。彼女はもちろん、それを気にしており、相当、精神を病んでいたものだから、高校進学は奇跡的ともいえることだった。

 少年探偵団は、おーみちゃーの顔を見るだけでぞっとした。そしてとてもじゃないが、からかう事などできなかった。それはすべての園児がそうでした。

 かわりに、とんみーと言う弟が彼女の代わりを演じるべく良くからかわれていた。

 

 おーみーちゃー とんみーのねーね(姉貴)!

 

 という歌があったように。

 とんみーはとてもやさしいひとだった。怒ったふりをして追い掛け回すのだが、捕まえると笑顔になって飴玉をくれた。園児に一番好かれている中学生でした。

 厚はひとつ、名案が思い付いた。

 

 ――そうだ! 少年探偵団の次なるミッションは、おーみちゃーの名前を知ることだ!

 

 なんて名案なのでしょう。玲先生は、厚君日記をつけてからノートを閉じた。うんうん、それでどうしたいの? それとも、そろそろ、お母さんのおっぱいがほしい? 玲はそう発しながら上着を脱いでブラジャー姿になった。真っ黒なブラは、厚の首にやさしくまかれる。するとどうだろうか? 厚君の鼻の中には、玲先生のまるで香しい芳香剤が吸引されて、その膜に張り付くではないか。彼は、どんどんどんどん、まっさかさまに転げ落ちてゆくようにして大人の世界を蜃気楼のように感じるのでした。そしてつぶやく。

 ――玲先生、おっぱいがほちいよう。

 桃色の乳首を思い切りよく吸う。ちゅうちゅう と。

 はあん――! 玲先生は震えたようにして敏感に反応しました。官能的に感じているのです。それについて、厚君はしてやったりだとおもったし、このおっぱいは僕のものだ。とも思いました。

 玲はそろそろ欲しかった。厚君のぺロぺロと舐めまわす舌が、恥部にほしかった。

 ――嗚呼、いつごろ彼は、一つ脱皮するのかしら? 

 そんなことを考えながら、玲先生は、ピンクの乳首を立てるに立てまくった。

 

 まるでその光景は、心のオアシスでした。

 

 そう、あたかも、先生部屋の中に、局地的存在する泉のオーラ。そこで、大人と子供の二人は傷をなめあっているかのようにして、心を慰めていた。性欲を慰めていた。

 

 次の休みの日、少年探偵団があつまると、厚は隊長としての命令を皆に言い渡しました。

「これから、おーみちゃーの正体を暴く。みんな、ついてこい!」

 力強いその一言は、隊員の士気を高めた。そうではなかった。

 ブーブー文句を垂れるばかりで、みんなはまとまることが無かったものだから、なんだか厚君は、自身の力のなさを痛感する始末でどうしようもなかった。玲先生はその話を聞くと、うふふ がんばってね とだけおっぱいに添えて見せた。

 

 翌週も同じようなものでした。

 なんせまとまりがない。どうにもこうにも、にっちもさっちも、いかない。

 業の煮えた厚隊長は、もういい! 俺一人で調べる――! と、なげやりになった。するとどうだろうか? 一気に隊員たちはまとまりだしたではないか。これにはさすがの厚君もおもわずにんまりとしたものでした。

「それで、どうやって探偵する?」

 一人が訊いた。

「先生に訊いた方が早いんじゃね?」

 一人が返した。

「それじゃおもしろくないよ。いちから自分たちでしらべなきゃ!」

 厚隊長はそうまとめた。

「よし、それじゃあ、おーみちゃーの部屋を調べるか?」

「どうやって中に入る? 俺たち同じ荘じゃないぞ」

「しかも高校生は二階の個室だし、第一、先生部屋は鍵がかかってる」

「おまけに、先生部屋を通らないと階段にはありつけない!」

「うーん」

 辺りは突然静けさに包まれた状態となった。

 厚はひとつため息をついた。それから言った。

「とりあえず、ゆっくりかんがえよう」

「そうだな……

「ああ、なんかいい方法ないかなぁ?」

「そうだな」

「今回のミッションは厄介だぜ!」

「そうだな! あはは!」

 

 ほうれ! みんな、あそぼうぜ! かけあしだ! そうれ、ビー玉だ――! 

 

 少年探偵団は一斉にしてビー玉会場でビー玉大会をした。とても楽しい日だった。それをみていると、厚もなんだか今回のミッションを難しく考えるのが馬鹿らしくなってきた。しかし、言いだしっぺだしな、なんとかしなきゃ。とだけは力強く思ったのでした。

 

 今日は木登りからの転落者がいた。かなりの大けがだった。

 地上から十メートルは離れている枝から足を滑らせて頭と肩から落ちたのです。ドンと落ちたとたん、その隊員は白目をむいて泡を吹いていたものだから、少年探偵団のみんなは駆け寄って、

 やばい! こいつ死んでる――

 と騒ぐ始末で、なんというか、頭がそれだけでいっぱいになって、中々、先生のところへ声をかけることができずにいました。

「な、なあ、鼻血でてるけど……どうする?」

「厚、隊長なんだから何とかしろよ!」

「え? でも……

「そんなこというなよ! 厚が悪いわけじゃねえだろ?」

「とりあえず、みんなで医務室まで運ぼうぜ」

「ちょいまち! こういうのは下手に触らない方がいいって聞いたことがある」

「あっ! それな? 俺もある!」

「じゃあ、先生呼ぶしかないか……

「やばいよ、俺たち怒られるんじゃねえか?」

「大丈夫だろ。いつもこんなことあるし」

「そ、そうだよな。そうそう……

「とりあえず、厚、玲先生よんで来いよ。あの先生だったら怒らないだろ?」

「そうだな! 名案! 厚、走って呼んで来いよ。はやくっ!」

「あ、ああ……。うん、わかった」

 

 厚は走った。玲先生のもとへ。玲お母さんのもとへと。

 玲先生はいた。どうしたの? そんなに息切らして。と訊いてくる。

「おかあさん、友達が木の高いところから落ちちゃった……。泡吹いて、それでね、先生、そいつぴくぴくしてて死んでいるみたいなんだよう! たすけて! 玲先生――!」

 玲先生は急いだ。救急車にも電話をする。

 そして、厚君とともにガジュマル広場走った。

 

「せんせぇい! ここ、ここ――!」

 

 少年探偵団のみんながそう叫ぶ。

 玲先生はもはや厚君のお母さんの心境ではなかった。立派な先生だった。

 彼女は救急車を呼んでおいたことに対して正解だったわね、とおもいました。鼻血は止まっているが、意識はない。幸いにも、耳からは血が出ていない様子だったものだから、なんとか大丈夫かもしれない。とだけみんなに言った。少年探偵団はそれを聞いて、すこしだけ安心しました。

 玲は正直に言って不安だった。

 もしかしたら、絶望? いえ、そんなことはないはずよ。

 だめ、そんなことをかんがえては、駄目よ。

 自分に言い聞かす。

 激しく行きかう思考の全てをとことん押さえつけようとした。

 それが出来た。できなかった。

 なんだか、木から落ちた少年探偵団の一員である保君が、まるで息をしていないように感じた。気のせいだった。気のせいではなかった。

 嗚呼、どうしましょう。どうすればいいの? 

 人工呼吸? そうではないわ。溺れたわけではないものね。

 でも、こんな状況でもやるのではなかったかしら? 

 そうよ、きっとそう。

 玲先生は厚君が見ている前で保君とキスをしました。ただの人工呼吸のつもりだった。恋愛対象外のキスのつもりでした。だがしかし、厚は何だか怒りのようなものが込み上げてきた。

 

 いやだ、そんなのいやだよう――! 

 

 厚君はたまらず、玲先生をはねのけた。そして自分が変わりに人工呼吸をした。できなかった。やり方がわからない。

 

 くそっ! おきろ、おきろ――! 

 

 厚は保の心臓を思い切りよくたたいた。両手で大きな拳を作って心臓めがけて殴った。心臓は動きなおした。まさに奇跡でした。

 よかった、と、厚君と玲先生は思った。

 

 ――ごほっ、ごほっ。

 

 保の意識が戻ったようだった。しかし、からだを微動だにできない。肩を骨折しているみたいだった。辛そうな痛い表情をしていた。

 救急車が到着した。

 

 骨折ですね。しかし、大丈夫ですよ――

 

 それを聞いて、少年探偵団と玲先生は一安心した。

 本当に騒がしい一日だった。

 

 今日、厚君は玲先生のおっぱいにありつけなかった。理由は、病院へは玲先生一人が付き添いで救急車に乗ったからだった。戻ってきたころには玲先生の当番時間とうに過ぎていたのです。であるからして、玲先生はすぐに荷物を取って帰っていきました。

 厚は考えていた。実に懸念していました。

 

 ――おかあさん、保のやつにおっぱいあげてない?

 

 厚君は狂いそうだった。その思いだけが支配している今、消灯時間をとうに過ぎても、とてもとても眠れそうになかった。

 玲先生、玲先生、玲先生、おかあさぁぁん――! 

 彼は壊れた時計のようにしてもがいた。一人二段ベッドの上でもがき苦しんだのです。

 

 ――かみさま、きょう、玲先生はおっぱいをあげたの?

 

 やがて夜中になった。

 厚は尿意を覚えてトイレへと静かに移動した。とても薄気味が悪かった。

 

 ――トイレの神様はいるんだい!

