目次
(借景資料集)
【速報!】 第2回 「青い鳥文庫小説賞」
(第4稿)
(第4稿)as(最終稿)
(添付挨拶状)
(あらすじ) (2018年9月23日)
序章 《 朝日ヶ森 》
第1章 リツコ、異世界へ行く。
第2章 リツコ、異世界で目覚める。
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、取材する。
第8章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第9章 リツコ、役に立つ。
終章 リツコ、地球に帰る。
(第3稿)
(第3稿)
(表紙)
(あらすじ) (2018年9月16日)
序章 朝日ヶ森 学園
第1章 リツコ、異世界へ行く。 (2018年9月16日)
第2章 リツコ、異世界で目覚める。 (2018年9月16日)
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第8章 リツコ、戦う。
第9章 リツコ、地球に帰る。
(第2稿)
(第2稿)
(あらすじ) (2018年9月8日)
1-0-0.朝日ヶ森「学苑」(おもて)
1-0-1.朝日ヶ森(うら) (2018年9月8日)
1-1-0.リツコ、呼ばれる。 (2018年9月8日)
1-1-1. リツコ、出かける (2018年9月8日)
2-0-1.リツコ、異世界に着く。 (2018年9月9日)
2-0-2.リツコ、挨拶する。
2-1-1.リツコ、清峰鋭にあう。
2-1-2.リツコ、異世界の村へ行く (2018年9月9日)
2-1-3. リツコ、空を飛ぶ。 (2018年9月9日)
3-0-0. リツコ、悪夢をみる (2018年9月10日)(加筆)
3-0-1.リツコ、起こしてもらう。
3-0-2. リツコ、情報交換する
3-1-0.リツコ、朝寝坊する。
3-1-1.リツコ、右将軍にあう。
3-1-2.リツコ、皇女に会う
3-1-3.リツコ、マシカとあう。
3-1-4. リツコ、市場へ行く。
3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。 (2018年9月11日)
4-0. リツコ、早起きする。
4-1. リツコ、パレードに参加する。
4-2. リツコ、誇大広告される。
5-1. リツコ、旅をする。
5-2. リツコ、記録する。 (2018年9月12日)
5-2. リツコ、話せるようになる。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第6章 リツコ、旅をする。
(第1稿)
(第1稿)
(あらすじ) (2018年8月17日)
( 目次 ) (2018年8月18日)
0-1.(おもて) (2018年8月18日)
0-2.(うら) (2018年8月18日)
1.リツコ、親善大使になる (2018年8月18日)
1-1. リツコ、出かける
2. リツコ、異世界へ行く。
2-1.リツコ、挨拶する。
2-2.リツコ、清峰鋭にあう。 (2018年8月19日)
2-3.リツコ、運ばれる。
3.リツコ、白王都へ着く。 (2018年8月22)
3-1-0.リツコ、寝坊する。 (2018年8月22日)
3-1-1.リツコ、皇女に会う (2018年8月22日)
3-1-2.リツコ、マシカにあう。 (2018年8月24日)
3-1-3. マシカ、市場へ行く。 (2018年8月24日)
3-1-4. マシカ、天幕に泊まる。 (2018年8月24日)
4-0. リツコ、目覚める。
4-1. リツコ、行列に参加する。
4-2. リツコ、センデンされる。
5-1. リツコ、記録する。
5-2. リツコ、観察する。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。 (2018年8月26日)()
6-2. リツコ、小鬼を救う。 (2018年8月26日)
7. リツコ、まきこまれる。 (2018年8月26日)
8-1. リツコ、魘される。
8-2. リツコ、龍にのる。
9. リツコ、会議にでる
10-1. リツコ、よばれる。
10-2. リツコ、地球にかえる。 (2018年8月26日)
(草稿&没原稿)
(草稿&没原稿)
(1) 朝日ヶ森 (2018年6月3日)
『 リツコへ。 第一日 』 (@中学……1年か2年?) 
(あらすじ) (プロット&目次)
(あらすじ) (プロット&目次)
【投稿用】プロットメモ (2018年7月22日)
400字~800字程度のあらすじ。 (2018年8月17日)
(設定資料集)
(設定資料集)
このコだ! 「鍵になるキャラ」…っ!www (2018年6月30日)
(( ことばよ、つうじよ! ))  (2018年8月9日)
(サ行前の雑談など)
(サ行前の雑談など)
【ぐれてる理由】。(--;)。 (2018年5月13日)
『 リツコ 冒険記 』 ~ 夏休み ・異世界旅行 ~ (1) (2018年6月3日)
(案の定【天中殺中】で頓挫している) (2018年7月22日)
…ちっ! …やっぱり…『落ちた』か…★ (2018年8月12日)
次ぃ征くぞ! 次っ! (2018年8月12日)
★ 【講談社 『 青い鳥文庫 』 の呪い!?】の謎。 ★
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第7章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。

第7章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。

 

 7-1. リツコ、訪問する。

 侵略者ボルドムの主力軍を元の世界へ追い返すための最終決戦がおこなわれたという合戦場の跡地へ、戦没者の追悼と慰霊の式を行うと言って出かけた皇女サマたちの別働隊が、山越えを終えた本隊と反対側の山裾近くで無事に再合流した後。

