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ハート王国にも冬が近づいてきました。

 

ある日、森の中で、くまのゴンゴはエサをさがしていました。

もうすぐ冬みんするゴンゴは、エサをたくさん食べておかなければいけません。

でも、エサはなかなか見つかりませんでした。

ゴンゴは、グーグーなるおなかをおさえて、森の木によりかかりました。

「はあ、おいしいものをおなかいっぱい食べたいなあ。

はちみつたっぷりのパンケーキとか、まるまるふとったねずみとか。」

 

 と、そのとき、ねずみのチュータが通りかかったのです。

「ガオー!食べちゃうぞ!」

 ゴンゴは、すぐにチュータをつかまえました。

 チュータはなみだをながして、ゴンゴの手の中で言いました。

「おねがい、ぼくを食べないで!

かわりに、なにかおいしいものをもってくるから!」

「なにかおいしいものだって?

まるまるふとったおまえのかわりになる、おいしいものってなんだ。」

「たとえば、はちみつたっぷりのパンケーキとか…。」

「ほお。そうだな、ちょうど食べたいと思っていたんだ。

よし、パンケーキを持ってこい。

でも、あつさが10センチのパンケーキじゃなければだめだ。

1センチでも足りなかったら、おまえを食べるからな。」

 ゴンゴはそう言って、チュータをはなしました。

 

 チュータは家へとんで帰って、さっそく、あつさ10センチのパンケーキをやき、ゴンゴのところへ持ってきました。

 

「よし、やいてきたな。

どれどれ、おいらのものさしで、あつさをはかってやる。

1センチでもたりなかったら、おまえを食べるやくそくだからな。」

 ゴンゴはそう言って、ものさしでパンケーキのあつさをはかりました。

「ん?おまえ、ふざけているのか?

5センチしかないじゃないか!」

「え!」

 チュータはまっさおになりました。

「そんなはずないよ。ちゃんとぼくのものさしではかって作ったんだから!」

 チュータも、ものさしを出してはかってみると、ちゃんと10センチありました。

「ほら!10センチだよ!」

「うーん」

 ゴンゴはうめき声をあげました。

 

 そこに、ハート王国の王様が通りかかりました。

「どうしたんじゃ、ふたりとも。こまったかおをして。」

 ゴンゴとチュータは、今までのことを王様に話しました。

 すると、王様は言いました。

「ふむふむ、そういうわけか。

どれ、ふたりのものさしを見せてごらん。」

王様はそう言うと、ふたりからものさしをうけとって、ながめました。そして、

「なるほど、なるほど。

これは、ふたりのものさしのちがいじゃな。」

と言いました。

「ものさしのちがい?」

「そうじゃよ。ふたりのものさしを、ならべておいてごらん。」

 ゴンゴとチュータは、王様に言われたとおりにしてみました。すると、

「あ!」

 ふたりは目をまんまるくしました。

 ふたりのものさしの1めもりは、おなじ1センチでも、大きさがちがっていたのです。

 王様は言いました。

「つまり、1“くま”センチと、1“ねずみ”センチのちがいじゃな。」

 

 すると、ゴンゴは言いました。

「1“くま”センチが正しいに決まっている。

おいらのものさしをきほんにして、かんがえてくれよ。」

すると、チュータも言いました。

「そんなこと言っても、ねずみの世界ではこれがきほんなんだ。」

「まあまあ、ふたりとも、ちょっとまってごらん。」

 そう言うと、王様は、つれてきていたけらいに何かめいれいしました。

 

 しばらくすると、けらいが、ぶあついパンケーキをやいて持ってきました。

「さあ、これが10“くま”センチのパンケーキじゃよ。」

 ゴンゴがじぶんのものさしではかってみると、たしかに10“くま”センチでした。

「さあ、ふたりとも、チュータがやいてきた10“ねずみ”センチのパンケーキと、この10“くま”センチのパンケーキを、食べくらべてみてごらん。」

 

 ふたりは、王様の言うとおり、まず10“ねずみ”センチのパンケーキをひとくち食べてみました。

 チュータは言いました。

「おいしい!これぞ、ねずみのパンケーキだ。おいしさがギュッとつまっているよ。」

 ゴンゴも言いました。

「フン。これはこれでうまいな。たしかに、あじがギュッとつまっている。」

 

 つぎにふたりは、10“くま”センチのパンケーキをひとくち食べてみました。

 ゴンゴは言いました。

「うまい!これぞ、くまのパンケーキだ。どうだ、フワフワでうまいだろう。」

 チュータも言いました。

「おいしい!こんなフワフワなパンケーキ、はじめて食べたよ。」

 

 王様はふたりにききました。

「どちらのパンケーキがおいしかったかね?」

 チュータは言いました。

「うーん。どっちも、それぞれおいしかったです、王様。」

 ゴンゴも言いました。

「…たしかに、どっちにも、それぞれのおいしさがありました、王様。」

 王様は言いました。

「そうじゃろう。

だから、どちらのものさしが正しいということはないんじゃよ。

どちらのよさもみとめあいながら、たのしく、はかりあいっこすればいいのじゃ。」

 

ゴンゴはうなずいて言いました。

「そのとおりですね、王様。

くまにはくまの、ねずみにはねずみのものさしがあるって、はじめて知りました。

どちらにも、それぞれのよさがあるんですね。」

 王様は

「そうじゃ、そうじゃ。」

と、ほほえみました。

 ゴンゴはチュータに言いました。

「チュータ、おいしいパンケーキをありがとう。

これをおなかいっぱい食べて、おいら、冬みんすることにするよ。」

 チュータもゴンゴに言いました。

「ゴンゴ、こちらこそ、ぼくを食べずにいてくれて、ありがとう。

また来年の春に会おうね。」

 王様はうれしそうにわらいました。

「ホッホッホッ。よかった、よかった。」

 

ハート王国に、心がホカホカの冬がおとずれようとしていました。


この本の内容は以上です。


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