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tovo plus〜あおもりの100家族、わたしたちのこれから。[season 7] No.078

今号(79 家族目)のご家族 ▶

木立 彰 さん・恭子 さん

撮影場所 ▶ 岩木川カヌー競技場(西目屋村)

 

【インタビュー】

●カヌー競技の元選手で、日本代表の現役コーチでもある彰さん。2016年に恭子さんと西目屋村に移住し、カヌーとラフティングの観光事業を始めました。2011年の時点では青森市にお住まいで、まだ別のお仕事をしていましたね。3月11日のこと、憶えていますか?

▶彰さん「当時は施設管理会社に所属し、県営スケート場に勤務していました。事務所にいたらガタン、ときて、揺れが長いので、これはまずいとリンクまで走って行ったんですが、(揺れで)なかなかたどり着けなかった。スケート靴を履いたまま避難していたお客さんもいましたね。お客さんを帰して施設と周辺の点検をして、20時ごろ帰宅したと思うんですが、はっきり憶えていなくて。」

▶恭子さん「私は当時、地元新聞社のデジタル部門に勤務していました。ネットでいち早く情報を伝えるのが仕事だったので、可能な限りの情報発信を続けていたように記憶しています。翌朝の新聞が出来上がり、ネット配信の準備を整えて帰宅したのは午前2時か3時か…。毎日通いなれた通勤路ですが、信号機すら消えた真っ暗闇を走るのがとても怖かったことを憶えています。」

 

●娘さんは当時中1と中3。両親が遅くまで帰れない状態で、どうしていたのでしょう。

▶恭子さん「当時は夫の出身地で郊外の高田地区という、古くからの集落に住んでいて、子どもたちの親の半分は、その土地で生まれ育って幼馴染み同士というような環境で。ふだんから『ここの家は、親がいなければ子どもは〇〇に預ければ安心だ』という共通認識や、その場の状況に応じてベストな判断をしてもらえる雰囲気がありました。あの日も、次女は同級生の親が自分の子と一緒に学校から連れてきて、家にいた長女を拾って、おじいちゃんの家に送り届けてくれたんです。田舎の人間関係をわずらわしいと思う人もいるかもしれないけど、うちはそれにすごく助けられたと思います。」

▶彰さん「自分は仕事とカヌーのトレーニングのために京都に住んでいた時期があって、京都出身の恭子と知り合って結婚しました。1995年の阪神淡路大震災のときは長岡京市に住んでいて、恭子のお腹に長女がいて。自分たちの住まいやそれぞれの勤務先は大きな被害はなかったけれども、神戸の親戚や知人など、身近で被害に遭った人もいて、災害への心構えがもともとあったのは大きかったと思います。」

 

●その後はどうしていましたか。

▶彰さん「実家には灯油ストーブがあったし、自宅にはアウトドア用品など一通りのものはそろっていて、困りませんでした。家族で話し合いやルールづくりも特にしなかったですね。近くに住む実家の両親を含め、日ごろから仲良くして、お互い大切にして、っていうのがむしろ当たり前のことだから。」

▶恭子さん「震災そのものより、その後の物資不足の方が深刻でした。阪神大震災では実は『震災後の不便』というのはそんなに感じなかったんです。ところが東日本大震災後の青森は、東北道が閉鎖されるなどして、一時流通が途絶えた。ガソリンも食料も日用品も。こんなに不便な思いをするのかとこたえました。

震災の翌年、福島県でカヌーの大会が開かれたんですが、娘を出場させるかどうか迷いましたね。結局行きましたが、現地では私たちが触れていた以上に原発のことを細かく報道していて驚きました。福島からそのまま(恭子さんの実家のある)京都に行ったんですが、そちらではいわゆる『温度差』に驚きました。京都ではもう意識することもないような雰囲気で、東北という、遠いところの話なんだな…と感じましたね。」

 

●10年後、どんなイメージを描いていますか。

▶彰さん「西目屋村は白神山地と岩木川という環境を生かして、1996年からカヌー振興に取り組み始めました。自分はたまたまその翌年に青森県にUターンし、西目屋と縁が深くなっていき、いまに至っている。いま子どもたちにカヌーを教えているんだけど、10年後にはここからカヌーの日本チャンピオンを出す。いや、その前に出すね。」

▶恭子さん「ここで毎年全国大会を開いていて、最近は他県の大学生の選手たちが夏の練習場所の一つとして訪れるようになってきた。リオ五輪に出場した矢澤一輝選手も2017年春に西目屋村に移住し、練習しています。青森県内のカヌー競技人口が増えて、西目屋村がカヌーをやる人たちで活気づいていればいいなと期待しています。」

 

【取材後記】

西目屋村は、おふたりが以前住んでいた青森市高田地区と同じように、地縁血縁の濃い地域。移住当初に住んだ地区では、月に一度、地域住民が集まる飲み会があり、村にとけこみやすかったそうです。取材しながら、熊本地震を経験した学者が講演会で「災害時のセーフティーネットは、金銭ではなく人間関係によって成り立つ」と言っていたことを思い出しました。四季折々が美しい西目屋村。紅葉を眺めながらのカヌーは癒やされますよ。木立さんの事務所「A’GROVE(エイグローヴ)」を、ぜひ訪れてみてください。

(今号No.078のインタビューと撮影:前田ふひと)

 

【寄付総額】2011年6月〜2018年8月29日まで「¥6,746,747」を、あしなが育英会「あしなが東日本大震災遺児支援募金」へ寄付することができました。ご支援に深く感謝致します。

 

【定期購読のご協力を!】1年間の定期購読を承ります。1,800円(送料・寄付含)/1年間(12号)です。このフリーペーパーは定期購読の皆様のご支援で発行されております。ご支援の程、宜しくお願い致します。ご希望の方は、ウェブショップ(http://shop.tovo2011.com)よりお申し込みください。

 


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最終更新日 : 2018-09-12 23:57:20

この本の内容は以上です。


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