 

 そう口ずさみながら、厚君はトイレに着いた。無事、用を足した。

 なんでい! なんにもでないでやんの! そう思った。思えなかった。

 なにやらトイレの小窓から、のっぺりと誰かの、誰かの頭が見えるではないか。これについて、厚君は見てはいけないものを見たとばかりに、おもいきりよく悲鳴を上げた。

 

 ひえぇ――

 

 厚は腰を抜かした状態で、ひきずさむ。やがて、当直の男先生が来た。どうした? と。

「せんせい! あ、あたまが――!」

 厚君がトイレの窓を震えた指でさす。先生はその先を向いた。

「はっはっはっ! だれだ、こんないたずらをしたのは」

 先生は言うと、網戸を開けてそれを取った。祭りによくある仮面だった。

「な、なぁんだ! でも、びっくりしたぁ!」

「わかったら、はやくねなさい。ほれ、行った行った」

 厚はうなずくと、ちょろちょろと弱々しい体で二段ベッドへと向かっては就寝するのでした。

 

 次の日の昼すぎ、厚君は急いで学校から帰ってくると、先生部屋の中で玲先生を抱きしめた。抱きしめたと言うよりは、抱きついた。が正しい。

 玲はいう。さびしかったの? 厚君。

 厚は返す。うん……

 厚君は立派な子供だった。少年探偵団の長を務めていても、所詮は子供なのであります。それを改めて思うと、まだまだスペルマは早いわね。と玲はため息をこぼすのだった。

 厚はいつものようにして玲先生のおっぱいを飲んだ。すっぷった。

 玲はいつものようにして、はあん と官能的に感じるのだった。

「せんせい、きのう、病院で保におっぱいあげてない?」

「え? どうしてそう思うの?」

「だって、だって……

「だってだってじゃないでしょう? もう、やきもちやき君ね。うふふ

「せんせぇい――!」

 再び乳首を吸う。

「はあん! すごいっ!」

 厚は脳天から破壊されそうだった。官能的という言葉にやられそうだったのだ。その声、甘すぎる美声、極みの喘ぎ声。それが厚君の脳裏にこびりついてはなれませんでした。

 玲は脳天から破廉恥だった。もがきにもがく裸のビーナス。その激しく勃起した桃色の乳首は、厚君によって完全支配されている。わたし、もしかしたらマゾヒストなの? そう勘ぐったりもしました。

 ハアハアハアと、行為の後、厚と玲はうなだれた。乳首を吸う行為だけでこの始末だった。それは禁じられた愛だからこその官能でした。それしか考えられなかったのです。

 

 厚君が部屋を後にした後、玲は濡れたスペルマにやわらかい自身の指を突っ込んだ。一回で逝った。もはや、達していた状態だったのだ。

 いつか、厚君に……

 そうおもうと、なんだか厚を呼び戻したくなった。

 厚君! もどってらっしゃい! 

 と。そしてサディスティクに厚を全身でいたぶるのです。

 あんなことやこんなことをして。

 厚君は、自身の部屋に戻った後、勃起し続けているペニスを何とか抑えつけようと無心になりました。今日はもう何も考えたくはなかった。つかれていた。官能的というものに項垂れていた。限界でした。極みだった。

 

 さてさて、少年探偵団は今日の日曜日も会議を開いた。オーミチャーについてであります。みな、いい案はなかったものだから、厚は困り果てたものだった。

 うぅん、うぅん……。と、うなるばかりが続いた。

 なあ、もう、とんみーに訊こうぜ! 

 そうだそうだ! それがいい! 

 などと盛り上がるのですが、厚はそれに対して難癖をつける始末でどうしようもなかったのです。けっきょく、今日もまとまらなかった。

 こども会議が終わりました。

 厚君は、皆がビー玉遊びをしている最中に、ひとり、考えを巡らせていた。どうしたらいいのだろうか? と。何かひらめきそうだったのです。しかし、思いつけない。さて、困った困った。

 ふと、上空を眺めるようにして顎をあげた。ガジュマルの枝が青空を隠していた。その枝のあいだあいだから、厚は、この季節の空気を感じ取っていました。空の酸素というやつを感じていた。きもちよかった。

 

 ――もう、本人に訊いた方がいいのかな?

 

 あきらめの先に出しそうになった答えがそれだった。しかし、それでは腑に落ちないし、せっかくの少年探偵団が台無しであるからして、厚君は思わず首を横に振るのでした。

 

 ――やっぱり、部屋に乗り込もう。先生部屋に先生がいないすきを見て。

 

 それしかなかった。そうだ、乗り込めばいいのだ。泥棒のようにして。

 しかしながら、そう簡単な話ではないだろう。ましてや、先生部屋が通過できたとして、内階段先にあるドアに鍵がかかっていては完全なる作戦失敗なのである。

 厚君はそこまでは考えていなかったなにせ内階段先に、更にドアがあることを知らなかったものだから、のちのち、この作戦は変更となるわけであって、もう、どうにもこうにも、最後は外から侵入するしかないわけであり、その行為はもはや探偵ではなく只の泥棒そのものであった。名前泥棒という名の泥棒。珍しい泥棒のはなしなのであります。

 

 少年探偵団の内、オーミチャーと同じ荘はひとりもいない。であるからして、荘の人間への聞き込みと張り込みは必須であった。さあ、いよいよ探偵らしくなってきましたよ。どうなっていくのでしょうか? たのしみたのしみ。

 

 聞き込みに入ってから数週間。

 少年探偵団は集合して探偵会議を開く。

 

 まず、先生部屋は、先生が入っているときしか鍵はあいてないようだ。ということ。それについて話し合われる。いろんな意見が出たが、厚の考えとしては、その荘の先生と仲良しになり、先生部屋でたむろするようにすることから始めた方がいいのではないか? というものだった。実に名案である。それからそれから、とりあえず、内階段の 先を確認すること。その先がどうなっているか知りたかった。その後の作戦はそれからだ。と厚君は発した。みな了解した。

 

 さあさあ、さっそくですが、オーミチャーの住む荘へとみなで行きましょう、行きましょう。なんてことはない。ただ、先生と仲良くなるだけでいいのだから。しかし、そうもいかなかった。この荘の先生たちは、みな、怖い人たちばかりなのです。

 厚たちは恐れていた。何か痛い目にあわされやしないか、と。

 その勘は見事に的中する格好となりました。

「こらぁ! きさまら、この荘で何をうろちょろとしている――?」

 この荘の鬼先生が怒鳴りつける声がとどろく。に、にげろっ! しかし、ひとり、逃げ遅れた人間がいた。厚君である。よりによって隊長の厚がつかまったのだ。

 

「厳罰っ――!」

 

 頭に拳骨(げんこつ)をおもいきり食らった。

 いっ! 痛いっ――! 

 厚はもう泣きげそかきべそでした。げんこつの後は延々と説教される始末で、なんともかんとも、中々離してくれない、解放してくれない。はてはて、こまったこまった。

 

――すみませんでした! しつれいします!」

 

 ようやく解放されたとき、厚君は気を付けをして、まるで兵隊のように先生に謝ってから走り去るように風のごとくビー玉広場へ逃げた。いまは貯水タンクにたむろすることはしていなかったものだから、メンバーらの居所はそうして容易判断できたのでした。

「おまえらぁ! ひどいじゃないか――!」

 厚がみんなに怒鳴る。

「うっひゃっひゃ! げんこつ食らわされたか?」

「凄い痛かったぞ!」

「たまにはいいだろ? あはは!」

「あはは、じゃないよ! みんなして逃げてさ!」

「隊長なんだから、責任は厚が取るってことで、どっこいどっこい

「うぅ……。隊長なんかするんじゃなかったかなぁ?」

「ははははは!」

 

 ――それで、そのあとはどうなったのかしら? はあん!

 

 いま、先生部屋で厚君は玲先生のおっぱいをしゃぶりにしゃぶりつくしていた。

 はあはあはあはあ、せ、せんせい……。おっぱい、おいちいよう! ちゅうちゅう。

 ふたりはまるで乱れていた。淫乱でした。破廉恥だった。

 玲はすこしだけ身を震わせた。快感だった。こうして教え子に胸を良いようにされて官能的感じるメスです。もはや人間ではない。理性を失った獣であったのです。

 厚はまだまだ子供の獣だった。おちんちんをビンビンに立てて、しかしどうしてこんなにも勃起するのか、彼にはまだわからなかった。只、一つ言えることと言えば、こんなにもこころがキュッとするような出来事は生まれて初めてだったし、とても恋しくなるのは玲先生が母親に次いで二番目だったから、それは相当、初々しいと言う言葉が当てはまっていた。厚君は立派な童貞なのです。それについて玲先生は、いずれ、私が教えてあげる時が来るの。厚君の童貞は私のものよ、うふふ と、ひとりほくそえんでいた。さあさあ、この二人の行く末はいかに? そして少年探偵団のミッションはいかにして達成されるのか? たのしみですねぇ。

 

