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『毒ガス帯』のメモ

コナン・ドイル。

1913年発行。

 

龍口直太朗・訳。

1971年発行。

 

内容はすべて疑似科学というよりエセ科学。

毒ガス?毒のエーテルで人々が気を失った情景や目を覚ましたあとの様子、心機一転晴々とした様子の描写は秀逸。詩的才能を感じる。

ユーモア、ウィット、ときどきギャグ(マローンが見せる不謹慎な笑い)は100年前の英国も現代の日本も同じということか、ドイルが愉しい性格だったからか。

 

 

★★★★☆

 

 

<目次>

毒ガス帯

1.フラウンホーファー線のくもり

2.死の潮流

3.毒の海に沈む

4.死にゆく者の手記

5.死の町を行く

6.すばらしい目覚め

 

地球の悲鳴

分解機

 

 

<登場人物>

ジョージ・エドワード・チャレンジャー教授:有名な動物学者、アマゾン探検隊長。気難しすぎて一切妥協せず周りは敵ばかり。凶暴だが奥さんには弱い。風貌は大柄で猿人に似ている。ワイスマン学説、進化論。1863年生まれ。47+x

サマリー教授:比較解剖学、チャレンジャー教授のライバルだが、アマゾン探検に行って恐竜の存在を確かめる。細身、痩せている。66+x

ジョン・ロクストン卿:世界的な探検家、46+x。以前南米に来たとき奴隷を酷使する監督(混血スペイン系)ペドロ・ロペスに宣戦布告して殺害した。軍隊経験者でフェンシング、ボクシング、射撃が得意。

エドワード・マローン:『デイリー・ギャゼット』紙の記者、アイルランド人、23+x

 

マッカードル:『ギャゼット』紙の社会部長、編集長。マローンの上司。

 

オースティン:チャレンジャー教授の老執事・運転手。

 

ピアレス・ジョーンズ:アルトワ式掘抜き井戸の専門家。

ジャック・デボンシャー:大モーデン会社の副社長。

ロイ・パーキンズ:従軍記者。

 

 

テオドール・ネモール:ラトビア人発明家。分解機を発明。

 

<あらすじ>

◾️毒ガス帯

チャレンジャー教授は太陽スペクトルのフラウンホーファー線のゆらぎから地球が宇宙空間に存在する有毒エーテル帯に突入し地球上生命がすべて死んでしまうと発表する。

 

1915827日金曜日。

『デイリー・ガゼット』紙のマローン、探検家のジョン・ロクストン卿、サマリー教授はチャレンジャー教授に酸素ボンベを持って集まるように電報を受け取る。

 

3人が向かった先はサセックス州ロザーフィールド。ジャービス・ブルック駅。

そこにはチャレンジャー教授の、丘の上の新居があった。

 

4人とチャレンジャー教授夫人は夫人の部屋で酸素ボンベを少しずつ開けながら、窓から丘を見下ろして外の様子を見守る。

すると執事・運転手のオースティンやゴルフをしていた人たちが倒れて行ったのだった。

 

5本酸素ボンベをほぼ使い切ったところでチャレンジャーたちは死ぬ覚悟を決めて窓を割った。

しかし5人は死ななかった。

そこで5人は自動車でロンドンの町に出てみた。

通りにはさまざまな死体が横たわっていた。

 

1人だけ病気で酸素ボンベをいつも吸入している老婦人が助かっていた。

老後生活を支えている自分の持っている株が暴落してしまわないかを心配していた。

5人は教会に行って鐘を鳴らして帰宅した。

 

するとあくる828日土曜日、28時間後、人々が目を覚ましたのだった。

 

人類は自然のちょっとしたお情けで生きている。

何気ない日常生活に感謝と幸せを改めて感じるのであった。

 

 

◾️地球の悲鳴

 

(本作の621日火曜日という情報より、1921年のことと思われる。)

 

チャレンジャー教授は地球をウニのようなひとつの生き物と見立て、買い占めて立入厳禁の土地に秘密裏に8マイル立て坑(入り口は10メートルほど)を掘りリフトで昇り降りできるようにする。

 

その上で、アルトワ式掘抜き井戸の専門家ピアレスを招きドリルでさらに地下を掘るように依頼する。

万が一に備えて遠隔操作可能な電気ドリルを使った。

すると世界各地で噴火が発生。

リーデンブロック教授は自分の想定どおりになって満足したのだった。

 

 

◾️分解機

ラトビア人発明家テオドール・ネモールはあらゆる物を分子化し、また元通りに戻せる分解機を発明した。

さっそくロシア人が彼の分解機の原理を高額で買いに来た。

 

マローンとチャレンジャー教授はマッカンドルーに頼まれて、その機械の真偽を確認しに行ったら、本当だったテオドールはこの原理を使えば、戦艦も軍隊も、ロンドン市民も全て消すことが出来ると自慢げに語る。

爆笑の展開。

最後はチャレンジャー教授はテオドールを騙して分解機の椅子に座らせる。

 

 

<メモ>

◾️チャレンジャー教授『タイムズ』への公開状。

「毎日の新聞記事から自分たちの考えを寄せ集めているような無能な人々に、科学的専門用語を使って、わたしの趣意を伝えることができるとは思わない。そこで、わたしのほうから彼らの能力の限界に程度を落とし、貴社の読者の知性の限界であろうと思われる卑近な類推を用いて、その情況を説明することにしよう」

 

◾️訳の違い。

・前作『失われた世界』では、マローンの得意なスポーツを"International Rugby football player)"と書いてあったので「国際的なラグビー・プレイヤー」と訳せていた。

・本作では"Football player"としか書かれていなかったので「フットボール」という訳になっている。イギリスではサッカーのことをfoot ballというので、訳者は前作をちゃんと記憶していて間違わずに訳したようだ。

 

◾️827日が金曜日の年は1915年のため、1915年を想定した出来事と考えた。

ドイルはおそらくドイツ軍が1915422日に毒ガス兵器を使ったことから本作を思い付いたのではないかしかし本作が書かれたのは1912年。

毒ガス研究の話はその頃にすでにあったのか?

 

一方、ときどき酸素を吸入していれば気を失わずに済んだので、毒ガスや毒のエーテルというよりハレー彗星の噂のように地球上の空気が一時的に薄くなった(デマ)という想定の話ではないか?

ドイルの時代のハレー彗星の到来は1910年だったのでその可能性はある。

 

◾️チャレンジャー教授

・宇宙の園主は太陽系全体をいままさに消毒液の中に浸そうとしている。やっこさんたちも自分ら(人類という細菌・病原菌)の永続的存在がじつは宇宙の必然ではないということにぼつぼつ気がつき始めたようだな。

・生半可な教育を受けた人間の軽さは、無学な人間な鈍感さよりは科学にとって妨害になるもんだよ。

・わしの祈り方は運命が自分に与えてくれるものに全く黙従することさ。最高の宗教と最高の科学はその点で一致するような気がするな。

・科学は知識を求める。知識が我々をどう導こうとそれに従わなきゃいかんのだ。

・科学は利用方法の良し悪しにはわずらわされずに学問が進むところへはどこにでもついて行くのだ。

 

◾️チョウセンアサガオの毒

 

チョウセンアサガオ毒の作用と分布状態に関して、一定の法則が働いている?

 


この本の内容は以上です。


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