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プロローグ

天気予報で降水確率が50%だったけど

持っていった傘が無駄になった日曜日

 

来世は幸せを感じる生き方がしたいな

 

駅ビルの人混みをすり抜けていく

私の心に沸き上がる素直な気持ち

 

ピンクのハイゲージニットに

紺色のレース柄のタイトスカート

豹柄のピンヒールを身につけて

黒髪をゆるやかに巻いた美人さんが

お花屋さんで買い物をしている

 

ダリアの花束を手に持って

颯爽と立ち去っていった彼女を見送る

 

来世は花になりたい

 

美人の人生を引き立てるのではなく

彩りとなって一生を終えられたら

きっと対等に違いないと思う

 

 

もし生まれ変われるなら

私は何の花になりたいと願うのだろうか

 

 

 

 

 


カーネーション

私が初めて出会った花は

母の日のカーネーションだ

 

貯めたお心遣いを握りしめて

近所の花屋に向かって歩く

 

「母の日のプレゼントなんです」

「千円あるのでお任せでお願いします」

 

フリルたっぷりのカーネーションを

ピンクの包装紙に赤いリボンで束ねてある

お姫様のドレスみたいなその存在は

まさに愛情の象徴のようで、少し震える

 

 

133センチのカラダで大事に抱えた花束を

渡し終えて安堵のため息をついて

作りおきの麦茶を一息で飲み干した記憶

 

そんな思い出のある花

 


孔雀草

クジャクアスター

フレンチ・マリーゴールド

ハルシャギク

 

いくつかある

孔雀草と呼ばれる花の中でも

私が好きな花は

フレンチ・マリーゴールド

 

鮮やかなオレンジ色で

小ぶりな花を勢い良く

鉢いっぱいに咲かせて

 

生命力にあふれて

世界中に流通した

聖母マリアの黄金の花

 

花ことばは「嫉妬」

 

うん、私にピッタリの花

 


かすみ草

友達が出席した結婚式の写真を

幸せのお裾分けで見せてくれた

 

森の中の可愛らしいチャペルに

胸下から切り替えのある

エンパイヤラインのドレス

一つにゆるく編んだ三つ編みに

かすみ草の花かんむりを飾る花嫁

 

そのブーケもかすみ草だった

真っ白でふわふわの塊を

太い純白のサテンリボンで

今さっき野原から摘んできたみたいに

軽やかに束ねられた花束

 

 

新郎は何か優しそうな人だね

余りにも糖度が高くて

ブラックコーヒーが欲しくなった

 


エピローグ

もしも私が生まれ変われるなら

花屋の店先の花になりたい

 

ダリア、ローズ、ピオニー

カラー、ラナンキュラス

 

華やかで誰もが魅力されて

愛らしい、甘いお菓子のような

太いサテンリボンで

束ねられることが

約束された彼女たち

 

美人の人生を引き立てるのではなく

彩りとなって一生を終えられたら

きっと対等に違いないと思ったけど

 

 

花と人では立場が違うから

 

もしも私が生まれ変われるなら

 

社長秘書になれるくらいの

骨の髄から美しい人になりたい

 

 



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