 オーミチャーの本名探しは暗礁に乗り上げていた。

 もはや案は尽きていたのです。

 それについて少年探偵団の一行は、あきらめの先のあきらめのようなものであった。

「もういいから、本人に直接聞こうぜ?」

 しかし、厚君はどうしてもそれが嫌でした。

 やはり外から泥棒のようにして侵入する作戦しかないな。厚はそう思ったし、みんなだってそれしかないと言う事は分かっていました。

「外から入ろう。オーミチャーの部屋に」

「ど、泥棒作戦か?」

「うん……

「そのまえに、鬼先生に捕まったら?」

「捕まることは考えないでおこうよ」

「う、うん……。そ、それで、誰が行く? みんなで行くのか?」

「一人じゃ怖いから、みんなでいこう」

「そ、そうだな……。よし!」

 少年探偵団は団結した。士気は高まっている。

 さあ、いよいよ外からの侵入ですよ。鬼先生に見つかることなく外から二階へと登りきれるのか、どうなのか? どきどきしますねぇ。はてはて、だけども、どこの外から行くのでしょう? それは、共同浴室の軒屋根からよじ登ると言うやつです。丁度、うまい具合にして上れる凹凸があるのですよ。さあさあ、たのしみたのしみ。

 まずは、厚君から見本を示すべく、うまいことよじ登る。おお! なるほど! 息を殺しながらみんなは合点した。そして順番でよじ登る。おおよそ十五分ばかりでみんな登れた。鬼先生には見つからなかった。よかった。そうおもいました。

 二階の屋上に来てからは、もう少年探偵団のものだった。主権は完全握ったようなものでした。ここからは鬼先生にも見つかることなく行動することができる。外野から見られることもない。あたりは遠い景色でいっぱいなのです。

 厚は先陣を切って二階部屋の非常口の所へと、のそるのそる歩み寄る。そしてノブをつかんだ。鍵は開いている様子でした。

 きぃ……。ドアのきしんだ音が鳴る。部屋の中はどうやらブラインドか何かで暗いようだ。明るすぎる外からは、すぐには目がなれなかった。

 ――そうか! ここは台所裏か。

 しぃ……。と厚君はみんなに小声で言う。

「みんな、ここは台所だ。もっと奥に入ろう――

 そのときでした。

――だれ?」

 襖(ふすま)の空いた隙間から、一つの裸体が浮かび上がる。オーミチャーは全裸状態だった。

「ひ、ひぇ! で、でたぁ――!」

 厚は真っ青になって、そう大声を上げた。みんなはびっくりして先に逃げました。それは、幽霊屋敷と同じような感じと言えばそこまで。しかし、厚君は微動だに出来ない。はて、金縛りにでもあったか?

「なぁにをしているのぅ?」

 その言葉づかいこそすべてを物語っていた。非常に気味が悪かったし、気持ち悪かった。厚はもう一度叫んだ。ひ、ひぇ――


第四章

 

 

 とうとう、オーミチャー作戦が失敗に終わると、なんだかぽかんと開いたスポンジのように少年探偵団はこころがふわふわとしていた。もはや、力が入らなかったのです。

 ――これから、どうする?

 団員の一人が訊いた。厚君は答えられなかった。

「そういえばさ、さいきん、あさりをとりに行ってないな。いくか?」

 この町の海岸線砂浜ではアサリがよく採れました。しかしながら、いつも味噌汁で食べているようなものだったから、みな、あまり興味を示しません。ちょうど、何かぽっかりとしたときや、存在を忘れたころに、ふらっとみんなで砂浜を穴掘りするのであります。あさりは、その程度の存在でしかなかった。あさりなど、何にも珍しくはなかったのです。

「まあ、行ってもいいけど」

 一人が答える。そのあとから次々と、皆、ガッテンしました。

 

 うみへとあるく。施設からスコップとバケツを持って。海岸線沿いへ行くには、ひとつ、大通りをまたがなければならなかったのですが、そこに丁度、大型スーパーがありました。少年探偵団の一行は、おもむろと道具を入り口付近に置いてから、中へと入った。心の中はお菓子泥棒のことでいっぱいでした。盗難です。いっちょ、あさりとりの時に食べるお菓子でも調達するか! そんな軽いノリだったのでしょう。

 しかしながら厚君は考えていた。僕はそんなことしたくはないやい! と。

 だって玲先生に叱られて、それでもっておっぱいを取り上げられちゃったら、ぼくちゃん、ちゃみちいもん! そんな子供じみたと言うか、実際にまだまだ子供だったわけですが、小学生にしては計算高いと言うべきか、厚は後の未来を考える側の冷静沈着人間だったものだから、盗難に関して、自分だけはお利巧ちゃんを演じました。だけども、実際には、盗難のほう助罪になることをしていたと言うのは言うまでもないことですが。

 

 きょうもいっぱしに少年探偵団らはお菓子を盗んで魅せた。あなたは怪盗ルパン? それとも二十八面相? もしくは運タマギルー? この運タマギルーについては、後々、語ることになるので、今は詳細を話さないでおきます。

 

 少年探偵団の一行はとにかくたくましかった。そんな少年らが青少年を演じられないのは、やはり、金銭的に乏しいと言う事と、家庭愛がなかったからでした。これについて、だれもが大人になってトラウマとして社会不安症に陥ったと言う事は言うまでもないことですが。

 

 施設の卒園生らはまともな職業につかなかった。ほとんどがやくざか売人かキャバクラか、ソープ嬢として東京へ行くことになる。じつはいうと、施設とやくざ組織は太いパイプでつながっていました。もちろん、右翼組織とも、です。必然的に卒園後の就職先はそれらに流されることになります。施設の紹介状で。これについて、非常に闇に包まれたことなのだが、これは真実として語っておかなければなりませんね。いつかは厚君も右翼かやくざになることが約束されているのです。嗚呼、なんということでしょう。かわいそうに、かわいそうに。まあ、この物語でその詳細を話してもしょうがないではありませんか。あくまでも少年探偵団の話を進めてまいりましょう。

 

 盗難作戦が終了して、海へと駆け出す少年探偵団。

 さてさて、着いた先は黒い砂浜です。それは相当な腐敗臭が立ち込めた海岸だった。浄水施設が完備されていない川から流された、ありとあらゆる下水の終着駅。ザ、地獄の三丁目。どぶ川の集合体。海、万歳! なしよ。のような、もうどうにもこうにも、この島の観光客には見せてはいけないこの荒んだ東海岸は、地元の人でも泳ぐことはなかった。

 いや、いることはいました。ロングボードのお兄さんあたりが。です。いつだったか、台風のさなかにどぶ川遊びをしている少年らが、非常に多量の雨水で水増ししたその川に流されたことがありました。救助したのはその際にロングボードを楽しんでいた青年らだった。のちに感謝状を贈られて、新聞にまで載ったほどでして。

 おにいさん、ありがとう! という見出しで。

 その少年を知っている少年探偵団らは吹いた。あいつながされてやんの――! 

 そう、じつはいうと、その際にどぶ川で遊んでいたのは、少年探偵団だったのです。あれは相当こっぴどく先生に叱られたものだった。

 しばらく外出は禁止です。厳罰――! 

 みんな拳骨を食らわされて頭を摩っていた。厚君も当然ながらげんこつを食らったのでした。そしてそのあとに、玲先生からおっぱいをもらうのである。ちゅうちゅう、と。

 先生、ごめんなちゃい……。ちゅうちゅう。

 いいのよ、厚君。ほら、もっと吸いなさい。はあん――! 

 乱れた関係は相変わらず健在でした。母子の関係なのか? 恋人の関係なのか? 愛人の関係なのか? そんなことはどうでもよかった。僕は玲先生が好きで、玲先生は僕が好き。それだけでいいんだい! 厚は今日もちゅくちゅくと玲の豊満な乳房をもみしだきながら、桃色でいやらしく勃起したの乳首をすっぷるのでした。

 

 翌週の日曜日も海へ繰り出す少年探偵団一行。

 はてさて、こんどはいったい何をするのでしょう?

 今日はボラ釣りな――

 そう、魚の外道、臭い臭いボラの釣りです。

 とくにこの地域のボラは酷いもんだった。なんといっても、水質からか? ぬめりからして臭い。そしてまた、はらわたをえぐって開けば、うんこのような臭いを放つ、真っ黒なヘドロしか出てこないのでした。あれは酷いというもの以上の臭さだった。釣り人達は、なにを楽しみにして釣りをしているのだろう? この辺はボラしかいないのに。そう考えても仕方がない。釣れればなんだって楽しいのです。我、愉快じゃ! それだけのはなしであった。

 

 さあさあ、仕掛けはどうする? 餌は? 

 金銭に乏しい少年探偵団は困った困った。困りすぎて首がねじ切れそうだったと言えば大げさかもしれませんが、それ位に少年らの知恵を絞りに絞った。作戦を練りに練りまくった。けっきょく、行き着いた答えは、釣具屋からの盗難作戦なのです。しかし、それには難関が待ち構えていた。とにかく店主が怖い。捕まればタダでは済まされないだろう。そしてなんといっても、店の小ささだった。

 店主が見渡せる小規模な店内は、盗難とは無縁とばかりに品々が欄烈している。それはそれで、盗難の、格好の餌食なのですが、どうにもこうにも、とにかく怖い。恐ろしくてたまらない。

 ――げんこつでは済まされないぞ! きっと、半殺しだぞ!

「もうこんなことするの、やめようよ……

 厚君は隊長らしからぬ小声でぼそりとつぶやいた。それがみんなの耳には調子よく響いたのでした。みんな、誰かがとめるのを待っていたのです。しめたものだと思ったに違いなかった。厚、よくぞ言ってくれた! 皆、そんな思いだった。今回の盗難作戦は、少年探偵団の一員が、つよがっていただけのはなしでした。

 

「ちぇっ! けっきょく、拾いものでかよ!」

 

 そう愚痴をこぼした少年探偵団が手にしたものは、海岸の道端に落ちている錆びた仕掛け針セットだった。完全なる拾いものです。富裕層によって捨てられた仕掛けなのであった。何とも腹立たしい。皮肉なものでした。

 そのサビキ釣りセットはハリスまでしかなくて、道糸などは当然ついていなかった。釣りをするには道糸とおもりが必要なのであります。それと浮きにおい用のえさだ。さあ、困った困った。いったいどうなってしまうのか? 次なるミッションも失敗で終わるのか?

