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ジェニーは、アルミケースを開けようとすると鍵が掛かっていた。鍵穴に十字架を入れてみるとガチャと開いた。

ゆっくりと箱を開けると、『親愛なるジェニーへ』と、書いてある封筒があった。そして1枚の写真が入っていた。

写真は、白衣を着た東洋人の男性が赤ちゃんを抱いていた。

 

ジェニーは、初めてみる写真で、どうして神父は、こんなものを大事にしまい込んでいるのかと不思議に思った。

ジェニーは、封筒の中を取り出して手紙を読んだ。

 

『ジェニー、君がこの手紙を読んでいる頃は、私が亡くなった後だろう。そして、君がまだ成人していないことが想像できるだろう。本当のことを言えば、君が大人になった時、すべてを話すべきか、今も悩んでいる反面、神に仕える人間として、真実を伝えることも必要だと感じている。だから、知っていることのすべてを話そう。

 

君は、ある人物の研究によって生まれてきた。だが、それは君が生まれてきたいという思いで誕生した。それは事実だ。私がいなくなった後、君を引き取りたいと人物が現れるだろう。その人物が、君にとっては、幸せをもたらすのか、不幸を作るのか。残念だが、私にもわからない。だが、君には信念というものがある。自分で考えて行動できる、強い心を持っている。自分の人生は、自分で決めて欲しいのが、私の気持ちだ。

 

人の歩みは主によって確かにされる。主はその人の道を喜ばれる    

                                ハリス・コーク』

                

                                                                                         

 

「何を見つけたんだい?」

ジェニーが手紙を読み終えると、声がした。

振り返ると、「エディさん! どうしてここに? 」

ジェニーは、ハッとして立ち上がった。

 


「驚かせて、すまない。今ちょうど、教会の前を通りかかったら、扉が開いていて光が漏れていたから、気になって覗いてみたんだよ」

エディは、ジェニーの顔色を見て、すぐに落ち着かせるように優しく言った。

 

「それは・・・・・・!?」

エディは、アルミケースの上に置いてある写真に目をやる。

「見せてもらってもいいかな? 」

ジェニーは、エディが探していた写真だと直感して、「どうぞ」

ジェニーが差し出すと、エディが受け取る。

 

「これは・・・・・・」

エディは写真を見るなり、意外そうな顔をする。そして、「セカンド・・・・・・」

写真の裏に書いてある『second』の黒文字を意味ありげに言った。

「どうしたんですか? 」

明らかに様子が変わったエディを、ジェニーは気になった。

「ちょっと座らせてもらうよ」

エディは、長椅子に腰掛けて何やら考えこんだ。

 

「この写真の男性は、私の父親なんですか? 」

ジェニーが、真っ先に気になったことを尋ねた。

「はっきりとは言えないが・・・・・・この写真は君の父親ではないだろう」

エディは、思い当たるような言い方をする。

「なぁ、ジェニー・・・・・・私の話を誰にも言わないと約束できるかい? 」

エディは、急に思い切った様子で真顔になった。

 

「えっ!? 」

ジェニーは、突然のことで当惑顔になった。だが、エディが何か重大なことを言おうとしていること感じた。

「ええ、私にとって大事なことなら聞かせて下さい」

ジェニー自身、自分の出生のことを知りたい気持ちは本心だった。

 

「以前、国家ぐるみのプロジェクトで、遺伝子学の研究が行われていた。今再び、そのプロジェクトが再開される。それで私は、君をプロジェクトに参加させるための説得にきたわけだ。だが、私にも知らない事実があるようだ」

エディは、何か心にひっかかったものがあるようだった。

 

「プロジェクトとか、遺伝子学とか、私にどういう関係があるんですか? 」

ジェニーが首を傾げた。

 

「今まで、ハリスが君の出生のことを言わなかったは、説明するのが複雑すぎて、君自身に理解してもらえるか迷っていたからだろう。だが、君自身が真実を知りたいなら、私が協力しょう」

エディは強い口調で言った。

 

「教えて下さい。一体、神父様は私に何を隠していたんですか? 」

ジェニーは、エディに近寄る。

「レプリカ計画だ」

「レプリカ・・・・・・?」

ジェニーは、神父が亡くなる前に言った言葉のことを思い出した。

 

「君は、国家機密のプロジェクトで生まれた」

「・・・・・・!?」

ジェニーは、一瞬言葉を失った。

 


二人の間に、重苦しい空気が流れて沈黙があった。それを払いのけるように、「私を信じて欲しい」

エディは、強い口調で言った。

 

「君は、遺伝子学の研究で生まれたことは事実だ。だが、君の両親が誰で、どういう経緯で生まれてきたのかは、私にもわからない。それに、今わかったことだが、君は二番目だということだ・・・・・・・」

