目次
(借景資料集)
【速報!】 第2回 「青い鳥文庫小説賞」
(第4稿)
(第4稿)as(最終稿)
(添付挨拶状)
(あらすじ) (2018年9月23日)
序章 《 朝日ヶ森 》
第1章 リツコ、異世界へ行く。
第2章 リツコ、異世界で目覚める。
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、取材する。
第8章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第9章 リツコ、役に立つ。
終章 リツコ、地球に帰る。
(第3稿)
(第3稿)
(表紙)
(あらすじ) (2018年9月16日)
序章 朝日ヶ森 学園
第1章 リツコ、異世界へ行く。 (2018年9月16日)
第2章 リツコ、異世界で目覚める。 (2018年9月16日)
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第8章 リツコ、戦う。
第9章 リツコ、地球に帰る。
(第2稿)
(第2稿)
(あらすじ) (2018年9月8日)
1-0-0.朝日ヶ森「学苑」(おもて)
1-0-1.朝日ヶ森(うら) (2018年9月8日)
1-1-0.リツコ、呼ばれる。 (2018年9月8日)
1-1-1. リツコ、出かける (2018年9月8日)
2-0-1.リツコ、異世界に着く。 (2018年9月9日)
2-0-2.リツコ、挨拶する。
2-1-1.リツコ、清峰鋭にあう。
2-1-2.リツコ、異世界の村へ行く (2018年9月9日)
2-1-3. リツコ、空を飛ぶ。 (2018年9月9日)
3-0-0. リツコ、悪夢をみる (2018年9月10日)(加筆)
3-0-1.リツコ、起こしてもらう。
3-0-2. リツコ、情報交換する
3-1-0.リツコ、朝寝坊する。
3-1-1.リツコ、右将軍にあう。
3-1-2.リツコ、皇女に会う
3-1-3.リツコ、マシカとあう。
3-1-4. リツコ、市場へ行く。
3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。 (2018年9月11日)
4-0. リツコ、早起きする。
4-1. リツコ、パレードに参加する。
4-2. リツコ、誇大広告される。
5-1. リツコ、旅をする。
5-2. リツコ、記録する。 (2018年9月12日)
5-2. リツコ、話せるようになる。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第6章 リツコ、旅をする。
(第1稿)
(第1稿)
(あらすじ) (2018年8月17日)
( 目次 ) (2018年8月18日)
0-1.(おもて) (2018年8月18日)
0-2.(うら) (2018年8月18日)
1.リツコ、親善大使になる (2018年8月18日)
1-1. リツコ、出かける
2. リツコ、異世界へ行く。
2-1.リツコ、挨拶する。
2-2.リツコ、清峰鋭にあう。 (2018年8月19日)
2-3.リツコ、運ばれる。
3.リツコ、白王都へ着く。 (2018年8月22)
3-1-0.リツコ、寝坊する。 (2018年8月22日)
3-1-1.リツコ、皇女に会う (2018年8月22日)
3-1-2.リツコ、マシカにあう。 (2018年8月24日)
3-1-3. マシカ、市場へ行く。 (2018年8月24日)
3-1-4. マシカ、天幕に泊まる。 (2018年8月24日)
4-0. リツコ、目覚める。
4-1. リツコ、行列に参加する。
4-2. リツコ、センデンされる。
5-1. リツコ、記録する。
5-2. リツコ、観察する。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。 (2018年8月26日)()
6-2. リツコ、小鬼を救う。 (2018年8月26日)
7. リツコ、まきこまれる。 (2018年8月26日)
8-1. リツコ、魘される。
8-2. リツコ、龍にのる。
9. リツコ、会議にでる
10-1. リツコ、よばれる。
10-2. リツコ、地球にかえる。 (2018年8月26日)
(草稿&没原稿)
(草稿&没原稿)
(1) 朝日ヶ森 (2018年6月3日)
『 リツコへ。 第一日 』 (@中学……1年か2年?) 
(あらすじ) (プロット&目次)
(あらすじ) (プロット&目次)
【投稿用】プロットメモ (2018年7月22日)
400字~800字程度のあらすじ。 (2018年8月17日)
(設定資料集)
(設定資料集)
このコだ! 「鍵になるキャラ」…っ!www (2018年6月30日)
(( ことばよ、つうじよ! ))  (2018年8月9日)
(サ行前の雑談など)
(サ行前の雑談など)
【ぐれてる理由】。(--;)。 (2018年5月13日)
『 リツコ 冒険記 』 ~ 夏休み ・異世界旅行 ~ (1) (2018年6月3日)
(案の定【天中殺中】で頓挫している) (2018年7月22日)
…ちっ! …やっぱり…『落ちた』か…★ (2018年8月12日)
次ぃ征くぞ! 次っ! (2018年8月12日)
★ 【講談社 『 青い鳥文庫 』 の呪い!?】の謎。 ★
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第9章 リツコ、役に立つ。

