目次
(借景資料集)
【速報!】 第2回 「青い鳥文庫小説賞」
(第4稿)
(第4稿)as(最終稿)
(添付挨拶状)
(あらすじ) (2018年9月23日)
序章 《 朝日ヶ森 》
第1章 リツコ、異世界へ行く。
第2章 リツコ、異世界で目覚める。
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、取材する。
第8章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第9章 リツコ、役に立つ。
終章 リツコ、地球に帰る。
(第3稿)
(第3稿)
(表紙)
(あらすじ) (2018年9月16日)
序章 朝日ヶ森 学園
第1章 リツコ、異世界へ行く。 (2018年9月16日)
第2章 リツコ、異世界で目覚める。 (2018年9月16日)
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第8章 リツコ、戦う。
第9章 リツコ、地球に帰る。
(第2稿)
(第2稿)
(あらすじ) (2018年9月8日)
1-0-0.朝日ヶ森「学苑」(おもて)
1-0-1.朝日ヶ森(うら) (2018年9月8日)
1-1-0.リツコ、呼ばれる。 (2018年9月8日)
1-1-1. リツコ、出かける (2018年9月8日)
2-0-1.リツコ、異世界に着く。 (2018年9月9日)
2-0-2.リツコ、挨拶する。
2-1-1.リツコ、清峰鋭にあう。
2-1-2.リツコ、異世界の村へ行く (2018年9月9日)
2-1-3. リツコ、空を飛ぶ。 (2018年9月9日)
3-0-0. リツコ、悪夢をみる (2018年9月10日)(加筆)
3-0-1.リツコ、起こしてもらう。
3-0-2. リツコ、情報交換する
3-1-0.リツコ、朝寝坊する。
3-1-1.リツコ、右将軍にあう。
3-1-2.リツコ、皇女に会う
3-1-3.リツコ、マシカとあう。
3-1-4. リツコ、市場へ行く。
3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。 (2018年9月11日)
4-0. リツコ、早起きする。
4-1. リツコ、パレードに参加する。
4-2. リツコ、誇大広告される。
5-1. リツコ、旅をする。
5-2. リツコ、記録する。 (2018年9月12日)
5-2. リツコ、話せるようになる。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第6章 リツコ、旅をする。
(第1稿)
(第1稿)
(あらすじ) (2018年8月17日)
( 目次 ) (2018年8月18日)
0-1.(おもて) (2018年8月18日)
0-2.(うら) (2018年8月18日)
1.リツコ、親善大使になる (2018年8月18日)
1-1. リツコ、出かける
2. リツコ、異世界へ行く。
2-1.リツコ、挨拶する。
2-2.リツコ、清峰鋭にあう。 (2018年8月19日)
2-3.リツコ、運ばれる。
3.リツコ、白王都へ着く。 (2018年8月22)
3-1-0.リツコ、寝坊する。 (2018年8月22日)
3-1-1.リツコ、皇女に会う (2018年8月22日)
3-1-2.リツコ、マシカにあう。 (2018年8月24日)
3-1-3. マシカ、市場へ行く。 (2018年8月24日)
3-1-4. マシカ、天幕に泊まる。 (2018年8月24日)
4-0. リツコ、目覚める。
4-1. リツコ、行列に参加する。
4-2. リツコ、センデンされる。
5-1. リツコ、記録する。
5-2. リツコ、観察する。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。 (2018年8月26日)()
6-2. リツコ、小鬼を救う。 (2018年8月26日)
7. リツコ、まきこまれる。 (2018年8月26日)
8-1. リツコ、魘される。
8-2. リツコ、龍にのる。
9. リツコ、会議にでる
10-1. リツコ、よばれる。
10-2. リツコ、地球にかえる。 (2018年8月26日)
(草稿&没原稿)
(草稿&没原稿)
(1) 朝日ヶ森 (2018年6月3日)
『 リツコへ。 第一日 』 (@中学……1年か2年?) 
(あらすじ) (プロット&目次)
(あらすじ) (プロット&目次)
【投稿用】プロットメモ (2018年7月22日)
400字~800字程度のあらすじ。 (2018年8月17日)
(設定資料集)
(設定資料集)
このコだ! 「鍵になるキャラ」…っ!www (2018年6月30日)
(( ことばよ、つうじよ! ))  (2018年8月9日)
(サ行前の雑談など)
(サ行前の雑談など)
【ぐれてる理由】。(--;)。 (2018年5月13日)
『 リツコ 冒険記 』 ~ 夏休み ・異世界旅行 ~ (1) (2018年6月3日)
(案の定【天中殺中】で頓挫している) (2018年7月22日)
…ちっ! …やっぱり…『落ちた』か…★ (2018年8月12日)
次ぃ征くぞ! 次っ! (2018年8月12日)
★ 【講談社 『 青い鳥文庫 』 の呪い!?】の謎。 ★
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18 / 104ページ

(表紙)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リツコ冒険記

 

…夏休み・異世界旅行…

 

 

霧樹里守

(きりぎ・りす)


(あらすじ) (2018年9月16日)

 『 リツコ冒険記 』 …夏休み・異世界旅行…

               霧樹里守(きりぎ・りす)

(あらすじ)

 高原リツコは家族の事情で、私立学園の寮に住んでる。
 その学長から「夏休みの手伝い」を頼まれた。
 なんと、「異世界への親善大使」!
 えぇ?! …っと思ったけど大人たちや先輩たちはみんな忙しくて行けないらしい。

「行って、みんなと仲良くして、まわりをよく観察して、レポートを書いてきてくれれば、それだけでいいのよ。
 行ってくれたら他の夏休みの宿題は、ぜんぶ免除してあげる!」
 大好きな学長がそう言ってくれたので、喜んで引き受けた。

「姉弟世界」と呼ばれる大地世界《ダレムアス》では、漫画かアニメの王子様?…かと思うような超美形!の、優しいお兄さんに世話してもらっちゃうしぃ ♡
 食べ物は美味しいし、お祭りは楽しいし…、
 …あいにくながら残念な性格の皇女サマには、意地悪されたけど…。

