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『フランケンシュタイン』のメモ

メアリー・ウォルストンクラフト・シェリー。

181811日発行。

 

気色悪い話だが名作。

 

幸福とはなにか?

 

詩人バイロンが借りていたレマン湖畔の別荘でホラーを書こうという話になり、この本の著者メアリー・ウォルストンクラフト・シェリーが書いたのがこの小説。

若いビクトル・フランケンシュタイン博士が学問を極めて、怪物(creature)を作り出してしまう。

しかし怪物を怖れてその前から逃げ出してしまう。

怪物の方は体長2.4メートル、氷河を渡り人間の住めない如何なる場所でも暮らせ、人間よりも優れた身体能力を与えられたが、同時に家族や友人を大切に思うビクトルと同じ心(?)も持っていた。

しかし自分の醜怪さを知り、自分には家族も友人も出来そうもないことを知り、創造主フランケンシュタインにその犯した罪を気づかせるために彼の家族や友人を次々と殺して行く、という話。

ブラム・ストーカー『ドラキュラ』は情愛とヒーローと冒険の話だが、こちらはサイコ・サスペンスという感じ。

また『ドラキュラ』は複数の登場人物に手紙や日記による『語り手』調だが、こちらはウォルトン隊長が聞いたフランケンシュタイン博士による『独白』を姉マーガレットに手紙で知らせるという形式。

文学でリアルな話にしている。

 

人間並みの頭脳を持ったけどロボットがもし誕生したら、人間並みの幸せを求め人間並みに苦悩するのか?

人工知能の将来に一石投じているとも考えられる。

そういう意味でSFの先駆けという解釈もできる。

 

 

メアリー・シェリーはカノン作家(時間の篩にかけられ、国民から最も多く読まれている、その国を代表する優れた作家という意味/市川純)という評価もある。

 

 

 

<目次>

極地探検に向かうウォルトンから姉サヴィル夫人への手紙

セント・ペテルスブルグで、17××1211

アルハンゲリスクで、17××328

17xx707

805

813

819

 

フランケンシュタイン博士の独白

1.私の生い立ち

2.自然哲学への夢

3.運命の門出

4.生命の創造へ

5.クレルヴァルとの再会

6.故郷からの便り

7.暴風雨の中で

8.罪なき者の処刑

9.呪わしい苦悩

10.怪物との巡り会い

11.物置小屋での寝起き

12.フェリクスの家族

13.アラビア娘の来訪

14.家の人たちの身の上

15.怪物とド・ラセー老人

16.怪物の旅

17.怪物との約束

18.イギリスへの旅立ち

19.荒涼たる島で

20.約束を破棄して

21.思いもかけぬ災難

22.帰郷と結婚

23.最愛の者の死

24.極地への追跡

 

ウォルトンの手紙

17xx826

902

905

912

 

 

<登場人物>

 

ウォルトン隊長――イギリスの探検家。28歳。しかし14歳の学校生徒より無学。友人は大切。

マーガレット・サヴィル:ウォルトンの姉。イングランド在住。

キャロリーヌ・ボーフォール:フランケンシュタインの父親の友人の娘。フランケンシュタインの母親。

 

ヴィクトル・フランケンシュタイン:スイスに生れた若い化学者。本篇の主人公。自然科学に熱中。

怪物:creature. フランケンシュタインの創造した巨大醜悪な生きもの。

 

フランケンシュタインの父:名はアルフォンス。かつて長官その他の顕職にあった。怪物に殺される。

エリザベート・ラヴェンザ:フランケンシュタインの許婚者。元はミラノの貴族の娘だったが零落してイタリアのコモ湖の夫婦に預けられていた。怪物に殺される。

アンリ・クレルヴァル:名はアンリ。フランケンシュタインの親友。ジュネーヴの商人の息子。道徳に熱中。怪物に殺される。

ジュスチーヌ・モリッツ:フランケンシュタインの父の家の忠実な女中。モリッツ夫人の娘だが敬遠されて来た。怪物のために死刑にされる。

ウィリアム:フランケンシュタインの幼い弟。7歳下。怪物に殺される。

エルネスト:16歳。スイス軍隊志望。

 