第9章 リツコ、役に立つ。

 

 9-1. リツコ、夢をみる。

 

 リツコは夢を見ていた。また、あの夢だ。

 お母さんとお父さんが、捕まりかけている。
 お姉ちゃんが泣いている。腕をガッチリ掴まれて逃げられない。
「逃げて!」
 リツコが叫ぶと、お母さんとお父さんが首をふった。
「エツコを置いては行けない…。おまえは逃げなさい!」
「逃げて!」
 …あの時、リツコは何も出来なかった。何も…
 うなされているリツコの額の汗を拭いてくれているのは、マシカだ。
 ぼんやりと目を覚ますたびに、それは鋭だったり、ミソノワ姫たちだったりした。
 リツコが投げた石は当たった。みごとに命中した。
 雄輝を狙っていた奴はギャッと悲鳴をあげて毒矢を取り落とした。
 それは、覚えている…
「逃げて!」
 夢の中で、リツコは投球動作に入った。
 もちろん、あの時は敵の数が多すぎた。ボールもグローブも、持ってはいなかった。
 でも、もし…
 狙いすまして、呼吸を整えて、放つ。放つ。放つ!
 ギャッと悲鳴を上げて、緑の制服のやつらが次々と倒れる。次々と…そう、全員だ。
「逃げて!」と、また叫ぶ。
「ありがとう、リツコ!」
 お母さんもお父さんもお姉ちゃんも、一斉に走って逃げていく。
 一目散に、逃げ出す…
 逃げて、逃げて、無事で…
「おばさんのところへ行くんだ!」お父さんが叫ぶ。
「お願いがあるのよ!」目をきらきらさせて、大叔母様がいう。
「すごいわリツコ!」マシカが褒めてくれる。
「さすが!適任者!」鋭が快哉を叫ぶ。
「…リツコ! …リツコ!」
 うなされている。
 夢をみている。
 そうだった… 雄輝を狙っていた敵を倒した瞬間。
「キサマぁッ!」
 別の奴から、短剣を投げられて… 左胸に、真っ直ぐ刺さりそうになったのを、危うく避けたら、首の脇が切れて、血が出て、驚いて倒れて、滑って、落ちて…
 墜ちる途中で木の枝に後頭部を打った。それから真っ逆さまに、地面に落ちた…
「リツコ!」
 首筋の深い切り傷による出血多量と全身の打撲で、リツコは何日も、熱を出して眠っていたらしい。
 はっと目が覚めると、枕元で心配そうにのぞき込んでいたのは… ずっと交代でついていてくれたマシカでも鋭でも姫様たちでも、薬師の人たちでもなくて…
 驚いたことに皇女サマ、その人だった。
「…………っ あぁ良かった! 起きたわね!」
「…あたし… 死にかけた…??」
 かすれた声で、ぼんやりきいてみる。
「…危ないところだったわね、かなり。もう大丈夫よ。鋭たち交代で、ずっと付き添ってたんで、もういい加減に寝かせたわよ!」
 半分涙目でにやりと笑いながら、皇女サマが答える。
「悪かったわね? 目が覚めたら私で!」
 ううん。とリツコもにやりと笑った。案外、この性格、可愛いかも…?
「…雄輝は?」
「無事だったわ。あなたのおかげよ。猛毒でね。矢に塗ってあったの。いくら雄輝でも、
あれが当たってたら、私でもマシカでも、治療をする暇もなく死んでるとこだったわ。」
「そうなんだ。」
 リツコは安堵した。
「あたし、役に立った?」
「えぇ! とても!」
 ずっと苦手に思っていた皇女サマが、ぎゅぎゅぎゅっとリツコの手を握ってくれた。
「彼を救けてくれてありがとう!」
「…………えへ~。」
 照れて笑うと、リツコは、再び眠った…。