 それまで使われていなかった、ずっと何かの予備用なのかと思っていた、特別大きくて立派な馬車に、お客人が増えているらしいことに、リツコはすぐに気がついた。

 いくら行列の中で一番偉い皇女サマとは言っても従者や侍女の数が少し多すぎじゃないかと思っていたうちの半分くらいが、その箱馬車の世話や護衛の係にまわされている。

 ところが、そんな大事なお客様なら当然、夜の宴の時にでもみなに紹介されて、歓迎されるべきだと思うのに… 何日たっても、その馬車の中から出てきたところを見たことがない。

 鋭とマシカと皇女サマだけは毎日何度か様子を見に寄っている感じだが、その他の人は、姫君や重臣たちまでも含めて、むしろその存在自体も公然の内緒というか、「いないふり」「気がつかないふり」をして、避けているような… おかしな雰囲気だったので。

 リツコはまず、こちらの世界での自分の行動の管理責任者、ということになっているらしい鋭に、お伺いを立ててみた。

「…ねぇ鋭? あの馬車の中の人には、話しかけてはダメなの?」
「うーん。悪いってことはないよ? 彼女も退屈しているだろうし… ただ。」
「なに?」
「ボルドムのね。敵国のお姫様なんで…見た目がちょっと。こっちの人たちには怖いらしくって。」
「…見た目ー? だってこっちの人って普通に、毛皮だったり四つ足だったり羽が生えてたり…」
「まぁ、ぼくら地球人からすると、区別が判らないんだけどねー?」

 苦笑してうんうんとうなずきながら、

「きみのいう《モフモフ系》の人たちは、見た目が爬虫類の人って本能的に苦手みたいで。ソウもあの金色の眼のせいで、なんとなく避けられてたりするでしょ? それに、家族をボルドムに殺されてる人とかも多いしいさ? やっぱり仲良くは、しにくいみたいで。」

「…あ、そうか…」リツコは自分が鈍かったことを反省する。
 それでも鋭が、「挨拶したければ行ってもかまわないけど、もし怖くても、悲鳴をあげたりはしないであげてくれる?」と言うので「うんわかった!」と元気に返事して、リツコは早速、昼ごはんが終わった頃にゆっくり動き始めた目あての馬車に、正面から訪問してみた。
「…こんにちわー!」
 先日まで皇女サマ付きだった顔見知りの侍女の人たちに取次を頼むと、
【…だれか?】
 それまで聞いたことのないシュウとかグウとかガ行の音が多い言葉で、馬車の中から、女のひとらしい低い声がきこえた。
「リツコっていいますー! あのね、退屈じゃないかと思って、遊びに来たんですけど!」
【…おや? あの地球人の子どもか? 我の話し相手に?】
 声の感じはむしろ嬉しそうだった。
【…マーライシャにでも言いつけられたか? 我が怖くないのであれば、上がっておいで。】
 リツコはむろん大喜びで超豪華な大型の箱馬車に上がり込む。
 どのくらい豪華かというと皇女サマ用のやつより手が込んでいるぐらいの丁寧な細工の外見で、見れば内装も見事で、ものすご~く値段が高そうだ。
 お姫さまはリツコが馬車の扉を開けたとたんに、それまでは脱いでいたらしい大きな黒っぽい布を頭の上からするりとかぶって全身を隠してしまった。
「…えーと…」

 リツコは面食らって固まった。何かの宗教の衣装のような気もする。

「…お顔を見ちゃったら、なにかまずいのかしら…?」
 ちょっとだけ遠慮しながら聞いてみる。
「…あたし、《ボルドム》の人って、まだ見たことがなくて~…」
【…大地世界人と同じで、《焔洞界》の者の姿も、千差万別なれど。】
 するりと布がはずされた。
【怖くなければ見るが良い。】
 真珠光沢の七色に光る華麗な鱗に覆われた貌の、縦長に切れた大きな金緑の瞳の、なんというか…巨大なトカゲな感じのする…外見の、だいたいは人型?で、美しい黒いたてがみ付きのお姫様だ。白虹色の肌に金青色のきらきらした爪が長くて鋭くて、何て言うか…ネイルアート?のような複雑な紋様が入れてある。
 怖いか?と聞かれればその眼に睨まれたり爪で脅されたりすればかなり恐いかもだったが、こちらの世界には横長に切れた山羊目の人だっているし、地球にだって、もっととんでもない真っ赤っかに尖った爪をしている人は多い。
「…キラキラして、きれいなウロコね…!」
 すなおに思ったとおりにリツコは褒めた。お姫様は嬉しそうだった。

 それから侍女の人たちがお茶とお菓子を持ってきてくれたので、ゆったりと進んで行く居心地の良い大きな馬車の中で、色々とおしゃべりをした。

「じゃあ敵国のお姫様でも、捕虜とか人質として捕まってるわけじゃないのね?」

【我はみずから来た。あちらに捕らわれていたマーライシャを救け出して、こちらへ送り還すついでに、な。我は我が《焔洞界》の後継の公主であるが、あの界の今の有り様は好かぬのじゃ】

