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 ミツバチ(むら)では、きょうも、たくさんのミツバチたちがとびまわり、おいしいハチミツをつくっていました。

 

 ミツバチ(むら)のハチミツは、とってもおいしいとひょうばんで、ちょうちょの(まち)や、くまの(くに)にもおくられていました。

 

 

 

 ミツバチのプッチは、きょうもいっしょうけんめいはたらいていました。レンゲばたけで(はな)から(はな)へととびまわり、

 

「レンゲさん レンゲさん きょうもおいしいミツをありがとう~♪」

 

(うた)いながら、レンゲのミツをあつめていました。

 

 やがて、ミツを()れるビンがいっぱいになったので、プッチはハチミツ工場(こうじょう)へむかおうとしました。

 

 

 

 そのとき、

 

「おや、ミツバチでもないのに、ミツをあつめているやつがいるぞ。」

 

 (おお)きなガラガラ(ごえ)()こえました。(むら)のガキだいしょう、ビービでした。

 

「おい、そのミツをよこせよ。しましまもようがないんだから、おまえはハチじゃないにきまってる。」

 

 

 

 そう、プッチの(からだ)には、うまれつき、しましまもようがないのです。

 

 かなしい(かお)をしているプッチから、ビービはビンをとりあげました。

 

「これは、おれさまが工場(こうじょう)へもっていくよ。

 

きょうもたくさん(はい)っているな。おこずかいがたくさんもらえるぞ。いひひ。」

 

 そして、

 

「なにか()いたいことがあるんなら、しましまもようになってから()うんだな。あははは」

 

()って、プッチのあつめたレンゲのミツをもっていってしまいました。

 

 

 

 プッチはためいきをつきました。

 

「はあ。どうせ、ぼくなんて、ハチのできそこないなんだ。ミツをもっていかれても、しかたないや。」

 と、しょんぼりして、(いえ)にかえりました。

 

                                                                                                

  その(よる)、プッチは、だいすきなおえかきをしました。

 

「ぼくにしましまもようがあったらなぁ」

 

()いながら、しましまもようのある自分(じぶん)()をかいてみました。

 

 

 

 すると、いいことを(おも)いつきました。

 

「そうだ!(からだ)に、しましまもようをかいてみよう!」

 

 プッチは、黒色(くろいろ)のえのぐで、自分(じぶん)(からだ)にしましまもようをかきました。

 

 かがみで()てみると、なかなかよくかけていました。

 

「よし。あしたはこれで、ビービにからかわれずにすむぞ!」

 

 

 

 つぎの()、プッチはいつものように、レンゲばたけでミツをあつめていました。

 

「きょうは(あめ)がふりそうだから、いそいであつめよう。」

 

 

 

 するとそこに、ビービがとおりかかりました。

 

 えのぐでしましまもようになったプッチは、ビービがなんて()、と、ドキドキしましたが、いっしょうけんめい、ミツをあつめてまわりました。

 

 

 

 ビービは、プッチのほうをじっと()て、みょうな(かお)をしています。

 

 プッチは、(おも)いきって、(こえ)をかけてみました。

 

「やあ、ビービ。みょうな(かお)して、どうしたんだい。」

 

 すると、ビービは、びっくりして()いました。

 

「おや、(かお)がプッチににてると思ったけど、(こえ)もプッチそっくりだなあ?

 

でも、しましまもようがあるから、プッチじゃないし…。」

 

 プッチは、ビービのそんなびっくりした(かお)()たのがはじめてで、おかしくてたまりません。

 

 (おも)わず、わらいだしてしまいました。

 

「あっははは!」

 

 

 

 そのとき、とつぜん、(あめ)がザザーッとふりだしました。

 

 プッチはそれでもおかしくて、わらいつづけました。

 

「あっはっはっは!」

 

 すると、ビービの(かお)が、だんだんとこわい(かお)になっていくのが()えました

 

 そして、ビービは()いました。

 

「やい!おまえ、プッチじゃないか!」

 

 (おお)わらいしていたプッチは、どうしてばれたのかと、びっくりしました。

 

 なんと、えのぐでかいたしましまもようは、(あめ)にあらいながされて、いつもの黄色(きいろ)(からだ)にもどっていたのです。

 

 

 

 ビービは、いつものように、プッチから、ミツの(はい)ったビンをとりあげました。

 

 プッチは、かなしくて、はずかしくて、()になみだをいっぱいためて、(いえ)へにげ(かえ)りました。

 

 

 

 (いえ)につくと、プッチはなきだしました。

 

「うわーん、どうしてぼくには、しましまもようがないんだろう。

 

