目次
(借景資料集)
【速報!】 第2回 「青い鳥文庫小説賞」
(第4稿)
(第4稿)as(最終稿)
(添付挨拶状)
(あらすじ) (2018年9月23日)
序章 《 朝日ヶ森 》
第1章 リツコ、異世界へ行く。
第2章 リツコ、異世界で目覚める。
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、取材する。
第8章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第9章 リツコ、役に立つ。
終章 リツコ、地球に帰る。
(第3稿)
(第3稿)
(表紙)
(あらすじ) (2018年9月16日)
序章 朝日ヶ森 学園
第1章 リツコ、異世界へ行く。 (2018年9月16日)
第2章 リツコ、異世界で目覚める。 (2018年9月16日)
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第8章 リツコ、戦う。
第9章 リツコ、地球に帰る。
(第2稿)
(第2稿)
(あらすじ) (2018年9月8日)
1-0-0.朝日ヶ森「学苑」(おもて)
1-0-1.朝日ヶ森(うら) (2018年9月8日)
1-1-0.リツコ、呼ばれる。 (2018年9月8日)
1-1-1. リツコ、出かける (2018年9月8日)
2-0-1.リツコ、異世界に着く。 (2018年9月9日)
2-0-2.リツコ、挨拶する。
2-1-1.リツコ、清峰鋭にあう。
2-1-2.リツコ、異世界の村へ行く (2018年9月9日)
2-1-3. リツコ、空を飛ぶ。 (2018年9月9日)
3-0-0. リツコ、悪夢をみる (2018年9月10日)(加筆)
3-0-1.リツコ、起こしてもらう。
3-0-2. リツコ、情報交換する
3-1-0.リツコ、朝寝坊する。
3-1-1.リツコ、右将軍にあう。
3-1-2.リツコ、皇女に会う
3-1-3.リツコ、マシカとあう。
3-1-4. リツコ、市場へ行く。
3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。 (2018年9月11日)
4-0. リツコ、早起きする。
4-1. リツコ、パレードに参加する。
4-2. リツコ、誇大広告される。
5-1. リツコ、旅をする。
5-2. リツコ、記録する。 (2018年9月12日)
5-2. リツコ、話せるようになる。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第6章 リツコ、旅をする。
(第1稿)
(第1稿)
(あらすじ) (2018年8月17日)
( 目次 ) (2018年8月18日)
0-1.(おもて) (2018年8月18日)
0-2.(うら) (2018年8月18日)
1.リツコ、親善大使になる (2018年8月18日)
1-1. リツコ、出かける
2. リツコ、異世界へ行く。
2-1.リツコ、挨拶する。
2-2.リツコ、清峰鋭にあう。 (2018年8月19日)
2-3.リツコ、運ばれる。
3.リツコ、白王都へ着く。 (2018年8月22)
3-1-0.リツコ、寝坊する。 (2018年8月22日)
3-1-1.リツコ、皇女に会う (2018年8月22日)
3-1-2.リツコ、マシカにあう。 (2018年8月24日)
3-1-3. マシカ、市場へ行く。 (2018年8月24日)
3-1-4. マシカ、天幕に泊まる。 (2018年8月24日)
4-0. リツコ、目覚める。
4-1. リツコ、行列に参加する。
4-2. リツコ、センデンされる。
5-1. リツコ、記録する。
5-2. リツコ、観察する。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。 (2018年8月26日)()
6-2. リツコ、小鬼を救う。 (2018年8月26日)
7. リツコ、まきこまれる。 (2018年8月26日)
8-1. リツコ、魘される。
8-2. リツコ、龍にのる。
9. リツコ、会議にでる
10-1. リツコ、よばれる。
10-2. リツコ、地球にかえる。 (2018年8月26日)
(草稿&没原稿)
(草稿&没原稿)
(1) 朝日ヶ森 (2018年6月3日)
『 リツコへ。 第一日 』 (@中学……1年か2年?) 
(あらすじ) (プロット&目次)
(あらすじ) (プロット&目次)
【投稿用】プロットメモ (2018年7月22日)
400字~800字程度のあらすじ。 (2018年8月17日)
(設定資料集)
(設定資料集)
このコだ! 「鍵になるキャラ」…っ!www (2018年6月30日)
(( ことばよ、つうじよ! ))  (2018年8月9日)
(サ行前の雑談など)
(サ行前の雑談など)
【ぐれてる理由】。(--;)。 (2018年5月13日)
『 リツコ 冒険記 』 ~ 夏休み ・異世界旅行 ~ (1) (2018年6月3日)
(案の定【天中殺中】で頓挫している) (2018年7月22日)
…ちっ! …やっぱり…『落ちた』か…★ (2018年8月12日)
次ぃ征くぞ! 次っ! (2018年8月12日)
★ 【講談社 『 青い鳥文庫 』 の呪い!?】の謎。 ★
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第9章 リツコ、地球に帰る。

