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第6話 雨降りブナの木

夜明け前から降り出した雨が 今も続いています

大きな雨粒が ブナの葉にあたり

弾けてはまた雫となって 下の葉にあたり

それがまた弾けては雫となって 

ようやく地面に 吸い込まれます

 

森全体が灰色に包まれていて

遠くの山は もやの中に埋もれました

 

 

雪が終わり 花の季節が来て

冬越しの葉を落として 夏の若葉を伸ばし

ずいぶん気温が上がったと思うと

空気が じっとりと重くなる

 

そうすると長雨の頃がやってくる

かさかさに乾きかけた森に

たっぷりと水をくれる 長雨の季節だ

 

雨の日は静かだ

鳥は鳴くのを控えるし

ケモノは巣穴でじっとしている

雨の音だけが 絶え間なく聞こえてくる

 

みんな眠っているようだ

でも本当は 巣穴から外の様子を伺っている

この雨は いつ上がるのだろうと

庇(ひさし)を落ちる水滴を数えている

 

春に生まれた こどもたちは

退屈を持て余しているだろう

巣穴でほたえて叱られる

それとも お乳を飲んで眠ってるのか

 

葉が重くて 枝がしなって

どの木も憂鬱そうに見えたりするが

そんなことはない


この本の内容は以上です。


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