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風 狂(第63号)目 次

 

【詩】 

生 命                                      長尾雅樹 

私のこと                  高 裕香 

まほろばの貴婦人              富永たか子 

〈希望〉ならその〈希望〉のかたちを……    原詩夏至 

演劇の真実                 高村昌憲 

逃げる                   出雲筑三                   

 

風狂ギャラリー】 

三浦逸雄の世界(四十七)           三浦逸雄 

 

【特 集】追悼・北岡善寿氏 

追悼の辞                  浜田 泉 

北岡さんのこと               なべくらますみ 

無限の空                  原 詩夏至 

風狂尋ね人 善寿さんを偲ぶ         出雲筑三 

善寿さんのこと               高島りみこ 

北岡善寿先生                高 裕香 

北岡先生永眠                神宮清志 

北岡善寿先生を偲んで            さとうのりお 

交わり                   富永たか子 

純粋で無垢な詩人の精神           高村昌憲 

 

【童 話】 

パンケとペンケ               宿谷志郎 

 

執筆者のプロフィール(五十音順)


生 命       長尾雅樹

 

走り抜けるものがいた 

逃げるものがいた 

走る走る青い沼 

逃る逃る乾いた草 

 

追うものがいる 

執拗に追うものがいる 

 

食うものと食はれるものの逃走劇は 

倒れたものの肉塊の晩さん 

ライオンとハイエナとチーターが飛ぶ 

ガゼルと野牛と縞馬が走る 

 

フンコロガシのうごめきで 

草原の夢が回復するだろう 

 

群らがる獣の眼光が 

骨の残骸を透写して 

サバンナの白熱の激走の果てに 

憤死した屍が地を赤くする 

生きるということは食うことで 

食われたものの生命は 

 

地平の彼方にゆらめいている 

危機と平穏の舞台が輪廻しながら 

 

ライオンと猪が走破する地点から 

ハイエナとガゼルが疾走する地点まで 

生命の軽さと重みを背負って 

何処までも追走劇が繰り広げられて 

連鎖の草原がいつまでも輝いている 


私のこと       高 裕香

 

大人になり切れない私が結婚し

 

大人になり切れない私が子を産み

 

大人になり切れない私が子を育てる。

 

 

 

世の中には、そんな大人が結構いて

 

大人になり切れない者が政治を行う。

 

なぜか、本当の大人は仏のように無言。

 

 

 

だが、

 

大人になり切れない私は夢を捨てず

 

今でも、平和な世界をただ祈る。


まほろばの貴婦人     富永たか子

 

コスモス畑の女主人(あるじ)

「まほろばの貴婦人()を抱いて 

客人を待った 

「ミモザ小屋」と名付け 

番小屋は葦簀張り 

花野の一隅 残照の中 

 

深秋に紛れ 

飲むほどに 

酔うほどに 

叶わなかった昔昔に 

おん おん哭いてグラスを傾け 

 

「光の君」を夢見た日 

「雨夜の品定め」する男たちに 

この一本を興して遊びたかった 

 

少年の面影は文学をこよなく愛した 

 

酔がしゃべっているから 

さけのつまみに事欠かないが 

囀る憂さに風がたって 

ワイングラスも空になった 

 

ひとり 

ふたりと腰をあげ 

細い肩をゆらし 

影を引いて消えた 

 

今宵はどんな夢のつづきを 

飲みこんでいくのだろうか 

 

ワインの銘柄


〈希望〉ならその〈希望〉のかたちを……  原 詩夏至

 

〈希望〉なら 

その〈希望〉のかたちを 

〈絶望〉なら 

その〈絶望〉のかたちを 

辿ること―― 

愚直に 

辛気臭く。 

 

あたかも 

舌が 

虫歯の空洞を 

しつこく 

精確に 

這うように。 

 

なぜなら 

君の 

〈世界〉への問いが 

浅はかなら 

〈世界〉からの 

それへの答えもまた 

愚弄的に 

浅はかなのだから。 

 

駄目だ 

このままでは 

〈詩〉にならない――と 

その表皮に 

こっそり 

 

〈抒情〉を 

施したくなるほどに。



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