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6回1安打無失点4奪三振1四球、68球でなぜ降板

田中好投でリーグ優勝決定シリーズ第1戦に勝利

61安打無失点4奪三振1四球、68球でなぜ降板

 

 レギュラーシーズンでも、球数も少なく、最小失点で抑えており、まだ行けるではないか、という5回、6回で早々降板という場面は珍しくもなかった。

 理由は明快で、信頼されていないのである。7回、8回まで続投させても抑えてくれると見通せないのである。アストロズのジャスティン・バーランダーやとゲリット・コールほどの力量を認められていないということだ。 無理からぬことではある。

 日本のスポーツ紙はそんな細かいことなど気にしない。 

68球という球数で降板した事について?
「大事なのは球数ではないと思います。なのでサプライズというか、驚きというか、交代に対しては特に思うことはないですかね」(マー君、68球で降板も「大事なのは球数ではない」、サンスポ、10.13)

 この件は更に続くと思いきや、これで終わって、さあ、次の話題。

「プレーオフキャリアの防御率1・32という数字を出せている喜びはあるか?」(同上)

 に移るのである。

 彼我の野球の水準の差はさほど大きいとは思わないが、野球報道の水準の差は、スポーツ報道の世界に革命をもたらさない限り、絶望的なほど大きい。何を革命せねばならないか。記者選考方法を革命せねばならないということだ。現在の記者連中の能力は決定的に不足しているということである。

 田中に対する信頼のなさの、田中には力量が不足していると判断する根拠はどんな点にあるのか。

 田中の好投でヤンキーズ勝利を報じるニューヨーク・タイムズの約二千九百語の長文記事は、相当部分が記事自動生成ソフトで出来上がるはずだから、傍が気遣うほどの手間はかかっていない。How the Yankees Won Game 1 of the A.L.C.S.(By James Wagner and David Waldstein、nytimes.com、2019.10.13)は6回1安打無失点4奪三振1四球、68球で降板の合理的理由を明快に説明している。

 田中の場合、三順目の打席になると、打たれる可能性が高まる。三順目の被打率は.309となり、相手チームの出塁率プラス長打率(on-base plus slugging percentage)(略称OPS)は.943となる。ほぼ完全に抑えている試合でも7回には、安打や四球で塁を埋めることの多い試合では4回や5回で三順目になる場合もある。

 6回1安打無失点4奪三振1四球、68球で降板という アーロン・ブーン監督の判断には合理的根拠があったのである。 

(了)


この本の内容は以上です。


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