 

 

 9-2. リツコ、龍にのる。

 

 それからまた何日か眠ったり起きたりして、熱が下がって傷の腫れもひきはじめたら、とたんに食欲がもりもり湧いてきたので、とにかくがつがつ食べた。
「…よかった~!」
 マシカがどんどんお代わりをよそってくれながら、それにしてもすごい勢いねと、ほっとした声で涙を拭きながらけらけら笑った。
 鋭も雄輝も何度も様子を見にきてくれた。
 ようやく起き出して、少しずつ歩きまわれるようになったころ。
 何だかんだでずいぶん行列に遅れてしまっていた。
「足ののろい連中は先に行かせたわよ!」
 皇女サマがにやりと笑って言う。
「要するに白皇家の血をひく姫が誰か一人でも西皇家の婿をとればいいわけなんだから! 
私が着く前に皆でまとめて西の三皇子を攻略しておいてくれると良いんだけど!」
「……あ、あの人たちって、そーゆう目的で~……??」
「そうよー、玉の輿狙いよ!」
 皇女が意味もなく堂々と宣言するので、リツコは納得した。
 なるほど。それで、家柄のいい美女ばっかりあんなにたくさん、同行してたのか…。
「だって白皇家の血縁の適齢期の男の人って兄様以外はみんな白都で死んじゃったのよ? 嫌がってる私と無理に結婚するより、西の皇子を射止めた姫が、皇位を継ぐことにしたらいいのよ!」
 …皇女サマをめぐる謎の『後継者問題』って…
 …つまり『ムコと皇位の押し付け合い』争いだったのか…。
 リツコはなんだか疲れて、もう一回眠った。
 姫君たちと荷駄隊と商人旅団と外役人たちも先に行かせて、最後まで待機していたのは皇女と雄輝の一番の側近の武人たち数十名ばかりで、その人たちもリツコが命をとりとめたと確認できるとすぐに徒歩での砂漠越えに出発した。
 リツコの体力では、まだ歩いたり駱駝に乗ったりの砂漠の旅は無理なので…
 行程をはしょって、残った一行はみんなで空を飛ぶことにしたという。
 そう聞いて、またあの鳥の人の籠で運んでもらうのかと思っていたら、なんと!
 先日のあの金の龍が背中に載せてくれた!
 鋭が一緒に乗ってくれて、リツコの後ろからしっかり背中をささえていてくれる。
 《飛仙族》と呼ばれる《エルシャムリア》の末裔だそうなフェルラダル様にしっかりと手をつないでもらったマシカはとても嬉しそうに宙に浮いて飛んでいく。それを悔しそうな横目で見ながら兄皇子マリシアル様は妹皇女と手をつないで飛び立った。
 銀の龍の背中には、雄輝と副官の人たちがまとめて乗せてもらった。
 その後ろから、公主リジュイディーリヤが美しい漆黒の鱗翅を広げる。
「きゃーーーーー! 最高ッ!」
 はるか眼下の広大な砂漠の美しい砂紋と点在する岩山とオアシスの煌めきと、どこまでも平らに続いて視界の果てまで霞んで見える(地平線が…丸くない!)《大地世界》全体を眺め渡して叫んでいるうちに、わずか半日ほどで、半月前に出た本隊に追いついた…。
「…今度は、寝なかったね?」と、鋭にからかわれながら…。

