閉じる


第2章

和泉隊 サン

「和泉隊ってどんな隊何ですか?」

花帆の問いに大倉はう~むてと腕を組む。

「簡単に言えば強い」

そう言って大倉はカードを取り出した。

大倉は大きなドアの前に立つと、ドアの横にある機械にカードを通す。

すると、大きなドアは左右に開きそこには1軍の人が置かれたテーブルを囲んで話していた。

本部の中とは思えないほど広く、天井にはシャンデリアが飾られていた。

ここは1軍専用スペースで1軍の人しか持っていないカードを使わないと入れない。

誰もが憧れるスペースでここに入れる人は中々いない。

ちゃんと訓練スペースも設けてあり、1軍の人はここで訓練をする。

豪華な佇まいでフードエリアにはバーがついている。

しかも、驚くべきなのがバーも自動販売機も全部タダなのである。

もちろん、花帆達がここに来るのは初めてで皆口を開けて立ち尽くしている。

「早く入れよ。ここからじゃねーと和泉隊基地には行けねーよ。他の道もあるが本部からだと、遠回りになっちまうからな」

「は・・・はい・・・」

花帆達は遠慮がちにドアを抜ける。

入ってみると、やはり中はとても広く、フードエリアには大きなシアターがあった。

隊対戦の中継を見るためのものだろう。

今も3軍の隊対戦の中継がシアターに映っていた。

入るや否や花帆達をジロジロと1軍に人達が見ている。

和奏はヒィッと声をあげた。

「大丈夫だよ。俺が中学生の女子を連れている事にビックリしてんだよ」

大倉はジロジロ見てくる1軍の人に向かってシッシッと手を振った。

「あれれ?大倉さんナンパしたんですか?」

と後ろから声が聞こえた。

花帆達が振り返るとそこには黄色のネクタイの少年が立っていて、花帆達を見てニヤニヤしている。

まだ2月初めだというのに少年はブレザーを羽織っておらず、シャツだけだった。

「違うわ!ナンパする訳ねーだろうが!」

「スーに報告ッスね!お前の師匠が中学生の女子にナンパしたって」

千花は「スー」という単語に反応して、その少年に近づいた。

「スーさんの事ご存知なんですね!!」

千花の目はキラキラと輝いている。

少年は少し引きぎみだ。少年は一歩後ろに下がる。

「そういえば言ってなかったな。コイツら、お前らの弟子になりたいって言ってんだ。今から基地に向かうところだったんだが・・・今行っても大丈夫か?」

「今から基地来るんですか!?しかも、俺らの弟子志望!?」

少年の言葉に皆唖然する。

「大倉さん・・・この人誰ですか?」

「おぉ、そういえば言ってねーな。コイツは和泉隊順列3番通称サンだ」

大倉の言葉の後、3秒ぐらい経ってから1軍専用スペースに花帆達の大声が響き渡った。


隊長の許可

「ほ・・・本当に和泉隊なんですか・・・?」

「ウソじゃねーよ。コイツの肩見てみろ。和泉隊って書いてあるだろ」

花帆達は一斉にサンの肩を見た。

そこには、和泉隊と書かれた文字と、おそらく和泉隊の紋章であろう横を向いた烏の絵が描かれてあった。

「ほ・・・本当に和泉隊なんだ・・・」

「お前疑われてるぞ。そんなに和泉隊に見えねーんだろうな」

大倉がニシシと笑いながら言っていると、次の瞬間、大倉の体は宙に浮いた。

サンが大倉に背負い投げを繰り広げたのである。

大倉はぐるっと回り、おもいっきりしりもちをついた。

腰にきたのか大倉は腰を押さえる。

華麗に技を決め、周りから拍手を貰うサン。

どうやら大倉に味方してくれる人はいないらしい。

「イテテテ。いきなり背負い投げすんなよ。ここじゅうたんだけど痛いんだからよ。そういえば今から基地行ってOKなわけ?」

まだ腰が痛いのかずっと腰を押さえている。

「忘れてました。今から隊長に電話かけてきます」

そう言ってサンはポケットからスマホを出すと花帆達から少し離れた。

サンが電話をかけてから3コール目で和泉隊の隊長は電話に出た。

「もしもし、隊長?あのさぁ、ちょっといいかな?」

「スーならもう基地に帰っているはずだよ」

「いや・・・スーじゃなくて、大倉さんと俺らの弟子になりたいっていう人達が今から基地に行きたいらしいんだけど・・・。どうする?却下する?」

「その人達って誰なの?」

「それが・・・」

 

********************************************

 