 もうひとつの異世界《ボルドム》との戦争終結のための講和準備会議?とか、
 同じ大地世界のなかでも、民族紛争とか、皇位継承争い?とか…
 そういう深刻な問題には、ショックを受けたけど…。

 たっぷりのレポートを抱えて、友達と涙でお別れして、
 リツコは夏休みの終わりとともに、元気に帰国しました。

 


序章 朝日ヶ森 学園

『 リツコ冒険記 』…夏休み・異世界旅行…

 

          霧樹里守(きりぎ・りす)

 

 

序章 朝日ヶ森 学園

序章 1 (おもて)

 朝日ヶ森学園。
 知ってるかな?
「天才児が集まる」ので秘かに有名。
 超のつく贅沢な校舎と独特の自由奔放なカリキュラムの秀逸さ、そして学費の高さでも知られていて、我が子を名門私立に進学させたい親たちにとっては、憧れの学園だ。

 基本は全寮制だけど、都心から遠距離通勤・通学してくる生徒や先生もいる。
 緑の豊かな地方の新幹線の停車駅から、自動車なら迂回ルートで二十分くらい。
 歩くなら、県立公園のなかの遊歩道をまっすぐ抜けてくるほうが速い。
 自転車? …まぁ、モトクロスを乗りこなせる人なら、抜けられる道だと思うよ…?

 学園の敷地は広くて、一見すると壁とか塀とか柵とかの仕切るようなものは何もない。
 でもセキュリティは万全で、目立たないところに監視カメラ網がばっちり。
 不審者は入り込めないけど、内部の見学とかは許可制の予約ツアーに参加すれば入れる。
 校舎や講堂や寮の建物は、一見シンプルだけどしっかりお金のかかった造りで、見た目は繊細で温和な感じだけど、どんな災害にもまけない頑丈な耐震骨格なんだって。
 もちろん、屋外と屋内の両方に冷水と温水の競技用プールがあるし、体育館とか柔道場とか剣道場とか弓道場とか、もちろんスケートリンクもテニスコートも、全天候対応型のやつが、それも学年別とかで、複数個所にある。
 さすがにサッカーコートとラグビー場とスキー場は屋外だけ。らしいけど。
 図書館ときたら外部の大人が泊りがけで調べものしにくるほど、質量ともに充実した蔵書数を誇る。
 広大な敷地はゆるやかな起伏があって、種々沢山の緑が豊か。
 天気のいい日は生徒たちがあちこちの芝生や木の下で、ゆったり寝ころがったりグループ課題を片づけていたりする。
 もちろん複数個所にある学内食堂も合計すれば二十四時間営業で、メニューはもちろん好きに選べる上に、無添加とか有機栽培とかのこだわり素材を使って健康に配慮した栄養管理がされていて、しかも一流シェフによる監修で、国際級のホテルのレストランなみに充実したラインナップで美味しいらしい。
 時間割は自学自習に重きを置いていて選択科目が多くて自由。

 生徒のうちで都心から新幹線で週1のスクーリング等にくる通信制の生徒たちには芸能関係の子役とかアイドルの卵とかが多い。学内ではおもに「タレ組」と俗称されている。

 それから特徴的なのは全寮制の一番奥の建物にいる「天才組」と呼ばれる、生まれつき知能指数が平均よりもはるかに高い、ちょっとかなり変人で専門バカな連中。
 そして生徒のなかで数が多いのは、やはり親が金持ちとか有名人とかのセレブで、コネと金を可能なかぎり使いまくってお受験資格をとって我が子をここに「押し込んだ!」という家の子たち。なんだけど…
 それ、本当はちょっとだけ、気の毒な話なんだ。
 なんでかって…?
 ここはあくまでも、関係者からは「おもて」と呼ばれている場所(学苑)で…
 本当の朝日ヶ森「学園」は、「うら」とか「真」とか呼ばれていて、別の場所にあるから。
 なんだ… 

 

 

序章 2 (うら)

 さて。
「うら」とか「真」とか呼ばれている、「ほんとうの」朝日ヶ森について…
 説明するのは、難しい。
 場所は秘密で、首都圏からは「裏日本」なんて蔑称されている地域の、辺鄙な山の奥にある。
 こちらも敷地は広大だけど、目立たないように全域が頑丈なレンガの壁できっちり囲われていて、特殊な警護部隊が昼夜をわかたず厳重な監視をしている。

 さらに点在して見えるまばらな建物群は主に地下通路で緊密につながっていて、むしろ地上部分よりも地下部分のほうが質量ともに広壮な本体だ、とも噂されているが、実は在学生でも現職の職員でも、全貌をきちんと把握している存在は、ほとんど居ないらしい。

 ほとんど「秘密基地」という感じの場所だ。
 こちらに在学する生徒の種類も、おもに三つに分かれる。

 ひとつは国内外の要人、つまり政治・経済的なVIPの子どもたちで、なんらかの事情で家族とは一緒にいられない者…生まれつき病弱とか、テロや誘拐の対象にされる心配があるとか、相続争いによる暗殺の危険を避けるためとか、はたまた、隠し子で正妻には内緒でないとまずい存在とか…そんな感じの。
 だからちょっとひねた性格のやつらが多い。

 ふたつめのグループは、もっと特殊で…
「ふつうの人間じゃない」能力や外見を持って生まれた、「特別な家柄」の、跡継ぎとか先祖返りとか…
 角や牙があったり、鱗や翼があったり、魔術や呪術が使えたり、過去や未来や、人の心が読めたり、操れちゃったり。
 本人たちはそれでも「神でも悪魔でもないから、いちおう人間なんだけどー」と主張する場合が多いが、今の世の中ではうっかり一般社会を出歩くことができない。
 それで、「一族だけしかいない隠れ里に閉じこもってばかりでは世間にうとくなるし、幼なじみと親戚以外は友だちも恋人も探せない人生なんて!」…という理由で「社会体験」と称して「朝日ヶ森学苑に遊学」しに来て、広い構内で文字通り「翼(はね)を伸ばして」学園生活を楽しんでいたり…する。

 生徒の内の三つめのグループについては…長くなるので、また後で説明しよう。

 まぁそんなふうに、観た感じからして不思議な…秘密の、「地球内・治外法権」とも呼ばれる…

 「朝日ヶ森・学園」。 

 このお話は、そんな場所から始まる。

 


