目次
社会問題
死刑制度と終身刑
選択的夫婦別姓制度に関して
選択的夫婦別姓制度に関して パート2
労働環境・雇用環境改革の一試案
年金制度は40数年後を目途に生活保護制度を補充する制度に移行すべき
社会思想・のようなもの
ホッブズとマルクス
資本主義と社会主義-戦国時代の民主主義者
進歩史観の2つのバリエーション ― 「折り返し史観」と「螺旋史観」
原始共産制について
形式民主主義と実態民主主義
保守主義について
歴史と戦争
第二次大戦後の3つの歴史観
日本近現代史をめぐる4つの歴史観
侵略戦争と自衛戦争
大東亜戦争=アジア解放戦争論の欺瞞
大東亜戦争を「アジア解放戦争だ」「自存自衛のための戦争だ」と言って肯定している連中はただの馬鹿
「太平洋戦争」と「戦後民主主義」をめぐる言説のねじれ
「戦前・戦後」と「戦前・戦中・戦後」
憲法9条と日本の軍事政策
あなたは憲法9条改正に賛成ですか
日本の軍事政策の基本理念に関して
憲法9条改正をめぐる三つ巴戦
日本の軍事政策 ― 2つの理想主義と現実主義
護憲派とは何か ― 反戦平和の思想を考える
日本の軍事政策 ― 新理想主義的立場からの一私案
日本の争点
二重憲法・二重国家体制としての戦後日本
憲法観・国家観をめぐる対立
国旗と国歌をめぐるオセロゲーム
国旗・国歌は必要か
明治は続くよいつまでも
国旗・国歌をめぐるイデオロギー闘争
靖国問題の争点
政治エッセイ
60年安保私観
国民投票法と天皇制
憲法96条問題
保守の国・リベラルの国
建国記念日が3つあってもいいじゃないか
倒幕派と佐幕派の戦いで徳川幕府が勝利したならば、日本が世界で最初の社会主義国家になったのではないかというお話
護憲派と保守派の再定義

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死刑制度と終身刑

 日本で死刑制度が論じられるときは、「死刑制度を廃止すべきか、存置すべきか」といった点のみが論じられているケースが多い。

だが、死刑制度の問題を論じるときは、「終身刑を導入するかしないか」「一番重い刑とその次に重い刑のバランスをどうするか」、これらの点もあわせて考察しないと、実りのある成果は得られないだろう。

 

一番重い刑(以下「最高刑」と表記)とその次に重い刑(ここでは便宜的に「次刑」という言葉を使用しておく)の組み合わせは、単純に図式化すると以下の4つになる。

1 最高刑=死刑、次刑=終身刑

2 最高刑=死刑、次刑=無期懲役

3 最高刑=終身刑、次刑=無期懲役

4 最高刑=無期懲役

(死刑、終身刑、無期懲役以外の刑を、最高刑または最高刑の次に重い刑にするという考えもあるが、議論が繁雑になるのでここでは除外しておいた。)

 

現在の日本は、2つめの最高刑=死刑・次刑=無期懲役という制度をとっているが、私はこの制度は非常にバランスの悪い制度だと思っている。

無期懲役の場合、15年位刑に服したあと釈放されるケースもあるそうだが、最高刑になった場合は命が奪われるのに、最高刑を免れた場合は実質的に懲役15年程度のケースもあるというのは、刑罰の制度としてはバランスが悪すぎると感じる。

死刑制度を廃止する、しないにかかわらず終身刑を導入して、現行制度のバランスの悪さを改善する必要があると思う。

 

 

ただ、終身刑の導入については、死刑以上に残酷な刑罰だという人道的な観点からの反対論だけではなく、経済的(財政的)観点からの反対論も根強くあるだろう。

終身刑が導入された場合、刑務所の数が足りなくなるというケースも考えられるし、終身刑導入によって経費が大幅に増大することもあるかもしれない。行政の担当者からすれば、死刑になって存在そのものがいなくなってくれるか一定の刑期を終えたら刑務所を出て行って欲しいというのが本音なのかもしれない。