 

 

 9-3. リツコ、会議にでる。

 

 砂漠のほとりの大きな隊商都市の郊外で先行して待機していたみんなと合流し、衣装と体調を整えて、そこからは順調に数日の駱駝行で、《西皇家》の都についた。
 出発してきた《仮の白都》の雑多な民族が賑やかに行き交っていた開放的な雰囲気とは何もかも違って、長い時代を経た西の皇都は重厚で、荘厳で、格式ばっていて、威圧感のある石造りの建物が多かった。
 皇宮に上がる前に庶民の市場に寄って買い物と観光がしたい。と、迎えに来た使者たちに仰せつけられた皇女サマの『わがまま』は、『とんでもございません!』の一言でがんとして却下に付された。
 まぁとにかく会議開催の期日にぎりぎりで滑り込んだ形なので、さすがの破天荒な皇女サマも物見遊山は帰りの楽しみにとっておくことにして、白皇家の代表者たちは西皇家の本宮に、まずは到着の挨拶をしに行った。その儀式にはマシカや鋭やリツコたちのような『平民と余所者』は参加が許されなかった。
 その代わり白皇家の一行との旅のあいだは居心地が悪そうだったボルドム公主は改めて《公主殿下》と恭しく呼ばれて、白の皇女と同格に厚遇された。
 何故かと聞いたら「ボルドム世界の創造主たる男神グアヒィギルの血を濃く引く一族の聖なる世継ぎの姫だと判明したから。」だそうだ。
 そのほか、各方面から《大地世界》諸勢力の代表者たちが続々と集まって…
 いよいよ、ほぼ百年ぶりとなる《諸侯会議》が開催された。
 リツコは初日と最終日に『地球から来た地球人の代表』(代理)ということで一言ずつ挨拶をするのが役割だった。また一生懸命マシカと相談して、今度は初日はユカタを着て出た。可愛いと好評だった。
 大叔母様から出発前に渡されていた挨拶状を、心を込めて、声に出して呼んだ。
 それは会議の開催を祝し地球からも友好を祈って挨拶を送りますという簡潔な内容で、朝日ヶ森というのは国とか民族ではなく、こちらの世界のヨーリア学派と同じように世の中のため色々な働きをする有力な学者の集団だ。ということにしておいた。
 それから会議は地域ごとや問題別とか産業別とか、つまり「流域別の渡河税法についての検討会」とか「統一交易貨幣再発行開始における各国通貨との両替手数料率の統一可否にかかわる意見交換会」などなど。難しそうなものから馬鹿々々しく聴こえる内容のものまで沢山の分科会に分かれて、あちこちで紛糾したり白熱したり和合したり盛り上がったり場外乱闘したり、満場一致で拍手喝采のあと早々と大宴会になったり、色々していた。
 皇女サマや鋭たちは手分けしてありとあらゆる会合に顔を出して挨拶したり意見を交換したりしなければならないので、寝る暇もないほど忙しそうだった。
 リツコやマシカやおつきの人々の大半は、終りの日までは暇になった。
 市場に繰り出して買い物と食べ歩きと物見遊山に明け暮れた。
 

 

 9-4. リツコ、自分で話す。

 