第1章 リツコ、異世界へ行く。 (2018年9月16日)

第1章 リツコ、異世界へ行く。

 

 1-1.リツコ、召喚される。

 朝日ヶ森学園の生徒たちのうち三つめのグループ通称「ただびと組」に属する普通人のリツコは平凡な子どもで、セレブの子でも天才児でもなく、美少女戦士でも子役アイドルでもないかわりに、妖怪変化の類でもなかった。(こう書いたら「失礼ね!」と、妖怪変化な学友たちから怒られた。)
 しいて言うなら特技は木登り。

 親から教わって育ったのでキャンプとか大好きで、野外炊飯とか年齢のわりに得意。
 虫とか蛇とか平気で、まぁ女子からは引かれるけど、いざって時のサバイバルには向いてる。
 見た目は十人並。顔はのっぺりしてハナはちんまりして、日焼けして真っ黒で、鼻のまわりとかソバカスだらけ。へろへろのくるくるの天パの髪がコンプレックスで、黒目がキョロっとでかくて、歯並びだけは自慢で真っ白で、まぁ時々「笑うと可愛い」くらいは褒めてもらえる。

 ご飯はよく食べるけど、それ以上に暴れてる。から、まだそんなに太ってはいない… たぶん。
 前いた学校では野球部のピッチャーでいいセンいってた。

 投げたら当たる。これはけっこう、長所?
 まぁそんな程度のリツコが「うら」朝日ヶ森にいるのには…
 事情があった。

 そんな事情のひとつ、「大叔母様」からの呼び出しがあったので、とある七月の昼下がりに学長室までとことこ歩いて行った。
 全寮制の学園はすでに夏休みに入っていて、家のある生徒たちの大半は帰省か家族旅行に行ってしまった。
 今を盛りと鳴きすだくセミ時雨のほかはしんと静かな構内の、広壮な芝生の起伏と緑陰の濃い木立ちの数々と、英国庭園風のベンチをしつらえた花壇や植え込み迷路やらの中を、小汗をかきながら十数分ほど、えんえん歩いて歩いて、ようやく重厚なレンガ造りの事務室棟に辿りつくと、勝手知ったる建物内には無言のまま入って、こんこんと学長室のドアを叩いた。
「はい。どうぞ!」
 若々しい声の大叔母様の返事を聞いてからドアを開け、一応「失礼します」と頭を下げる。
 大叔母様というのは都合上の呼称で、本当は、祖母のイトコだ。
「なんですかー?」
「お願いがあるのよ!」
 元気な声でいきなり言われて、リツコは面食らった。
「欠員が出ちゃってね! 代わりに行ける人が他にいないの。バイトと思って引き受けてくれないかな? お礼として、夏休みの宿題ぜんぶ免除するから!」
 …この「大叔母様」の名前は清瀬律子という。リツコと同じ「りつこ」だ。
 やはり美女でも妖怪でも天才でもない「ただびと組」のはずだが、ここの卒業生で、なぜか学園長まで務めてる。
 リツコの母はこの気さくな美人叔母(ほんとうは母の母の従妹だ)が大好きで、たまたま彼女が事故で行方不明になって死んだかと思われていた頃にリツコを身籠ったので、思わず名前をもらって付けてしまった。という話…(そしてその後で本人がけろっと生還したので、親族一同は呼び名に困った。)
 …まぁその話はいいけど。
「…朝日ヶ森『学園』の生徒の、欠員の代理って… それ、『ただびと』のあたしでも務まる用事?」

 そっちのほうが当面の大問題だ。
「だいじょうぶよ! なんて言うか…そう! 親善大使! みたいな役目なの。行って、しばらく滞在して、まわりの皆さんと仲良くして… 最後の会議で、コレを私の代理で音読してくれればいいの!」
 渡された手書きの便せんにざっと目を通して、それから声に出して読んでみた。

「…”みなさん、おまねきありがとうございます。今日のこの会議の”…」
 ちょっと長いけど… べつに、読めないほど難しい漢字とかは、無いよね…?
「…行っても、いいけど… どこ…??」
「異世界よ!」
 大叔母さんの無邪気な一言に、リツコは「はぁ?」と口を開け、目を点にした…。

 

 

 1-2. リツコ、旅支度をする。


「…あ、あらっ? ウケなかったかしらっ? イマドキの『ただびと』…いえ、ふっ、『普通世界』で育った子どもには、こういう言い方のほうがウケ…いえ、判りやすいかな~と、…思ったんだけど…っ!?」
 いつも穏やかでニコニコしている大叔母様が、真っ赤になってわたわた取り繕うという珍しい光景を、リツコは口をあけたままあんぐり眺めた。
「…べつに危ないこととかは無いと思うのよ? 戦争は終わったっていうし、和平会議なんだし、おばさまの初恋の人とか、向うに行ってるしっ」
「はぁ?」
「だからねっ! …だから、私と同じ名前の血のつながったあなたが、向うであの人に会ってきてくれたら… 本当に、わたし、嬉しいのよ…っ!」

 …とりあえず、何も解らないけど、断れないらしい。ということだけはリツコにも判った。
「…………わかった。とにかく、行ってくるから…………。」
「ほんとっ?」
 としがいもなく頬なんか染めちゃった大叔母様(たしか七十歳は過ぎているはずだ…)が、慌てて咳払いなんかしながら色々と説明してくれた。

「…持って行ってほしいものはもう購買に頼んで取り寄せてもらってあるから、部屋に戻る前に受け取って行ってね。それから、旅仕度に必要なものは何でも『おばさまの支払いで。』って言って、好きなだけ買ってくれていいから。」

 そう言いながら渡された「絶対に!持っていくもの」リスト。

 

 ・計算尺 1つ (購買にもう頼んであります。)

・ノギス 1つ      〃

・大学ノートかリングノート(リツコの好きなほうで)

 10冊くらい(持てて書けるだけなるべくたくさん)

・鉛筆(ポールペンやシャーペンじゃなくて) 1ダース(1箱)か、もっと。なるべくたくさん。

・色鉛筆(カラーペンじゃなくて) 1セットかもっと。

・消しゴム(多めに)

・鉛筆削り(忘れないで!)