「どういうこと?」

【我は弱い者いじめを好かぬ。娯しみのためだけに小者をいたぶり殺すがごとき愚劣な行為は厭じゃ】

「ふーん…。あたしも、弱い者いじめは嫌い。」

【気が合いそうじゃの】

「そうだね!」

 敵国ボルドムからの亡命姫さまは、すっかりリツコが気に入ってしまったようだった。

【我が名は《焔洞界》ボルドアレイ・ガースダルムが長公主、ディ・デュイ・リジューディー・ディーディイーリヤという】

「…でぃ… でじゅ… りじゅー・でぃー… 」

 リツコは絶句した。何度か練習してみたけれども、どうしても、滑らかに発音するのは無理だった。

【…我のことは愛称の《ダーモレア》(黒姫)で呼ぶが良い。】

 そう苦笑して言ってくれて、別れ際には特別あつらえの美味しいお菓子をおみやげに持たせてくれた。

 それから旅の間、しょっちゅう一緒にお昼ごはんを食べておしゃべりをする親友の間柄になった。

 

 

 7-2. リツコ、事情を聴く。

 

「じゃあ今までは、その合戦の跡地のそばに居たの?」

【大地世界の余の者には、投降して来た捕虜らの一団であると説明されておるらしいの。いささか不名誉なことではあるが。侵略軍である我らボルドムの者がよく思われぬという事情は解る。したが我々とて大地世界の国々が諍いあうと同じく。一枚岩ではない。】

「どういうこと?」

【我が叔父であるボルドムの今上帝は歴代の中でもとりわけ暗愚にして暴虐。嫌われておっての。気に入らぬ小者をことごとくいたぶり殺してゆくがために界の補修が立ち行かなくなり、このままでは遠からず、ボルドムは界ごと滅びる。】

「えぇ?」

【それを苦言した者も殺されて、界が壊れるならば隣の《大地世界》を攻め取って移住すればよいと。それ故こたびの攻略戦とあいなった訳だが。…愚行を苦々しく思う者も多くてな。世継ぎの姫である我のもとに、密かに参集しておった。】

「そうなんだ…」

【したが今上に感づかれての。神の血の濃き姪である我に己が卵を産まさしめてその仔を新たな世継ぎとなし、我のことは処刑してしまおうと。】

「えぇっ」

【我は次の排卵の刻が来るまでの命、虜囚の身であった。その獄へたまたま、マーライシャも放り込まれて来ての。…つれづれに話をしておったら、何やら境遇が似ておると、意気投合し。…今上への造反をなすのであれば力を貸すと、同じ捕虜の身で放言しおるので面白うてな。つい、我が配下がわれを救出しに来た際に、同道させてこちらに戻してしまった。】

「それで?」

【最終決戦の際、ボルドム帝軍の後背より奇襲をかけダレムアスを勝利に導いたは、我が配下の者らよ。惜しくも今上めは討ち漏らしたが、戦傷癒えず病の床にあると聞く。我はいましばらく身を隠し、数百年のうちにはボルドムの新帝となる。したがあの界にはもはや大人数は棲めぬ。戦ではなく講和を請うた上で、こちらの世界に我が民らの移住の許可を求めるつもりじゃ。】

 そのために皇女に頼んで、諸侯会議に参加しに連れて行ってもらうのだと言う。

「…ちゃんと、自分の役割が、解ってるんだ…」

 状況に振り回されてばかりで、いまだに何のために自分がここに居るのかが判っていないリツコがそう愚痴をこぼすと、黒姫は面白そうな顔になった。

【知らぬのか? あのマーライシャはたいした大物ぞ? 伝説のミトラ姫とやらが大地世界を再統一したが如く、今ある大地世界とボルドムと地球とを、いにしえのように統一した世界とするが夢だそうな。】

「…え~っ??」

【そがために地球世界とは密に連絡をとりあいたいというのが、そなたの召喚されし理由であろうよ。】

 


第8章 リツコ、戦う。

第8章 リツコ、戦う。

 

 8-1. リツコ、まきこまれる。

 

 そんな風に旅は終りに近づき、もうあと数日で、会議開催地の北西太湖のほとりに着くはずだった。

 ところが、なにか様子がおかしいと、沿道の街や森の隙間から垣間見える広大な湖面と岸辺の街並みを眺めて、誰もがなんだか落ち着かない様子になった。

 港町に着いた。困惑した顔の太守が出迎えた。会議に参集しているはずの諸侯らの姿はどこにもなく、街はなにやら荒れている。三日ほど前に突然の酷い嵐があり都邑の半分は一時水没したという。そして、その直後にはなぜか手回しよく災厄見舞いの品々と共に、宿営地の仕度が間に合わなかろうから議場を《西皇都》に変更せよと、諸侯らを案内する使者と船と軍が、大挙して遣わされて来たという…。

『それゆえ先に来ておられた皆々様は、すでに昨日までに西へ向けて移動を開始されました。』

『…聞いてないわ!』皇女サマが激昂した。

『それ故、いまこのわたしめが、こうしてお迎えに参った次第で。』

 困惑している都邑の太守に岸壁まで案内された一行に慇懃無礼な礼をして出迎えながら、男が云った。

『…マデイラ皇子!?』

 皇女サマが…ものすごく嫌そうに…叫んだ。

「…げ…。」鋭と雄輝がハモり、マシカも顔をしかめた。

『わが長兄クアロス皇子が婚約者であられるマルアライシャ戦勝皇女殿下には、御機嫌うるわしく。』

『うるわしくないわよ!』

『あいかわらず、そちらの色魔将軍殿からは、ふられておられるそうで。』

 がん!と無言のまま拳で情け容赦なくマデイラ皇子とやらを殴り飛ばした皇女サマを、リツコは呆然と見ていた。

『………ここは任せた! …リツコ来い!』

『雄輝!?』

『嫌な予感がする! 公主の様子を見てくる!』

『あたしも行くわッ!』

 リツコがまだただ唖然としているうちに、ぽん!と雄輝の鞍の前に乗せられて、あっという間に大型馬は本疾走にうつった。すぐ後ろから、大鹿マブイラにまたがって弓を携えたマシカが追って来る。