 西の第一皇子と白皇女マーライシャの何十年も前の婚約の誓言がどうのこうのという件は、うやむやのうちに無かった話にされつつあるらしい。ミソノワ姫たちは会議の合間にせっせと西の皇子たちを追いかけ回して誘惑していた。遠くから眺める限りでは西の皇族はイケメン揃いだったので、うまく恋人がみつかるといいなとリツコは思った。
 黒姫公主リジュイディーリヤは堂々と交渉して、一緒に亡命して来た部下たちとともに《大地世界》の片すみで争わず暮らせるように、荒野のはずれの一角に、移住用の領土を譲ってもらえそうな感じになっていた。
 会議はあちこちで継続していたが、積み残した分科会はそのまま延長戦へと日程と会場の調整が続いて、ひとまずは当初の予定通り、次の満月の夜までで、全体会議は終了の運びとなった。
 うんと考えて、リツコは、最後の挨拶は自分の言葉で言わせてもらった。
(どちらにしても大叔母様から預かってきた手紙は一通しかなかったので。)
 今度は出発の時に来たのと同じ私立の制服風の夏ワンピのボタンもきちんととめて、ちゃんとした「正装」に見えるように気をつけて、靴もサンダルに変えて出席してみた。
「あたしは、まだ子どもですが、これから地球に帰って、今回の旅で見聞きしたことを、大人の皆に伝えます。昔々の《四界時代》の始めが平和で豊かであったように、これからの《三界時代》が、またみんなの行き来の盛んな、お互いに戦争をしない、平和で豊かな時代になったらいいなと思います。そのために、あたしにできることを探して、がんばりたいと思います。」
 …あまりにも短すぎたかしら、と一瞬不安になったけれども、大人たちは満場の拍手で応援してくれた。


終章 リツコ、地球に帰る。

終章 リツコ、地球に帰る。

 

 1. リツコ、呼ばれる。

 

 全体会議の無事終了を祝ってこれから徹夜で宴会だというその晩、リツコは慌ただしく呼ばれて西の皇宮内に設けられていた皇女サマの部屋へ案内された。
 鋭もマシカも皇子様たちも公主女、今夜は忙しいはずなのに、なぜか、みんないた。
「…なあに?」
「リツコあなた案外有能だから。このままこちらに居てもいいのよ?」
 いきなり不機嫌丸出しの声で皇女サマがぼそっとのたまう。
「へ?」
 目を点にすると、鋭が言い出しにくそうに苦笑しながら補足した。
「地球の西側に出られる通路がもしあったら、朝日ヶ森に戻すよりもそちらに亡命させてほしいって、清瀬律子さんから頼まれてた話は、前にしたよね?」
「あ、うん。…聞いた。」
「西皇領のヨーリア学派とも連絡とってたんだけど。君が整理してくれてたおかげで異界文字の解読をできる人がすぐに見つかってね。それによると。どうやら確実に通れる通路が、今夜だけ、開く。」
「今夜!?」
「…急だから… みんなびっくりしててさ。」
「うん。」
 リツコもびっくりして、うなづく。
「それを逃すとしばらく地球の西側に出られる通路は確定できてない。へたすると数年先とかになるかもしれない。」
「そうなんだ…」
「それで、今夜、地球に帰るか、でなければ、数年先くらいまで、こっちに居てくれるかな? …って」
「…………そうなんだ………?」
「きみこっちでけっこう楽しそうにやってたし。」
「もっとずっと居てくれたら、あたしは嬉しい。けど…」
 マシカが真っ赤な目になって言い澱む。
「言わないのは卑怯でしょ!」
 また唐突に皇女サマが、ぶすくれた声で継ぎ足す。
「…実は、リツコのお父さんとお母さんと、連絡が、取れたよ。」
「ほんとッ!?」
 声が、うわずった。
「うん。…今夜、行くなら、…迎えに来てくれるって…、」
 鋭がメガネをはずして拳で乱暴に涙をこするのを、リツコはびっくりして見ていた。
 マシカも泣き出してしまった。
 リツコも泣き出した。でも、言った。
「うん。…急だけど… あたし、帰るよ!」
 もう一回、声に出して、自分に確認してみた。
「地球人だから… 地球に帰る。」
 …うん。
「あたしね。ずっと…自分のこと…天才でも魔法使いでもないし…一番肝腎な時になんの役にも立てないやつで、残念だな! …って、ずっと思ってた。
 …でもね、こっち来て、ほんとの天才の鋭とか、魔法が使える王女様のマーシャとか、見たけど… べつに天才じゃなくてもね。凡才でも、マホウも使えなくても… あたし、
結構、…役に立つよね…?」
「えぇ。かなりとても、役に立ってくれたわよ!」
 皇女サマが悔しそうに涙をにじませながら言う。
「だから… こっちの世界は、これから、もう、平和になるから…」
 マシカが声をあげて泣き出してしまった。
「あたしの世界は… 戦争とか、独裁とか、これからが、いちばん大変なんだから…。
 自分の世界に帰って、あたしにがんばれることを、探して、やってみる!」
「…そうだね。」
 雄輝がちょっとそっぽを向き、鋭がうん。とうなずいた。
 

