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記号警察

行き着いた革命の先にあったのは光高度社会。サイバー国家、サイバー戦争による戦勝国の合理的なルール。地上の人間の衰退が見られ植物化した人類の復興の為に脳科学が発展。二十二世紀中期に超文明と呼ばれる転換が起こる。地上一万メートルに高層社会が実現し我々は光速移動に必要な光エネルギーボールの回転「摩擦」によって発電と同時に回転を繰り返しインフラの恩恵を受けている。高層車両内にあるオフィスの仕切られたルームが我々一人の仕事エリアで二十四時間の六時間をそこで過ごす。残りの時間は人間の寿命保護カプセルに入れられるが感覚や何をされているかは不明である。一方、地上の最下層で脳科学の集大成としてAIとハイブリッドの旧型人類が世界大統領の施政下のもと労働し、生命、記号の開発研究が行われていた。私は中年のラッセルという男であり共に仕事をする女パートナーがいる。ルシーと「記号警察」として常に光エネルギー車両の中に配置されている。超文明から記号研究の発達で人間の行動予測、セキュリティ、国防に携わる。ジャパンという駅が私のカプセルからの出発駅であり地球首都である。大統領は人の目に映ることはないが、その首都に生きていると報告書がある。この超高速移動オフィスは地球を七時間で回る。今日も高層社会の乗車認証ゲート前で並ぶ。
「ラッセル。最下層からハイブリッドが同乗している。警戒レベルを上げた」
「ハイブリッド?そんな大事な話、今頃になって」
「私も知ったばかり」
ルシーの認証を眺めて朝食のスープを口に運ぶ。ゲート員が私のジャケットからハンド型の光熱銃器を出して、中に詰められた鉄針に悪意性信号の有無を確認していた。「食器を片付けてくれ」
「はい。どうぞ」
通過許可が下りて、高層鉄道オフィス乗車口に入ってワンルームデスクに着いた。店員が朝食をルシーに渡して去って行く。ルシーはモニター内の記号警察システムにログインしてデータを頭部に照射させて収集している。ルームをシャットアウトしたい人は窓を真っ暗にして音も遮断可能。
「人体のAI予測時系列が変更されてる」
「何かトラブルかもしれない」
地上最下層エリアのハイブリッドが移動の為に同乗しているがセキュリティはついている。しかし万が一記号警察として監視してなければならない。
「予測パターンの時系列が三十分刻みになっている」
通常、六十分おきに次の六十分の人間行動パターンがAI記号システムで予測される。だから光摩擦の車両で不審人物がいたらマークされ、予測シュミレーションの映像法律違反で逮捕になる。そのAI予測を基に我々は監視している。
「スタッフに問い合わせろ」
重要乗客リストというのがありオフィスのマシンから周波数で脳に取り込んだ。ノーベル記号化学賞受賞者の教授が乗り合わせている。この人物は大統領人体記号を暗号化して国民が認識不能な状態にしたセキュリティの先駆者だ。記号警察の私とルシーは今、この鉄道に大統領が乗り合わせている事実を隠している。暗殺などのリスクがゼロではないので我々のような監視が重要だ。ルシーの役割は記号マシンシステムの管理であり、私は事件の人間関係に関与する。朝食を終えたルシーと光鉄道で物凄いスピードの中にいた。
「記号警察のラッセルだ。AI予測が三十分刻みになっているがどういう事だ」という信号を職員にマシンから送ったが返信がない。
「おかしい。職員が反応しない」
仕方なく三十分の予測データを参照していると、ノーベル賞教授のトラブル予測映像が読み取れた。
「ルシー、まずい。人号九十七が十五分後にトイレに行くが、襲撃される」
「彼に警告の信号を送った」
「反応は?」
「まだ…」
「誰かがシステムを乗っ取りしている」
「そんなエンジニアが乗車してるか確かめる」ルシーがシステムのAI予測データを調べた結果、犯人はテロリストで暗号化された「キー」を強奪する事が判明した。何に使うかはまだ判明していない。私は犯行の人物を特定する為にマシンでシュミレーション映像に映る犯人の顔と身分を記録し、ルームナンバーを参照していた。
「ルシー。掴んだデータには最下層エリアのハイブリッドに犯人」
「ラッセル、ノーベル賞学者が席を立つまで後、五分」
私は、急いで学者のルームナンバーを見て回っていた。
「すいません。急いでます」
すると女店員がドリンクを持って道を塞いだ。
「お客様、失礼します」
走ってノーベル賞学者の近くのトイレに向かった。学者はボディーガードと共に広場を歩いていた。最下層エリアのハイブリッド二名の男はスケルトン携帯マシンで学者の様子を監視していた。学者がカバンを持ちトイレに入るとボディーガード三名はドアの前で待っていた。私の視界に映った光景は、ハイブリッド二名がハンドガンをボディーガードに向けている姿だった。
「逃げろ」
私が叫ぶと車両内が騒然としてボディーガードがドアの前で倒れた。学者は騒ぎに気付き焦ってカバンを握り、トイレから出ようとするが、テロリスト一名が学者を押さえた。私も離れた場所から光銃で応戦した。トイレでは学者に尋問しているテロリストが針金で学者の首を絞めていた。
「早く言う通りにしろ」
「わ、分かった。やめてくれ」
学者はカバンからスケルトン携帯マシンを取り出し、光エネルギーを使い始めた。「時系列の破壊方法を知ってるはずだ」
「頼む。大統領の人体記号を明かす。勘弁してくれ」
「早くしろ」
学者はスケルトン携帯マシンを操作していた。私はハイブリッドを射殺し、走ろうとした瞬間だった。視界が眩しくなり火花が飛びかっているのを感じた。トイレからテロリストが出るのはかろうじて見えたが、足が鈍って走れない。光速鉄道の光ボールが燃えていた。電波空間に亀裂が起こり始めて、客のオフィスルームの窓が割れ始めた。私がトイレにたどり着き、中を見ると学者が倒れていた。
「記号警察だ。何をした?」
「大統領の居場所を明かした。そして、AI時間ツールシステムを麻痺させた。車両の時空間の破壊だ。鉄道は停止する」
「俺達は?」
「生体機能の脳波に接続されていたシステムからの記号が遮断するだろう。時空間と分断され生きられない」
「テロリストはどこへ行った?」
「大統領から命令キーを奪う」
私は、携帯マシンでルシーに連絡した。電波が車両に飛び散って乗客が床に伏せている。ルシーは、記号警察セキュリティを再構築しようと試みていたが、目から血液が流れ始める。ルシーは手で目を触り、真っ赤な血を見て、震えていた。私は携帯マシンの機能不全に気づき、サイバー上での防衛は困難と判断し、大統領の保護の為に急いだ。
「お前が世界大統領」
テロリストの前で倒れてもがいている大統領が銃器をテロリストに向けるが震えて落とす。セキュリティの人間が全員オフィスルームで死亡していた。
「早く大統領命令コードを渡せ」
大統領は口を開いたが、テロリストも血液を吐き倒れた。私は気づいたら車両の床で動けなく呼吸に支障をきたしていた。激しい電波音が耳に突き刺さり激痛の感覚だった。車両内のエネルギーシステムが麻痺していた。倒れて身動きが利かない私の体の側で携帯マシンは最後のエネルギーを消耗していた。
「記号警察から報告書が届いている」
読み込みを開始していた。
「ルシー捜査官よりメッセージが一件あります。再生しますか」
私は通知を再生した。
「助けてお願い」
そのマシンを私は手で握っていた。


この本の内容は以上です。


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