クレンペ氏:フランケンシュタインが尊敬する自然哲学の著述家たちをこき下ろす。

ヴァルトマン教授:フランケンシュタインの師匠。

 

コルネリウス・アグリッパ:ドイツの神秘哲学者。1486-1535

パラケルスス:スイスの医師、化学者。1493-1541

アルベルツス・マグヌス:トマスの師、ケルン大学に教えた科学的な博学者。1206-1280

 

フェリクス:フランス人。ド・ラセーの息子。ドイツに隠遁。

アガータ:フランス人。その妹。ドイツに隠遁。

ド・ラセー:兄妹の父親。盲目。元はフランスの名門。ドイツに隠遁。

サフィ:トルコ人商人の父とキリスト教アラビア人の母(元奴隷)との間に出来た美貌の娘。

サフィの父親:トルコ人商人。逮捕されて死刑になりそうだったがフェリクスに助けられる。

 

 

 

<あらすじ>

17xx1211日、セント・ペテルブルクからウォルトンの手紙イングランドの姉サヴィル夫人へ。

「もうロンドンより北に居ます。」

 

17xx0328

アルハンゲリスク(ロシア北西部)からウォルトンの手紙イングランドの姉サヴィル夫人へ。

「僕は、先人未踏の地へ、「霧と雪の国」へ行こうとしていますが、信天翁(アホウドリ)は殺しません。」

 

17xx0707

「アルハンゲリスクから出航します。」

 

17xx0805

731日に奇妙なことが起きた。

船はもう氷に囲まれて身動きが取れない状態だったので大分北方に来たと思っていたが、背の高い男が犬ぞりで走って行った。

そして翌日、ヨーロッパ人がやはり犬ぞりで近くに来たので乗せてあげた。」

 

17xx0819

船に乗せた見知らぬ人が明日から自分の身の上話をすると言う。

 

 

両親の結婚の話、一つ違いの女の子エリザベートが養子となったこと、アンリ・クレヴァルという親友のこと、尊敬する自然哲学者の話、そして母の死。

 

インゴルシュタットに学業をまなびに行き、大学でクレンペ教授とヴァルトマン教授に会い、ヴァルトマンに師事したこと。

無生物に生を与える方法を会得したこと。

 

ついに身長2.4メートルの怪物(creature)を作り出すことに成功するが怖れて逃げる。

大学ではフランケンシュタインはすでに学ぶことがなくなっていた。

親友アンリが来て、家族に手紙を出すように言われる。

 

17xx0318

エリザベートからの手紙。家族の様子。

 

17xx0512

父親から手紙で弟ウィリアムが57日に何者かに殺されたことを知り、ジュネーヴ戻る。

 

フランケンシュタインは自分の作った怪物がウィリアムを殺したと確信する。

しかし実家に戻ってみると、女中のジュスチーヌに嫌疑がかかり逮捕されてしまっていた。

 

以下、要約。

そしてフランケンシュタイン博士の前についに怪物が姿を現し、それまでどうやって暮らして来たか話をする。

人々が自分を見た時の驚き方見て、自身の醜怪さに気づいたという。

 

ある家族(フェリクスたち)を近くの小屋から観察し、言葉や人間の歴史、愛し合う家族というものを知った。

しかし自分にはそうした家族という存在がないことを知る。

なんとか自分を受け入れてもらえないかと、盲目の家の当主に近寄って親交を結びたいと思ったが帰宅した長男に追い出されてしまった。

 

そこで自分は研究室にあったノートの情報を頼りにフランケンシュタイン博士を訪ねた。

 

そしてフランケンシュタイン博士の幼い弟を殺し、女中のジュスチーヌを殺人の容疑がかかるようにした。

 

そして怪物は自分にも家族となる女性をひとり作ってくれれば、いっしょにどこか人里離れた遠くへ行って暮らす、という。

 

フランケンシュタイン博士はこの不死身の怪物に恐怖を覚え、一度はその脅迫を受け入れてイギリスに渡り、女性の怪物を作ろうとするがやめてしまう。

 

すると親友のアンリが殺されて見つかる。

 