第9章 リツコ、地球に帰る。

 

 9-1. リツコ、夢をみる。


 リツコは夢を見ていた。また、あの夢だ。

 お母さんとお父さんが、捕まりかけている。
 お姉ちゃんが泣いている。腕をガッチリ掴まれていて逃げられない。
「逃げて!」
 リツコが叫ぶと、お母さんとお父さんが首をふった。
「エツコを置いては行けない…。おまえは逃げなさい!」
「逃げて!」
 …あの時、リツコは何も出来なかった。何も…
 うなされているリツコの額の汗を拭いてくれているのは、マシカだ。
 ぼんやりと目を覚ますたびに、それは鋭だったり、ミソノワ姫たちだったりした。
 リツコの球は当たった。みごとに命中した。
 雄輝を狙っていた奴はギャッと悲鳴をあげて毒矢と弓を取り落とした。
 それは、覚えている…
「逃げて!」
 …夢の中で、リツコは投球動作に入った。
 もちろん、あの時は敵の数が多すぎた。ボールもグローブも、持ってはいなかった。
 でも、もし…
 狙いすまして、呼吸を整えて、放つ。
 ギャッと悲鳴を上げて、緑の制服のやつらが次々と倒れる。
「逃げて!」と、また叫ぶ。
 お父さんとお母さんとお姉ちゃんがてんでに走って逃げ出していく。

「ありがとう、リツコ!」
 一目散に、逃げ出す…

 逃げて、逃げて、無事で…
「おばさんのところへ行くんだ!」

「お願いがあるのよ!」

 目をきらきらさせて、大叔母様がいう。

「すごいわリツコ!」マシカが褒めてくれる。

「さすが!適任者!」鋭が快哉を叫ぶ。

「…リツコ! …リツコ!」
 うなされている。夢をみている。

 そうだった… 雄輝を狙っていた敵を倒した瞬間。

「キサマぁッ!」

 別の奴から、短剣を投げられて…左胸に、真っ直ぐ刺さりそうになったのを危うく避けて、首の脇が切れて、血が出て、バランスを崩して…
 墜ちる途中で木の枝に後頭部を打った。それから真っ逆さまに、地面に落ちた…
「リツコ!」
 頸部の深い切り傷による出血多量と全身の打撲で、リツコは何日も、熱を出して眠っていたらしい。
 はっと目が覚めると、枕元で心配そうにのぞき込んでいたのは…
 ずっと交代でついていてくれたマシカでも鋭でも姫様たちでも、薬師の人たちでもなくて…
 驚いたことに、皇女サマ、その人だった。
「…………あぁ良かった! 起きたわね!」
「…あたし… 死にかけてた…??」
 かすれた声で、ぼんやりきいてみる。
「危ないところだったわね、かなり。もう大丈夫よ。鋭たち交代で、ずっと付き添ってたんで、もういい加減に寝かせたわよ!」
 半分涙目でにやりと笑いながら、皇女サマが答える。
「悪かったわね? 目が覚めたら私で!」
 ううん。とリツコもにやりと笑った。案外、この性格、可愛いかも、しれない…?
「雄輝は?」
「無事だったわ。あなたのおかげよ。猛毒でね。矢に塗ってあったの。いくら雄輝でも、あれが当たってたら、私でもマシカでも、治療をする暇もなく死んでるところだったわ。」
「そうなんだ。」リツコは安堵した。

「あたし、役に立った…?」
「えぇ! とても!」
 ずっと苦手に思っていた皇女サマが、ぎゅぎゅぎゅっとリツコの手を握ってくれた。
「救けてくれてありがとう!」
「…………えへ~。」
 照れて笑うと、リツコは、再び眠った…。

 

 

