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輝くために必要なもの―水野美紀の場合 

輝くために必要なもの―水野美紀の場合 

 

 

女優はどのようにして主演女優になるのか。『はみだし刑事情熱系』(テレビ朝日系列)の杉浦克也刑事の盲目の娘役(今は、大路恵美)、『踊る大捜査線』の雪乃さん、『ビューティフルライフ』で常盤貴子の友人、『弁護士花村大介』では弁護士事務所の事務員、『おやじぃ』では田村正和の一家の長女役を経て、ついに『女子アナ』で主役の大月真琴を演ずる("star"は「主演する」であった)に至った水野美紀のことを、数週間前に、書こうと思い立った。

 

    ドラマの第七回(2000/2/20)を最後まで見続けることができなかった。十数分見た時点で『プロジェクトX――氷の大陸を目指せ(後編)昭和基地・氷点下50度の闘い』にチャンネルを切り替え、副隊長・西堀栄三郎という人物を改めて知ることになった。こういう仕儀に至るだけの伏線が既にあった。

 

   二三回目から鼻につき始めた大月真琴という新人女子アナのがさつさ・無神経さが一向に改まる気配がない。毎回、いかにもわざとらしく真琴の優しい一面でドラマの最後を締めくくって見せてはいるが、私の中では次第に、大月真琴への反感が募るという、若い女優が演ずるドラマの主人公の場合にはありうべからざるような現象が生じていた。仕事をごっそり抱えていることがそのまま高い評価の証しとなるような職場にいながら、声高な「忙しい」の連発を真琴はいつまでたっても止めない。それが無神経な振る舞いであり、忙しくはない同僚に対する嫌味になっていることを、そろそろ(第七回なのである)腹の底から思い知ってもよかろうはずなのである。友人のテレビ局見学の頼みに、見学に付き合うどころではないほど職場では忙しいことを忘れたかのように、酒の勢いで気安く応じておきながら、そんな約束はすっかり忘れてしまう。真琴の無神経さはもはや病膏肓であることが分かる。(同日、『女子アナ』の前の時間帯で『踊る大捜査線』の最終回の再放送をしていたが、雪乃さんの愛らしいこと。)

 

   『やまとなでしこ』の松島菜々子の言動・態度は目一杯人をむかつせる類のものに仕立て上げられていたが、男の整った容貌に惹かれることは正当で、男の持つたくさんのお金に惹かれることはよこしまである、なんていう理屈それ自体は、よく考えてみなくてもおかしなものであった。一時反感を抱いた視聴者もやがて、脚本家の目論見どおり、次第に、松島菜々子演ずるあけすけな主人公に好感を抱くことになるのである。

 

   私が気に入っている女優になんということをしてくれたのか。この大罪の咎をまず負うべきは、脚本担当(前川洋一、金子ありさ)ではなく、もちろんプロデューサー(関口静夫(共同テレビ)、保原賢一郎(フジテレビ))である。水野美紀主演第一作は見事にこけてしまった。本コラムもぼやきと化した。次回作の脚本を私が引き受けて彼女の救済に乗り出そうかなどどいう台詞まで口から飛び出しそうである。彼女の今後を憂う。

 

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    ところで、『スタイル』でいきなり(と私には見える)本木雅弘と競演し、『白い影』で中井正広の相手役を務め、CM(緑茶「GREEN'S」)でも顔を見かけるようになった竹内結子の出自がよく分からない。(調べると、1996年くらいから出ていたようではあるが。)

 

 

   『カバチタレ!』ではやはり、常盤貴子(田村希美役)は、深津絵里(栄田千春役)に食われている。深津絵里をなめてはいけない。主題歌、キタキ・マユ 「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」(2001年2月15日発売 SME/SRCL5043)が気に入っている。60年代前半風の音作りも曲の背景の影絵の踊りも、実に心地よい。

 

 

   水野美紀の今後が気懸かりだ。水野美紀、君だけのせいではない。気を落とすな!

 

 

 

記 2001年2月20日

 


この本の内容は以上です。


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