 

「…この計算なんとかと、ノギスってなに?」

「それは向こうからのお土産のリクエストなの。着いたら渡してあげてね。」

「…わかった。…ねぇねぇ。色鉛筆って、二十四色のやつ買ってもいい?」

 思わず目をきらっと光らせながら聞くと、

「四十八色のでもいいわよ!」

 大叔母様が笑って言い切ってくれたので、リツコは大いに気をよくした。

(自分のおこづかいだけじゃ買えないやつだー!)

 それからこまごまと書いてくれた行先への道順の説明をよく読んで、解らないところは質問して、細かい打ち合わせもして。

 その後でひとりで購買に寄って、言われたものと、リュックとか下着とか、要りそうなものを選んで買って。

 それから夜遅くまでうんと考えて、必要最低限の着替えと小物だけをしっかり厳選してリュックに詰めて、翌朝、列車内で食べるお弁当と飲み物を、予約しておいた食堂で受け取って、お気に入りの藤のバスケットに詰めて…
 用意した荷物を大叔母様にチェックしてもらってOKをもらって挨拶してから、駅まで向かう朝一番の路線バスに、リツコはひとりで飛び乗った。

 

 

 1-3.リツコ、一人旅する。

 

  最寄駅から普通切符を買って鈍行に乗って、乗り換え駅から特急に乗り換えて、検札に来た車掌さんに目的地までの特急券を頼んだら、
「小学生が一人で?」と、やっぱり不審がられたから、教えられた通りに、
「ママのお墓参りに行くんだけど、パパは夏休みが取れなかったのー!」

 と無邪気なふりしてにこにこ返事して。

「降りる駅に着いたらおばあちゃんが迎えに来てくれてるから。」と言ったら車掌さんは安心して向こうへ行ってしまった。
 それから慣れない長距離列車に揺られていたら半袖ではクーラーが寒くて、鼻水垂らしてぐずぐず言いながら、ちょっとだけ窓枠に肘をついてもたれて、うとうと眠って。
 乗り降りする他の乗客たちのざわめきに、はたと目が覚めると、もうすぐ、降りる駅で…

 慌てて起きて、乗り換えて、また乗り換えて、乗り継いで…

 日暮れ前にようやくたどり着いた二面戸町駅のホームの待合室でくるりと三回転半して振り向いて、後ろの正面の七つと三番目にあった教えられたとおりの秘密のドアを特別なやりかたでひねって、くるっと開けると。
「高原リツコ様ですね? 多元旅行社の送迎サービスの者です~!」
 …どう見ても二足歩行の巨大なカエルの人?がいて、曲がりくねった不思議な山道を、おかしな形のタイヤのない車で案内されて…
 教えられた森の中のこぶこぶした不思議な形の大樹に、よじよじと必死で登って。

「今ですよ!」

「大地の端っこから、太陽の端っこが、完全に沈んで消える瞬間」…ちょうどに!
 教えられた通りの樹上の空洞から、えいっと、勇気を出して…
 目を閉じて、しっかり荷物を抱えて、真っ暗な穴のなかに…

 飛び降りて、どすんと…
 …いえ、ふわっと…
 なにか柔らかいものの上に、落ちて… 

 目を開けたら、そこは、異世界?

  だった…。


第2章 リツコ、異世界で目覚める。 (2018年9月16日)

第2章 リツコ、異世界で目覚める。

 

 2-1. リツコ、仔猫につかまる。

 

 ちょっとの間だけ、気絶していた?らしい。
 はじめ何も視えなかった。とにかく眩しかった。
(…太陽…? あれ? だって「陽が沈む瞬間に!」って…あたし、飛びこんだよね…?)
 変だなと思いながら、とりあえず薄目だけ開けて、明るすぎて何も視えなかったので、右手を上げて顔の上を遮ってみた。
 同時に、右側の手で、からだとまわりを探ってみる。
 …怪我はない。まわりは…もふもふ? もこもそ? …している…???
 しばらくしてようやく、自分が何か柔らかくて長丸いもの?の山の中に、かなり高い上のほうから落ちて来た勢いのまま、あおむけに埋もれこんでいる…? ということが判った。

 その何かふかもこしたものが、上から落ちて来たリツコを受け止めた衝撃で弾け跳んだらしい綿埃?

…らしきものが、ほぼ真上からまっすぐに降り注いでくる金色の陽光の中を、ぶわぶわと舞い飛んでいる。

 触ってみた感じでは、リュックも潰れていないし、顔の上に挙げた右手でしっかり持ってたバスケットも、壊れたりはしていない。
 とにかく眩し過ぎたので、薄目だけ開けながら、もっそもっそと動いて、なんとか姿勢をかえて腹這い向きになり、それから手探り膝さぐりで、1mほどのふかもこの斜面をかなりずり落ちながらも、のそのそとよじ昇る。

 ちょうどその頃から、まわりのあちこちから、声が聞こえ始めた。
「…ま~るめる! まるった! えら。えららう。まるる~ん…???」
「えるった!らう!」

「あらえ!」
「まるぇ? えら。あらぅ。…あろ、…あっかせっか!」
「か~ぃせ! えのっかあるっか、らぅらぅらぅ。あごん!」
「あうのいあ!」
 …そんな感じの、まるまるした声の、可愛い響きのコトバで…

 もちろん、ひとっことも、解らない…!
(………ほんっとに、異世界? …来ちゃった~???)
 そう思いながら、もこもこの白い山の上からようやく顔を出すと。
「…えらっ! あまっ!あままま、あまま、あそっ?」
 可愛い仕種で、どうやら「だいじょうぶ~?」と心配してくれているらしい声が、かかった。
(…か、………かわいい…っ ♡ ♡ ♡ )
 語尾と目じりが思わずハート型になってしまうような小さな生き物たちが、そこらじゅうにいた。
 全体的に、白くてもこふわ。サイズはかなり小さそうだ。一番大きいコでも、リツコの膝までぐらい?
 うさぎのような、モヘアのような、ふわふわ毛並みの、だけどどちらかというと横長のまるい顔立ちの、大きな吊りあがりぎみの黒くて丸い眼の…見た目は、むしろ、猫…?