 9-2. リツコ、龍にのる。

 それからまた何日か、眠ったり起きたりして、熱が下がって傷の腫れもひきはじめたら、とたんに食欲がもりもり湧いてきたので、とにかくがつがつ食べた。
「…よかった~!」
 マシカがどんどんお代わりをよそってくれながら、それにしてもすごい勢いねと、ほっとした声で涙を流しながらけらけら笑った。鋭も雄輝も何度も、様子を見にきてくれた。
 ようやく起き出して、少しずつ歩きまわれるようになったころ。
 何だかんだでずいぶん行列は遅れてしまっていた。
「足ののろい連中は先に行かせたわよ!」
 皇女サマがにやりと笑って言う。
「要するに白皇家の血をひく姫が誰か西皇家の婿をとればいいわけなんだから! 私が着く前に皆でちゃっかり西の三皇子を攻略しておいてくれるといいんだけど!」
「………あ、あの人たち、そーいう目的で……?」
「そうよー、お見合いめあてよ!」

 リツコは納得した。

 …なるほど。それで、家柄のいい美女ばっかりあんなにたくさん、同行してたのか…。

「だって白皇家の血縁の男の人たちって、兄様以外はほとんどみんな、あの戦争で死んじゃったのよ…? 嫌がってる私と無理に結婚するより、西の皇子を射止めた姫が、皇位を継ぐことにしたらいいのよ!」
 …皇女サマをめぐる謎の『後継者問題』って…つまり、『後継者の押し付け合い』争いだったのか…。
 最後まで待機していたのは皇女と雄輝の一番の側近数十名ばかりで、その人たちもリツコが死なずに済んだことが確認できるとすぐに徒歩での砂漠越えに出発した。
 リツコの体力では、まだ歩いたり駱駝に乗っての旅は無理なので…
 行程をはしょって、残った一行はみんなで空を飛ぶことにしたという。
 またあの鳥人の籠で運んでもらうのかと思っていたら、なんと! 先日みたあの金の龍が背中に載せてくれた! 鋭が一緒に乗ってくれて、リツコの後ろからしっかり背中をささえていてくれる。

 飛仙族と呼ばれるフェルラダル様に手をつないでもらってマシカは嬉しそうに宙に浮いて飛んでいく。

 それを悔しそうな横目で見ながら、兄皇子マリシアル様は妹皇女サマと手をつないで飛んでいた。

 銀の龍の背中には、雄輝と副官の護衛の人たちが何人か、まとめて乗せてもらった。

 その後ろから、公女リジュイディーリヤと小鬼も、それぞれの羽を広げる。
「きゃーーーーー! 最高ッ!」
 はるか眼下の広大な砂漠の美しい砂紋様と、点在する岩山の影とオアシスの煌めきと、どこまでも平らに広大に続いて視界の果てまで霞んで見える(地平線が丸くない!)《大地世界》全体を眺め渡して叫んでいるうちに、わずか半日ほどで、半月前に出発した本隊に追いついた…。

「…今度は、寝なかったね?」と、鋭にからかわれながら…。

 

 

 9-3. リツコ、会議にでる。

 砂漠のほとりの大きな隊商都市の外で先行していたみんなと合流し、衣装と体調を整えて、そこからは順調に数日の駱駝行で、《西皇家》の都についた。
 あとにしてきた《仮の白都》の雑多な民族が賑やかに行き交っていた開放的な雰囲気とは何もかも違って、長い時代を経た西皇都は重厚で、荘厳で、格式ばっていて、のしかかってくるような威圧感のある石造りの巨大な建物が多かった。
 皇宮に上がる前に庶民の市場に寄って見物と観光がしたい。と、迎えに来た使者の人たちに仰せつけられた皇女サマの『わがまま』は、『とんでもございません!』の一言で、がんとして却下に付された。
 まぁとにかく会議開催の期日にはぎりぎりで間に合った形なので、さすがの破天荒な皇女も物見遊山は帰りの楽しみにとっておくことにして、白皇家の代表者たちは西皇家の本殿に、まずは到着の挨拶をしに行った。その儀式にはマシカや鋭やリツコたちのような『平民と余所者』は参加が許されなかった。