 

 2. リツコ、帰り仕度する。

 

 慌ただしく、来た時のリュックとバスケットに荷物を詰めて、来た時の服に着替える。
 背負って抱えて歩けるもの以上は運べないという話だったので、こっちでマシカと買ったばかりの服や小物や甘いものの大半は、残念だけど諦めるしかなかった。
「リツコ…! あたし本当に妹みたいだなーって、…思ってたのに…!」
 マシカはもう泣いて泣いて大変で、手伝いは期待できない。
 やっぱりぐすぐす鼻を鳴らしながらでも、鋭はさくさくと荷造りを手伝ってくれた。
 とにかく書き貯めた記録ノートは全部と、足りなくなって買い足したこっち式の巻き布や葉綴じもぜんぶリュックにむりやり押し込む。
 入りきらなくなった二十四色の色鉛筆とペンケースはまるごと鋭に、「薄くて小さい」と驚かれていたアニメキャラ柄の手鏡と、ぼろぼろになったけど日本語の辞書はまだ使えると思うからマシカに、記念にもらってもらった。
「なによ! わたしには?!」
 皇女サマが子どもみたいに拗ねたので、やっぱりちょっと笑ってしまいながら考えて、籐のバスケットに入れてた中身をぜんぶ出して適当な布で風呂敷包みにして持ってくことにして、「これ気に入ってたんだけど、あげる。」と言ったら「じゃあ大事にするわ。」と素直に受け取るので、やっぱりちょっとその性格には笑った。
 挨拶を出来るかぎりの人たちには慌ただしく挨拶をして回って、会議の打ち上げ宴会であちこち賑やかな皇宮のすみから地元のヨーリア学派の人たちの案内でそっと抜け出す。
 皇女サマと公主様は宴会から長くは抜けられない立場なので、門の中で最後のお別れをした。二人とも眼が赤くなっていた。
 篝火のともる夜の道を歩き、寺院のような場所から地下の伏流水の井戸に入る。
 小さい祠があって、それを動かすと短い洞窟があった。
『入って。』
 ヨーリア学派の人が言う。
『リツコ! …リツコ行かないでッ!』
 マシカがうしろからしがみつく。
『マシカ…! ごめんね! ごめんねぇッ!』
 リツコも涙で前が見えなくなる。
『…あまり時間がない。すぐに通路が塞がってしまう。』
「リツコ、」
 鋭がそっと肩を押す。
「…鋭。また… いつか… どこかで、会えるかな…?」
「…手紙を書くよ。小さいものなら、定期的にやりとりできる通路は確保してあるから」
「うん…」
 動けない。やっぱり…行きたくない!
 帰りたくない!
 リツコは思った。
「あたし! …やっぱり…ッ!」
 すると洞窟の向うから、真夜中なのに、太陽の光? らしいものが射しこんできた。
「…リツコ! …リツコ? 居るの?!」
「リツコ!?」
 リツコは叫んだ。
「…お母さんッ? …お父さんッ!」
 …マシカが、抱き着いていた腕を、はげしく嗚咽しながら、放した…
「ごめん! マシカ! あたし、行くね!」
『…リツコのお母さん! リツコとっても良いコでした! ありがとう!
 …大事にしてあげてね!』
 マシカが洞窟の奥に向かって叫ぶ。
「…リツコ!? …そこに居るのよねッ?!」
「いま行くよッ!」
「リツコ!」
 リツコはがんばって一歩踏み出し、それから目をつぶって駆けだした。
 後ろを振り返る暇もなく、あっと思う間もなく、ステン! と、
 何もないのに転んで…
 慌てて目を開けると、明るい場所に、お母さんとお父さんが、立っていた…
「リツコ! …元気で…ッ!」
 最後に、喉に絡んだような、鋭の半泣きの声が聴こえて…
 それで終わりかと思ったら、
「…待ってッ! リツコごめん! 《言葉の術》! 解くの忘れたわ!」
 息せききって追いかけてきたらしい皇女サマのそんな、またしばらく笑えそうなセリフがかすかに、…うんと遠くから、聴こえて…
 それっきり。
 その後、リツコが、《大地世界》を訪れる機会は、二度と、なかった…