また、死刑制度存置派でかつ終身刑導入反対派の人は、凶悪な殺人事件の犯人は一刻も早く死刑にすべきだ、終身刑を導入して税金で死ぬまで面倒をみるべきではない、と主張する人が多いかもしれない。

人の命にかかわる問題を、お金の面からどうこう言うべきではないという意見もあるかもしれないが、現実に終身刑制度を導入するときには、財政の問題を避けて通るわけにはいかないから、お金の問題が一番の争点になるかもしれない。

 

終身刑が導入されない場合、死刑制度が存置されるのなら、現行の最高刑=死刑・次刑=無期懲役というバランスの悪い制度がそのまま維持される。(最高刑が死刑、次刑が無期懲役という制度を、バランスが悪いと考えない人もかなりいるのかもしれないが。)

一方、死刑制度が廃止される場合は、最高刑が無期懲役(または終身刑以下無期懲役以上の最高刑をあらたに制定)ということになり、厳罰化とは逆の方向にむかうことになる。

やはり、死刑制度を廃止する、しないにかかわらず終身刑は導入したほうがいいだろう。

 死刑制度を存置したまま終身刑を導入した場合(最高刑=死刑・次刑=終身刑)、今までの死刑判決・無期懲役判決と同様の事件の多くが終身刑となる可能性が高い。いきなり死刑制度を廃止するよりは、当面は死刑・終身刑併用制を導入し、その結果を踏まえた上で最終的に死刑制度を廃止するか存置するかを決めればよいのではないか。

 

なお、私自身は、裁判で一番重い刑罰がくだされた場合、死刑か終身刑かを囚人が選べるという制度を半分以上は本気で考えている。

死刑になる位なら、刑務所の中ででも生きていたいと思う人は終身刑を選べばいいし、一生刑務所の中で生きていく位なら、死んだ方がましだと思う人は死刑を選べばいいと考える。

まあ、このような主張は一般には受け入れられないだろうし、特に死刑制度にも終身刑制度にも反対している人は、この意見に対しても強烈な批判を寄せるだろうと想像できる。

ただ、無期懲役を最高刑にすべきという主張は、死刑制度廃止以上に受け入れられないのではないかとも考えるが。


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最終更新日 : 2018-08-04 16:06:27

選択的夫婦別姓制度に関して

 

(2010年5月14日記述)

 

選択的夫婦別姓制度については、特にこれといった意見をもっているわけではない。はっきりいってしまえばどちらでもいい。ただ、結婚後も生まれたときから名乗っていた姓を戸籍上の姓としたいと考えている人たちの気持ちは理解できるので、選択的夫婦別姓制度の導入によって、そう考える人(主に女性だけど)の願望がみたせるのならそれでいいんじゃないとは思う。

だが、思想的・理論的に深く掘り下げたうえで導入しないと成功しない可能性もある。

 

選択的夫婦別姓制度を導入しても、これを選択する夫婦はごく少数だろう。その場合、両親の姓がちがうことが子供の成長に悪い影響をもたらさないか、子供が学校でいじめられないかといったことが懸念されよう。

ただ、こうした問題は子供のいない夫婦にはあてはまらないし、また教育によって解決できる問題でもあるので、根本的な問題点ではない。

この制度の問題点は、多くの人が夫婦別姓を選択したときにあらわれるだろう。二世代、三世代で同居した場合、1つの家の中に3つ以上の姓の人間が同居することになるから、何のために姓という制度があるのか疑問が生じることになるだろう。姓の存在意義について、明確な思想的・理論的裏付けを考えておかないと制度が機能不全に陥るかもしれない。

夫婦別姓制度に関しては、宮崎哲弥が『正義の見方』(新潮OH文庫版)の中で主張していた、夫婦別姓制度を導入するならそれと同時に改姓の自由(自分の好きな姓に変更する自由)も認めるべきだといった意見が面白かったし、こちらの方が理論的に整合性があるように思う。

 

