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第3章 GW170817

 

 金の製造は精神の浄化に等しい。精神の浄化とは己の本性を知ること、魂の発見であることは繰り返すまでもない。
 
  澤井繁男『錬金術』より  

    
 
 2017年夏、重力波干渉計がまた一つ時空の揺らぎを受信。世界中の光学赤外線望遠鏡が「中性子星合体」の現場を初めて探し出した。天文学の新しい時代の始まりだ。

 

  『宇宙の神秘』第95号より

 

 

 私たちは金の生成現場を見たのかもしれません。
 
   国立天文台のコメントより


(1)内と外の照応

錬金術師の立場から

 

「福音書」という言葉は、非常にキリスト教的な響きを持っている。しかし、私の第二、第三福音書は、その内容からすれば、むしろ「錬金術哲学の本」として捉えたほうが適切であろうし、本文の中でも、その事実を一切隠していない。


 そのような錬金術の書物を著わしたのならば、著者である「再臨のキリスト」は、その一面において、れっきとした錬金術師なのだろう。時代が時代ならば、異端審問にかけられそうな告白であるが、これは事実であるから仕方がない。


 しかも私は、一山いくらの"一般的な"錬金術師では決してない。


 というのも、第三福音書の記述に明らかなように、私は、錬金術作業の最終工程である「ルベド」の内容を把握しているからである。


 ルベドは、宗教的には神を、哲学的には真理を、物質的には金を指し示している。


 したがってそれは、私が――心理学的アナロジーにおいてではあるが――「金の製法を明らかにした錬金術師」であることを物語っている。もともと錬金術の目的は「金を生成すること」であるから、私は、その最終目的を叶えた「完成形の錬金術師」なのである。

 

 


星屑と天体現象の響き合い

 

 そして、錬金術の中心的な考え方の中に「ミクロコスモスとマクロコスモスの照応」という思想がある。日本語で言えば「小宇宙と大宇宙の照応」ということだ。


 すなわち、人間の心身というものは一つの小宇宙であって、その構成内容が、外界の大宇宙と呼応し合っているということである。


 これを疑う向きもあるだろうが、そもそも私たちの身体は超新星爆発で生まれた元素で出来ており、いわば星屑を材料にしている。もっと言えば、私たち生命体は、物理的にみて「星の子」なのである。だから天体現象との響き合いは、起こるべくして起こることだともいえるだろう。


 そして、本章で紹介する出来事は、まさにその典型的な実例である。究極の実例と言ってもいい。起こるべきことが、起こるべき時に、起こるべくして起きたからである。


 そう、ダニエルが指定した年の(=2017年)、ノストラダムスが敢えて予言した月の(=8月)、イエスと私が共有する神秘数の生誕日に(=17日)、その「ミクロコスモスとマクロコスモスの照応」は起こった。

 

 


天上界の計画の成就

 

 2017年8月17日――この日に「それ」を迎えるためにこそ、私の誕生日は、敢えてイエスのそれ(4月17日)と一致させなかったのだろう。天上界の計画者は、2017年の8月17日に「それ」を迎えるためにこそ、私の誕生日を8月17日に設定したのだろう。


 実際、「それ」のことを知って、私は衷心から、


「ああ、これだったんだ。天上界の諸霊は、予言や象徴を通して、これがやりたかったんだ」
 と納得がいったのだった。


 では「それ」とは何か? その「ミクロコスモスとマクロコスモスの照応」とは何か?


 お答えしよう。ごく端的に言えば、それは運命の年の、私の誕生日に観測された「重力波」である。

 


(2)重力波の観測

GW170817

 

 2017年8月17日、地球から1億3千万光年の時空を超えて、うみへび座の方向にある銀河NGC4993から、ある重大な天体ショーの重力波が、この地球地表まで届いた。


 それは近年に起こった天体現象のなかで最も重要なものであり、天文学そのものに革命を起こした天体現象でもある。

 

   天文学者たちは、その天体現象をGW170817と名づけた。GWはグラビテーション・ウェーブ(重力波)の頭文字。並んでいる数字は、言うまでもなく、重力波が観測された日付である。


 もっとも、私がこの天体現象のことを知ったのは、わりと最近のことである。


 詳しく言えば、アメリカの重力波望遠鏡LIGOと、ヨーロッパの重力波望遠鏡Virgoが、GW170817の重力波を検出したのが2017年8月17日、つまり「その日」。それが米国と欧州の共同グループによって発表されたのが、2017年10月16日。