しましまもようのある、りっぱなミツバチになりたいよう。」

 

 

 

 するとそのとき、とつぜん、へやの(なか)がパアッと(あか)るくなりました。

 

 ()ると、テーブルの(うえ)にかざっていた1りんのレンゲの(はな)が、まぶしく(ひか)っています。

 

 よく()ると、そこに、(ちい)さい(おんな)()()っていました。

 

 プッチはおそるおそるたずねました。

 

「きみは、だあれ…?」

 

 すると、(おんな)()は、

 

「わたし、レンゲの(はな)のようせいレンレンよ。

 

プッチ、いつも、『ありがとうの(うた)(うた)ってくれて、ありがとう!

 

と、ニコニコして()いました。

 

 

 

 レンレンは()いました。

 

「プッチは、しましまもようがなくても、りっぱなミツバチよ。」

 

「ううん、レンレン、ちがうよ。ぼくはできそこないだよ。」

 

 プッチがかなしそうに()うと、レンレンは、(はな)(かたち)をしたムシメガネのようなものをとりだしました。

 

「これは、レンゲについた(あさ)つゆでつくった、レンゲレンズ。

 

このよで、もっともとうといものを、うつしだしてくれるのよ。」

 

 そう()って、レンゲレンズをプッチのほうにかざしました。そして、そのレンズをプッチにわたしました。

 

「ほら、()ごらんなさい。」

 

 

 

 プッチがそのレンズをのぞきこむと、なにかがダイヤモンドのようにキラキラとかがやいていました。

 

「レンレン、これは、なあに?」

 

「これはね、プッチ、あなたの“いのち”よ。」

 

「え、いのち?」

 

「そうよ。」

 

 レンレンは()いました。

 

「このよでもっともとうといもの、それは、いのちなの。」

 

 プッチはびっくりして、()いました。

 

「ぼくの(なか)に、こんなきれいなものがあるの?」

 

「そうよ。みぃんな、ひとつずつ、かがやくいのちをもっているの。

 

だから、プッチは、できそこないなんかじゃないわ。」

 

 プッチは、うれしくなって、(いえ)(なか)をとびまわりました。

 

「すごい、すごい!

 

ぼくの(なか)に、こんなきれいなものがあるなんて!

 

ぼくは、できそこないなんかじゃないんだ!」

 

「そうよ、そうよ!

 

さあ、プッチ、みんなのキラキラかがやくいのちも、()()きましょうよ!

 

とってもきれいよ!」

 

「うん!」

 

 

 

 (そと)(あめ)は、すっかりあがっていました。

 

 プッチとレンレンは、レンゲばたけへむかいました。

 

 (あめ)があがったので、ミツバチのみんなはさっそく(はな)から(はな)へととびまわり、ミツをあつめていました。

 

「さあ、のぞいてごらんなさい。すばらしいものが()えるから!

 

 レンレンはそう()って、レンゲレンズをプッチにわたしました。

 

 プッチは、レンゲばたけではたらいているみんなに、レンゲレンズをかざして、のぞいてみました。

 

 すると、みんなのむねの(なか)に、かがやくいのちが()えました。それはまるで、レンゲのピンク(いろ)じゅうたんにダイヤモンドをちりばめたようで、このよのものとは(おも)えないうつくしさでした。

 

「すごいや!本当(ほんとう)に、みんなのいのちがキラキラかがやいているよ!」

 

 

 

 そこに、

 

「やい、プッチ、さっきはよくもおれさまをだましてくれたな!」

 

と、ビービがやってきました。そして、プッチがもっていたレンゲレンズをとりあげました。

 

 でも、プッチはちっともこわがらないで、ニコニコしています。

 

 ビービがふしぎに(おも)っていると、レンレン()いました。

 

「それをプッチにかざして、のぞいてごらんなさい。」

 

 ビービは、(ちい)(おんな)()がいっくが、レンレンの()うとおりにしてみました。

 

「キラキラかがやくものが()えるぞ!」

 

 レンレンは()いました。

 

「プッチのいのちよ。」

 

 ビービはびっくりして()いました。

 

「え?プッチのいのちだって?