 代わりに白皇家との旅のあいだは居心地が悪そうだったボルドム公女は《公主殿下》と呼ばれて皇女とと同格に厚遇された。なんでって、「ボルドム世界の創造主たる男神グアヒィギルの血を濃く引く聖なる一族」の世継ぎの姫だから。だそうだ。
 そのほか、各方面から《大地世界》諸勢力の代表者たちが続々と集まって…
 いよいよ、数十年ぶりとなる《諸侯会議》が開催された。
 リツコは初日と最終日に、『地球から来た地球人の代表』(代理)ということで一言ずつ挨拶をするのが役割だった。
 また一生懸命マシカと相談して、今度は初日はユカタを着て出た。可愛いと好評だった。
 大叔母様から出発前に渡されていたあの手書きの挨拶状を、心を込めて、声に出して呼んだ。

 それは会議の開催を祝し地球からも友好を祈って挨拶を送りますという簡潔な内容で、朝日ヶ森というのは国とか民族ではなく、こちらの世界のヨーリア学派と同じように世の中のために色々な働きをする有力な学者の集団だ。ということにしておいた。
 それから会議は地域ごとや問題別とか産業別とか、つまり河川別の渡河税法についてとか、「統一交易貨幣の再発行開始における両替手数料率の統一可否の意見云々」とかとか、難しそうなものからばかばかしそうな内容のものまでたくさんの分科会に分かれて、あちこちで紛糾したり白熱したり和合したり盛り上がったり、満場一致で拍手喝采のあと大宴会になったり大乱闘になったり、それぞれ色々していた。

 皇女様や鋭たちは手分けしてありとあらゆる会合に顔を出して挨拶したり意見を交換したりしなければならないので、寝る暇も食べる暇ないほど忙しそうだった。
 リツコとマシカとおつきの人々の大半は、終りの日までは暇になった。

 市場に繰り出して買い物と食べ歩きに明け暮れた。

 

 

 9-4. リツコ、自分の言葉で話す。

 

 ミソノワ姫たちは会議のあいまにせっせと西の皇子たちを攻略していた。遠くから眺める限りでは西の皇族はイケメン揃いだったので、うまく恋人がみつかればいいなとリツコは思った。マーライシャとの婚約がどうのこうのという件はうやむやのうちに無かった話にされつつあるらしい。

 公主リジュイディーリヤは堂々と交渉して、一緒に亡命して来た部下たちとともに《大地世界》で争わずに暮らせるように、荒野のはずれの一角に、移住用の領土を譲ってもらえそうな感じになっていた。

 会議はあちこちで紛糾していたが、積み残した分科会はそのまま延長戦になるという日程と会場の調整が続いて、ひとまずは当初の予定通り、次の満月の夜までで、全体会議は最終日となった。

 うんと考えて、リツコは、最後の挨拶は自分の言葉で言わせてもらった。(どちらにしても大叔母様から預かってきた手紙は最初の一通しかなかったので。)

 今度は出発式の時に来たのと同じ私立の制服風の夏ワンピのボタンもきちんと全部とめて、ちゃんとした「正装」風に見えるように気をつけて、靴もサンダルに変えて出席してみた。

「あたしは、まだ子どもですが、これから地球に帰って、今回の旅で見聞きしたことを、大人の皆に伝えます。昔々の《四界時代》の始めが平和で豊かであったように、これからの《三界時代》がまた行き来の盛んな、お互いに戦争をしない、平和で豊かな時代になったらいいなと思います。そのために、あたしにできることを探して、がんばりたいと思います。」

 …あまりにも短すぎたかしら、と一瞬不安になったけれども、大人たちは満場の拍手で応援してくれた。

 

 