 さらに、その発表の内容が、私の感覚器(目)にまで到達したのが、2018年の4月18日のことだった。数年来定期購読している『宇宙の神秘』というDVDマガジンの第95号に掲載された記事を通してのことである。


 ついでに言うと、同マガジンの第97号でもGW170817の事が触れられている。

 

 


重力波とは何か

 

 GW170817について語るべきことは多いが、話の糸口として、まず重力波について説明しておこう。


 アインシュタインによれば、重力とは、時空の歪みのことである。そして、重力の大きな(=すでに周囲の時空を大きく歪ませているような)天体が激烈なエネルギーを発すると、時空の歪みが、さざ波のように周囲に伝わっていくという。


 これこそが、時空のさざ波である「重力波」である。それはまさに、宇宙そのものの振動であると言ってよい。


 この重力波を観測するため、世界各地に、巨大な重力波望遠鏡が建造された。


 そして2015年の9月、ついに初めての重力波が観測されたのである。この重大ニュースを、私もテレビで見た。アインシュタインが重力波を予言(1916年のこと)してから約100年後の偉業である。


 この第一回目の観測は、二つのブラックホールが合体したさいに発生した重力波だった。そして、2015年12月に第二回目、2017年1月に第三回目、2017年8月14日に第四回目の重力波が観測された。その全てが、ブラックホールの合体によるものだった。

 

 


巨大衝撃としての「ブラックホールの合体」

 

 四回目までの重力波観測は、上記のように、すべて「ブラックホールの合体」だった。


 超新星爆発などは、宇宙規模で言うと、一秒に一回の割合で起こっているというから、これが重力波として観測されないのは、ある意味で不思議なことである。おそらく、超新星爆発の衝撃規模が、ブラックホールの合体のそれと比べれば、まだまだ小さいということなのだろう。そのため観測装置の針が揺れないわけだ。


 いや、これは逆に考えるべきかもしれない。


 すなわち「銀河よりも明るい光を放つ」と言われるほどの超新星爆発すら小規模扱いとなるのだから、ブラックホールの合体とは、本当に底知れないほどの――宇宙そのものを震わせるほどの――巨大な衝撃を作る事象なのだろう。


 となると、もはや、そうした極大スケールの天体現象、すなわち「ブラックホールの合体」以外の重力波を待つことは無駄骨なのだろうか。


 ――と思いきや、第五回目の観測となる2017年8月17日の重力波は、ブラックホールの合体によるものではなかったのである。重力波の観測波形が、それを教えてくれていた。


 それは「二つの中性子星の合体」による重力波だったのである。これこそがGW170817だ。

 

 


中性子星の合体

 

 中性子星とは、超新星爆発の形成物である。私たちの太陽の8~10倍の質量を持った恒星が超新星爆発を起こすと、その中心に中性子星が形成される。


 かかる中性子星の実質は「準ブラックホール」に他ならない。


 ブラックホールに準じて重力が大きいから、周囲の物体を強力に引き込むし、その際には、ブラックホールに特有な「スパゲティー化現象」も起こる。つまり物体が引き延ばされて、ついには粉々に千切れてしまうのである。


 そんな中性子星はきわめて密度が高く、この星の地表で角砂糖一つ分の体積を削ったら、それが10億トンにもなってしまう。つまり地球では3~5グラムに過ぎないものが、そこでは10億トンの重さを持つのだ。恐ろしく重い星であり、これだけ重ければ、それだけで時空もたわんで歪むだろう。


 しかも、そんな星が高速度で回転して、大きなエネルギーを放っているのである。かに星雲の中心にある中性子星は、1秒間に30回転しているというが、中性子星の中には、一秒間に1122回転するものもあるという(XTE J1739‐285)。


 小さなハンドスピナーだって、そんなには回らないだろうに、直径十数キロから、数十キロの星がそんなにも早く回るのだ。これはもう、私たちには想像もつかない現象であろう。地球が24時間で一回転する間に、中性子星はいったい何千万回、回転するのだろうか。


 しかも「中性子星の合体」の場合、そんな中性子星が二つあって、それらが衝突するというのだ。その際に生まれる衝撃はいかほどだろう。


 これに関して、よく「ビッグバン以来最大の衝撃」と評言がされるが、それも決してオーバーではないのかもしれない。それだからこそ、この天体現象が重力波望遠鏡の針をも動かしたのであろう。

 


(3)重元素の生成

貴重なデータ

 

 中性子星の合体であるGW170817は、多様な意味あいにおいて、天文学的に貴重なデータを与えてくれる希少事例だった。そして、その希少にして貴重なデータの一つに「金などの重元素生成のメカニズムの解明」があった。