「どういうこと!?」

「黙ってな。舌噛むぜ!」

 全力疾走で駆けに駆けて、だらだらと長い車列の後方、まだ森の中の難所の手前にいた、公主の馬車隊のそばまで着いた。

『…ちぃ! やっぱりッ!』

 雄輝が舌打ちして唸った。

『マシカ! リツコ頼む!』

 いきなり人形のようにポン!と投げ上げられてリツコは焦ったが、マシカが難なく受け止めて、大鹿の後ろに乗せかえてくれた。

『…きさまらぁ…ッ!』

 今まさに公主の馬車を襲おうと森の中からわらわらと走り出してきていた武装した連中に向かって、雄輝が騎乗のまま突っ込んでいく。すぐ後から追ってきていた側近の部下たちと、猛然と逆走していく雄輝の姿を見て異変を感じた衛兵の一団も続く。

「マシカ、どういうことなの?!」

『公主を暗殺しようとしてるんだわ!』

「えぇ!?」

 鋭く剣がぶつかり合う音が響く。

『マ・ゴリゴ! 何のつもりだ!』激しく斬りあいながら雄輝が怒鳴る。

『色魔将! キサマも一緒とは都合が良い! 汚らわしい地球人め!』

 相手かたの騎士も憎しみのこもった声で負けじと怒鳴り返した。
『わがあるじの許婚者をたぶらかした卑劣漢! やはりキサマら地球人ども、ボルドムと結託して大地を蹂躙するつもりであろう!』
 激しく打ち込んでくる相手の剣を、まだまだ余裕でかわしながら応戦している雄輝は、一方的に決めつけられたせりふのほうには、おもいっきりげんなりとした声で返した。
『…ち~が~う~って。おれは文字通り背中のハネも自由に伸ばせない地球に戻るつもりはもうないの! こっちに帰化して骨をうずめるつもりなんだよ! …でもマーシャを嫁にもらう気はないけどな!』
『雄輝いまそれ言ってもこいつらには通じない!』

 いつの間にか参戦していた鋭がやはり真剣で切り結びながら、そんな茶々を入れている。
『…あいつは! おれにとっちゃ! 妹なんだよ! …あくまでっ!』
 知ったことかという感じで敵は次々と白刃を抜いて斬りかかり、金属音が鳴り響き、日暮れ近い薄暗い森の中の細い街道で、敵味方ともに入り乱れての乱戦が始まった。
 背中にリツコを乗せたマシカと駆けつけた近衛兵の何人かが公女の馬車を囲んで護衛につく。
『…マッレ・エッタ! ボグン! エ! カ!』…(撥ね飛べ!)
 どうやら向こうの皇族関係者らしい人の何かの呪文が響く。
 激しい衝撃音がして何人かが馬ごと吹っ飛んだ。
 …見たかんじ…味方のほうが…苦戦を強いられている…?
 リツコは生まれて初めて観る本物の戦闘に震えながら、マシカの背中にかばわれていることに焦った。
 《四軍神》の一人に数えられているマシカは油断なく剣を構えていて、たぶん積極的に戦列に加われば、もっと力になれるはず…。リツコが、背中に乗ってなければ…。
 足手まといになっていることに気づいて、リツコは落ち込んだ。
「…あたしを公女の馬車に入れて! そうしたらマシカも戦えるでしょう?」
【…良い案だが、少し無駄じゃな。】
 そう言って、公女自身が中から箱馬車の扉を開いた。
【仔細が判らぬが、我も闘おう。】
 箱馬車の外側に、まるで装飾品のように高々と取り付けられていた見事な細工の槍剣の鞘から抜き身をひき払う。
【 …誰ぞ! 我の敵手を務めよ! 我が狙いであるならば、我を直接攻めるが良いぞ! 】

 そんな場合じゃない、と思いながらもリツコは目を丸くする。

 箱馬車や天幕の中ではいつもずっと膝を抱えるようにうずくまっていたけれども…

 外に出て獣脚と背すじを伸ばすと、公女はとても長身なのだった…
 そう。馬に乗った大地世界人と、対等に、渡りあえるほどに…
『まぁびっくり。』
 リツコと同じく、知らなかったらしいマシカが呟いた。

 

 

 8-2. リツコ、投げる。


 乱戦。
 敵の動きを観察すると、明らかに「殺すつもり」で襲われているのはボルドム公主と地球人マダロ・シャサの二人だけで、同じ大地世界人には怪我を負わせる程度で済むように手加減している。
 とはいえ敵のほうが人数が多いらしい分、味方が不利だった。
 しかも…
「…雄輝! 危ない!」
 敵の一人が手近の樹に登り、短矢に何かを塗りつけた上で、雄輝に向かって弓を構えた。
 雄輝は敵隊長マゴリゴと数人の加勢を相手に激しく斬りあっていて、リツコの声には気がつかない。
 マシカは今は大鹿の上から弓で敵を射ていて、そこからでは枝が邪魔で、狙撃兵を狙えない。
 リツコは必死であたりを見渡し、一旦地面に飛び降りて、目当ての石を握ると、すぐにその向こうの樹上に身軽に駆けあがった。

 大枝にまたがった不安定なポーズだったけれども、なんとか一瞬だけ上体を固定して、短いフォームで…

投げる!