選択的夫婦別姓制度に対しては根強い反対があるから、仮に実施されても数年後には揺り戻しがおこる可能性もある。政権交代がおきたら改正されるかもしれない。(その場合、既に別姓を選択している夫婦の取り扱いが問題になるけれども。)

定着して多くの人が満足している制度を改正するのは困難ではある。

 

テレビでの、この問題をめぐる討論をみていて不快に感じるのは、保守・右派と呼ばれる人が馬鹿の一つ覚えのように唱える「文化・伝統を尊重しろ」という主張である(保守の一つ覚え?)。そんなに文化や伝統を尊重したいのなら、江戸時代までのように身分制を復活して、特権階級のみが姓をもつ制度に復帰すべきだろう。現在の姓の制度は、明治以降成立したたかだか百数十年の歴史をもつものにすぎないし、そもそも現在の多くの制度は、それまで何百年以上も続いた文化や伝統をぶち壊して成立したものだろう。

文化や伝統については、それを変えずに守った方がいいのか、変えた上で継続した方がいいのか、廃止した方がいいのか、1つ1つ検討する必要があろう。ただ、続いてきたのだから守れというのは何も言っていないのと同様である。

 

選択的夫婦別姓制度に反対する人は、家族は同じ姓をもつべきと主張する。この制度を制定しようとする女性の多くは、結婚後女性が男性側の姓を名乗る慣習に異議を唱える。結婚後、男性が女性側の姓を名乗ることを法律で強制すれば、両者の願望はみたされる。結婚後、姓を変えたくない男性の希望は無視されるが、今まで長い間女性側が我慢をしてきたのだから、今度は男性側が同じ思いをすればいい、という考えもあるかもしれない。

まあ、私自身は、どちらかの姓に統一する夫婦、別姓を選択する夫婦、改姓・創姓を選ぶ夫婦、本人が望む生き方を選択すればそれでいいと考えている。

(その場合、姓を放棄して名前だけで生活するのもありなんだろうか。)


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最終更新日 : 2018-08-04 16:06:07

選択的夫婦別姓制度に関して パート2

 

(2015年12月記述)

 

5年前にこの問題について記述した時はどっちでもいいと書いたが、現在は姓の制度に関して改正を加えるべきだという考えに変わった。

この問題の根本的な検討点は、結婚によって戸籍上の姓を変えたくないと考えている人の望みや自由を保障すべきか、それとも結婚したら夫婦は戸籍上の姓を同一にしなければいけないという、明治時代に制定された制度を固守すべきかという点だろう。

 

現在の姓の制度は、結婚はしたいが、結婚後、姓を変えたくない人に対し、「結婚したいのなら、どちらかが姓を変えろ」「どちらも姓を変えたくないのなら、結婚するな」と二者択一を迫る形になっている。

現在までは、姓を変えたくないので籍をいれるのを諦めて事実婚を選択したカップルは少数であったため、結婚制度がそれなりに上手く機能してきたし、結婚後も姓を変えたくないと考える少数の人たちの望みや自由は無視されてきた。

選択的夫婦別姓制度に反対している人たちは、今後、姓を変えたくないから結婚しないという選択をする人が多数派となって未婚率の増加、少子化の拡大という現象が生じても自説を主張し続けるのだろうか。

姓を変えたくない人が少数派の時は、その人たちの望みや自由を無視するのに、多数派となり、未婚率が増大したなら別姓を認める方針に転換するのではないだろうか。

(逆に言えば、そうような状況にならない限り、選択的夫婦別姓制度は導入されない可能性もある。)

 

選択的夫婦別姓制度が導入されないのなら、次のような制度を検討すべきだろう。

1 姓を変えたくないので籍をいれず事実婚を選択している夫婦に対しては、役所に「事実婚」の届け出を出すことによって戸籍上の夫婦と同等の権利をあたえる制度を導入する。この場合は、事実婚を解消した場合は解消の届け出が必要となるが。

 