電話が終わったのかサンがポケットにスマホを入れながら戻ってきた。

花帆達は緊張した眼差しでサンを見つめる。

「隊長の許可が出ました。基地に来ても良いですよ」

サンの言葉に花帆達は喜んでいる。

しかしその喜びを妨げるかのようにサンは話し出す。

「た・だ・し!隊長と俺以外の隊員3人がダメだと言ったらなにがあっても諦めて帰ってくださいね」

と言った。こんな時、ガッカリするのが普通なんだろうが、1人だけ例外がいた。

千花はパァァっと笑顔になると、嬉しそうに言った。

「スーさんに会えるんですか!?」

「ち・・・近いッス・・・。多分会えると思いますよ。俺からもスーに言っときます」

「わーい!スーさんに会える~」

「げ・・・元気ですね・・・」

千花は小学生のようにクルクル回ったり、飛び跳ねたりしている。

その行動にサンは引きぎみである。

サンはスマホで時間を確認すると、

「じゃあ俺は先に基地に行ってます。準備とかすっかもしれないんで」

と言ってペコッと頭を下げるとその場を後にした。

大倉はウンと背伸びをして、

「さ~て、行くかぁ。でも和泉隊も準備とかあるし、ゆっくり行こうぜ!」

と言った。その大倉の後に花帆達は付いていった。


和泉隊基地へ

大倉と花帆達は1軍専用スペースをどんどん進んでいく。

すると、大きなドアがまたあった。

そして大倉はまたカードを取りだし、機械にかざす。

もちろんドアはゆっくりと開いていく。

そこには、高い塀に囲まれた住宅地があった。

上には天井がなく、キレイな青空が広がっていた。

住宅地と言っても、建物は6つぐらいしかなく、その建物はどれも大きかった。

「ここは運部隊専用の住宅地だ。まぁ、建物は少ないけど・・・。1km²の面積で本部の中では一番広い場所だ。あの大きな建物が運部隊専用の訓練場になっている。あれは運部隊専用の病院だ。スゲーよな」

中央に建っている大きな建物が訓練場で、右側にあるのが病院らしい。

どれも運部隊専用に造られたらしいのだが、普通にでかい。

建物以外の場所は公園があったり、木が植えてあったりしてある。

「あれはデパートだな。色々商品が揃ってるぜ。和泉隊にも何か買っていくか」

そう言って大倉は花帆達を置いて、デパートの中に入っていった。

「ヒャー、スゴいね~。こんなに広いところがあるなんて・・・」

叶芽は辺りをぐるぐる見ながら言った。ちなみに本人も回っている。

「そういえば、運部隊って何?」

菜月が腕を組み直して言う。

その時、大倉がデパートから出てきた。

「わりーわりー、手ぶらで弟子にしてくださいはさすがにねーわと思って差し入れ買ってきたわ。ほらよ、そういや誰が持つ?」

「え!?買ってきてくれたんですか!?」

「さっきも言ったが、手ぶらはダメだろ」

「え・・・えーっと、お金は・・・?」

「いーよ。あいつらの所に行けばお前らは絶対強くなる。そう思ったからな」

と言って大倉は袋を花帆に渡した。

「す・・・すみません。わざわざ・・・」

「気にすんなって!ほら、行くぞ!サンが待ってるかもしれねーし」

大倉はそう言うと、ズンズンと進んでいく。

花帆と千花は顔を見合わせると笑って大倉の後に付いていった。

 

********************************************

 

大倉と花帆達はコンクリートでできた、大きな建物の前に立っている。

上には和泉隊の紋章である横向きの烏の絵が大きく描かれていた。

「着いたぞ。ここが和泉隊基地だ」

「で・・・でかくね・・・?」

花帆達は口を開けてポカーンとしていた。

「じゃあインターホン押すからな」

と言って大倉はドアの横にあるインターホンを押す。

ピーンポーンとドアの内側から聞こえてくる。

すると、中からサンが出てきた。

「どうぞ、入ってください」

とサンは言って、ドアを大きく開く。

花帆達が小さな声で

「失礼しま~す」

と言って遠慮がちに入っていく。

基地の中はとてもきれいに整頓されており、玄関はとても広かった。

目の前には階段が3つあり、真ん中は上に、左右の2つは下に向かうための階段と思われる。

リビングにソファーが3つ「コ」の字型に並べてあり、目の前には大きな壁掛けのテレビがある。

左側のダイニングには、5つの椅子と、5人分には大きすぎるほどの机があった。

玄関の仕切りを挟んで左側にはキッチンがおいてあり、とてもきれいにされていた。

花帆達は目の前の光景に面食らった。

大倉はキョロキョロと辺りを見渡すと、

「あれ?他の4人どこ行った?」

とサンに問う。

「あぁ、スーなら上に居ますよ。他の3人は仲良く買い物です。そういえば、千花先輩・・・スーが弟子の件OKだって言ってましたよ」

「本当ですか!?わーいヤッタァーーー!!」

サンの言葉に千花は跳び跳ねて喜んだ。

「もぉ~うるさいな~何事?」

階段から下りてくる音とともに、声が聞こえてくる。

下りてきたのは安全メガネみたいなメガネを頭にかけ、棒つきアメをくわえたスーだった。

スーは花帆達を見ると、驚いたように目を見開いた。

「あれ?もう先輩達来ちゃった感じ・・・?」

と言って最後の階段を下りた。

 

*******************************************

 

「いやぁ~すみません。何もなくて、今買いに行ってるんですよ」

スーは頭をポリポリと掻きながら言った。

「い・・・いや別に大丈夫です」

千花が声を震わせながら言った。

このしゃべり方だといろんな意味で大丈夫じゃなさそうに聞こえる。

「お前ら、ほら!あれ出せ!あれ!」

と大倉は顎でクイクイっとした。

あれが分かったのか花帆は、差し入れの入った袋を取り出した。

「ど・・・どうぞ・・・」

花帆の手は少し振るえている。

スーは顔の前で手をブンブン振りながら、

「別にいいですよ!お気持ちだけで結構です!」

と言った。そして、花帆の持っていた袋を押し返した。

「貰っとけ。逆に貰わねーのは失礼だぞ」

大倉の言葉にスーはしぶしぶ花帆の袋を受け取った。

本当は大倉は買ったお菓子を無駄にしたくなかったのだ。

大倉は小さくガッツポーズをした。

すると、いきなりドアが開いた。

急なことだったので花帆達はビクッと反応する。

「ただいま~」

と3人の声が聞こえ、スーが立ち上がる。

花帆達も玄関へ向かってみると、そこには、緑色のネクタイの少年と、赤色のネクタイの少女と、紫色のネクタイの少年がいた。

手にはたくさんの買い物袋がぶら下がっており、とても重そうだ。

(誰!?)

花帆達は同時にそう思った。