『ぐわッ!』

 頬に石つぶての直撃を受けた射手が叫びながら、毒矢を落とした。
『…キサマぁッ!』
 子どもでもこうなればりっぱな戦闘員と見なして、敵の一人が下から短剣を投げつけてきた。
『…リツコ!』
 血を流しながら真っ逆さまに墜ちるリツコを見て、マシカと鋭が悲鳴を上げる。

 そこまで、実際にはほんの数分だった。
『…慮外者どもッ! 剣を引けッ!』
 皇女サマの厳しい怒声が響いた。
『マ・ゴリゴ! あるじの許婚者が賓客と白皇総将軍を相手と知っての狼藉ッ? ならばこの私を先に斃してからにしなさいッ!』
『…リツコ! リツコ! …大変!』
 …マシカの悲鳴を聴きながら、リツコは、気を失った…


第9章 リツコ、地球に帰る。

第9章 リツコ、地球に帰る。

 

 9-1. リツコ、夢をみる。


 リツコは夢を見ていた。また、あの夢だ。

 お母さんとお父さんが、捕まりかけている。
 お姉ちゃんが泣いている。腕をガッチリ掴まれていて逃げられない。
「逃げて!」
 リツコが叫ぶと、お母さんとお父さんが首をふった。
「エツコを置いては行けない…。おまえは逃げなさい!」
「逃げて!」
 …あの時、リツコは何も出来なかった。何も…
 うなされているリツコの額の汗を拭いてくれているのは、マシカだ。
 ぼんやりと目を覚ますたびに、それは鋭だったり、ミソノワ姫たちだったりした。
 リツコの球は当たった。みごとに命中した。
 雄輝を狙っていた奴はギャッと悲鳴をあげて毒矢と弓を取り落とした。
 それは、覚えている…
「逃げて!」
 …夢の中で、リツコは投球動作に入った。
 もちろん、あの時は敵の数が多すぎた。ボールもグローブも、持ってはいなかった。
 でも、もし…
 狙いすまして、呼吸を整えて、放つ。
 ギャッと悲鳴を上げて、緑の制服のやつらが次々と倒れる。
「逃げて!」と、また叫ぶ。
 お父さんとお母さんとお姉ちゃんがてんでに走って逃げ出していく。

「ありがとう、リツコ!」
 一目散に、逃げ出す…

 逃げて、逃げて、無事で…
「おばさんのところへ行くんだ!」

「お願いがあるのよ!」

 目をきらきらさせて、大叔母様がいう。

「すごいわリツコ!」マシカが褒めてくれる。

「さすが!適任者!」鋭が快哉を叫ぶ。

「…リツコ! …リツコ!」
 うなされている。夢をみている。

 そうだった… 雄輝を狙っていた敵を倒した瞬間。

「キサマぁッ!」

 別の奴から、短剣を投げられて…左胸に、真っ直ぐ刺さりそうになったのを危うく避けて、首の脇が切れて、血が出て、バランスを崩して…
 墜ちる途中で木の枝に後頭部を打った。それから真っ逆さまに、地面に落ちた…
「リツコ!」
 頸部の深い切り傷による出血多量と全身の打撲で、リツコは何日も、熱を出して眠っていたらしい。
 はっと目が覚めると、枕元で心配そうにのぞき込んでいたのは…
 ずっと交代でついていてくれたマシカでも鋭でも姫様たちでも、薬師の人たちでもなくて…
 驚いたことに、皇女サマ、その人だった。
「…………あぁ良かった! 起きたわね!」
「…あたし… 死にかけてた…??」
 かすれた声で、ぼんやりきいてみる。
「危ないところだったわね、かなり。もう大丈夫よ。鋭たち交代で、ずっと付き添ってたんで、もういい加減に寝かせたわよ!」
 半分涙目でにやりと笑いながら、皇女サマが答える。
「悪かったわね? 目が覚めたら私で!」
 ううん。とリツコもにやりと笑った。案外、この性格、可愛いかも、しれない…?
「雄輝は?」
「無事だったわ。あなたのおかげよ。猛毒でね。矢に塗ってあったの。いくら雄輝でも、あれが当たってたら、私でもマシカでも、治療をする暇もなく死んでるところだったわ。」
「そうなんだ。」リツコは安堵した。

「あたし、役に立った…?」
「えぇ! とても!」
 ずっと苦手に思っていた皇女サマが、ぎゅぎゅぎゅっとリツコの手を握ってくれた。
「救けてくれてありがとう!」
「…………えへ~。」
 照れて笑うと、リツコは、再び眠った…。

 

 

 9-2. リツコ、龍にのる。

 それからまた何日か、眠ったり起きたりして、熱が下がって傷の腫れもひきはじめたら、とたんに食欲がもりもり湧いてきたので、とにかくがつがつ食べた。
「…よかった~!」
 マシカがどんどんお代わりをよそってくれながら、それにしてもすごい勢いねと、ほっとした声で涙を流しながらけらけら笑った。鋭も雄輝も何度も、様子を見にきてくれた。
 ようやく起き出して、少しずつ歩きまわれるようになったころ。
 何だかんだでずいぶん行列は遅れてしまっていた。
「足ののろい連中は先に行かせたわよ!」
 皇女サマがにやりと笑って言う。
「要するに白皇家の血をひく姫が誰か西皇家の婿をとればいいわけなんだから! 私が着く前に皆でちゃっかり西の三皇子を攻略しておいてくれるといいんだけど!」
「………あ、あの人たち、そーいう目的で……?」
「そうよー、お見合いめあてよ!」