「もういいから、熱帯魚釣ろうよ!」

 厚君が業を煮してそう発した。

「テトラのか?」

「うん」

「いいね! そうしよう、そうしよう!」

「やっぱり俺たちにはボラは必要ないってばよ! 熱帯魚、最高!」

「釣ろうぜ釣ろうぜ!」

 仲間たちが次々とガッテンしました。

 それを聞いて、厚は、ほっと肩をなでおろした。

 

 少年探偵団は黒の砂浜から奥の方へと延びる木工所連立とともにある堤防越しのテトラ群へと向かいました。このテトラ群は小型のテトラポットで組まれており、小学生でも難なく飛び跳ねたりだとか、飛び渡ったりだとか、下におりたり上ったりだとかが出来たのです。そのあいだに潮が打ち付けている。しかしながら、中の方には波は来なかった。であるからして、熱帯魚を釣るには間奥のテトラ岸を狙うのであります。そこなら道糸も必要なく、手を伸ばしてからハリスだけでサビキを垂らすことが出来た。

 熱帯魚は警戒心が弱く、逃げることをしないばかりか、嘘のように匂い餌を必要としなかったものだから、容易釣ることができました。まさに少年探偵団の、格好の餌食のようなものだった。

 そうれ! 釣れた!

 それじゃあ、おれも! そうれ!

 まだまだ! おいらだって、そうれ!

 少年探偵団一行がはしゃぎながら釣り勝負をしました。誰が一番釣ることができるのか、出来ないのか、只、それだけのゲームでした。釣れた熱帯魚はちゃんと逃がしてあげた。それだけがせめてもの情けのようなものであったと言えばかっこいいですが、只単に、食えたものではないし、陸にほっぽっても臭くなるだけで、次回来た時に自滅する可能性があるだけのはなしでありまして。少年というのは、生き物に対して冷酷で残酷なものなのです。それは何処の地域だとか、どこの国だとか、関係ない。みんな遊びなのである。こどもの内に道徳を学ぶと言うのは、そこら辺なのかもしれません。そうだ、そうにきまっている。しかしながら、本当のところは残酷さを目の当たりにしたこその、優しさの芽生えというのも、うなずける話ではあるわけなのですが。

 熱帯魚は何回も何回でもつれた。それもそうだろう。なにせ、逃がした魚が何度も何度も食いつくのだから、これはもはやループであってエンドレスのようなものだった。いや、もっとかっこよく言えば、ネバーエンディング、フィッシング、ストーリーだ。

 しかしながら、その発言はこの少年探偵団に限って不似合そのものであったし、肝心の隊長殿は、禁断の密談をしているではありませんか。もはや、この一団は乱れていた。淫らに乱れた不良学生の刺繍服のようなものでした。

 だが、そうでもなかった。ひと口にヤンキーと言っても、彼らはその類には入りませんでした。きわめて中性的で天然なのです。自然なのだ。施設に居るが故の必然です。かわいそうに、かわいそうに。

 

 さあさあ、少年探偵団一行も、そろそろ釣りが飽きてまいりましたよ。今度は何をしでかすのでしょうか? たのしみ、たのしみ。

 そのまえに、今日の昼下がりの密会でも話しておきましょうかね。そうですね、そうしましょう。そうしましょう。

 ほんじつも、なにやら先生部屋からちゅくちゅくといやらしい音が聞こえてきますよ。そう、玲先生と厚君ですよ。

 あいかわらず、二人の性交渉は終わりがないようです。めでたし、めでたし。いや、今終わっては困るではないか。そうそう、続きを話しましょう。

 ひどく勃起した桃色の乳首に、厚君は濃厚と舌を上手くからめて、玲先生を責めているようです。攻めに責めていた。そして、玲は、はあん! と思わず大声を発するではないか。

 いやん! どうしよう、わたし。どうにかなっちゃう――! 

 嗚呼、本当に淫乱な先生ですねえ。困ったものです。

「あ、厚君。手を伸ばして……

 そういうと、里美先生は厚君の片手を自身の股間へといざなった。厚はおもわず恥毛をつかむ。そして一本だけ引きちぎった。

「い、いたい! 嗚呼――!」

「せ、せんせい……

 そうか、ここの毛を抜くと先生は気持ちよくなるんだ? よし! もう一回だけ。

 ひきちぎる。

「だ、だめぇ! 嗚呼ぁ――!」

「せんせい――!」

 玲はサデイストでありマゾヒストでもありました。その言葉をまだ知らない厚君にとって、この表現はあまりにも官能的過ぎた。

 嗚呼、ぼく、あたまがおかしくなりそうだよ……。せ、ん、せ、い……

 厚君は何回でも何本でも恥毛を抜きまくりました。

「ひぃ! 逝くぅ――!」

 やがて、玲先生は潮を吹いて昇天した。絶頂の極みとなったのです。ハアハアと、まるで辱めを受けたかのようにうなだれる。それにかまうことなく、厚君は乳首をすっぷりつづけるのでした。

 今日の性体験もぐじゅぐじゅでしたねぇ。たいへん破廉恥ですよ、玲先生。厚君。さてさて、この二人の性交渉もやがておわり、今日という日は官能的と終えたわけですが、来週の日曜日は何を少年探偵団はしでかすのでしょうね? たのしみたのしみ。

 そうでした。このころには、木登りから骨を折った保君が少年探偵団に復帰しています。彼は厚君の親友みたいなものでして、また、副隊長みたいなものですが、この先この子の名前が出ることはあるのでしょうか? そこら辺も含めて、実に楽しみですねぇ。

 

 翌週の日曜日のことだった。

「芋ほりしようぜ――!」

 突飛な提案でした。思わず、みんなでそいつを見た。保だった。なにせ、退院したばかりの保のことです。その誰もが彼の提案に否定的とはならなかった。それが友情というものである。しかしながら、これがにっちもさっちもいきませんでした。なぜなら、近くに思い当たる芋畑がないのです。

 どこもかしこもサトウキビ畑ばかり。時々こじんまりとした趣味的な畑もあったことは確かなことですが、芋畑はそんなこじんまりとはできない。少なくとも、分かりやすく言えば、十畳ほどの規模は必要です。

 ない。そう言うのがないのだ。さあ、こまった、こまった。どうする少年探偵団。

「隣町に行ってみようぜ!」

 いいね――! 

 もしかしたらあるかもしれない、その芋畑を追い求めて千里の道を。なんてことは大げさですが、自転車も何もない少年探偵団にとって、隣町は遠すぎる冒険だった。しかも、地元意識の強い隣町のことだ。足を踏み入れた途端に、カマで襲い掛かってこないか心配でした。

「こわいな……。やっぱりやめようぜ」

 じゃあ、どうする――? 

 少年探偵団は考えた。無い知恵を絞りに絞りまくった。そして行き着いた答えが、山を越えてみよう! だった。山を越える? いやいや、そんな大したことではないですよ。一本道をね、ただまっすぐに上ってゆくだけでゴルフ場があり、またしても畑がある。その先は未知数だが、きっとあるさ。芋畑が。そんな簡単な単純話なまでです。さあ、いきましょう、いきましょう。野を越え、山を越え、ゆけゆけ少年探偵団。

 

 少年探偵団一行は、道端のススキをひっちぎって、その茎を歯の間にさしこんでは、粋な態度で歩いてゆきますよ。これはこれは、ドカベンのあの選手のようですねぇ。よくにていますよ、少年探偵団。みちはのらりくらりと、だがしかし、しっかり踏みつけて、緩い上り坂をゆっくりとゆっくりと歩いてゆきますよ。

 

 道中、のどがカラカラに乾いてきました。はて、どうしたものか。どうにもこうにも、にっちもさっちもいかなくなってまいりました。小銭は誰一人と手持ち合わせていない。これではたどり着く前にスルメイカになってしまう。たまらず少年探偵団は、道をそれて、小道の奥にある井戸端へとたどり着きました。

 さあて、飲むぞ、飲んでやる。そう意気込みまするが、汲み取り用のバケツがぶら下がっていなく、これまた万事休したとばかりに、少年探偵団は困り果ててしまいました。そして、べたーっとみんなして座り込むこと一分間。無言の辺りには、なにやら水の育む音が聞こえてくるではないか。湧水である。少年探偵団は水を得た魚のようにしてその場へと急ぎます。

 あった! あった!