 エプロンドレスのような…巻きスカートのような…きんたろさんのような…形はそれぞれ違うけど、可愛いパッチワーク模様の、色とりどりの服を着た…

 二足歩行の…、白い、仔猫…??
「…あいにゃ! うにゃう?」

 心配してくれているらしい、表情豊かな大きな瞳が、とてもとても、愛らしい。

(これ、意味、たぶん、「だいじょうぶ? けがはない?」って感じかな…?)
 リツコはあんまりな可愛いらしさに嬉しくなってしまってへろっと笑いながら、とりあえず手を振ってみた。
「ごめん! コトバわかんない! ケガはないよ~。だいじょぶ!」
 それからちょっと心配になって、体の下のもふもふを手にとってよく見てみた。
 白猫?たちとよく似た色だから、生きてる仲間を下敷きにでもしたのかと思って。
(…違うみたい。…これは…毛玉? …繭…???)
 なにかカイコのような形のそれよりは大きさめ、毛玉…毛糸玉? のようなものが、いかにも「落ちて来くるもの受けとめ用クッション」という形に、高さ数メートルくらいの勢いでもりもりと盛り上げられている。

 その小山を取り囲む(…風から護っているのかな…?)というふうに張り巡らされた、屋根はない、テントのような…天井を大きく開けたティピのような…布とも皮ともつかない半透明の材料の、幕屋のなかの…

 前は大きく開いていて、見晴らしが、すごく良いことにリツコはやがて気がついた。

 おそらくとても高い山のなかの斜面を覆っている、大きな深い大樹の森の、さらにひときわ巨大にそびえたっている…

 後にしてきた世界でよじ登って飛びこんだ、大きな洞のあった老木とは、同じくらいの大きさだけれど、それとはまた別の種類の…
 若々しく枝を張り広げたみごとな大樹の、巨大な幹に開いた大きな洞の、その下だった…

 

 

 2-2. リツコ、白ウサギに挨拶する。

 古びて節くれだってぼこぼこと溝やウネができて、ところどころに緑の苔まで生えた大樹の根元、眩しい陽光が燦燦とさしこむあたり。
 巨木の幹にできた大きな空洞(うろ)から「何かが落ちてきたら」受けとめられるように…と、高さ三~四メートルほどに積み上げられていた「もこもこ」の山の斜面をずるずると滑り降りてみて、そこでリツコはしばらく困り果てていた。
 膝丈ほどの二足歩行の「しゃべる猫型にんげん?」…としか思えない、白くてふわふわの小さい生き物の群れに、わらわらと取り囲まれて…
「まうまうまう!」
「あうれ?」
「あっかのおっか?」
「おねぅおねぅ!」

「まうまうまうまうー!」
 などなど…ちっとも解らない言葉で、おそらくたぶん質問責めに?されたあげく、とりあえず適当に日本語で受け答えをしている間に、やおらよじよじとリツコの脚や腕に登り始めて、頭の上に座っちゃったりする、おちびさんまでいる…
(………えーとぉ。これは~………☆)
 ふかふか可愛い生きものにまとわりつかれること自体は楽しいので、思わずもふもふと撫でてみたり、へろへろと笑いながらも、ちょっとかなり困り果てていると、すこし離れたところから、すこしだけ低めの声が響いた。
「…えっけれねん! あうら! かなりっこさる!」
 とたんに、リツコを取り囲んでいたチビ猫さんたちが慌てて動き始めた。
「あけーーーーーね!」
 なんとなくリツコにも意味が分かった。
『あんたたち何やってるの、だめでしょ! 離れなさい!』
『ごめんなさーい!』
 …くらいの会話じゃないかな? たぶん…
 ちびさん達がどいてくれた隙に慌てて立ち上がると、やってきた人?たちの姿がようやく見えた。
(…あれ…?)
 膝丈ほどのちびさん達は、どうやらとにかく「子どもの」猫(?)だったらしい。
 やってきたのはたぶん大人?で、膝丈のおちびさん達よりはだいぶ大きい。とはいえ、地球の日本の小学校高学年としては標準サイズのリツコと、同じくらいの身長しかない。
 子どもたちが横丸な顔で耳も短くて地球の猫に似て見えるのに比べると、やってきた何人かの大人?猫たちはおそらく、育つにつれて顔も手足も縦長になり…耳が長くなって立ち上がり…やがて垂れて…地球でいう「垂れ耳うさぎ」が巻きスカートのようなエプロンドレスのような服を着て、荷物を手で持って、立って歩いてやって来た。…としか、リツコには思えないのだった。

(…えーと!)
 リツコはとりあえず「皆さんと仲良くしてね。」と大叔母様に言われて来た、自分の「親善大使」という役割を思い出して…、とにかくピシッと「気をつけ!」の姿勢をしてみた。

 それから、すぅっと息を吸ってから、元気よく、
「こんにちは! はじめまして、高原リツコっていいます。よろしくお願いします!」
 きちんとした大人たちがきちんとした時にきちんとやるみたいに、きちんと前に手をそろえてきちんと頭を下げて、きちんとした挨拶をしてみた。
 おとなウサギ?たちは、ちょっとキョトンとした後、やおらそれぞれの長い耳をゆっくりと頭上に掲げてぱたぱたと順序良く揃えて左右にうちふり、片手で巻きスカート?の脇をちょっとつまんで外側に開くようにしながら、反対側の手の平もリツコに見えるようにすっと開いて、膝をちょっとかがめて、
「まうまうまう!」と声をそろえた。
(まうまうまう?)とリツコは慌てて考える。
(さっきから何度もちびちゃんたちから聞いてたコトバだな~、アイサツだったのか!)
 了解したので慌ててまねっこをして両手を耳のかわりに頭の両脇にたてて左右にふってみて、スカートは履いてないので仕種だけ真似して、膝をぴょこんとかがめて、
「まうまうまう?」と、首をかしげながら挨拶をしてみた。
 おとな兎たちはリツコの発音の悪さにウケたらしくて笑いながら、元気に声をそろえて「まうまう!」と返事をしてくれた…
 ので、リツコは嬉しくて、えへへと笑った。