 リツコは納得した。

 …なるほど。それで、家柄のいい美女ばっかりあんなにたくさん、同行してたのか…。

「だって白皇家の血縁の男の人たちって、兄様以外はほとんどみんな、あの戦争で死んじゃったのよ…? 嫌がってる私と無理に結婚するより、西の皇子を射止めた姫が、皇位を継ぐことにしたらいいのよ!」
 …皇女サマをめぐる謎の『後継者問題』って…つまり、『後継者の押し付け合い』争いだったのか…。
 最後まで待機していたのは皇女と雄輝の一番の側近数十名ばかりで、その人たちもリツコが死なずに済んだことが確認できるとすぐに徒歩での砂漠越えに出発した。
 リツコの体力では、まだ歩いたり駱駝に乗っての旅は無理なので…
 行程をはしょって、残った一行はみんなで空を飛ぶことにしたという。
 またあの鳥人の籠で運んでもらうのかと思っていたら、なんと! 先日みたあの金の龍が背中に載せてくれた! 鋭が一緒に乗ってくれて、リツコの後ろからしっかり背中をささえていてくれる。

 飛仙族と呼ばれるフェルラダル様に手をつないでもらってマシカは嬉しそうに宙に浮いて飛んでいく。

 それを悔しそうな横目で見ながら、兄皇子マリシアル様は妹皇女サマと手をつないで飛んでいた。

 銀の龍の背中には、雄輝と副官の護衛の人たちが何人か、まとめて乗せてもらった。

 その後ろから、公女リジュイディーリヤと小鬼も、それぞれの羽を広げる。
「きゃーーーーー! 最高ッ!」
 はるか眼下の広大な砂漠の美しい砂紋様と、点在する岩山の影とオアシスの煌めきと、どこまでも平らに広大に続いて視界の果てまで霞んで見える(地平線が丸くない!)《大地世界》全体を眺め渡して叫んでいるうちに、わずか半日ほどで、半月前に出発した本隊に追いついた…。

「…今度は、寝なかったね?」と、鋭にからかわれながら…。

 

 

 9-3. リツコ、会議にでる。

 砂漠のほとりの大きな隊商都市の外で先行していたみんなと合流し、衣装と体調を整えて、そこからは順調に数日の駱駝行で、《西皇家》の都についた。
 あとにしてきた《仮の白都》の雑多な民族が賑やかに行き交っていた開放的な雰囲気とは何もかも違って、長い時代を経た西皇都は重厚で、荘厳で、格式ばっていて、のしかかってくるような威圧感のある石造りの巨大な建物が多かった。
 皇宮に上がる前に庶民の市場に寄って見物と観光がしたい。と、迎えに来た使者の人たちに仰せつけられた皇女サマの『わがまま』は、『とんでもございません!』の一言で、がんとして却下に付された。
 まぁとにかく会議開催の期日にはぎりぎりで間に合った形なので、さすがの破天荒な皇女も物見遊山は帰りの楽しみにとっておくことにして、白皇家の代表者たちは西皇家の本殿に、まずは到着の挨拶をしに行った。その儀式にはマシカや鋭やリツコたちのような『平民と余所者』は参加が許されなかった。

 代わりに白皇家との旅のあいだは居心地が悪そうだったボルドム公女は《公主殿下》と呼ばれて皇女とと同格に厚遇された。なんでって、「ボルドム世界の創造主たる男神グアヒィギルの血を濃く引く聖なる一族」の世継ぎの姫だから。だそうだ。
 そのほか、各方面から《大地世界》諸勢力の代表者たちが続々と集まって…
 いよいよ、数十年ぶりとなる《諸侯会議》が開催された。
 リツコは初日と最終日に、『地球から来た地球人の代表』(代理)ということで一言ずつ挨拶をするのが役割だった。
 また一生懸命マシカと相談して、今度は初日はユカタを着て出た。可愛いと好評だった。
 大叔母様から出発前に渡されていたあの手書きの挨拶状を、心を込めて、声に出して呼んだ。

 それは会議の開催を祝し地球からも友好を祈って挨拶を送りますという簡潔な内容で、朝日ヶ森というのは国とか民族ではなく、こちらの世界のヨーリア学派と同じように世の中のために色々な働きをする有力な学者の集団だ。ということにしておいた。
 それから会議は地域ごとや問題別とか産業別とか、つまり河川別の渡河税法についてとか、「統一交易貨幣の再発行開始における両替手数料率の統一可否の意見云々」とかとか、難しそうなものからばかばかしそうな内容のものまでたくさんの分科会に分かれて、あちこちで紛糾したり白熱したり和合したり盛り上がったり、満場一致で拍手喝采のあと大宴会になったり大乱闘になったり、それぞれ色々していた。

 皇女様や鋭たちは手分けしてありとあらゆる会合に顔を出して挨拶したり意見を交換したりしなければならないので、寝る暇も食べる暇ないほど忙しそうだった。
 リツコとマシカとおつきの人々の大半は、終りの日までは暇になった。

 市場に繰り出して買い物と食べ歩きに明け暮れた。

 

 

 9-4. リツコ、自分の言葉で話す。

 