 9-5. リツコ、よばれる。

 それから会議の無事終了を祝って徹夜で宴会だというその晩、リツコは慌ただしく呼ばれて、西の皇宮内に用意されていた皇女サマの部屋へ案内された。
 鋭もマシカも皇子様たちも公女も、今夜はとても忙しいはずなのに、なぜか、みんないた。
「…なあに?」
「リツコあなた案外有能だから。このままこちらに居てもいいのよ?」
 いきなり不機嫌丸出しの声で皇女サマがぼそっとのたまう。
「へ?」目を点にすると、鋭が言い出しにくそうに苦笑しながら補足した。
「地球の欧米側に出られる通路があったら朝日ヶ森に戻すよりもそちらに亡命させてほしいって、清瀬律子さんから頼まれてた話は、前にしたよね?」
「あ、うん。…聞いた。」
「西のヨーリア学派とも連絡とってたんだけど。君が整理してくれてた古文書の解読をできる人がいてね。それによると。どうやら確実に通れる西側への通路が、今夜だけ、開く。」
「今夜!?」
「…急だから… みんなびっくりしててさ。」
「うん。」リツコもびっくりして、うなづく。
「それを逃すとしばらく地球に帰れる通路は確定できてない。へたすると数年先とかになるかもしれない。」
「そうなんだ…」
「それで、今夜、地球に帰るか、でなければ、数年先くらいまで、こっちに居てくれるかな?…って」
「…………そうなんだ………?」
「きみこっちでけっこう楽しそうにやってたし。」
「もうしばらく居てくれたら、あたしは嬉しい。けど…」マシカが真っ赤な目になって言い澱む。
「言わないのは卑怯でしょ!」
 また唐突に皇女サマがぶすくれた声でつぎ足す。
「…実は、リツコのお父さんとお母さんと、連絡が、取れたよ。」
「ほんとッ!?」 声が、うわずった。
「うん。今夜、行くなら、迎えに来てくれるって…」
 鋭の眼から涙が溢れるのを、リツコは二重にびっくりして見ていた。
 マシカも泣き出してしまった。
 リツコも泣き出した。でも、言った。
「うん。…急だけど… あたし、帰るよ!」
 もう一回、声に出して、自分に確認してみた。「地球人だから… 地球に帰る。」
「あたしね。ずっと…自分のこと… 天才でも魔法使いでもないし… 役に立たなくて、残念だな! って思ってた。

 …でもね、こっち来て、ほんとの天才の鋭とか、魔法が使える王女様のマーシャとか、見たけど…
 …べつに天才じゃなくてもね。凡才でも、マホウも使えなくても…

 …あたし、結構、…役に立つよね?!」
「えぇ。かなりとても、役に立ってくれたわよ!」

 皇女サマが悔しそうに涙をにじませながら言う。
「だから… こっちの世界は、これからもう、平和になるから…」

 マシカが声をあげて鳴き出してしまった。両手に顔をうずめる。
「あたしの世界は… これからが大変なんだから…。

 自分の世界に帰って、がんばれることを、やってみる!」
「そうだね。」
 雄輝がちょっとそっぽを向き、鋭がうん。とうなずいた。

 

 9-6. リツコ、地球にかえる。

 慌ただしく、来たときのリュックとバスケットに荷物を詰めて、来た時の服に着替える。

 背負って抱えて歩けるもの以上は運べないという話だったので、こっちでマシカと買ったばかりの服や小物や甘いものの大半は、残念だけど諦めるしかなかった。
「リツコ…! あたし本当に妹みたいだなーって、…思ってたのに…!」
 マシカはもう泣いて泣いて大変で、手伝いは期待できない。
 やっぱりぐすぐす鼻を鳴らしながらでも、鋭はさくさくと荷造りを手伝ってくれた。

 とにかく書き貯めた記録のノートは全部と、ついには足りなくなって分けてもらったこっち風の巻き布や葉綴じもぜんぶリュックにむりやり押し込む。

 二十四色の色鉛筆は鋭に、ぼろぼろになったけど日本語の辞書はまだ使えると思うからマシカに、記念にもらってもらった。

「なによ! わたしには?!」と皇女サマが子どもみたいに拗ねたので、ちょっと考えて、籐のバスケットに入れてた中身をぜんぶ出して適当な布で風呂敷包みにして持ってくことにして、「これ気に入ってたんだけど、あげる。」と言ったら「じゃあ大事にするわ。」と素直に受け取るので、やっぱりちょっとその性格には笑った。
 挨拶を出来るかぎりの人たちには慌ただしく挨拶をして回って、会議の打ち上げ宴会であちこち賑やかな城のすみから、地元のヨーリア学派の人たちの案内で、そっと抜け出す。
 皇女サマと公女様は宴会から長くは抜けられない立場なので、門の中で最後のお別れをした。二人とも眼が赤くなっていた。
 短い夜の道を歩き、寺院のような場所から地下の泉水井戸に入る。
 小さい祠があって、それをどけると短い洞窟があった。
『入って。』ヨーリア学派の人が言う。
『リツコ! …リツコ行かないでッ!』 マシカがうしろからしがみつく。
『マシカ…! ごめんねぇッ!』 リツコも涙で前が見えなくなる。
『…あまり時間がない。すぐに通路が塞がってしまう。』
「リツコ、」
「鋭、また…いつか、どこかで、会えるかな…?」
「手紙を書くよ。小さいものなら、定期的に送れる通路は確保してあるから」
「うん…」
 動けない。やっぱり…行きたくない! 帰りたくない!
 リツコは思った。「あたし! …やっぱり…ッ!」
 すると洞窟の向うから、真夜中なのに、太陽の光? らしいものが射しこんできた。
「…リツコ! …リツコ? 居るの?!」
「リツコ!?」
「…お母さんッ? …お父さんッ!」
 …マシカが、抱き着いていた腕を、嗚咽しながら、放した…
「ごめん! みんな! あたし、行くね!」
『…リツコのお母さん! リツコとっても良いコでした! ありがとう! 大事にしてあげてね!』
 マシカが洞窟の奥に向かって叫ぶ。
「…リツコ!? …そこに居るのよねッ?!」
 リツコはがんばって一歩踏み出し、それから目をつぶって駆けだした。
 後ろを振り返る暇もなく、あっと思う間もなく、ステン! と、何もないのに転んで…