 ようやく口いっぱいに、腹いっぱいに水分を補給すると、たちまち歩く気が失せてしまって、少年探偵団はとりあえず、帰ることにしましたとさ。なんてことはなく、ちゃんと歩きますよ。こうなったら走って峠を越してやる! そんな勢いあまるほどだった。

 

 山の頂上は、ゴルフ場でいうファールゾーンで、伸びたラフがボーボーに生い茂っておりまして、少年探偵団は、この先に道がないことを思い出す。さて、困った困った。そうでもなかった。

 もうひとつ、隣の方から道が下りに伸びている。そこが分岐点からの向こう側だった。良く見渡してみる。畑はあちらこちらに確認できました。あの中に芋畑はあるのかないのか。さて、どちらでしょうか。

 

 少年探偵団は山を下った。一つ一つの畑を確認しながら。

 やい、いもばたけ。どこにあるのだい、いもばたけ。ぼくは、はらぺこなきべそ。おまえをとっととくっちまうぞ。

 そんな即興の唄をこしらえたりなんかもしました。芋畑探検の旅、ここにありけり。我ら、少年探偵団。

 

 さて、とうとう芋畑は存在しました。あったのだ、みつけたのだ。それにはみんな大声を上げて歓喜の渦に巻き込まれたものだった。よかった、よかった。中にはおめでとう!と、他人事のようにして言うやつもいて、なんだかばか野郎!と厚君は言いたかったのだけれど、それを胸いっぱいに抑えました。とにかくうれしかった。うれしくてうれしくてしかたがなかったのです。

 そうれ! 芋掘るぞ。そうれ!

 そうか、道具がないものなぁ。そうれ!

 なんとかなるものさ。そうれ!

 少年探偵団一行は、掘り道具を持っていなかったものだから、皆、素手で、馬が土を蹴るようにして穴を掘りに掘りまくった。いもはあるのか、いもはないのか。どうなる、どうする。やれ、我先に。いやいや、我こそは。皆、競い合うようにして何処までも掘り進める。次第に芋畑は新しく開拓されたようにして滅茶苦茶に荒れ放題となりました。

 そしてとうとう芋にありついた。きれいな土だらけの紅イモである。少年探偵団は次々に宝のありかを掘り当てる。ワオ! ワオ! こんな時ばかり英語を発して、なんともかんとも、まるで児童でした。児童でしかなかった。

 少年探偵団は再びと水を得た魚のように、完全と元気を取り戻していた。芋を手で持てるだけとった。そしてさきほどの井戸場へと急いで戻る。そして、湧水できれいに土を落としてから、生のまんま紅イモに食らいつきました。かじりついた。途端、でんぷんの粉っぽさと紅イモ特有の甘さが口の中に溶け込んで、それはそれはしごく美味しかった。皆、喜んでいました。ほほえみながら今日の健闘をたたえあった。よかった、よかった。

 さて、それでも全部は生で食えません。いったいこの後どうしたでしょうか? それは、ちゃんと残りを持ち帰ってから、園内にある煉瓦作りのごみ焼却炉にて、ゴミを燃やしながら芋を焼いて食べたのでした。たき火しながらの焼き芋つくりは楽しいですよ。ええ、最高です。

 荘の先生たちには、畑の人からもらったのだと嘘をついたが、先生たちは何となく知っていました。だけれど、あえて黙っていたと言うか、あきれ返っていた。そうでもない。たくましく感じたのだった。

 芋泥棒なんかくらいで怒る県民はいなかったし、畑のものはみんなのものという感覚があったために、店で窃盗する類の感覚とは違ったのかもしれません。とにかく畑からの盗難は、大人は誰一人として注意しなかったし、大人たちも昔は同じようなことをしていたものだから、気持ちがよく解っていた。だから何も言わないのでした。

 翌週も同じ畑に芋とりに行ったのはいけなかったかもしれないが……。そのときは、畑の主にみつかり、こっぴどく叱られました。げんこつまで食らわされる始末で、もはや涙目しょうがなかった。しかしながら、畑の主はさいごに、畑の真ん中で焼き芋パーティーをしてくれて、結果的には最高の一日となりました。たのしかった。

 

 少年探偵団は帰りに紅イモをお土産としてもらい、持ち帰りました。彼らは同荘の幼児らにあげたら喜ぶのではと考えていたものだから、園に着いたとき、さっそく紅イモを給食センターで蒸かしてもらったのでした。それからそれから、ホクホクのまま、仲良くしている幼児に限り、紅イモをあげて食べさせた。幼児全員の分はなかったものだから、そうしたまでだった。ほんとうは仲がいいだとかそんなのは関係なく分け与えたかった。厚君はそれについて何やら閃いている様子だったものだから、保君が何を考えている? と訊いてみました。

 じつはな、庭の花壇で芋畑作ろうと思ってるんだ。そしたらもっとたくさん芋が手に入るだろ? 

 いいね! それ――! 

 仲良し二人組はそう盛り上がったのでした。

 後日、少年探偵団で秘密会議をする。今度は紅イモ作戦だ。と。

 

 荘の庭は結構な広さで、花壇と言っても畳三畳分はあった。それが二つある。商売ではない今回の作戦は、その広さだけあれば十分でした。

 さっそく給食センターの人に生の紅イモがないか尋ねてみる。畑からもらってきなさい。その一言で少年探偵団は再び山を越えることになった。

 

 我ら少年探偵団。ゆくぞ! 少年探偵団。

 

 山を越えて畑に着き、主から紅イモの切れ端をいくつかもらった。

 これを植えれば生えてくるよ。

 と言う事だったので、これで作戦は成功したようなものでした。そうではなかった。

 これからせっせと花壇を耕さなくてはならない。スコップで、みんなで。

 それに対して、皆、厭(いと)うた。耕すのは相当な労働になるからだ。

 何回か先生の言いつけで花壇を耕したことのある園児ならではの経験論だった。

 しかしながら厚の言う事は一理あるし、的を得ていた。そしてまた、彼は一応隊長だ。ここは大目に見て言う事を聞こうではないか。そうだ、そうだ! 

 そんなちょうしで少年探偵団は一丸となって畑仕事をせっせとするのでした。

 やれ、スコップ掘り掘り。宝物ほいっと、よいこらさ。それ、やれこらさったら、よいこらしょ。

 もちろん、少年探偵団が黙々と作業するわけがなく、ぶつぶつと文句を垂れ流したりだとか、うんこをしに行くと言ってひとまず逃げたりだとか、いろんな障害が厚君の前に立ちはだかっていました。

 それらを上手くかわしながら、うんこは畑にしろ。肥やしにしてやるぞ! などとはぐらかし、しまいには小便を畑に掛ける奴もいたわけですが、土には塩分もいいのだよ。と、心で思いとどまり、ようやく畑は完全と耕されたのだった。

 やったぞ、少年探偵団。

 やれやれ、やりました。お疲れ様です。

 

 さあさあ、紅イモのかけらもちゃんと植えておきましたよ。あとは水をたっぷりかけるだけです。

 さて、誰がする? 

 毎日誰が掛ける? 

 そんな口論となったが、それはひとくくりに厚君がすることで決着がついたのだった。一件落着。

 

 ところで、海にはもう釣りしに行かないのでしょうか? 行きます、行きますよ。

 

 少年探偵団はなんだか欲求がたまっていた。食える魚釣りたいな。と。

 それでは行きますか。遠出中の遠出。隣町の反対方向である、そのまた隣町ですよ。ええ、前の隣町は北方向でしたが、こんどの隣町はさらに東へと行きまする。海岸線を突き進むのです。それだけのはなしですよ。カマを持っている人間なんぞ、いやしません。その隣り町には集落がないので安全なのですよ。いるのは猫とイルカだけ。そんなしずかで平和なところです。さあ、行きましょうか。いっしょに。いきましょう、いきましょう。

 

 東の隣町の海岸線はテトラもなく堤防もなく、只々、岸際のリーフがずっと奥まで続いている様でしてね。そこのエッジでいろんなものが釣れるのですよ。海水は所変わればと言ってね、綺麗な透明でした。

 いよいよです。少年探偵団がその場所へと着きましたよ。さあ、釣り開始です。と、そのまえに、一つ気がかりなことがあります。それは、ことというよりもものでありまして、まあ、なんといいますか、リーフの上に小舟の船形が乗り上げていたのですね。それを見つけた少年探偵団は、一斉にして「こいつに乗ってつりをしよう!」となったわけです。本当に行き当たりばったりな釣り紀行であります。なんと無計画な。ですがね、それがたまらなく楽しいのですよ。さあ、乗りましょう。乗りましょう。

 

 船形は丁度いい塩梅で、少年探偵団の皆が乗れるだけの大きさあって、あとは耐久性なのですが、それはもう子供ですのでね。なんてことはなかったわけです。しかしながら、いざ、船形に乗って、ひとつふたつ手漕ぎしてみると、どんどん岸から離されていくではありませんか。それについて、最初のうちは何とも思っていなかったのですがね、やがて、十メートルくらい離れてくると漂流の危険を感じたわけです。もう戻れないのではないかと心配になってきました。

 さあ、戻ろう戻ろう。

 だけれど、漕いでも漕いでも戻れません。

 なんということでしょう。引き潮に流されてしまっていたのですね。

 さあ、大変なことになった。どうする少年探偵団。

 

「に、にげろ! ひんぎれぇ!」

 

 そう奇声を発して、一人が海飛び込みます。するとどうでしょうか? みんなたちまちに恐ろしくなって真似をしたのでした。

 どっぷんどっぷん。

 それはもう大騒ぎでした。中には泳げない奴もいたために、ことが次第に厄介なります。

 だ、だれか! たすけてぇ! 

 そこで、です。

 一つの海人(うみんちゅ)の乗ったサバニ舟が到着します。

 

 おい! 大丈夫か――? 

