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第2話 シカバネ

みんな雪に埋もれた

青い草は雪の下に行った

 

”もう青くなんてない みんな茶色だった” と

誰かの声がした

 

笹の葉は 何日か前に食べ尽くした

茶色い葉は 口が渇くし味がしない

 

”昔はなあ” また声がした

”オオカミがいたのだよ だからこんなふうには歩けなかった”

 

オオカミとはなんだろう キツネのようなものだろか

キツネだったら怖くない

 

クマは足が遅い 

イノシシは跳ねるのが苦手だ

森に怖いものはいない

ツノのあるシカは 森の王様だ

 

”昔はなあ” また声がした

”猟師というのが おってなあ”

猟師とはどんな動物だろう

”人里に近寄ってはいかんかった”

年寄りは愚痴が多い

 

木の皮は固い 固くて食べるのに時間がかかる

けれども無いよりはいいし 

歯にも気持ちいい

今日は もうちょっと遠くまで出かけよう

 

野原に出たら ぽかぽかと暖かい

体から白いモヤモヤとしたものが上がっている

広い広い 飛び跳ねたくなる

 

空の高いところに鳥がいる

鳥がいて 何度も輪を描いている

鳥が狙うのは 小さなネズミやオコジョだ

シカには関係ない

 

どこかで獣の声がする

何かを追い回しているような 沢山の声だ

何かが弾ける音がした 

雷が木に落ちた音だろうか

焦げ臭い匂いもかすかにする

 

きっとそうだ

きっと きっとそうだ

どうせシカには関係ない


この本の内容は以上です。


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