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 クルマ離れ、タバコ離れ、酒離れ、若者はまったくハングリー精神が無い。

 餓えの時代を知らないからだと旧世代は言う。金がないからだと若者は反論する。

 二〇世紀末、恐怖の大王は降ってこなかった。青春と呼ぶべき時代に餓えた記憶はないが、就職氷河期が到来、華やかに散財をした覚えはない。酒は呑んだが、タバコはやらない。免許は取ったが、クルマを持つことはなかった。あの頃の旧世代は、若者にどんな文句をつけていたろうか。何かしらのいちゃもんをつけられていた気はするが、差ほど気にはしていなかった。

「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」

 狂った若者もいる。戦後は七〇年以上が過ぎ、退屈やマンネリを打破する聖なるものが欲しくてたまらない。誰かが善としたハングリー精神かしらん。これを勝ち組と呼ぶのかしらん。

 資本主義社会を加速させるエンジンとして、国家が戦争へのアクセルをベタ踏みする。破壊活動は経済を回す上でとても効率がいいから。砂場でトンネル山を造ってミニカーを通していた頃から身についている。

 格差社会の中であってもマイカーは珍しいものでない。壊さなければ需要は産まれない。効率よく壊すツールこそが何より経済を回す起爆剤。ニトログリセリンよりは核兵器。格差社会の勝ち組はカタログがなければ自分のニーズも分からない。金を払えば一時の満足は手に入る。本当は有り余る便利にうんざりしている。たくさんぶっ壊して本物のニーズを見せてくれ。

 狂った社会に一石を投じる若者が現れた。彼女の名前は「明るく素晴らしい未来を楽しみにしているとても幸せな少女」またの名を「優しいが情報に乏しいティーンエージャー」。旧世代の身勝手な行動により事象の地平線が見え始めている。愛されるべき子供たちは破滅に追い込まれていく。

「人々のあきらめ、じゃないですかね」

 怖いものは何かと問われ、二〇秒ほど考えてから、聡明なプロフェッショナルは答えた。あんたに期待はしていない。どうでもいい。どんな場所に立つニンゲンであれ、そうなってしまったら、その立場を誇示する意味はない。

 将来を傍観せず、システムに巻き込まれず、戦争の魅力に抗いつづける。あと一〇年。なにもしないで地平線の向こうに消えてなくなるか。


この本の内容は以上です。


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