 ミソノワ姫たちは会議のあいまにせっせと西の皇子たちを攻略していた。遠くから眺める限りでは西の皇族はイケメン揃いだったので、うまく恋人がみつかればいいなとリツコは思った。マーライシャとの婚約がどうのこうのという件はうやむやのうちに無かった話にされつつあるらしい。

 公主リジュイディーリヤは堂々と交渉して、一緒に亡命して来た部下たちとともに《大地世界》で争わずに暮らせるように、荒野のはずれの一角に、移住用の領土を譲ってもらえそうな感じになっていた。

 会議はあちこちで紛糾していたが、積み残した分科会はそのまま延長戦になるという日程と会場の調整が続いて、ひとまずは当初の予定通り、次の満月の夜までで、全体会議は最終日となった。

 うんと考えて、リツコは、最後の挨拶は自分の言葉で言わせてもらった。(どちらにしても大叔母様から預かってきた手紙は最初の一通しかなかったので。)

 今度は出発式の時に来たのと同じ私立の制服風の夏ワンピのボタンもきちんと全部とめて、ちゃんとした「正装」風に見えるように気をつけて、靴もサンダルに変えて出席してみた。

「あたしは、まだ子どもですが、これから地球に帰って、今回の旅で見聞きしたことを、大人の皆に伝えます。昔々の《四界時代》の始めが平和で豊かであったように、これからの《三界時代》がまた行き来の盛んな、お互いに戦争をしない、平和で豊かな時代になったらいいなと思います。そのために、あたしにできることを探して、がんばりたいと思います。」

 …あまりにも短すぎたかしら、と一瞬不安になったけれども、大人たちは満場の拍手で応援してくれた。

 

 

 9-5. リツコ、よばれる。

 それから会議の無事終了を祝って徹夜で宴会だというその晩、リツコは慌ただしく呼ばれて、西の皇宮内に用意されていた皇女サマの部屋へ案内された。
 鋭もマシカも皇子様たちも公女も、今夜はとても忙しいはずなのに、なぜか、みんないた。
「…なあに?」
「リツコあなた案外有能だから。このままこちらに居てもいいのよ?」
 いきなり不機嫌丸出しの声で皇女サマがぼそっとのたまう。
「へ?」目を点にすると、鋭が言い出しにくそうに苦笑しながら補足した。
「地球の欧米側に出られる通路があったら朝日ヶ森に戻すよりもそちらに亡命させてほしいって、清瀬律子さんから頼まれてた話は、前にしたよね?」
「あ、うん。…聞いた。」
「西のヨーリア学派とも連絡とってたんだけど。君が整理してくれてた古文書の解読をできる人がいてね。それによると。どうやら確実に通れる西側への通路が、今夜だけ、開く。」
「今夜!?」
「…急だから… みんなびっくりしててさ。」
「うん。」リツコもびっくりして、うなづく。
「それを逃すとしばらく地球に帰れる通路は確定できてない。へたすると数年先とかになるかもしれない。」
「そうなんだ…」
「それで、今夜、地球に帰るか、でなければ、数年先くらいまで、こっちに居てくれるかな?…って」
「…………そうなんだ………?」
「きみこっちでけっこう楽しそうにやってたし。」
「もうしばらく居てくれたら、あたしは嬉しい。けど…」マシカが真っ赤な目になって言い澱む。
「言わないのは卑怯でしょ!」
 また唐突に皇女サマがぶすくれた声でつぎ足す。
「…実は、リツコのお父さんとお母さんと、連絡が、取れたよ。」
「ほんとッ!?」 声が、うわずった。
「うん。今夜、行くなら、迎えに来てくれるって…」
 鋭の眼から涙が溢れるのを、リツコは二重にびっくりして見ていた。
 マシカも泣き出してしまった。
 リツコも泣き出した。でも、言った。
「うん。…急だけど… あたし、帰るよ!」
 もう一回、声に出して、自分に確認してみた。「地球人だから… 地球に帰る。」
「あたしね。ずっと…自分のこと… 天才でも魔法使いでもないし… 役に立たなくて、残念だな! って思ってた。

 …でもね、こっち来て、ほんとの天才の鋭とか、魔法が使える王女様のマーシャとか、見たけど…
 …べつに天才じゃなくてもね。凡才でも、マホウも使えなくても…

 …あたし、結構、…役に立つよね?!」
「えぇ。かなりとても、役に立ってくれたわよ!」

 皇女サマが悔しそうに涙をにじませながら言う。
「だから… こっちの世界は、これからもう、平和になるから…」

 マシカが声をあげて鳴き出してしまった。両手に顔をうずめる。
「あたしの世界は… これからが大変なんだから…。

 自分の世界に帰って、がんばれることを、やってみる!」
「そうだね。」
 雄輝がちょっとそっぽを向き、鋭がうん。とうなずいた。

 

 9-6. リツコ、地球にかえる。

 慌ただしく、来たときのリュックとバスケットに荷物を詰めて、来た時の服に着替える。

 背負って抱えて歩けるもの以上は運べないという話だったので、こっちでマシカと買ったばかりの服や小物や甘いものの大半は、残念だけど諦めるしかなかった。
「リツコ…! あたし本当に妹みたいだなーって、…思ってたのに…!」
 マシカはもう泣いて泣いて大変で、手伝いは期待できない。
 やっぱりぐすぐす鼻を鳴らしながらでも、鋭はさくさくと荷造りを手伝ってくれた。