エディは考え深く言った。

 

ジェニーは、自分の出生が想像以上の話で愕然と聞いていた。

 

「ジェニー・・・・・・真実を知れば、傷ついてしまうかもしれない。だが、それを知ることで、新たに始まる未来のきっかけになることもあるはずだ。約束しよう。私の所に来れば、君の両親が誰で、出生の秘密を教えることが出来るはずだ」

 

エディは熱い思いで言って、「君にも協力してもらいたいことがあるんだ」と、言葉を付け加えた。

 

「協力・・・・・・」

ジェニーは困惑顔で小さな声で尋ねた。

 

「それは、私の所に来てから話そう。君を悪いようにはしない」

「・・・・・・」

「明日まで考えてくれないか? 」

エディが優しく尋ねた。

ジェニーは、小さく頷いた。

 

エディは教会を出て、車に乗り込んだ。

ドスンと後部座席に座りこんで、ため息をついた。

 

「プロジェクトの話を持ち出して、大丈夫なんですか? 」

運転手が心配そうに尋ねた。

「彼女が、私の所に来るか、一か八かの賭けだ。それに、局長自身も大事なことを、私にも話していなかった。まったく・・・・・・」

エディは腹ただしく言った。

車はゆっくり動き出した。

 


明け方。

ベッドの中、ジェニーは寝つかれなかった。

 

エディの話はショッキングで、しばらく困惑していたが、時間とともに気を取り戻して冷静に考えてみた。

エディは、本当のことを言っているようにも思えた。

 

神父には、両親が誰で、どういう経緯で、私を引き取ったのか。正直真実を知りたい気持ちはあった。だが、育ててもらっている恩みたいなものがあって、聞き出すことに気が引けた。しかし、神父が亡くなった時、そのことを尋ねておくべきだったと、後悔したことも事実だった。

 

カーテンの隙間から日差しが入り込んでいた。

 

ドクターの元へ行けば、平穏な時が過ぎてゆくかもしれない。

でも、きっと、私は、自分の出生を知りたいと思うに違いない。今、真実を知るチャンスなのかもしれない。

 

エディが言った、『新たに始まる、未来のきっかけになること』

その言葉が、ジェニーの心の中に大きく膨らんでゆく。

 

ジェニーがカーテンを開けると、窓から眩しい日差しが入りこんできて目を細めた。その光は、なぜか、希望の光のようにも見えた。

 

朝一番、ジェニーはドクターの元を訪ねた。

 


その日の午後。

「納得いかないですよ!」

ディックが声を荒たげると、礼拝堂の中で大きく響き渡った。

 

ジェニーは、今日から学校に来ることになっていた。だが、登校していなかったため、ディックは気になって、ドクターに連絡を取ると、ジェニーはエディの元へ行くことを聞かされた。

ディックは、そのことを知って愕然とした。昼休み、真相を知るため、ドクターと教会で待ち合わせをした。

 

「一体、ジェニーはどうしたんですか? 昨日、ドクターの所に行くと約束したのに」

ディックは、ドクターに強く問い詰めた。

 

「私にもわからない。今朝、ジェニーが訪ねて来て、エディの所に行くと言って謝りに来たよ」

「どんな理由で? 」

「真実を知りたいから、彼の所に行くと言っていた」

ディックが顔をしかめて、「真実って? 」

「それ以上は何も言わずに、彼の元へ行ったよ」

ドクターは目を伏せて言った。

 

「もう一度、ジェニーを説得してみます」

「待て、ディック」

ドクターが礼拝堂を出ようとする、ディックを引き止める。

「ジェニー自身が、彼の元へ行くことを決めた以上、そうするしかない」

「そんな・・・・・・それで、ドクターは納得したんですか?」

「納得はしていない。だが、法的に決めらたことだ、どうにも出来んよ」

ドクターの言葉には、悔しさが混じっているようだった。

 

「だが、なんだか変だとは思わないか? 」

ドクターは首を傾げた。

「一体、エディは、どこでハリスの死を知ったんだ。それに、私がエディの親変わりになることを決めて、ジェニーを引き取ろうと思うと、急にタイミング良く現れた・・・・・・まるで、私達の動きを知っているような行動に出ている」

ドクターが考えこんで、何気なく教会を出入する扉の方に目をやると、ピカリと光るものが見えた。扉は木製で出来ていて、2メートル以上の高さがあった。扉の上で何かが反射するように見えた。

 

ドクターが扉の方へ近づく。

「ドクター、他に手立てはありませんか? 」

ディックが、ドクターに切羽詰まったように尋ねた。

「なあ、ディック。脚立を持って来てくれないか? 」

ドクターは、じっと扉の上に目をやっていた。

 



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