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十 エピローグ

 

「温泉はよかったなあ」

 

「一仕事した後は、特に、気持ちがええわ」

 

「体中、汗まみれやったからなあ」

 

「それでも、踊りすぎて腰が痛いわ」

 

「腰だけやないわ。わしは手も足も痛いわ」

 

「わしは、それらに加えて、腹筋も痛いわ」

 

「お前ら、何、病気の自慢しおうとんや」

 

「とにかく、これで、子孫たちも少しは思い知ったやろ」

 

「まあ、当分の間は、お墓参りや盆踊りが続くんじゃないか。でも・・・」

 

「そう。でも、だなあ。さっきも言ったけど、喉元過ぎればなんとかで、彼岸、お盆に、正月だけじゃろ」

 

「まあ、年三回なら許せるんとちゃうか」

 

「もし、年一回もなかったら?」

 

「その時は」

 

「その時じゃ」

 

「今度は、ゴジラか、ガメラか、キングギドラでも呼び出すか」

 

「いいや。他の惑星の宇宙人を呼んで、人類の総入れ替えじゃ」

 

「それじゃあ、わしらとは縁もゆかりもない奴らに地球が乗っ取られるぞ」

 

「心配せんでも、わしらにも宇宙人の血がまじっとんとちゃうか。そうせんかったら、ゾンビなんて呼び出せんやろ」

 

「そうかもわからんなあ」

 

「ひょっとして、少しずつ、少しずつ、宇宙人はやって来とったんじゃなかろうか」

 

「そうやな、人類だけで、こんなに文明が発展するわけがないじゃろ。大転換の節目、節目には宇宙人が必ずからんどったんじゃ」

 

「それよりも、わしら自身やって、他の惑星の人から見たら宇宙人とちゃうか」

 

「そうや。そうや。ええこと言うわ」

 

「ついでに言わせてもろたら」

 

「どこそこの都道府県で生まれたとか、どこの国に生まれたとか」

 

「皮膚の色が、白いとか、黒いとか、黄色とか」

 

「金色とか、銀色とか」

 

「髪の毛を染めとんのとちゃうで」

 

「男とか、女とか、中間とか」

 

「生まれる前に、自分の意思でなれたらええなあ」

 

「生まれた後からでも、自分の意思でなりたい方になれるのを認めてやったらええんや」

 

「大人とか、子どもとかもか」

 

「大人に生まれて、子どもに育つんもええかもしれんな」

 

「そんな映画あったなあ」

 

「でも、大人で生まれたら、おかんの腹を突き破ってしまうで」

 

「例えばの話や」

 

「小さな大人もおるやろ」

 

「一寸法師かいな」

 

「あれは、生まれたときから大人で、成長しても大人やで」

 

「子供時代がないのも可哀そうやな」

 

「お前ら。作り話に何、本気になっとんや」

 

「わしらかて、子孫たちが想像した作り話とちゃうか」

 

「しっ。黙っとき。ほんまのことがわかったら、わしら消えてしまうで」

 

「とにかく、なんでも物事は、もっと大きな視野を持って、多角的に見ないかんのと違うか」

 

「わしの嫁さんも怒ったら、頭に角がようけ生えとったわ」

 

「そりゃあ、お前の働きが悪いからや」

 

「ほなけん、今、頑張っとんのや」

 

「お墓の中に入ってから頑張っても遅いわ」

 

「いいや。何事にも遅いはないで。やり始めた時が今なんや」

 

「どこかの塾の講師の受け売りか」

 

「喧嘩ならいつでも買うたるで」

 

「墓に中に入ってまで、喧嘩せんでもええやろ」

 

「とにかく、わしらの小さな希望としては、人はいつか必ず死ぬんやから、死んだ奴の事もたまには思い出してくれたらええんや」

 

「そうや。そうや。わしらもお墓の中に入ってから、頑張ってゾンビを生み出したんを忘れとったわ」

 

「人は忘れる生き物だからな」

 

「お墓に入ってからもな」

 

「忘れてもええんや」

 

「人は忘れることで前に進める」

 

「でも、たまには、思い出さないと、わやになってしまうで。つい、自分一人で生まれて、自分一人で大きくなったと勘違いしてしまう」

 

「ほなけん、わしらが見守っとんじゃ」

 

「あんたのとうちゃんも母ちゃんもあんたも見守っとるで」

 

「あ痛っ。それを忘れ取った」

 

「思い出してくれた時でええから、線香やまんじゅうぐらい、お供えしてくれたらええんや」

 

「ほんまはお酒も欲しいけど」

 

「あの世は禁酒やで」

 

「ほなからこの世でお酒をお供えしてもらいたいんや」

 

「酒をお供えしてくれるのはええけれど。やっぱり、酒の肴にバナナは合わんで」

 

「ほな、まんじゅうで我慢するか。甘酒まんじゅうもあるで。あの世へ行ってから、すっかり甘党になってしもうたわ」

 

「でも、まんじゅう食べ過ぎたら、虫歯になるで」

 

「あほか。もう、わしらは虫歯にもうならんで」

 

「ええこと思い付いた。まんじゅう怖いと言うとったら。わしらを恐れて、機会あるごとに、お墓にまんじゅうを供えてくれるで」

 

「そうやな。それなら、みんな一緒に」

 

「まんじゅう怖い」

 

「他には?」

 

「ゾンビよりも」

 

「ダンスが」

 

「怖かった」

 

 

 


この本の内容は以上です。


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