2 姓を変えたくない場合、自分の姓と配偶者の姓、二重に姓をもてる制度を導入する。

この場合、検討点として、子供も父方の姓、母方の姓、二重に姓をもてるのか、どちらか一つの姓を選択しなければいけない制度にするのかという点。

子供にも二重姓を認めた場合、二重姓同士のカップルが結婚する場合、姓が四つあることになるが、このことをどうすべきかなどという点がある。

 

いずれにしろ、結婚はしたいが姓を変えたくない人の望みや自由も認める制度へと変更すべきだと考えるが、「姓を変えたくないので事実婚を選択している夫婦に対して、法律婚を選択した夫婦と同等の権利は与えるな。」「戸籍上の姓は一つであるべきだ。二重姓などは認められない。」と考える国民、政治家が多数派であるのが現状であるのかもしれない。

 

 

  *補注

選択的夫婦別姓制度に反対する人たちは、子供の姓の問題を反対の理由にする人が多い。上記の二重姓の制度も、子供の姓の問題を検討点としてあげておいた。この点に関しての改善案を以下に記述する。

 

結婚後、夫婦どちらかの姓を家族の姓とする。生まれた子供の姓は家族の姓とする。結婚しようとする夫婦がどちらとも戸籍上の姓を変えたくない場合、家族の姓にしなかった方は、元からの姓と配偶者の姓、二重に姓をもつことを可能とする。


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最終更新日 : 2018-08-04 16:05:49

労働環境・雇用環境改革の一試案

十数年前から、格差問題、非正規雇用者やワーキングプア層の増加、派遣労働者の問題など労働環境、雇用環境をめぐって様々なテーマが議論されている。

多くの国民、労働者にとって一番望ましいのは、1980年代までのように、正社員希望者はよほどの事情がない限り正規雇用され、かつ定年まで右肩上がりに上昇する賃金体系が維持されることだろう。

だが、80年代までの雇用環境は、経済成長期だからこそ維持できたのであり、経済成長期がすぎた今、かつてのような状況に戻ることはできないという主張もある。

その主張が正しいのだとすれば、現在のように労働者が正規雇用者と非正規雇用者に分断された状態で、弥縫策でしかない対策をとるか、それとも労働環境、雇用環境を社会保障制度も含めて大きく改革するかしかないだろう。

企業側、経営者側の利益優先ではなく、働く側の権利や待遇を改善させるという観点から、私の考える労働環境、雇用環境改革案を述べてみる。

 

まず、正社員希望者は正規雇用し、働く側が非正規雇用を望んだ場合のみ、そうするというのが原則ではあるが、企業側、経営者側の事情で全員を正規雇用できないのであれば、非正規雇用者にも正規雇用者と同等の権利を付与する。

それによって企業側が非正規採用することのメリットを減らすとともに、非正規雇用者の待遇を向上させる。

同一労働同一賃金制の導入(この場合、正社員の賃金を非正規雇用者に合わせるのではなく、非正規雇用者の賃金を正社員に合わせるのでなければ意味はないが)。最低賃金の保障。現在正社員のみが加入対象となっている社会保険、雇用保険に非正規雇用者も加入できるようにする。ボーナスや退職金を非正規雇用者も支給対象とする。法律の大幅な改正が必要になるだろうが、派遣労働者にも契約打ち切り時に退職金に相当するものを支給する制度を導入する(そうすれば、経営者側が派遣労働者を便利に使い捨てできる道具として扱っている現状を少しは改善できるだろうし、また派遣労働者の生活保障にも少しは役立つだろう)。

 

一方、一度正規雇用したら定年まで右肩上がりに上昇する賃金体系が、経営を圧迫するとして非正規雇用者の増加、リストラ名目での中高年層の解雇の原因となっている。

このような状況を改革(それが改善であるとはいえないかもしれないが)するために、現行の賃金体系を根本から変更する。

現在、月給と賞与という形で支給されている給与を、営業職などで採用されている固定給と歩合給の併用的なものにあらためる。

固定給は、最低保障賃金的なものとして月給として支給する。

そして、それとは別に、企業の経営状態、業績などに応じて大きく増減できる分を変動給として支給する。

ただし、会社の利益の一定割合以上は、変動給として労働者側に還元させることを法的に義務付けなければ、労働者側は固定給のみの安い給与で会社に奉仕させられることになるだろう。