 慌てて目を開けると、明るい場所に、お母さんとお父さんが、立っていた…
「リツコ!…元気で…ッ!」
 最後に、喉に絡んだような、鋭の半泣きの声が聴こえて…

「待ってッ! リツコごめん! 《言葉の術》! 解くの忘れたわ!」
 息せききって追いかけてきたらしい皇女サマのそんなまた笑えるセリフがかすかに遠くから聴こえて…

 それっきり。

 

 

 9-7. リツコ、家族と合流する。

 

 お母さんがぎゅっとしがみついてきて、お父さんが泣いていて、お姉ちゃんが泣きじゃくっていた。

 そこは知らない場所で、でも地球の建物だった。

 リツコも泣いてしまって、しばらく何も言えなかった。

 

 それからリツコは独裁国家となって戦争を始めてしまった日本へは戻れず、家族と一緒に外国に亡命して暮らすことになったが。

 なぜか? 言葉が通じないはずのリツコが日本語で喋ると、言葉が通じないはずの相手の人のあたまのなかに、その意味が字幕のように、浮かんでしまう…。

 それは地球世界ではありえないことで、リツコはテレパシーを使う超能力者と誤解され、その後の《大迫害時代》には、地球にさえ居られなくなって宇宙へ移住するハメになったりしたが…

 

 それはまた、別のお話です。


                                     fin.

 

 


(第2稿)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(第2稿)

 

 

 


(あらすじ) (2018年9月8日)

 

『 リツコ冒険記 』 ☆夏休み・異世界旅行☆

               霧樹里守(きりぎ・りす)

(あらすじ)

高原リツコは家族の事情で、私立学園の寮に住んでる。
その学長から「夏休みの手伝い」を頼まれた。
なんと、「異世界への親善大使」!
えぇ?! …っと思ったけど大人たちや先輩たちはみんな忙しくて行けないらしい。

「行って、みんなと仲良くして、まわりをよく観察して、レポートを書いてきてくれれば、それだけでいいの。
行ってくれたら他の宿題はぜんぶ免除してあげる!」
大好きな学長がそう言ってくれたので、喜んで引き受けた。

「姉弟世界」と呼ばれる大地世界《ダレムアス》では、漫画かアニメの王子様?かと思うような超美形!の、優しいお兄さんに世話してもらっちゃうしぃ ♪
食べ物は美味しいし、お祭りは楽しいし…、
…あいにくながら残念な性格の皇女サマには、意地悪されたけど…。

もうひとつの異世界《ボルドム》との戦争終結のための講和準備会議?とか、
同じ大地世界のなかでも、民族紛争とか、皇位継承争い?とか…
そういう深刻な問題には、ショックを受けたけど…。

たっぷりのレポートを抱えて、友達と涙でお別れして、
リツコは夏休みの終わりとともに、元気に帰国しました。

 


1-0-0.朝日ヶ森「学苑」(おもて)

第1章 リツコ、異世界へ行く。

 

 1-0.まずは、朝日ヶ森学園。

 1-0-0.朝日ヶ森「学苑」(おもて)

 朝日ヶ森学園。
 知ってるかな?
「天才児が集まる」ので秘かに有名。
 超のつく贅沢な校舎と自由奔放なカリキュラムで知られていて、子どもを私立に進学させたい親たちにとっては、憧れの学園だ。

 基本は全寮制だけど、都心から新幹線で通勤・通学してくる生徒や先生もいる。
 緑の豊かな地方都市の新幹線の停車駅から、自動車なら迂回して20分くらい。
 歩くなら、ほぼ直線コースの県立公園の遊歩道を抜けてくるのが速い。
 自転車? …まぁ、モトクロスを乗りこなせる人なら、抜けられる道だと思うよ…?