 

 

 2-3. リツコ、王子様にであう。

 

「…えっけれねん、あうりっこさるれぅある?」
「あっかいおす、おっかいねん?」
 …再び意味が解らない…
 えへえへと頭をかく仕草でごまかしながら困り笑いをしていると、おとな兎たちのうしろから、新たな声が響いた。
「…ごめんごめん!遅れた! やっぱりちょっと時間の計算に誤差があったね!」
(…………日本語だぁ~…!!!!)
 こんな短時間で『ことばの壁』に疲れて早くもホームシックになりかけていたリツコは、自分がものすごいほっとしていることに気がついて、むしろ驚いた。
「ミキーレ!」

「ミキーレ! あうのぁさるのみぇ、えれ?」

 おとな兎たちはふりむいて歓迎しているらしい声で、何かを説明したりしている。

『あうれりぁおうのおうあ、えら。』
 少しだけ違う発音で、だけどごくごく流ちょうなウサギ語?で受け答えをしながら斜面を登ってきて、リツコの視界に現われたのは…、ものっすごい…美青年! だった…

(………うそっ? 少女漫画かアニメかなんかっ?)

 リツコと同じくらいの背丈の大人?兎たちの背後から、ひょいと胸半分ほど上に出るすらりとした細身で、薄茶色のさらりとしたまっすぐな髪が肩にかかるくらい長くて、薄いメガネをかけている瞳も澄んだ明るい茶色で、すっきり整った美貌の優しそうな笑顔で、ものすごく賢そうな白い額がきれいに広くて、なんだか雰囲気全体がきらきらしていて、…吸い込まれるように見惚れてしまう…、美形だ!
 動きやすそうな細めの袴のようなものを履いて、ちょっと三国志風かなって形の上衣の上から長めの薄い外衣を羽織っていて、全体に青と水色で統一された、さりげないけどセンスのいい服を着ている。

 リツコはこんなに綺麗な青年を見たことがなかったので呆然と見惚れる。

 ぽかんと口を開けて上を向いて固まっているリツコにちょっと困った笑顔で、
「…リツコだよね? 遅れてすいません。迎えの者です。」
「…はいっ! 高原リツコですっ! 高天原から天を抜いたタカハラ! リツコはぜんぶカタカナっ!」
 見惚れていたのが間抜けで決まりが悪くて、リツコは思わず大声で自己紹介をしてしまった。
(…あ、恥ずかし~!)赤面して一人で百面相をする。
「…どうぞよろしく? ぼくは、清峰鋭(きよみね・えい)といいます。」
「……………嘘っ?」

 ウサギたちからは「ミキーレ!」と呼ばれていた青年の自己紹介に、リツコは思いっきり大声で返してしまった。
「え?」
「…だって! それ大叔母さんの同級生の人! 七十歳は過ぎてる筈でしょうっ?」
「…あ~、聞いてないかな? 向うとこっち、時間の流れも、トシのとりかたも違うんだよ」
「聞いてないっ!」

 断言したら、美青年なお兄さんは、困ったような笑顔で、にっこり笑った。
「…じゃあ、解らないことは何でも聞いてくれていいから、とりあえず、移動しようか?」
 なんだか有無を言わさない迫力のある超美形な笑顔に気圧されて、リツコは、ハイと頷いた…

 

 

 2-4. リツコ、異世界の村へ行く 

 

「この世界は《ダレムアス》と呼ばれていてね。意味は《大地の世界》。いま僕らがいるのは世界の真ん中の《大地の背骨》山脈の端っこで、あの大河を渡ったところにあるのが、これから行く《仮皇宮》」

 見晴らしのいい山腹の草原の道を並んで歩きながらリツコが質問するより速く美青年が教えてくれる。

 空は地球と同じような気持ちの良い澄みきった青で、流れる白い雲と乾いた風がとても気持ち良くて、リツコがよく知っている地球の日本の森とは少し違う大森林には綺麗な色のたくさんの小鳥や蝶や羽虫たちがせっせと飛び交っている。

「…きれ~い!」

 リツコは思わず深呼吸した。

「地球と似て見えると思うけど、空と太陽と星だけが共通項って言われてて、けっこう違う点があってね。まず電気製品とか電子機器とかが一切使えないんだけど…、聞いてるかな?」

「あ、それは聞いてた。…あ、ほんとだー!」

 言われて思い出してリュックから個人端末をとり出してみたが、『圏外』どころか画面が真っ暗なままで、スイッチを押してもうんともすんとも言わない。

「金属加工の技術はあるんで、水力発電なんかも造ってみたんだけど、全く反応しなくてね。まず何しろ魔法なんて非科学的なものが存在してるくらいで、物理法則が根本から違ってるんだ」

「…そうなの? 見て目は似てるのにねー。」

(…ブツリホウソク…って、電気とか重力?とか、星の動きの仕組みとか、そういう話よね…?)

 リツコは頭のなかでこっそりおさらいをしながら、慌てて相槌を打った。

「それから生き物がそうとう違ってる。…まぁ、見れば判ると思うけど…」
 わきゃわきゃと賑やかに足元に絡みついてくる子猫?なこどもたちと、垂れ耳ウサギなおとなの女性たちと、その中間で立ち耳ウサギみたいな、リツコと同年代かちょっと上くらいの少女たち?と一緒に山腹の平地に開けた村まで降りて行くと、そこにいた平たい垂れ耳の犬?そっくりな顔のひと?たちは、どうやら、おとな兎な女性たちと同族のおとなの男性?の特徴らしかった。

 子ども時代には横長の丸い顔に短くとがった三角耳で、色はオフホワイトとかアイボリーとかの「だいたい白系」のもふもふ毛並みなのが、ちょっと育ってくると耳と顔と胴体が長細くなってきて、色は薄くなるのと濃くなるのに分かれて、毛の長さも短くなるのと、長くなって巻くのに分かれて。それがもっと育つと、短い真っ白い毛の垂れ耳うさぎ似のおとなの女の人?と、長めの濃い色の巻き毛の垂れ耳の犬に似たおとなの男の人?に、なる。という種族であるらしかった。