 このへんは、どうしても話が専門的になってしまうので申し訳ないが、以下、出来るだけ――たとえ詳細が不正確になっても――易しく話をしたい。

 

 


元素の重みが増える

 

 さて、元素周期表を前にすれば一見して分かることだが、元素には、原子番号というものがついている。水素が1、ヘリウムが2、お馴染みの酸素が8、鉄が26である。同族にあたる「金、銀、銅」に関しては、銅が29、銀が47、金が79だ。


 この数字は陽子(素粒子)の数であって、元素の材料だと思ってくれればいい。この陽子の数が増えるほど、元素は重くなっていく。したがって、上記の「銅、銀、金」で言えば、銅よりも銀のほうが重いし、銀よりも金のほうが重いことになる。


 もともと宇宙には、ほとんど水素とヘリウムしかなかった。それ以上に重い元素は、恒星(太陽のように自分で輝く星)の中で、核融合反応によって合成された。


 核融合とは、高温高圧の状態のなかで、元素の核が融合することを言う。


 ただ単に元素同士が結びつくのは分子化であって、これは「新しい元素が生まれること」ではない。たとえば水は、水素原子と酸素原子が結びついたものだが、べつに水という元素がある訳ではないのだ。


 これに対して核融合の場合は、高温高圧の環境下で、原子番号が異なる「新しい元素」が生まれるのである。


 要するに、「溶けるほど熱くて、互いがくっつくぐらい圧力がかかるところ」では、陽子同士が結合して、重くて新しい元素が生まれるのである。言うなれば、恒星は、元素の溶鉱炉である。

 

 


星の大きさに比例する「高温・高圧」

 

 しかし、この「高温・高圧」は、恒星の大きさによって規模が異なってくる。星が大きくなればなるほど、その大きさに比例して、恒星中心部の「高温・高圧」が増してゆくからだ。二人で押しくらまんじゅうをするよりは、10人でやったほうが、中心にいる人は、熱気がムンムンするだろう。


 我らが太陽クラスの恒星だと、その「高温・高圧」によって、自身の死に際までに、炭素までの核融合が行われる。炭素の原子番号は6である。


 しかし、太陽の8倍以上の質量がある恒星だと、原子番号26の鉄の元素までが合成される。それだけ大規模な「高温・高圧」が、恒星の中心部に用意されているということだ。


 そのさい恒星の内部には、玉ねぎ型の層構造が出来あがる。つまり同心円状に元素の層が積み重なるのである。


 このとき恒星の外側には「より軽い元素」が配置され、恒星の内側には「より重い元素」が配置される。これは、外層よりも内層のほうが、その重力が強いからである。あるいは、より重力が強い中心部に進むにつれて、それに伴い「高温・高圧」も強まるからである。


 これによって外側から「ヘリウム(2)、ホウ素(5)、炭素(6)、ケイ素(14)、カルシウム(20)、鉄(26)」といった「軽→重」の元素の層が生じることになる。


 これは恒星の年齢層でもあって、ヘリウムを作っていた頃は成人だが、炭素の層が出来たころは老年、カルシウムの層が出来たころには、星は晩年に近づいている。

 

 


鉄元素が合成されるとき

 

 そして、どんなに大きな恒星でも、その内部で核融合できるのは鉄元素までである。鉄の元素が生まれたとき、恒星は死を迎える。核融合が出来ない恒星は、もはや最後の花火を打ち上げて死ぬほかないのである。


 その花火こそが、巨大恒星の断末魔である超新星爆発であり、この爆発によって、重い元素が、一気に――それまで水素とヘリウムしかなかった――宇宙空間にばら撒かれることになる。


 だから、超新星爆発が、「太陽系が生じる前の宇宙」で起こってなかったら、私たちはここに存在していないのである。それはそうだろう。

 

 酸素がなければ――私たちの身体の70%を占める――水が出来ないし、カルシウムがなければ骨が作れない。ケイ素(石)や鉄がなければ、そもそも地球が出来あがらない。


 つまり、私たちの居場所や、この身体の材料を提供してくれたのは、まさに超新星爆発を起こした恒星なのだ。私たちが星屑で出来ていて、「言うなれば、私たちは星の子(超新星の子)である」と言ったのは、そういう意味だったのである。
 

 

 

鉄よりも重い元素は?

 

 とはいえ、私たちの身の回りには、鉄(26)よりも重い元素がある。前述したように、銅の元素番号は29、銀は47、金は79である。プラチナ(78)やウラン(92)などもある。これらの重元素はどのように生まれたのだろうか? 


