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第3話 何も知らないキツネの子

目が覚めたら 巣穴には誰もいませんでした

お母さんキツネは 毎日狩に出ています

兄弟たちは とっくに外で遊んでいるのでしょう

お母さんのおっぱいを飲んで また眠くなって

キツネの子には よくあることです

 

外のまぶしさに キツネの子はうんと目を細くしました

”ああ あったかい”

キツネの子は 毛がどんどんふわふわしてくるように感じました

 

”いい匂いがする”

キツネノボタンに鼻を近づけて見ました

”これ食べれるのかな”

賢いキツネは それを食べません

 

どこかで兄弟たちの声がします

キツネの子は歩きだしました

だんだん鳥の声がうるさくなって来ました

兄弟たちは どこにいるのでしょう

 

”なんだこれ”

キツネアザミのつぼみから 紫の花がでています

”面白そう”

キツネの子は前足で アザミのつぼみを叩いて見ました

でもアザミは反撃してくれません

 

”つまんないの”

キツネはまた歩き始めました

遠くへ行ってはダメよ と

お母さんキツネはいいましたが

キツネの子はどこが”遠く”なのかわかりません

 

大きなキツネに出会いました

大きなキツネはお乳の匂いがしませんし

顔もなんだかこわそうです

大きなキツネは小さなキツネの匂いを嗅いだ後

ふん と言って何処かへ行ってしまいました

 

キツネの子は ムネムネがドキドキしましたが

それが収まったら もう少し行ってみることにしました

”これはきっと 遠く ではないんだ”

 

しばらくすると 広い野原にでました

とても明るくて とても暖かそうでした

空には大きな鷹が舞っています

そのよく見える目で 地上で動く小さなものを狙っています

 

キツネの子はすごいところをみつけたぞ と嬉しくなりました

明るくて 暖かくて 鳥もうるさくありません

”ここでみんなと遊べるぞ”

もっと進んでみようとしたその時です

 

キツネの子は、首の後ろをガシッと掴まれ

体がふっと浮かぶのを感じました

そのまま森の茂みに運ばれて

ちょっと乱暴に落とされました

 

”遠くへ行ってはダメ と お前のママが言っただろう”

さっきのキツネの匂いがしました

キツネの子は震えが止まりませんでした

”ママの言いつけは守るんだぞ”

大きなキツネは それだけ言うと 森の奥に帰って行きました

 

キツネの子は しばらく草むらの中で丸くなっていましたが

首だけ上げると さっきのキツネがいなくなったのを確かめて

自分の匂いをたどって 帰って行きました


この本の内容は以上です。


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