 その他に、なんとなく鹿似のひと?とか、どう見ても丸ごと四足の喋る犬?みたいな人?とか、立って歩く熊っぽい人とか、歩く観葉植物人?とか樹木な人?とか…が、村の中心らしい街道を行き交っている。

 それから地球人と言っても通る『普通の人間』に見える人たちや、目や耳の形や色彩がちょっとだけ違うけどほぼ地球人と同じな人たちや、角や牙や尾っぽがあるけどだいたい人間に近い形、という人なんかも、本当に色々と、たくさんいるようだった。

 街道沿いにおおざっぱな等間隔で並んでいる家並は丁寧な細工の木造で、まるで白雪姫の小人の家みたいな可愛らしいサイズ。なので体格的に、うさぎいぬ人の家には入れない大きさのひと?たちは、村のまんなかの広場や、わざわざ大きめに造ってあるらしい休憩所風のあずま屋とかに座って、買った物を吟味したり交換したり、お茶やお酒を飲んだり、食事をとったりしていた。

 

 

 2-5. リツコ、観察する。

 

 そんな人?たちが、降りてきたリツコたち一行に気づいた。

「ミキーレ!」

「リール!」

「イーキレ!」

「リレク!」

 地球の日本人の清峰鋭と名乗ったはずの美青年に、親し気に何種類もの名前で?呼び掛けて、わっと群がってくる。

「まうまうまう!」

「ぐわーごっぱ、うわぅ~」

「アマルカッシュッ!パキャワシュ」

「ギャギャギャガノキュギュィギギ!」

「ゴワーガ!ヴォ~ノマ”-レ!」

 なんだかとても多種類の、それぞれ違う言語に聴こえる…。

 それにまた平然とそれぞれの言葉できちんと返事をしているらしい地球人を見て、リツコはまた困り笑いを浮かべて、ちょっとかなり後ずさってしまった…。

「…えーと…、清峰さん?」

「鋭でいいよ? リツコって呼んでいい?」

「いいですけど…」

「ですじゃなくていいよー?」

 にっこり笑う顔にまた思わず見惚れてしまいながら、

「いい、けど?」と、リツコは言い直した。

「…この世界って、言葉が何種類くらいあるの? で、鋭は何ヶ国語が喋れるの…?」

 美青年がちょっと驚いた顔をして、ふわりと嬉しそうに笑った。

「…今のを聴いただけで、ちがう言葉が何種類もあるって判った?」

「うーんとね。」

 リツコは説明をしてみる。

「もちろん意味は全然わかんないんだけどー。昔ね、おばあちゃんがまだ生きてた頃、近所におばあちゃんの友達で、翻訳の仕事の人がいたの。で、おばあちゃんと一緒に遊びに行くと、大人たちが喋ってる間に、子ども向けの色んな言葉のビデオとか観せてくれたの。だから、地球にも、色んな国の色んな言葉があって、色んな挨拶とか習慣とか考え方がある。ってことだけは、解るの。」

「それは、貴重な体験だったね。」

 きれいに笑って美青年が言う。

「だけど、この世界の言葉が全部で何種類あるかって、多分誰も数えたみたことないんじゃないかなー?

なにしろ《朝日ヶ森》では『天才組』にいたこの僕でも、まだ習得してない言葉のほうが多いし? 本人たちは同じ言葉を話してるつもりでも、お互いに凄い訛ってて、全然通じない。なんてこともよくあるし…。

 みんな言葉が通じないのに慣れてて、あんまり気にしないで何とかしてるから、リツコもとりあえず日本語で喋ってていいよー?」

「…うん解った。」

(ていうか、それしか出来ないし―。)と思てリツコは苦笑した。

 

 

 2-6. リツコ、歓迎される。

 

 どうやら目的地に着いたらしくて、村で一番大きそうな家の前庭の大きな木の下の地面とほぼ同じ高さに張られた、地球で言うウッドデッキのような平たい木の床の上に、鋭はリツコを案内しながらすたすたと靴のまま上がっていった。

「靴は履いたままでいいからね? こうやって、片膝を立てて片アグラで座るのが、こっちの世界での正式。…これきみの食器。各自で持って歩くのが習慣だから、なくさないようにして。で、立てたほうの膝のうえにこう乗っけて左手で支えて、右に置いた盆から箸か匙を選んですくって食べるのが、こちら式。」

「へ~え。お箸なんだ…」

 リツコが渡された小さなお椀とお盆とその蓋と、中に入る式のお箸と匙の木製のセットを眺めまわしている間に、鋭は代表者っぽい貫禄のあるうさぎな人と短く会話して。

「ごめん。実はぼくの計算ミスできみが予定より二時間ほど早く着いちゃったもんだから、お昼ごはんの仕度がまだ出来てなかったって。それでお茶とお菓子の略式の歓迎会になっちゃうんだけど、ごめんね?」

「お昼ごはん?」

 リツコはちょっとびっくりして言った。

「あたしあっちで太陽が沈む瞬間に飛びこんだのに?」

「…うーん…。時差がやっぱり昔の記録とずれてるなぁ…まぁ遅くなるよりは早く来てくれてよかったよ?」

 鋭の言ってる意味はリツコには解らなかったが、さっきの人たちや初めての人たちが色々わらわらと同じ木の床の上に集まってきて、何やらそれぞれの言葉でリツコにあらためて歓迎の挨拶をきちんとしてくれている雰囲気だったので、とにかく日本語で一生懸命、「こんにちは!」とか「よろしくお願いします!」とか、挨拶をしまくった。

 それからリツコは、こんなに色んな種族のたくさんの外見の人?たちが一堂に集まってきているのだから、てっきりこれがその『講和会議』なんだと思って、挨拶が途切れたすきに、こっそり聞いた。

「ねぇ、鋭。大叔母様からの手紙は、どのタイミングで読んだらいいの?」

「えっ? …あぁ、違う違う。その会議は、もっと先の、ずっと西へ行った後の話だよ? 今日のこれは、はるばる来てくれたきみに挨拶がしたいって、地元の人たち主宰の、たんなる歓迎会」