 

 少年探偵団は九死に一生を遂げたのでした。めでたし、めでたし。いや、まだ終わりませんよ。

 厚君は今日、玲先生にお仕置きされました。イタイイタイお仕置きです。

 そのお仕置きとは、おちんちんをかぶった皮を剥く作業だった。いわゆる、大人になっていくための避けては通れない行程だった。

 玲先生はとても興奮していました。よだれをたらして、それを指ですくってから厚のおちんちんの先へと塗りたくる。それからそれから、ゆっくりと男根を上下にしごきにしこるのでした。

「ああ……、せ、せんせい……

「厚君。せんせいはだあめ! お母さんて呼びなさい

「お、おかあさん……

 はあはあはあと二人は官能的と興奮してゆく。実に乱れた行為だった。

 玲お母さんは、それじゃあ、舐めてあげるわね とだけ言うと、長い黒髪をゴムで結んでから、唇をとんがらかして厚君の男根へと近づく。

 

 せ、せんせい――

 

 もはや快楽の世界でした。厚君は玲の一舐めで逝ってしまった。

 生まれて初めての経験でした。

 おちんちんの先がビンビンとして強縮しており、なんだかジンジンとして痛かった。もちろん、まだ、精子の出る年ごろではなかったために、厚は何が何やら訳が分からなかった。

 玲お母さんが「逝ったのね?」と訊いても、なんて答えればよいのか? 答えを探せずにいたものだから、玲は「もう、じれったい子ね うふふ」と失笑するのでした。

 今日はここまでですよ。今後が楽しみですねぇ。

 


第五章

 

 

 はあん……。そ、それで、あつしくん。どうするの? 嗚呼――! 

 今日も淫らに乱れておりますよ。厚君が玲先生の乳首をしゃぶりにしゃぶっているのです。舌で転がして、またすっぷって。嫌らしい音が部屋中に響いていますね。

 さて、その相談というのが、秘密基地を作りたいと言う旨のものだったものだから、なにやら玲おかあさんは嫌な予感がしておりまして、それはそれは厚のはなしに対して注意深く耳に入れるのでした。もちろん、官能的と浸りながらですがね。

 

「厚! そろそろいいだろ?」

 

 少年探偵団の一人が畑の前でそう言った。うむ、そろそろ収穫時ですか。そうでした、もう季節はすっかりと秋口です。

 厚君は葉っぱの色で判断できるほど勤勉だった。まだ早いかなぁ……。そうつぶやくと、まて、みんな。あと一ヶ月くらい様子を見ようと返したのでした。少年探偵団はスコップで掘る準備をしていたものだから、えぇ――! と、一斉にぼやくのでした。

 

 そのまえに――

 

 厚隊長は、秘密基地建設の話を切り出す。皆、大声を上げて、喜んだものだった。

 そうだよな、秘密基地必要だよな! 

 なんでもっと早く気が付かなかったんだ? 

 少年探偵団は阿呆(あほう)少年ばかりで、どうにもこうにも、すったもんだでして。しかしながら、それが団結力というものを確固たるものにしていたと言えばそこまででした。

 

 おっ、俺たち少年探偵団 秘密基地きち、秘密基地――♪”

 

 いつもの山は運玉森(うんたまもり)と言って、沖縄戦激戦区のひとつでした。いまはすっかり長い雑草が生い茂っておりまして、畑以外にあるといえばその森林ばかりで、かつ、施設の隣からその森はあったものだから、少年探偵団はまよわずそこ秘密基地を作ることとしたのでした。

 はて、しかしながらどうしようか? ああしようか? などとほざきながら、少年探偵団は森の中をくぐっていきますよ。

 森の中にはトンネル状のけもの道がいくつかあり、それはススキの伸びた雑草からなっていた。おそらく、獣がいるに違いない。

 きっと、いのししだぞ! 

 捕まえて食べてしまおうか? 

 そうだ! そうしよう! 

 まてまて、まずは秘密基地からだ。話が早すぎる。

 そうこうしているうちに、けもの道の先がなんだか開かれたような広い場所に着きます。

 おお! 此処こそは――! 

 などと、少年探偵団は歓喜に満ちるのでした。

 

 さあさあ、場所はもう決まったようなものだ。基地というからには寝どこもなくては格好がつかないではないか。少年探偵団は施設内の幽霊屋敷一角にある鍵の開いた古びた寝室から敷布団をちょろまか。しかし、どうにもこうにも、けもの道は入口が小さいトンネル状です。さあ、困った困った。

 しかたなく、けもの道の入口あたりを休憩所として定め、あの広い場所はたき火場にすることとしました。たき火場と言ってもトンネルの中ですから、頭上はススキの種綿がひらひらとしているため、火遊びするには大変危険でした。しかし、少年探偵団はあほう連中ですから、そんなことは一切考えていなかったのです。さてさて、なんだか山火事の匂いがしてきましたね。胡散臭い話です。恐ろしい恐ろしい。

 

――それで? 火をつけたの? はあん!」

 

 今日の玲先生も非常に淫らだった。淫乱女教師だ。淫乱女王様だ。淫乱……。厚君はぶつぶつと独り言をつぶやいた。なあに? 厚君 嗚呼――

「火をつけたいのなら、おかあさんにしなさい

 ふと、玲は、ほくそえむ。

「え――?」

 訳が分からない厚。そのときだった。

 玲お母さんが立ち上がって全裸になるではないか。その裸体の曲線美に、あの日観た玲先生のことを思い出す厚君だった。たしかあのとき、あんなことや、こんなことを……

 厚になんだかこわばりのような震えが起こる。こ、こわいよう! と。

 それは気のせいではなかった。玲先生ははだかのままで横たわり、手を伸ばして隣接するデスクからマッチ箱をとった。

「さあ、これで私を、せ、め、て うふふ

「え――?」

「だ、か、ら、火遊びよ 先生の淫毛に火をつけるの すてきでしょ?」

「淫毛……?」

「こ、こ、よ

 指さす方向は、玲お母さんの恥部に生えたふわふわの恥毛だった。玲はそれに手をやると、しゅっとひとなでし、恥毛をゆらゆらと動かしてみせた。嗚呼、なんて助平な淫乱女なのでしょう。

 厚君は言われるがままにマッチに火をつけてから玲先生の恥部にそれを近づけた。ちりちりと音を立てる。すると、とつぜん、火が起こった。めらめらと恥毛の上に炎が揺らぐ。

「嗚呼! あついぃぃぃ――!」

「せ、せんせい!」

「だめぇ! けさないでぇ! かんじるのぉ! 嗚呼――!」

 次の瞬間、玲お母さんは失禁した。びしょびしょに。湖のほとりのように。吹いた潮のようにして、黄色く透明な聖水をこれでもかと放出したのだった。それを見ていた厚君は、只々、失神してしまいそうなほどに絶頂していた。もはや破壊的なる官能劇だった。

 

 もうぼく、おかしくなりそうだよ。ああ……

 

 玲お母さんは、濡れた秘部に指をからめては、さっと恥毛の火を消した。ちりちりに焼け焦げた恥毛はただ恥ずかしそうにして短く萎れていた。その皮膚は赤い。彼女は厚君に先生の火傷した場所を舌でなめて綺麗にして。とだけ言いました。厚は従った。

「せ、せんせい。玲おかあさん……。ぼく、こわいよう……!」

「だいじょうぶよ。だいじょうぶ。ほら、ここへきなさい。もういちど乳首を舐めて」

 そして厚君はふたたびおっぱいにしゃぶりついた。舌でからめに絡めた桃色の乳首が甲高く絶頂的に勃起していた。固かった。これほどにない硬さだった。

 

「さあ、おねんねしましょうね」

 

 玲お母さんはそういうと、ベッドに横たわって厚君を横に寝そべらした。厚は寝た。元々意識がもうろうとしていたために、意識を失うのに時間を必要としなかった。寝た。寝た。

 

 さて、少年探偵団のアジトはどこまで完成したでしょうか? はてはて、ベッドは天井がなくともよいのですかな? 雨が降ればびしょ濡れですよ。さあ、こまったこまった。厚君は考えます。だけれども答えは出ません。

「寝床はあきらめるか……

 そのときだった。

「たてにはこぼうぜ! 縦――!」

 ああ! なるほど! とおもった。かなりの名案である。トンネル状のけもの道は、ススキからできている。つまり、天井はあってないようなものだ。360°つながっているわけではなかった。天井はススキの種綿だ。縦ならば通せる。よかったじゃありませんか! めでたし、めでたし。

 さあさあ、隊長室に運びますよ。このベッドは後々厚君のものになります。であるからして、ベッドを運ぶには、隊長の厚君が一番頑張らなければなりません。しかしながら、みんなの協力あってこそです。よいこらしょ、どっこらしょ。さあさあ、とうとう着きました。隊長室です。

 

「隊長室はみんなのものな――!」

 

 一人が発する。そうだ、そうだ! 皆ガッテンした。仕方がありませんね。独占はあきらめましょう、厚君。それとも、占拠して、玲先生といけないお遊びでもする予定だったのでしょうか? そんなことはないない。

 

 さあて、少年探偵団が次に起こした行動は何でしょうか? それは、かまど作りです。横穴を掘りに掘りまくるのですよ。それでピザを焼く竈のようなものをこしらえるわけです。それがうまくいきました。この辺りは粘土でできておりましてね、土質がですよ。沖縄県と言えば、赤土が有名なのですが、粘土も有名なのです。あと、セメント土ですね。おおいですよ。さてさて、できあがりできあがり。

 

