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(携帯電話)

方子「もしもし、修さん、元気?」

修 「おうー、方子、どないしたんや」

方子「単身赴任ご苦労様」

修 「なんや、とってつけたみたいに」

方子「明日そっちへ行くね」

修 「なにしに来るんや」

方子「何しにって、暑うなってきたから布団夏用に替えんといかんから」

修 「わざわざ来んでもええぞ。遠いんやから」

方子「そんなこと言うて、ほってたら汗ダラダラかきながら冬布団で寝るんでしょ」

修 「なんも掛けんと寝たらええがな」

方子「風邪ひくやないの。とにかく行くから」

修 「どないして来るんや」

方子「うちの車よ」

修 「く、くるまあ!正気か!」

方子「なによ!」

修 「そ、それだけはやめてくれ!電車があるやろ」

方子「入れ替えた冬布団背負て帰れ言うん?」

修 「そうしてくれ。絶対迷うぞ!」

方子「大丈夫よ」

修 「お前が大丈夫いう時が一番恐ろしい」

方子「真衣も連れて行くね。夏休みやから」

修 「そんな、真衣がかわいそうや~」

方子「もう切るよ」

 

(ショッピングモール)

真衣「わー、きれいなショッピングモールやなあ」

方子「初めて来たけどすごいな。ちょっとジェラート食べよか」

真衣「やったー!」

方子「やっぱり抹茶にした方がよかったかな」

真衣「いっつもお母さんはそんなこと言う」

方子「お母さん、迷ってまうんやわ」

真衣「真衣のはチョコでおいしかった」

方子「そうや、寝具売り場はどこかなあ。こない広かったら分からへん」

真衣「あっちや!」

 

方子「はーやれやれ、ええのが安う買えてよかった」

真衣「お母さん、このショッピングモールめっちゃ広いけど、パーキング大丈夫?」

方子「えへん!今日はいつものドジ母さんとちがうで。このチケットにちゃんと停めたとこの番号書いといたから。うふふ」

真衣「さーすがあ!今日は久しぶりにお母さんとドライブ、ルンルンや」

方子「ぎゃー!」

真衣「ど、ど、どないしたん?」

方子「番号の上に売り場のスタンプ押してあって、見えへん。どないしょ」

真衣「どこに車止めたか覚えてないん?」

方子「番号書いたから安心してた。何階やったか、真衣覚えてない?」

真衣「えー、すぐエレベーター乗ったから、うーん」

 

方子「あのう、私の車どこですかねえ?」

警備員「奥さん、そら無茶ですわ。まあ思い出して自分で探してもらわな」

方子「はあ、まあそうですねえ」

 

真衣「あったー!もう汗びしょびしょ」

方子「はー、しんど。息が切れた。真衣ごめんな」

 

 (車内)

方子「さあ、はよ行かな。部屋の掃除もしたいし」

真衣「お父さんどんなとこに住んでるん?」

方子「ワンルームで、布団が敷いてあるだけ」

真衣「いつになったら帰って来るん?」

方子「ようわからんみたい。別の会社出来たばっかやから、たいへんなんやて」

真衣「いっつも忙しそうや、お父さん」

方子「今日は部屋ぴっかぴかにしてあげよ」

真衣「私も手伝うね」

方子「ええ子や、真衣は」

真衣「みんなに言われてる」

方子「それ自分で言うか」

真衣「えへへ」

方子「今高速入ったから、もうすぐ海が見えてきれいやで」

真衣「ドライブ!ドライブ!」

方子「久しぶりやもんね、真衣とドライブ」

真衣「それでも海なんか全然見えへん」

方子「きれいな大きな橋いくつも通るはずやけどなあ」

 