なお、この変動給分を年棒的な支給方法にするか、年何回かの賞与的な支給方法にするか、それとも月給として支給するかは検討の必要があろう。

また、変動給を能力給的なものにすれば、個人の実績に応じて給与が上昇することになるので、社員の競争意識を活用することもできるだろう(事務職などの実績が眼にみえにくい職種では、上司の好き嫌いによる人事考課が変動給に反映されるなどのマイナスの効果も考えられる。それに、過度の競争がもたらす負の側面もあるだろうが)。

経営者側は、経営状態が悪い時には変動給の圧縮という形でこの状況に対応できるようにする。そのかわり、安易な社員の解雇、非正規採用の増加などは減らすべきだろう。

 

次に、社会保障制度の改革案についてである。

数年前、親が低所得のため国民健康保険料を支払えず、健康保険未加入状態となっている児童の存在をテレビで報道していた。

また、社員の社会保険料、厚生年金保険料の半分を会社が負担するという制度が、コスト削減のため正規雇用を減らし、非正規雇用を増やすという結果をもたらしている。

これらのことをふまえ、健康保険は、国民健康保険と社会保険を統合し、税金による運営に一元化することによって未加入者を防ぐべきではないだろうか。

それに応じて、会社が社会保険料の半分を負担する制度もあらため、会社の社会保険料負担分は、雇用保険料のように正規、非正規にかかわらず被雇用者の人数に応じて一定の額を納める形か、あるいは法人税の一部を社会保険分にわりあてるという形にするのがよいのではないだろうか。

なお、国民年金、厚生年金に関しては、次項の「年金制度は40数年後を目途に生活保護制度を補充する制度に移行すべき」にて記述してある。

 

最後になるが、給与を固定給と変動給併用制にするという案は、現在正社員である人の人生設計に大きな変更をもたらすから、反対が多く実現するのは困難ではあろう。

また、実現した場合は、住宅ローンなどのあり方にも影響を及ぼすので、社会に混乱をもたらすおそれもあるので、それへの対応策も検討する必要がある。

一方、経営者側にとっては、便利に使い捨てできる非正規雇用者を確保したまま、正規雇用者の賃金を引き下げるために、ここで述べたような方法を採用する場合もある。

そうなったら、現在正規雇用者と非正規雇用者の間で生じている格差が、経営者などの使用者側と正規、非正規含んだ被雇用者側の格差へと広がり、多くの国民、労働者にとっては一番悪い結果をもたらすだろう。

いずれにせよ、経済成長期は終わったのに、国民の多くが経済成長期時代の意識や価値観から脱け出せず、バブル崩壊後の厳しい労働環境、雇用環境に対する適切な処方箋をみいだせない、というのが現状であるように思える。


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最終更新日 : 2018-08-04 16:05:28

年金制度は40数年後を目途に生活保護制度を補充する制度に移行すべき

年金制度については、年金財源(年金保険料)をどのように徴収するか、年金の支給額をどうすべきかの2点を考える必要がある。

現在は、年金保険料を税金とは別に徴収し、保険料を一定年数払った人のみが、払った期間と払った保険料の額に応じて年金を受け取る制度になっている。

だが、こうした年金制度は経済成長時代の価値観やシステムに基づいて設計されており、少子高齢化、労働環境が流動化した現在においては制度を継続するのが困難になったと思われる。

公務員や大手企業の社員など高額の退職金を貰った人たちが高額の年金を受け取っている。一方、国民年金保険料を納める経済的余裕がなかったため年金未受給となった高齢者は、(申請が認められた場合は)生活保護を受け取ることになる。

国民年金保険料の未納者はかなりの数にのぼっているそうだから、今後、年金未受給者が増えればその分生活保護の受給者は増える一方だろうし、生活保護の申請が認められなければ高齢者の貧困者が増加するだけだろう。