 ふと、火をなにで起こそうかと相談し合います。園児には火遊びがご法度で、火のつくものは何でも取扱い禁止なのです。それを破ればイタイイタイお仕置きです。特に厚君の場合、玲先生にもお仕置きされてしまいます。しかしながら、もはや玲先生との火遊びは経験済みで、あの時のちりちり恥毛のにいがまだまだ彼の脳裏にこびりついておりました。

 嗚呼、あれは最高に刺激的だった、と。そんなことは考えません。只々、どんどんおかしくなっていく玲先生が怖かったのですよ。厚君は。

 まあ、火はいいや! 水溜めようぜ。イモリ飼おう。みんなで。

 いいね――

 少年探偵団のみんなは、こんどは縦に穴を掘りますよ。それでもあまり深い穴は掘れませんでした。土が固いのです。参った参った。そうでもなかった。ある程度、水が池のようになれば結構なのですよ、イモリはね。それで充分です。

 

 皆、いつの間にか泥んこになっております。穴を掘りに掘りまくって洋服も何もかも泥だらけになっていて、かつ、靴の底まで泥がくっついてうまく歩けないではないか。重たいのです、滑るのです。けもの道は平たんではありませんからね。坂道、下りざか、カーブに、落とし穴に、色々あるのです。靴が滑ると言う事は、つまり、けがの恐れがあると言う事でもありました。さあさあ、たいへんだ。これはまずいぞ少年探偵団。

 しかし、まあ、なんということでしょう。少年探偵団はそれを逆手にとって、傾斜を泥んこ滑り台にして遊び道具にしてしまうではありませんか。これにはさすがの厚君も大はしゃぎでした。

「なあ、運タマギルーって知ってるか?」

「なんだ、それ? おいしいのか?」

「ちがうよ! 人だよ人!」

「もしくは妖怪!」

「運タマギルーってよ、長い滑り台持ってるんだってよ! すげえだろ?」

「カマも持ってるんだぜ! 人の肉切り刻んで食べてるんだってよ!」

「ちがうよ! 運タマギルーは山賊だよ! 山賊!」

「そうだそうだ! 人の肉食う山賊な!」

こえぇ!(皆そろって)

 厚君は運タマギルーについて何も知らなかったものだから、後日、図書館でそれに関連する書物を読んでいた。絵本から、童話から、昔話から。すると続々情報が出てきた。今ではすっかり運タマギルーマニアである。そう言うにふさわしいほど知識を身につけていた。

 一応、確認のために玲先生にも聞いてみる。

 そうよ、怪盗ルパンというか、江戸時代の言うなれば五右衛門ね。

 そうか! 沖縄版の五右衛門か――

 厚君は、少年探偵団に運タマギルーを説明するには、この五右衛門のたとえ話こそ、簡単で伝わりやすいと踏んでいた。皆、運タマギルーは知らなくとも五右衛門ならご存知であったからだ。

「山賊ではなくて、盗賊な!」

「何の違いだ? よくわかんねえよ!」

 あほうたりんの少年探偵団は山賊と盗賊の区別もつかないほど学問に対しておとかった。いや、しかしながら、あほたりんこそ男の勲章だとも思っていたし、何も恥ずかしく感じなかったものだから、不思議な時代だった。

 運タマギルーって、昔話だろ? 今もいるのか? 

 などとは誰も言わなかった。

 運タマギルーは、この山のどこかに必ずいるのだ。そう思っていたし、大人のだれもがそう話していた。これは、子供たちが森の奥に入り込んで迷子になるのを抑制する観点から、だった。ほんとうは童話の世界のはなしだと言う事をちゃんと知ったうえでの教訓みたいなものであった。運タマギルーは人の肉を食らうカマを持った盗賊。だと、そう教え込んでいたし、地元の大人たちもそうして育ってきた。それが知恵なのである。

「よし! みんなで運タマギルーを捕まえようぜ!」

「うん! でも、人の肉食うんだぜ? どうする? カマだぞカマ!」

 

 ひえぇ! 

 

 おそろしいはなしです。研ぎに研ぎ澄まされたカマで首をぎっちょんにして、それからそれからアバラからソーキソバを作って平らげる。内臓はこてっちゃんときた。とてもとても恐ろしい話です。さて、どうしましょうか? どうなる少年探偵団。

「ひ、ひんぎれー(に、にげろ)!」

 運タマギルーも何も来ていないのに、少年探偵団は恐ろしくなって秘密基地から一目散に逃げかえります。

 もう行きたくないな! 

 うん! 

 秘密基地やめようぜ! 

 うん! 

 そうだ! そうだ! 

 しかしながら後には引けませんでした。秘密基地は楽しいのです。

「と、とりあえず、運タマギルーは無しな!」

「う、うん……

 それでは皆でイモリを捕りに行きま。掘った穴に飼うためですよ。それからそれから、水も必要ですね。ため池の方へと伺いますよ。そこには丁度良い具合の水のみならず、イモリも生息しておりましてね。近場なものだから労力的にもたすかります。

 

 はてさて、ため池へ行ってみてびっくらポン。そこでシンナー遊びをしている中学生連中がいるではないか。これは危ない危ない。

 少年探偵団はしぶしぶ秘密基地へと戻りました。

 やばいな、あの中学生連中に秘密基地ばれたら使われるぞ? 

 場所移動か? 

 などと相談し合いました。そうですよ! またけもの道を探せばよいのです。

 もっと山の頂上付近にでも参りましょうか。

 少年探偵団はあたらしい秘密基地を作るべく、けもの道を求めて山の中を登っていきますよ。なあに、ばねのベッドはあとからでも移動しましょうね。そうしましょう、そうしましょう。

 しかしまあ、なんということでしょう。登ってもくぐってもけもの道はないではないか。あれ?潜ってますね。そうです! 今まさにトンネルのなかなのですよ。それに気づいたあほたりん少年探偵団一行。さあさあ、もっと奥へと参るぞよ! ついて参れ。厚君は上々気分で言いました。なにをえらそうにっ!

 

 着いた先は中学生連中の場所からかなり遠いです。ここならあいつらもこないだろう。一安心一安心。

 そうれ! 穴掘るぞ。わっしょい! わっしょい! 

 少年探偵団は適当に場所を定めてから竈を即席で作りました。芋パーティーが楽しみだなぁ。そう発しながら作業ははかどります。そうだ! ベッドも持ってこないとなぁ。つかれるぅ! それもそうですよね。ベッドはあきらめますか。

 

 さてさて、いよいよイモリを捕まえに行きますよ。あの川で、です。そう源流ですよ。

 もう山の頂上付近に秘密基地はあったので、そこは近いです。そんなに離れてはいませんでした。

 ついでにエビもこさえてエビの素焼きでもして食べるか? などとも相談しましたが、まだ火種の準備ができておりません。それは厚君の担当でした。玲先生からマッチをもらうのです。あの恥毛をちりちりに焼いたマッチ箱ですよ。なんて破廉恥な! しかしながら、他の少年探偵団がそれを知る由もありません。玲先生と厚君の密会はこうして秘密結社を保ったのです。厚君は口が堅いですからね。いや、そうでなくとも誰にも言えやしませんよ。そんな年ごろでした。

 

 イモリは簡単に捕獲できました。それを持ち寄ってつくり池にほうります。そして適当に拾った1.5リットルのペットボトル水を飲ませたやつを注ぐ。ほうら、立派なため池の完成です。そうではなかった。

 なんとまあ、どういうことでしょう。水が、ため池用の水が、注ぐとともにどんどん土の中に吸収されていくではありませんか。そこまでは考えてなかったあほうたりん少年探偵団はびっくらぽん。

 そうれ、そうれ、どんどん水を注ぎますが、とうとう断念しました。少年探偵団はじまって以来の作戦大失敗です。何とも情けない。あほたりん少年探偵団、無念です。

 今日のところは、これぐらいにして帰りますか。そうだな、そうしよう。イモリをそのままに、一団はそそくさと施設へと戻りました。やれやれ、今日も楽しかったですねぇ。無事が何よりです。

 

 後日、少年探偵団はタンク場へと集まりました。ここに集合するのは久しぶりです。なにせ平日ですからね。すぐにホームへと戻れる場所でミーティングをしたかったのですよ。タンク広場は施設の球場にも近いですからね。平日は施設対抗の野球試合のために、園児は皆、今週から日が暮れるまで野球練習をしていました。その帰りに行ったのです。

 イモリはもういいだろ? ほかのことしようぜ。

 運タマギルー探しはいつやる? 楽しみなんだけど!

 でもこわいよな……。あの森は不良中学生もいるし。

 けど、秘密基地はやめられないものな。

 じゃあさ、運タマギルーと友達になって、それで不良中学生追っ払おうよ!

 いいね!

 さあ、少年探偵団の運タマギルー作戦の開始ですよ。

 まずは、運タマギルーを探さなくてはなりません。これはまさに探偵団の仕事さながらです。ようやく久しぶりに探偵らしいことをするわけです。すっかり忘れていましたね。そう考える厚君でした。

 

 最近では、野球練習のために、なかなか玲先生との時間が作れません。さあて、こまったこまった。厚君にはおっぱいがなければ生きていけないのです。

 おかあさん、おっぱいのみたいよう! ちゅうちゅう 

 まあ! ほんとうにこまったちゃんね ほうれ、ここにあなたの大好きなミルクがあるわよ。こっちにきなさい。

 嗚呼、おかあさん。玲先生……。玲おかあさぁん! 

