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ここは、おもちゃの国の、カード幼稚園。

 

ある冬の寒い日、トランプ君は、クラスの部屋の中でいいことを思いつきました。

 

「薪ストーブのまわりを、つみきのカベでかこんで、ぼくだけあたたまろう。」

 

 すると、仲良しのジョーカー君が

 

「それはいい考えだね。」

 

と、賛成しました。

 

トランプ君は、ジョーカー君だけ仲間に入れることにしました。

 

そして、ふたりはさっそく、高い高いつみきのカベを、せっせと作りました。

 

 

カベの中に入れてもらえなかった、クラスメートのスペード君、ダイヤちゃん、クラブ君、ハートちゃんは言いました。

 

「寒いよ。中にいれてよ。」

 

「いやだよ。ぼくがよければいいの。」

 

トランプ君は言いました。

 

「そうだよ、そうだよ。」

 

ジョーカー君もいいました。

 

 

 

しばらくすると、つみきのカベの中は、あたたまりすぎて暑いくらいになりました。

 

そこでトランプ君は、ストーブの温度を下げるため、燃えている薪を何本も取り出して、そのままポイッ、ポイッとカベの外へ投げました。

 

「あついッ!なにするんだよ、あぶないじゃないか!火事になるぞ!」

 

カベの外にいたスペード君が、怒って言うと、トランプ君は言いました。

 

「ぼくがよければいいの。」

 

「そうだよ、そうだよ。」

 

ジョーカー君もいいました。

 

 

 

つみきのカベの中は、快適になりました。

 

でも、しばらくすると、また暑くなってきました。

 

「おかしいな、薪は減らしたのに。」

 

トランプ君は思いました。

 

 

するとその時、つみきのカベのすきまから外の様子を見ていたジョーカー君が叫びました。

 

「火事だ!カベの外は火の海だ!」

 

「なんだって!だから暑かったのか!早く逃げなくちゃ!」

 

トランプ君は、火の海の中を逃げるために、バケツにくんであった水をかぶろうとしました。

 

すると、横からジョーカー君が来て、その水をぜんぶ、自分だけバシャーンとかぶってしまいました。

 

「おい、ジョーカー君、何するんだよ!」

 

すると、ジョーカー君は言いました。

 

「ぼくがよければいいの!」

 

そして、つみきのカベをこわして、トランプ君を残し、ひとりで外へ逃げて行ってしまいました。

 

 

 

火の海の中に、ひとり取り残されたトランプ君は、泣き叫びました。

 

「おーい、だれか助けてよう!」

 

 

ると、

 

「えいさッ えいさッ」

 

というかけ声が聞こえてきました。

 

見ると、スペード君、ダイヤちゃん、クラブ君、ハートちゃんが、バケツ・リレーをしながら、1本の逃げ道を作ってくれていたのです。

 

「さあ、早くここから逃げて!」

 

 ダイヤちゃんが叫びました。

 

トランプ君は、みんなが作ってくれた逃げ道を必死で逃げて、なんとか助かりました。

 

 

 

 命からがら逃げ出したトランプ君は、言いました。

 

「ぼくだけがよければいいって思っていたけれど、そんなのダメだね…」

 

 すると、

 

「そうだよ!」

 

と、クラブ君が言いました。

 

「そうよ。“みんな”がよくなくちゃね!」

 

ハートちゃんも言いました。

 

みんな、楽しそうに大笑いしました。

 

 

 

その様子を遠くで見ていたジョーカー君がやってきて、言いました。

 

「あの、ぼくも仲間に入れてくれないかな…。」

 

 トランプ君は言いました。

 

「もちろんだよ!さあ、みんなで楽しく遊ぼう!」


この本の内容は以上です。


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