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存在とヒゲ

 世界の中に私やヒゲが存在しているのではない。私のヒゲが生えている限り、一つの生の世界が存在する。私はヒゲにより自己を了解し、ヒゲにより可能性をめがける。歩き出せば私以外の存在が次々立ち現れる。両手を広げなくとも風を感じる。空を見上げなくとも湿度を感じる。そして、暗い夜道でも世界を感じた。

 ある時、鼠と対峙する。その先に固有の死が待つことに触れる。おまえも同じヒゲを持つ者。かといって交わることは決してない。一匹であることを強く感じ、時に道を譲ることで自分を慰める。それが良心だと考える者もいる。気まぐれだと笑う者もいる。
 ヒゲがムズムズしはじめ前足で顔を洗う。雨が近いのだろう。風も強くなってきた。雨がしのげるところに向かった方が良さそうだ。私は少しだけヒゲを広げて小走りになる。最近、こんな天気が増えた。笑う者の良心が足りない。死ぬことが問題とならない。無駄な不安が多すぎる。ヒゲを持つといい。

 

 課題「猫SS」


10匹

「私たち抜きで私たちのこと決めないで」

 中央にはやたらと声がでかい男。エプロン姿のおばちゃんもいれば、一人は男か女か分からない。四つ脚もいれば、三つ目もいる。

「死にたくなる世の中を変えたい」

 震えながら懸命に小声を吐く小僧。それを抱えあげる筋肉質の女。後ろを向いたままのつむじ禿、まだ現れていない奴もいるという。

「こんな人たちに負けるわけにはいかない」

 あんたは唾を飛ばしながら指をさす。こんな人たちと呼ばれた連中を掻き分けて、一人の少女が踏み出した。

「誰もがその事実も解決法も全て知っている」

 あんたは少女に歯ぎしり。少女は俺たちをまっすぐに見つめたまま。

「目覚めて変化する。やらなければならないのはこれだけだ」

 まだ現れていない10匹目とは誰なのか。俺でよければと手を挙げたい気持ちを臆病風が押さえ込む。

せめて自分の意志で一票を投じたい。


奥付


Puzzzle文集11


http://p.booklog.jp/book/124104


著者 : puzzzle
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