できそこないのくせに、こんなにきれいなもの、もってるわけないじゃないか!」

 

 

 

 するとプッチは、ビービからレンゲレンズをとりもどして、()いました。

 

「ぼく、できそこないじゃなかったんだよ、ビービ。そして、きみにも…」

 

 そう()って、プッチはビービにレンゲレンズをかざして、のぞいてみました。

 

 ところが

 

「あっ!」

 

 プッチはことばをうしないました。

 

「え、なんだよ。どうしたんだよ。」

 

 ビービがレンゲレンズをプッチからとりあげてのぞいてみると、まっ(くろ)(いし)のようなものがうつっていたのです

 

「え、なんだよ、これ。」

 

「それは、ビービの“いのち”よ。」

 

 レンレンがこたえました。

 

「キラキラしてないじゃないか!」

 

「そう。あなたはいつも、しごとをさぼったり、プッチをからかったりしていたから、きれいないのちに、よごれがたくさんついてしまったのよ。」

 

 

 

「そ、そんな…。」

 

 ビービは(おお)きな(こえ)でなきだしました。

 

「ウワーン、ウワーン!まっ(くろ)ないのちなんていやだ!おれも、キラキラないのちになりたいよう!」

 

 プッチは、レンレンに()きました。

 

「このままじゃ、ビービがかわいそうだよ。よごれをとるほうほうはないの?」

 

 レンレンは(こた)えました。

 

「プッチ、あなたって、やさしいのね。

 

ほうほうは、あるわ。」

 

「え、ほんとうかい?」

 

 ビービがなきやんで、レンレンを()つめました。

 

「ええ。

 

“ありがとう”の()もちをもつことよ。自分(じぶん)のまわりのみぃんなに、ありがとうって()うの。」

 

 すると、ビービは()いました。

 

「ありがとう、なんて、おれ()ったことないよ。」

 

 レンレンはあきれて()いました。

 

「いのちがまっ(くろ)のままでいいの?」

 

 するとビービは、

 

「いやだ!

 

…よし、みんなにありがとうって()うぞ!」

 

と、きめました。

 

 

 

 プッチは()いました。

 

「じゃあまず、レンゲの(はな)さんたちに()おうよ!」

 

「よ、よし!

 

レンゲの(はな)さん、いつもおいしいミツをくれて、ありがとう!」

 

 すると、レンゲレンズにうつしだされた、ビービのまっ(くろ)ないのちから、(くろ)いかけらがひとつ、ポロリとおちました。

 

「ビービ!そのちょうしだよ!さあ、どんどんいこう。」

 

 プッチとビービとレンレンは、(むら)じゅうをとびまわりました。

 

 

 

 工場(こうじょう)ではたらくみんなに「おいしいハチミツを(つく)ってくれて、ありがとう。」

 

 学校(がっこう)先生(せんせい)に「べんきょうを(おし)えてくださって、ありがとうございます。」

 

 ゆうびんポストに「(あめ)()も、(かぜ)()も、手紙(てがみ)をあつめてくれて、ありがとう。」

 

 そして、お(とう)さん、お(かあ)さんに「ぼくをうんで、そだててくれて、ありがとう。」

 

 

 

 「ありがとう」と()うたびに、ビービのまっ(くろ)ないのちから、(くろ)いかけらがポロリポロリとおちていきました。

 

 

 

 でも、いくらありがとうを()っても、さいごのよごれがおちません。レンレンが()いました。

 

「だれか、だいじな(ひと)をわすれているんだわ。」

 

 ビービはかんがえこみました。

 

「ありがとうを()わないといけない、だいじな(ひと)って、あとはだれだろう。

 

…あ!」

 

 どうやら、だいじな(ひと)()づいたようです。

 

 ビービは、プッチのほうをむいて、あたまをペコリとさげて、()いました。

 

「プッチ!いつも、レンゲの(はな)のミツをくれて、ありがとう。そして、ごめんな。」

 

 すると、どうでしょう。さいごまでのこっていたよごれが、ポロリ…とおちて、キラキラとかがやくいのちがあらわれたのです。

 

「やったあ!」

 

 3(にん)は、おおよろこび。

 

 ビービは()いました。

 

「おれのいのちも、みんなみたいに、きれいになったぞ!」

 

「うんうん、ビービ、よかったね!」

 

 プッチも自分(じぶん)のことのように、よろこびました。

 

 

 

 それいらい、しましまもようのないプッチと、ガキだいしょうのビービは、だれよりもなかのよい(とも)だちになりました。

 

 そして、毎日(まいにち)いっしょに、「レンゲさんありがとうの(うた)」を(うた)いながら、ミツをあつめるようになりました。

 

 すると、ミツバチ(むら)では、(いま)までよりももっとおいしいハチミツができるようになりました。

 

 レンゲレンズをのぞいてみれば、きっと、ふたつのいのちがひときわかがやいて、ミツバチ(むら)をうつくしくかがやかせていることでしょう。

 


この本の内容は以上です。


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