「…あ、そうなんだ…。」

 気負っていたリツコは、勘違いがちょっと恥ずかしくなって赤面した。

 それから乾杯の音頭みたいな全員一緒の挨拶?があって、その後、木の床の真ん中に敷かれた綺麗の敷布の上に、冷たい果汁や温かい香草のお茶や飾り切りの果物や、木の実を潰して焼いたお好み焼きみたいな見た目のお菓子だか軽食だか…等々が、色々と次々に出てきた。

 もちろんリツコは勧められるままに全種類きれいにたいらげて、「ごちそうさま!」と日本語で挨拶をした。

 たれみみ兎の女の人たちが、にこにこしながら給仕をしてくれた。

 

 

 2-7. リツコ、誉められる。

 

「ごめん。質問たくさんあるとは思うけど、ぼく先に色々打ち合わせしなくちゃなんだ。ちょっと待っててくれる?」

「うんわかった。」

 そう返事して、食べ終わった後、かなりゆっくりとお茶を飲んでても、まだ隣の鋭は反対側を向いて、入れ替わり立ち代わりやってくる大勢の人たちと、次々に「打ち合わせ」とやらを続けている。

 のを見て、リツコはやおらリュックの中から大学ノートとペンケースと、古い小さな日本語の辞書を取り出して開いた。

 まずは一頁一行目に日付と時間を書こうと思ったけど、携帯が使えないので調べられない。

 ので、『訪問1日目。昼?ご飯のあと。』と書いて。ざっと報告の文章は箇条書きのメモだけ書いて。

 それから「四十八色!」入りの色鉛筆の缶をわくわくしながら広げて、子猫とおとな兎とおとな犬を家族風に並べて、簡単なスケッチというか落書きを、丁寧に手早く描いて。
「…ねぇねぇ、このひとたちは、なんていう名前?」
 ちょっとだけ暇ができたらしいタイミングをねらって鋭に聞く。
「…本人たちはマウレイレイって名乗ってる。《賢く礼儀正しい一族》みたいな意味かな。まわりからはもっぱら《兎犬猫族》とか……… リツコ、イラスト巧いね?」
「あ、ほんと?」

 えへらっと笑う。
「うん。簡単な線なのに、特徴をよく捉えてる。」
「わーい褒められたー ♪ ♪ 」
 素直に喜ぶリツコのへしゃっとした笑顔に、美青年もつられて笑った。
「…適任者が行くわよ!って、清瀬のほうの律子さんが手紙に書いてきた意味が分かったよ。」
「なんてー?」
「前に来たオトナの人は、電波が通じなくてもデジカメとパソコンで記録は撮って持って帰れるだろ。…って思ってたらしくて…記録用の機械が全滅で、報道マンとやらのアイデンティティーが崩壊してた。」
「…うーん…」
 リツコは苦笑する。

 アイデンティティーって言葉の意味はよく解らないけど、オトナって…たしかに、ときどき、「アタマが硬くて使えない」時があるよね…。

 

 

 2-8. リツコ、空を飛ぶ。

 

「ところでリツコ、きみは馬には乗れる?」

 ひと段落したらしい鋭が唐突にそう聞いてきた。
「…ウマ? …動物園とか観光地とかの、10分1000円とかの体験乗馬くらいしか乗ったことない…」
「じゃあやっぱり、運んでもらったほうがいいねー。」
「はい?」
 リツコがきょとんとしている間に、鋭はまた他の人たちとそれぞれのネイティブ言語で会話して、何かの伝言を追加すると、しばらくしてその返事が返ってきたらしく。
「…そろそろ、行くよ?」とリツコに声をかけて、どうやら「ごちそうさま」に相当するらしいお礼のコトバを言って、席を立った。
 リツコも慌てて同じコトバを真似して挨拶してみて、忘れ物がないように気をつけながら手早く荷物をまとめて後を追う。

「ねぇ! 今日ってここに泊まるんじゃないの?」

「うん。地球に帰る時は別の道を通るから、もうここへは戻って来ないよ?」

「えー! もっと猫ちゃんたち、モフりたかったー!」

「………もふ? …なに?」

 鋭は「モフる」という日本語を知らなかった! 鋭が地球にいた頃にはまだ無かった言葉。らしい。

 それから、ちょっともじもじしながらトイレの場所と使い方を、鋭に通訳してもらって女のひとに聞いてもらって。 

  集まっていたみんながぞろぞろ見送りについて来てくれるなか、来た方向とは逆の、もう一段下の崖の上の広場につくと、そこに待っていたのは…
 翼の生えた…鳥? …鳥人間?…の、人たちで…

 なんだか見た目が怖い上に、…刀? 剣かな? …で、武装?していて…
 …なにか、運動会の球入れのカゴのような、でかい籠が置いてあって…
 「リツコ、高所恐怖症じゃないよね?」
 にっこり笑った超絶美青年に指示されて、リツコは恐る恐る、その籠に乗って…
 ことばを喋る大型猛禽類たちが4人?がかりでそのロープを脚手で掴んで舞い上がり…

 

(……………きゃーーーーーーーーーーーっ!)


 見送ってくれる人たちに挨拶をする余裕もあらばこそ。

 必死で絶叫を呑みこむリツコだけを乗せて、カゴはどんどん空高くに上がって行き…
 ようやく揺れが収まってきてから、恐る恐る見下ろしてみると…
 清峰鋭は随行の騎馬の一団とともに、はるか下の草原を駆けているのが…
 遠目に見えた…


(嘘つきーっ! 「道中、何でも聞いて?」って言ってたくせにーーーっ)

 

 心中で絶叫すること数時間。

 強い風にも怖い顔の猛禽類たちにもだんだん慣れてきて…

 広い広い《大地世界》を上から見下ろして…いや、背後に広がる《背骨山脈》とやらの山頂は、それよりまだまだはるかに上に霞んでそびえたっていて…

 眼下は草原と森、丘陵と谷、畑地と街と村と荒野と…

 少し風が寒いけど、この世界は平和で。平和で。平和で…

 

 気がつくと、地球の日本の日没とともに異世界行の穴に飛びこんだ後、午前の異世界に着いてからさらに半日以上も、まだ起き続けていた、小学校四年生のリツコは…

 

 深く深く…寝入ってしまって…いたのだった…。



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