公務員などの安定した職業についている人が、退職後、高額の退職金と年金を受け取る。

その一方、生活保護の受給者数と、生活保護を貰えない貧困者数が増加する。

数年前にマスコミで話題となった"格差社会"という言葉は、現在の社会保障制度を維持し続ける限り、何十年か後には笑えないレベルのものに悪化しているだろう。

 

こうした状態を改善するために、現在のように年金保険料を一定期間以上支払った人のみが、支払った保険料と期間に応じて年金を受け取るという複雑な制度は廃止する。

そして、現在年金保険料として支払っている分を税金として徴収し、支給する年金は生活保護費と同程度の額とする。(それにより年金受給年齢者の生活保護費支給は打ち切りとする。生活保護費を年金という形で支給するので。ただし、病気などで高額の医療費がかかる高齢者に対しては、医療費の免除などの制度は継続する。)

年金と年金受給年齢者の生活保護費支給を一体化し、年金受給年齢になったら誰でも生活保護費と同程度の年金を受け取れる平等でシンプルな制度に移行する。

 

 

*補注

生活保護費と同額の金額を年金として支給するのが財政的に困難な場合は、数年前、民主党が提案していた最低保障年金と同額の金額を受け取れる形にするのが望ましいと思える。その場合、生活保護受給者は、生活保護費と最低保障年金額との差額を受給できる形にする。

 また、受け取る年金額が最低保障年金と同額では少なくて不満だという高額所得者は、年金基金などの制度に任意に加入し、年金保険料を支払った額と期間に応じて年金基金を上乗せとして受け取れる形にするのがいいだろう。

 

90年代以降の非正規雇用者の増加にともない、将来、年金未受給のために生活保護を受け取ることになる低所得者層や、生活保護の申請を断られるだろう貧困層はますます増加していくだろう。

にもかかわらず現在の年金制度は、退職後、高額の退職金を受け取ることのできるような比較的裕福な層が手厚い保護を受けるという、社会保障・社会福祉の理念とは相反したものになっている。

また、現在の年金制度を根本的にあらためなければ、増加する年金額と生活保護費によって財政が破綻するかもしれない。

さらにいえば、国民年金受給者の中には生活保護費よりも低い年金しか貰えない人がかなりいるだろうから、国民年金保険料をまじめに納めた人よりも、国民年金保険料を払わずに生活保護費を受給する人の方が高い金額を受け取るという不公平・不公正なことが生じるだろう。

現在の年金制度はシステムが複雑なだけでなく、様々な点で不公平・不公正さのある欠陥だらけの制度だから、一刻もはやくシンプルで公平・公正な制度に改変する必要がある。

 

ただし、年金の支給に関しては、すぐに支給方法を変更すると今まで高額の年金保険料を納めた人たちからの不満が当然おこる。

だから年金保険料(私のこの案では税金に変更されるが)の徴収方法は、新制度の導入とともにすぐに変更する。

一方、年金の支払い方法の変更は40数年後(新制度導入時20歳だった人が年金受給年齢になった時)に完全実施するべきだろう。

新制度導入後、20年位は現在の支給方法を継続し、残りの20数年間で現在の支給方法から新しい支給方法に徐々に変更していくのが望ましいと思える。

 

なお、この制度に転換した場合、現在企業・会社が負担している厚生年金保険料の負担分をどうすべきか、という問題が残る。

これに対しては、

・年金財源は消費税・所得税などでまかない、企業・会社の負担分はなくす。

・現在、企業・会社が負担しているのと同程度の税金を徴収する。

・現在、企業・会社が負担しているよりは少ない額の税金を徴収する。

という3つの考え方がある。(私個人は、どの案が一番いいとは言えない。)

 

ただし、以上述べたことは理念的なことにすぎないので、この案を実現させる場合、財源をどうするのか(消費税や所得税をどの位上げる必要があるのか)などの実務的な面での検討が必要となる。


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最終更新日 : 2018-08-04 16:05:11


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