 


 3 リツコ、その後。

 

 お母さんがぎゅっとしがみついてきた。
 お父さんが泣いていて、
 お姉ちゃんが泣きじゃくっていた。
 そこは知らない場所で、でも地球の建物だった。
 リツコも泣いてしまって、しばらく何も言えなかった。

 

 それからリツコは独裁国家となって戦争を始めてしまった日本帝国へは戻れず、家族と一緒に外国に亡命して暮らすことになったが。
 なぜか? 言葉が通じないはずのリツコが日本語で喋ると、言葉が通じないはずの相手の人の頭の中に、その言葉の意味が字幕のように、ぽかりと浮かんでしまう…。

 それは地球世界では「ありえないこと」で、不思議な力はテレパシーと誤解され、その後まもなく始まった《超能力者大迫害時代》のせいで地球にさえ居られなくなって宇宙へ移住するハメになったりしたが…

 

 それはまた、別のお話です。

 

                                  fin.


(第3稿)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(第3稿)

 

 

 

 


(表紙)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リツコ冒険記

 

…夏休み・異世界旅行…

 

 

霧樹里守

(きりぎ・りす)


(あらすじ) (2018年9月16日)

 『 リツコ冒険記 』 …夏休み・異世界旅行…

               霧樹里守(きりぎ・りす)

(あらすじ)

 高原リツコは家族の事情で、私立学園の寮に住んでる。
 その学長から「夏休みの手伝い」を頼まれた。
 なんと、「異世界への親善大使」!
 えぇ?! …っと思ったけど大人たちや先輩たちはみんな忙しくて行けないらしい。

「行って、みんなと仲良くして、まわりをよく観察して、レポートを書いてきてくれれば、それだけでいいのよ。
 行ってくれたら他の夏休みの宿題は、ぜんぶ免除してあげる!」
 大好きな学長がそう言ってくれたので、喜んで引き受けた。

「姉弟世界」と呼ばれる大地世界《ダレムアス》では、漫画かアニメの王子様?…かと思うような超美形!の、優しいお兄さんに世話してもらっちゃうしぃ ♡
 食べ物は美味しいし、お祭りは楽しいし…、
 …あいにくながら残念な性格の皇女サマには、意地悪されたけど…。

 もうひとつの異世界《ボルドム》との戦争終結のための講和準備会議?とか、
 同じ大地世界のなかでも、民族紛争とか、皇位継承争い?とか…
 そういう深刻な問題には、ショックを受けたけど…。

 たっぷりのレポートを抱えて、友達と涙でお別れして、
 リツコは夏休みの終わりとともに、元気に帰国しました。

 



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