 ハアハアと目を覚ます厚君。どうやら夢だったようです。今夜も夢の中で玲先生が出てきていたのですね。それくらいに欲求がたまってまいりましたよ。どうする厚。

 

 厚君はとうとう野球練習から抜け出しました。見つかれば尻バットが待っています。先輩からのイタイイタイお仕置きです。彼はそれでもかまいませんでした。いますぐにでも玲先生からご褒美がほしかったのです。

 

「玲先生、マッチ箱がほしいよう……

 

 くちゅくちゅと乳首をすっぷりながら厚君は言った。

 玲は承知してくれた。きをつけてね。とだけ添えて。

 

 さあさあ、いよいよ秘密基地にて芋パーティーでしょうか? その前に不良中学生を退治しなくてはなりませんね。しかしながら、運タマギルーと友達になるには、焼き芋が必須です。それを餌にしておびき寄せるのですよ、秘密基地に。それからそれから一緒に芋パーティーをするわけです。

 これで来なかったらどうしよう? などとは考えてもみませんでした。

 絶対にくる! そう信じて疑わなかったのです。

 

 作戦は失敗に終わりました。芋が小さかったのでしょうね。まだまだ収穫時ではありませんでした。

 あと一か月待てって言ったのに、いうこと聞かないからだ! 

 隊長の厚君はそう怒鳴りつけましたが、どうどうと保君が押さえつけたのでした。

 あれれ? どうやら山火事は起きなかったようですね。心配ご無用でしたか。シンナー中学生も来やしませんでした。彼らはシンナーの夢心地の中にいて歩く気配もないのです。

 なんだ、心配することなんか一つもなかったんだよ。保君が言いました。でも、運タマギルーには会いたいなぁ。隊員の一人がつぶやきます。そうですね、運タマギルーにはぜひとも会おうではありませんか。さあ、行きますよ。少年探偵団。

 

 少年探偵団一行はけもの道のあちこちを探して回ります。

 やい、運タマギルー出ておいで 出てこないならげんこつするぞ 

 と合唱しながら。

 すると、どうでしょう? 向こうの影からガサガサと音が聞こえます。

 

 ひっ! ひぇ! 

 

 一人がとつぜん、小便を漏らします。あまりにも恐ろしかったのでしょう。それもそうです。そこから出てきたのは紛れもなく運タマギルーだったのですから。

 運タマギルーは股間から血をダッーと流しており、それはもう相当恐ろしいものでした。羽織る着物は帯がはだけて胸元が見えます。おっぱいの付いた女でした。

 髪はぼさぼさで顔色がうかがえません。これではまるで幽霊ですよ。

 

 ひっ! ひえっ――

 

「ひ、ひんぎれー(に、逃げろー!)!」

 うわーっとみんな一目散に獣道を戻ります。中にはつまずいて転倒する者もいましたし、石に蹴り転んだりしていましたが、厚君は大丈夫でした。

「きえぇー!」

 運タマギルーは奇声を上げながらカマを持って追いかけてきます。本当に殺されて食べられるかと思いました。大変恐ろしかったというレベルの問題ではなかったのです。

 少年探偵団は死ぬ気で森を脱出しました。後ろを振り返りますと、運タマギルーはいませんでした。途中、芋をほっぽったところでむしゃむしゃと拾い食いでもしていたのでしょうね。芋は運タマギルーの好物ですから。

 やれやれ、どうやら秘密基地もあきらめるしかなさそうですねぇ。しかし、そうではなかった。問題は、ヤンキー中学生なのですから。運タマギルーと友達にならなくてはなりません。さあ、どうしましょうか?

 芋をもっとこさえなければならぬな。そうだそうだ! もっとこさえよう。でも、だけれど、芋畑の芋はまだ小さいです。そうかそうか、また山こえて大きな芋ほりに行くしかないなぁ。そうだな。それしかないな。少年探偵団は一致団結しました。むかえ! 山の彼方の芋畑へ! いざ、われら少年探偵団。

 

 一山とっとこさと登る一団は子供たち。その子供たちを眺めて平和だなと感じる畑民。サトウキビも刈り入れ時を終えておりまして、ひとつもキビ団子のごちそうにはありつけません。そもそもキビ団子というものは沖縄の郷土菓子ではない。こちとら沖縄ポーポー、おじいおばあの言うところのちんびんミックスですから。ちんびんミックスとは、ちんびん(ポーポー菓子)の粉末で、各々と小麦粉をミックスしていることからミックスと付いた沖縄製粉株式会社の商品でありましてな。これがまたおいしいのですよ。余談でしたね、すみません。

 

 少年探偵団一行は飲み食いせずに畑へたどり着きました。

 おや、今日は畑の主がおらぬな? 

 よし、ひとつ芋泥棒をしてみせようではないか! 

 そうだ! そうだ! 

 少年探偵団は芋掘れさっさとあちこちに穴を掘りまくります。

 採れた大きな紅イモをこさえて帰りますよ。

 さあて、畑の主は本当に来なかったな。

 そうだな。

 なんだか拍子抜けだよ。

 そうだそうだ。

 彼らは何だかさびしい気がしました。もしかして病気で倒れたのかな? そんなことも考える始末でどうにもなりません。

 よし、明日もこよう。そして芋泥棒しました御免なさいって謝るんだ。

 え? 来週の日曜日にしようよ。

 いやいや、今度の日曜は芋パーティーだ。それまでこの芋をどこに隠すか相談しようぜ。そうだな。そいつはいい。

 まあ、芋泥棒のことなど考えやしないだろ、あのハゲ親父も。

 そうそう、そういうこと。

 なんだか少年探偵団はすれてますと言うか、なかなか真面目ではありません。きわめて不真面目ですから。しかしながら、どこかこう、童心があっていいですよね

 そうだ、そうだ! 俺たち少年探偵団 いけいけ芋を泥棒だい

 

 翌週の日曜日のことです。

 少年探偵団は予定通り秘密基地にて芋パーティーの準備をしていますよ。穴を掘った窯に新聞紙と小枝と芋を放り投げて火を起こします。

 最初の内は大成功でした。煙はもくもくと立ち込めています。目が痛いだのくしゃみが止まらないだの、いろいろとありましたが、なんとか半分は焼けました。半生というやつです。

 しょうがねえなぁ、もうちょっと太い枝持ってくるか。

 少年探偵団は二手に分かれて薪木を探しに参ります。片方は施設のタンク場付近の森の中へ。もう一片方は海岸沿いの木工所付近へ。厚君は海岸隊へとまじっていました。保君も一緒ですよ。

 

 おもむろに薪を拾っていると、保のやつが材木の先に落ちていたサビキ餌を付けて釣りをしようぜと言いました。厚君は否定的でしたが、その他のメンバーが言うことを聞きません。けっきょく、保の味方へと付くばかりで、どうにもこうにも薪ひろいは後回しになってしまいました

 今日も熱帯魚が良く釣れるなぁ。でも食えないし、どうしようもないな。

 なんてぶつぶついっておりますと、厚君はなんだか運玉森を眺めたくなりました。

 するとどうでしょう? 

 丁度、秘密基地の方から火が見えるではありませんか。

 片方のメンバーだな? 

 彼はそう思います。なぜなら、いったん火は消してからここに来たからです。火が起こっていると言う事は帰ってきたと言う証拠でもありました。

 おおい、みんな。もう一班が戻ってきてるみたいだぞ。俺たちもそろそろ戻ろう。

 厚君はそう言って、皆に、山の方へと顔を向けさせました。

 あれ? なんか、火、おかしくないか? 

 一人がつぶやきます。そうです、炎がさきほどよりも、どんどん大きくなっているのです。咄嗟にメンバーは、いいました。

 

 山火事だ――

 

 これは大変なことになったと厚君は思いました。そのまえに、もう一つのメンバーは大丈夫か? 必死に考えたのです。

 

 まさかっ――

 

 そのまさかだった。

 もう一方の班が火事に巻き込まれたのだ。

 くるしいよう……。くるしいよう……。嗚呼! 熱い! 熱いよう! たすけてぇ! しぬぅ! 

 彼らの悲鳴が聞こえてきそうなくらいに大きな炎は天宙めがけてめらめらと燃え盛っている。

 

 もうだめだ――! 嗚呼……

 

 厚君は頭が真っ白になった。そうではなかった。

 実はいうと、もう一方の少年探偵団は無事だった。なんとかけむに巻かれるまえに避難していたのだ。からくも脱出していた。

 よかった、おまえら、よかった。ほんとうに、よかった。

 厚君はそうつぶやいて天を仰いだのだった。

――運タマギルーは?」

 そうだった。あの森には運タマギルーとシンナー中学生がいる。果たしてどうなったのだろうか? 皆、どんどん心配になった。

 とりあえず、森の入り口に行ってみよう! 保が閃いたようにして言う。

 うん、そうだな。

 皆は相槌を打った。

 少年探偵団はそろって森の入り口へと行きました。

 中学生は避難後、警察に補導されていました。運タマギルーは出てきていませんでした。

 嗚呼、運タマギルー。死んだのか? それはないだろ! くそっ! くそっ! くそったれ! 

 そのときでした。

 燃えさかる森の向こうから「きえぇぇぇ!」と声が響いて届くのです。

 運タマギルーだ! 

 いまのこえ、場所的に隣町だよな? 

 そこまでは消防隊によって火が回っておりません。

 運タマギルーよ、無事だったか。よかった……

 少年探偵団はホッと肩をなでおろしたのでした。

 



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