方子「もしもし修さん」

修 「おう、阪神高速入ったか?ポーアイから?」

方子「そんなん通らへんかった。でも阪神高速」

修 「湾岸線に乗らんとあかんがな。そやから!ほんまに」

方子「ちょっと間違えたかな。えへへ」

修 「しゃーない。そのままとにかく大阪へ行くしかない」

方子「わかった。大丈夫や」

修 「こわいからそれ言うな。標識よう見るんやぞ」

方子「着いたら電話するわ」

真衣「海見えへんやん」

方子「お母さんちょっとミス。海は帰りに見よな」

真衣「お腹すいた」

方子「高速下りたら何か食べよな。何がええかなあ」

真衣「ハンバーガー」

方子「やれやれやっと大阪や」

真衣「ハッピーセット」

方子「もうちょっと待っとってな」

真衣「もうしんどい」

方子「あれ?おかしいなあ。なんで?奈良方面?」

  「もしもし」

修 「着いたか。ご苦労さん」

方子「なんでか奈良方面って標識出てる」

修 「なんでやねん!あーもう」

方子「間違えたみたい」

修 「そやから言うたやないか!」

方子「私どこにおるんやろ?」

修 「危ないからとにかく高速下りてくれ」

方子「インターから出たよ」

修 「もうしゃーない。今からタクシー飛ばしてそっちへ行く」

方子「どこ?ここ」

修 「俺が聞いとるんや!近くに何が見える?」

方子「ポスト」

修 「あほか!そんなもんどこにでもあるやろ」

方子「犬が散歩してる」

修 「動いとるもん言うてどないするんや!おちょくっとるんか」

方子「大きいでえ」

修 「サイズなんかきいてへんねん」

方子「熊みたいやで」

修 「熊でもトラでも動いとるもんはあかん」

方子「もうちょっと走ってみる」

修 「やめてくれ!頼むからじっとしとってくれ」

方子「セブンイレブンの駐車場入った」

修 「そやからなんか地名分かるもん言うてくれ」

方子「宿院店て書いてある」

修 「堺やな。行くから」

方子「そんなことなんで分かるん、天才や」

修 「じっとしとれよ。真衣は?」

方子「おなかすいて怒ってる」

修 「かわいそうに。待っとれよ。お父さんがもうすぐ行くから」

 

方子「来てくれたん?すんません」

真衣「やあお父さん、それ会社の服や、初めて見たわ」

修 「お父さんな、会社からタクシー乗ってきたんや」

真衣「なんかかっこええわ」

修 「そうかあ。おいしいもん食べに行こか」

 

 (ワンルーム)

方子「お世話かけてしもてえらいすんませんでした」

修 「帰り気いつけてくれよ」

方子「いくらなんでも帰りは大丈夫や」

修 「おーこわ、その大丈夫ってのがほんまにこわい。

   真衣、お父さん会社に戻るからな」

真衣「いつ帰ってくるん?」

修 「お盆には帰るからな」

真衣「プール連れて行ってね」

修 「まかしとけ。宿題しとくんやぞ」

真衣「もうばっちりや」

修 「ええ子や、真衣は」

真衣「みんなに言われてる」

修 「自分で言うか」

 

方子「さあ掃除しょ!」

真衣「うわー!トイレきたな」

方子「お風呂もえらいことなってるがな」

 

(車内)

真衣「お父さんの部屋、ピカピカになったね」

方子「冬布団も積んだし、出発や」

真衣「のど乾いた」

方子「ほんまやな、ちょっとカフェよって疲れとろか」

真衣「わーい」 

方子「さあ帰ろ。あれ?どっちやったかな?」

真衣「お母さん、来たとこへ戻ってるで。ドライブいやや」

方子「ほら、夕焼けがきれいや。外見とり」

真衣「夕焼けなんかどうでもええ。お家帰りたい」

方子「海が見えんとあかんのやけど。おかしいなあ」

真衣「山ばっかやで、お母さん」

方子「おかしいなあ」

真衣「どんどん山奥へ来てる!」

方子「ちょっと止まろか」

真衣「もういやや、いやや、うわーん!」

方子「泣きないや。お父さんに電話するから。もしもし」

修 「もう着いたか?」

方子「なんか山奥へ来てしもた」

修 「もうなにやっとんや!真衣は?」

方子「泣きながら寝てしもた」

修 「真衣をえらいめにあわせてから、ほんまに。

   この忙しいのに日に二回も仕事抜けられへんぞ」

方子「もうしゃーない、あんたの布団あるし車内泊するわ」

修 「車内泊ちゅうより、しゃーない泊やな」


この本の内容は以上です。


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