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「出自・朝鮮半島」は汚点なのか

 

「出自・朝鮮半島」は汚点なのか

 

プロ野球史上最高の投手と言って過言ではない金田正一の訃報は、日本では朝鮮半島に出自を持つことが秘匿されるべき情報であることを改めて痛切に知らしめてくれた。《嫌韓》という雰囲気があるとすれば、その根っこらしきもの・淵源は昨日や今日に尋ねるべきものではないことを暗示してもくれた。

  

他方、打者の日本記録の多くを独占する王貞治は出自どころか国籍が台湾であることも周知の事実であり、本人も隠していない。殊更に報道されることはないが、殊更に隠されているわけでもない。

 

日本の報道では金田が韓国系日本人であることは全く報じられなかった。

 

代表的報道。

 「プロ野球で歴代最多の400勝を達成し、ロッテで監督も務めた金田正一(かねだ・まさいち)さんが6日午前4時38分、急性胆管炎による敗血症のため都内の病院で死去した。」(hochi.news, 19.10.07)

 

japantimesMainichi Japan(Kyodo)も右に倣え。共同(Kyodo)の記事を掲載した。

 

"Japanese baseball Hall of Fame pitcher Masaichi Kaneda, whose 400 wins are the most in Japanese pro baseball history, died Sunday morning in a Tokyo hospital of acute cholangitis at the age of 86." 19.10.06

 

韓国の報道では必ず韓国名が報じられていた。

 

「日本プロ野球で投手として400勝し、通算最多勝記録を保持する韓国系の金田正一氏(韓国名・金慶弘)が6日、死去した。」(中央日報、10.07

 

「日本プロ野球(NPB)通算最多勝利記録を持つ在日韓国人2世の投手・金田正一さん=韓国名:金慶弘(キム・ギョンホン)、写真=が6日、死去した。」(朝鮮日報、19.10.07

 

有名無名を問わず、本人や親(両親、父、あるいは母)が朝鮮半島に出自をもつ日本人・日本居住韓国人・朝鮮人が本名を報道されるのは、犯罪を犯した場合だけであるといっていい。

 

「新井浩文=本名・朴慶培(パク・キョンベ)」の如くである。

 

本人や親が朝鮮半島に出自をもつ芸能人・選手が多数いることもまた周知の事実であるが、それがどうやら是が非でも秘匿されるべき情報であると見なされている以上、敢えてほじくり返す必要は認めない。

 

しかし、初の外国人横綱は曙ではなく玉の海、という類の重要な事実は必死に隠蔽されるべきことだろうか。

 

三重の海や張本勲、さらに力道山、大山倍達の例などと合わせて、彼らの業績、日本社会への多大な貢献は朝鮮人・韓国人にとって誇るべきことではないのか。また、彼らの豊かな才能が開花するには日本という肥沃な土壌が不可欠であったという事実は日本が誇るべきことでもある。

 

朝鮮日報の判断は、日本に関する報道については極めてありふれたことだが、悲しくも的外れである。

 

「日本のメディアはこのような事実(玉の海と三重の海の出自が韓国であること)を一切取り上げなかった。日本の国技の頂点に韓国人が上り詰めたことを認めたくなかったのかもしれない。」(「隠された歴史“韓国人横綱”」朝鮮日報、2004.2.16

 

「認めたくなかった」あるいは「認めることができなかった」のは本人や相撲協会を含む関係者たちである。「日本のメディアはこのような事実を一切取り上げなかった」のは、カレラお得意の(相撲協会の顔色をうかがってのことなのか、何らかのソロバンをはじいた上でのことなのか)報道自主規制、或いは俄かには信じがたいことだが無知が理由である。

 

隠蔽の程度の根深さをうかがわせる報道もある。

 

「彼(玉の海)の故郷、愛知県には記念館と銅像が建立されたが、彼が「ユン・イギ」という名前を持つ韓国人だったという事実を知っている日本人はほとんどいな

い。

 1979年、57代横綱に昇進した三重の海も、李五郎(イ・オラン)という韓国人だ。相撲界入門直後に帰化した彼は、日本人、石山五郎になった。」

 (「外国人横綱第1号は韓国出身者だった 週刊新潮報道。中央日報、20071.12

 

この記事の少なからず驚くべき点は、週刊新潮はなぜ2007年という時点でこの件を報じたのか、である。そんなこと知らなかったのか、と言ってみたいほどだ。それほど必死に秘匿されるべきことであったのか。

 

相撲の世界にも報道の世界にも全く縁のない私でさえ、「隠された歴史“韓国人横綱”」(朝鮮日報、2004.02.16)を読んでいた。

  

報道の世界には隠蔽、検閲、自主規制、あれやこれやの斟酌などに加えて、無知や怠惰も溢れかえっているのか、と思ってしまう。

 

回りくどい言い方はやめよう。

  

思っている。

 

報道関係者の無知や怠惰については機会を改めて取り上げることにする。

 

(了)

 

 

 

 

 

 

 


この本の内容は以上です。


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