 それは超新星爆発のどさくさで生まれた、というのが従来の定説だった。爆発の衝撃的な高温、高圧によって、急激に「鉄以上の重元素の合成」が行われるとされていたのだ。私自身、その説を素直に信じていた。

 


(4)金の生成現場

エド・バーガーの疑問

 

 しかし、超新星についての研究が進むにつれて、その「超新星爆発のどさくさに金などの重元素が生成された」という定説に対して、「いや、それではおかしい」と異を唱える者が現れた。


 最初に声を上げたのは、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの、エド・バーガーである。まだ若い世代の研究者だ。


 そんな彼は、コンピューターを使って、超新星爆発時における金の生成をシュミレーションしていた。ところが何度やっても、それが上手くいかない。一応は金が生成されるのだが、その量がひどく僅少なのである。


 それにしては、すでに宇宙にはたくさんの金が存在しており、「これでは超新星爆発が何度起こったとしても追いつかない」という事になってしまった。ここに理論と現実とが噛みあわない矛盾がある。

 

 


s過程とr過程

 

 もともと、鉄以上の元素合成には、一種のトリックが働くことが知られていた。それが中性子捕獲と、中性子の陽子化(β崩壊)である。


 原子の核は、陽子と中性子で出来ており、その周りを電子が回っている。


 鉄の元素は、それ自体がかなり安定してしまっていて、もはや、なかなか新しい陽子を受け容れようとしない。しかし、中性子ならば受け入れることがある。つまり、鉄の原子核に中性子がくっつく訳だ。


 それを1000年に一個の割合で行うのがs過程で、このsはスロー(遅い)の意味である。


 そして中性子を受け入れた鉄(26)の元素は、その中性子をβ崩壊というメカニズムによって、陽子に変えてしまう。それによって原子核の陽子が増えて、より重元素化が進むのである。


 銅(29)の元素などは、このような過程をへて合成されることになる。


 一方、同様のこと――中性子捕獲と中性子の陽子化――を、数秒のうちに、連続して行うパターンも存在する。これがr過程であり、このrはラピッド(速い)の意味である。金(79)などはこちらのr過程によって生成されるとされている。


 s過程は、主に赤色巨星の表層で行われるが、金が生成されるr過程が、宇宙の現状に見合うほど大規模に、どこで起こるのかは謎だった。


 超新星爆発のどさくさだけでは、もう説明出来なくなってしまった。そうであるならば、これ以外に、r過程が起こる場面を想定しなければならない。

 

 


r過程が起きるとき

 

 そこでエド・バーガーは、


「中性子星同士の衝突が起これば、そのとき中性子過剰の物質が大量に放出され、その高温・高圧・高エネルギーの環境下において、r過程が大規模に引き起こされるのではないか。そして、これによって金のような重元素が、一挙大量に生成されるのではないか」


 という仮説を立てた。


 はじめのうちは誰も信じてくれなかったようだが、2013年に観測された天体現象(ガンマ線バースト)に、この仮説を裏付ける要因が含まれていた。これによってバーガーの仮説は多くの賛意を集めたが、いまだ確証された理論としては扱われていなかった。


 しかし、それが確証を得る日が来た。それこそが2017年の8月17日であり、GW170817の重力波観測の結果だったのである。

 

 


キロノヴァの観測

 

 GW170817は、重力波望遠鏡だけでなく、電磁波望遠鏡でも観測されている。そして、この際に「キロノヴァ」が観測された。


 キロノヴァとは、1キログラムが1000グラムなのと同じように、ノヴァ(新星)の約1000倍の光量をもつ発光現象である。このキロノヴァの輝きのうちに、


「r過程が起こっているとすれば、そこに検出されるであろう光度や色の変化」


 の予測値と一致する光が観測された。


 かくして、中性子星の合体が、金などの重元素生成の、大きな割合を占めることが分かったのである。これに対して国立天文台は、


「私たちは金の生成現場を見たのかもしれません」というコメントを出した。そのように、GW170817によって、人類は初めて、物理的な観測によって「金の生成過程」を知ることになったのである。

 

 今回の爆発を赤外線で観測したところ、放出された破片には少なくとも地球一万個分の貴金属が含まれていることが分かった。これは現在宇宙に存在が確認されている量を満たすのに十分な値だ(ナショナル・ジオグラフィック)。


 このように、このGW170817によって生じた重元素(貴金属)は、地球質量の1万倍以上なのだという。そのうちに金は、どれほど含まれているのだろう? 少なくとも地球まるまる一個分よりは、はるかに多量の金が生成されたことだろう。それはまさに、人類が抱えきれないほどの黄金である。

 



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