殺人の容疑をかけられたフランケンシュタイン博士を父親が迎えに来て嫌疑も晴れてスイスに帰る。

 

そしてエリザベートと結婚して新婚旅行に出るが、エリザベートもまた怪物に殺されてしまう。

 

父親はそれを聞き絶望のうちに死んでしまう。

 

フランケンシュタイン博士は武装して怪物を追って極地に犬ぞりできたが犬たちも死んで筏に乗り換えたところで、氷に囲まれて身動きが取れなくなっていた、極地探検航海中のウォルトン隊と会ったのだった。

 

フランケンシュタイン博士は熱病で倒れてしまう。

船では水夫たちの暴動が起きそうだった。

氷が無くなったら南へ帰ると約束するよう迫って来た。

ウォルトンと違い、水夫たちには光栄と名誉という観念は無かった。

 

フランケンシュタイン博士は死に際にいう。

怪物には理性もあったが悪意と利己心もあった、自分の手で倒さなければならなかったが失敗したという。そして錯乱してウォルトンに後を引き継いで怪物を倒してくれと示唆する。

 

最後に「平穏無事のなかに幸福を求め、野心はお避けなさい、たといそれが、科学や発見で功を立てようという見たところ無邪気な野心でしかないとしても。だけど、なぜ、こんなことを言うのでしょう? 自分こそこういう希望にやぶれましたが、ほかの人なら、成功するかもしれないのに。」

フランケンシュタイン博士もまた絶望のうちに死んだ。

 

怪物は心無い創造者フランケンシュタイン博士の死に複雑な悲しみを抱き、ウォルトンと話して「二度と自分のようなものが作られないように、自分に火をかけて自殺する」と告げて去って行った。

 

 

<メモ>

フランケンシュタイン。

「父は私の教育に際して、私に超自然的な恐怖を感じさせないようにできるかぎりの注意を払ってきた。」

 

「そのころ私がそうだったように、不用心で熱に浮かされているあなたを、破滅や避けがたい悲惨事のほうに曳っぱっていきたくはないのですよ。」

 

「あなたの専心なさる研究があなた自身の愛情を弱め、また、混りものとても入りっこないその単純な喜びのために、あなた自身の好きこのみを台なしにする傾向があるとしたら、その研究はたしかに法にかなっていませんよ。つまり人間の心に適しないのですね。」

「もしも、この原則がつねに守られるとしたら、つまりその人の家庭的愛情の平静を妨げるものであるかぎり、なんであろうと、それを追求することを許さなかったとしたら、ギリシアは奴隷化されなかったし、カエサルは自分の国を救ったし、アメリカはそんなに早くは発見されなかったし、したがってメキシコやペルーの帝国も、滅されなかったというわけですよ。」

 

エリザベートフランケンシュタイン。

「私たちの幸運な国では、この身分は、無知という観念も、また人間性の尊厳をそこなうことも、含んではいないのです。」

 

フランケンシュタインの怪物。

人間の言葉を覚え、人間とその家族、歴史などを知るにつけて、自分には身寄りがない事が分かってきて、

「知識が深まるにつれて悲しみが増した」。

 

ウォルトン怪物。

「おまえはたくさんの建てものに松明を投げこんでおいて、その建てものが燃えてしまった時に、その焼け跡に坐って、それがなくなったと言って歎いているわけだ。腹黒い鬼め! おまえがいま弔っている人がまだ生きていたら、おまえの呪われた復讐の餌食になるにきまっている。おまえがいま感じているのは憫れみじゃない。おまえが歎いているのは、ただ、おまえの悪意の犠牲者がおまえの力のとどかぬ所へ行ってしまったからだよ。」

 

怪物ウォルトン。

 

「かつて、おれの空想は、美徳と名声と享楽の夢に和らいでいたものだ。かつておれは、おれの外形を承知して、おれの示せるすぐれた特質のゆえにおれを愛してくれる人に出会いたいという、まちがった望みをもっていた。おれは名誉や献身という高邁な理想を抱いたこともある。しかし今では、犯罪のために、もっとも蔑しい動物以下に堕落してしまった。」

 


この本の内容は以上です。


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