 とにかく書き貯めた記録のノートは全部と、ついには足りなくなって分けてもらったこっち風の巻き布や葉綴じもぜんぶリュックにむりやり押し込む。

 二十四色の色鉛筆は鋭に、ぼろぼろになったけど日本語の辞書はまだ使えると思うからマシカに、記念にもらってもらった。

「なによ! わたしには?!」と皇女サマが子どもみたいに拗ねたので、ちょっと考えて、籐のバスケットに入れてた中身をぜんぶ出して適当な布で風呂敷包みにして持ってくことにして、「これ気に入ってたんだけど、あげる。」と言ったら「じゃあ大事にするわ。」と素直に受け取るので、やっぱりちょっとその性格には笑った。
 挨拶を出来るかぎりの人たちには慌ただしく挨拶をして回って、会議の打ち上げ宴会であちこち賑やかな城のすみから、地元のヨーリア学派の人たちの案内で、そっと抜け出す。
 皇女サマと公女様は宴会から長くは抜けられない立場なので、門の中で最後のお別れをした。二人とも眼が赤くなっていた。
 短い夜の道を歩き、寺院のような場所から地下の泉水井戸に入る。
 小さい祠があって、それをどけると短い洞窟があった。
『入って。』ヨーリア学派の人が言う。
『リツコ! …リツコ行かないでッ!』 マシカがうしろからしがみつく。
『マシカ…! ごめんねぇッ!』 リツコも涙で前が見えなくなる。
『…あまり時間がない。すぐに通路が塞がってしまう。』
「リツコ、」
「鋭、また…いつか、どこかで、会えるかな…?」
「手紙を書くよ。小さいものなら、定期的に送れる通路は確保してあるから」
「うん…」
 動けない。やっぱり…行きたくない! 帰りたくない!
 リツコは思った。「あたし! …やっぱり…ッ!」
 すると洞窟の向うから、真夜中なのに、太陽の光? らしいものが射しこんできた。
「…リツコ! …リツコ? 居るの?!」
「リツコ!?」
「…お母さんッ? …お父さんッ!」
 …マシカが、抱き着いていた腕を、嗚咽しながら、放した…
「ごめん! みんな! あたし、行くね!」
『…リツコのお母さん! リツコとっても良いコでした! ありがとう! 大事にしてあげてね!』
 マシカが洞窟の奥に向かって叫ぶ。
「…リツコ!? …そこに居るのよねッ?!」
 リツコはがんばって一歩踏み出し、それから目をつぶって駆けだした。
 後ろを振り返る暇もなく、あっと思う間もなく、ステン! と、何もないのに転んで…

 慌てて目を開けると、明るい場所に、お母さんとお父さんが、立っていた…
「リツコ!…元気で…ッ!」
 最後に、喉に絡んだような、鋭の半泣きの声が聴こえて…

「待ってッ! リツコごめん! 《言葉の術》! 解くの忘れたわ!」
 息せききって追いかけてきたらしい皇女サマのそんなまた笑えるセリフがかすかに遠くから聴こえて…

 それっきり。

 

 

 9-7. リツコ、家族と合流する。

 

 お母さんがぎゅっとしがみついてきて、お父さんが泣いていて、お姉ちゃんが泣きじゃくっていた。

 そこは知らない場所で、でも地球の建物だった。

 リツコも泣いてしまって、しばらく何も言えなかった。

 

 それからリツコは独裁国家となって戦争を始めてしまった日本へは戻れず、家族と一緒に外国に亡命して暮らすことになったが。

 なぜか? 言葉が通じないはずのリツコが日本語で喋ると、言葉が通じないはずの相手の人のあたまのなかに、その意味が字幕のように、浮かんでしまう…。

 それは地球世界ではありえないことで、リツコはテレパシーを使う超能力者と誤解され、その後の《大迫害時代》には、地球にさえ居られなくなって宇宙へ移住するハメになったりしたが…

 

 それはまた、別のお話です。


                                     fin.

 

 


(第2稿)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(第2稿)

 

 

 


(あらすじ) (2018年9月8日)

 

『 リツコ冒険記 』 ☆夏休み・異世界旅行☆

               霧樹里守(きりぎ・りす)

(あらすじ)

高原リツコは家族の事情で、私立学園の寮に住んでる。
その学長から「夏休みの手伝い」を頼まれた。
なんと、「異世界への親善大使」!
えぇ?! …っと思ったけど大人たちや先輩たちはみんな忙しくて行けないらしい。

「行って、みんなと仲良くして、まわりをよく観察して、レポートを書いてきてくれれば、それだけでいいの。
行ってくれたら他の宿題はぜんぶ免除してあげる!」
大好きな学長がそう言ってくれたので、喜んで引き受けた。

「姉弟世界」と呼ばれる大地世界《ダレムアス》では、漫画かアニメの王子様?かと思うような超美形!の、優しいお兄さんに世話してもらっちゃうしぃ ♪
食べ物は美味しいし、お祭りは楽しいし…、
…あいにくながら残念な性格の皇女サマには、意地悪されたけど…。

もうひとつの異世界《ボルドム》との戦争終結のための講和準備会議?とか、
同じ大地世界のなかでも、民族紛争とか、皇位継承争い?とか…
そういう深刻な問題には、ショックを受けたけど…。

たっぷりのレポートを抱えて、友達と涙でお別れして、
リツコは夏休みの終わりとともに、元気に帰国しました。

 



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