 

 学園の敷地は広くて、一見すると壁とか塀とか柵とかは何もない。
 でもセキュリティは万全で、目立たないところに監視カメラ網がばっちり。
 不審者は立ち入れないけど、内部の見学とかは許可制の予約ツアーに参加すれば入れる。
 校舎や講堂や寮の建物は、一見シンプルだけどしっかりお金のかかった造りで、見た目は柔和な感じだけど、どんな災害にもまけない頑丈な骨格なんだって。
 もちろん、屋外と屋内の両方に水泳プールがあるし、体育館とか柔道場とか剣道場とか弓道場とか、もちろんスケートリンクもスキー場もテニスコートも、全天候対応型のやつが、それも学年別とかで、複数個所にある。
 さすがにサッカーコートとラグビー場は、屋外だけらしいけど。
 図書館ときたら外部の大人がまる一日かけて調べものしに訪ねてくるほど蔵書数が多い。
 広大な敷地はゆるやかな起伏があって、種々沢山の緑が豊か。
 天気のいい日は生徒たちがあちこちの芝生や木の下で、寝ころがったり自由課題を片づけていたりする。
 時間割は自習が多くて自由で、給食もメニューを自由に選べて美味しいらしい。
 都心から新幹線で週1のスクーリングに通ってくる通信制の生徒たちには芸能関係の子役とかが多い。
 全寮制の一番奥の建物に住みついているのは、三歳から二十五歳までの、「天才」と呼ばれる、生まれつき知能指数の高い、ちょっと変人が多い。
 それから一番多いのはやはり親が金持ちとか有名人とかで、コネと金をふんだんに使って我が子をここにがんばって押し込んだ!という家の子たちらしいけど。
 それ本当はちょっとだけ、気の毒な話なんだ。
 なんでかって…?

 ここはあくまでも、関係者からは「おもて」と呼ばれている場所(学苑)で…
 本当の朝日ヶ森「学園」は「うら」とか「真」とか呼ばれていて、別の場所にあるから。
 なんだ… 

 

 これ、知ってたかい…?

 


1-0-1.朝日ヶ森(うら) (2018年9月8日)

 1-0-1.朝日ヶ森「学園」(うら)

 さて。
「うら」とか「真」とか呼ばれている、「ほんとうの」朝日ヶ森について…
 説明するのは、難しい。
 場所は秘密で、首都からは「裏日本」と蔑視されている、辺鄙な山中にある。
 こちらも敷地は広大だけど、頑丈なレンガの壁にまわりをきっちり囲われて、特殊な警備隊が昼夜わかたず厳重な監視をしている。
 生徒の種類はおもに三つに分かれる。

 ひとつは国内外の要人、つまりVIPの子どもで、家族と一緒にいられないような、何か特殊な事情のある者…病弱とか、テロや誘拐の危険とか、相続争いとか、隠し子で正妻には内緒とか…そんな感じの。
 だからちょっとひねた性格のやつらが多い。

 ふたつめのグループは、もっと特殊で…
「ふつうの」人間じゃない力や外見を持って生まれた、「特別な家柄」の、跡継ぎとか先祖返りとか…
 とにかく、そんなのだ。
 角や牙があったり、鱗や翼があったり、魔術や呪術が使えたり、過去や未来や、人の心が読めたり…
 本人たちは「神でも悪魔でもないから、いちおう、人間なんだけどー」と主張する場合が多いが、今の世の中ではうっかり一般社会を出歩くことができない。
 それで、「一族だけの隠れ里にこもってばかりでは世間にうとくなるし、幼なじみと親戚以外は友達も恋人も探せないし!」という理由で「社会体験」と称して「遊学」しに来て、文字通り「羽を伸ばして」学園生活を楽しんでいたり…する。

 みっつめのグループについては…長くなるので、また後で説明しよう。

 

 そんなふうに、観た感じからして不思議な…秘密の、「地球内・治外法権」とも呼ばれる…

 「朝日ヶ森・学園」。 

 このお話は、そんな場所から始まる。

  



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