目次
(借景資料集)
【速報!】 第2回 「青い鳥文庫小説賞」
(第4稿)
(第4稿)as(最終稿)
(添付挨拶状)
(あらすじ) (2018年9月23日)
序章 《 朝日ヶ森 》
第1章 リツコ、異世界へ行く。
第2章 リツコ、異世界で目覚める。
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、取材する。
第8章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第9章 リツコ、役に立つ。
終章 リツコ、地球に帰る。
(第3稿)
(第3稿)
(表紙)
(あらすじ) (2018年9月16日)
序章 朝日ヶ森 学園
第1章 リツコ、異世界へ行く。 (2018年9月16日)
第2章 リツコ、異世界で目覚める。 (2018年9月16日)
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第8章 リツコ、戦う。
第9章 リツコ、地球に帰る。
(第2稿)
(第2稿)
(あらすじ) (2018年9月8日)
1-0-0.朝日ヶ森「学苑」(おもて)
1-0-1.朝日ヶ森(うら) (2018年9月8日)
1-1-0.リツコ、呼ばれる。 (2018年9月8日)
1-1-1. リツコ、出かける (2018年9月8日)
2-0-1.リツコ、異世界に着く。 (2018年9月9日)
2-0-2.リツコ、挨拶する。
2-1-1.リツコ、清峰鋭にあう。
2-1-2.リツコ、異世界の村へ行く (2018年9月9日)
2-1-3. リツコ、空を飛ぶ。 (2018年9月9日)
3-0-0. リツコ、悪夢をみる (2018年9月10日)(加筆)
3-0-1.リツコ、起こしてもらう。
3-0-2. リツコ、情報交換する
3-1-0.リツコ、朝寝坊する。
3-1-1.リツコ、右将軍にあう。
3-1-2.リツコ、皇女に会う
3-1-3.リツコ、マシカとあう。
3-1-4. リツコ、市場へ行く。
3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。 (2018年9月11日)
4-0. リツコ、早起きする。
4-1. リツコ、パレードに参加する。
4-2. リツコ、誇大広告される。
5-1. リツコ、旅をする。
5-2. リツコ、記録する。 (2018年9月12日)
5-2. リツコ、話せるようになる。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第6章 リツコ、旅をする。
(第1稿)
(第1稿)
(あらすじ) (2018年8月17日)
( 目次 ) (2018年8月18日)
0-1.(おもて) (2018年8月18日)
0-2.(うら) (2018年8月18日)
1.リツコ、親善大使になる (2018年8月18日)
1-1. リツコ、出かける
2. リツコ、異世界へ行く。
2-1.リツコ、挨拶する。
2-2.リツコ、清峰鋭にあう。 (2018年8月19日)
2-3.リツコ、運ばれる。
3.リツコ、白王都へ着く。 (2018年8月22)
3-1-0.リツコ、寝坊する。 (2018年8月22日)
3-1-1.リツコ、皇女に会う (2018年8月22日)
3-1-2.リツコ、マシカにあう。 (2018年8月24日)
3-1-3. マシカ、市場へ行く。 (2018年8月24日)
3-1-4. マシカ、天幕に泊まる。 (2018年8月24日)
4-0. リツコ、目覚める。
4-1. リツコ、行列に参加する。
4-2. リツコ、センデンされる。
5-1. リツコ、記録する。
5-2. リツコ、観察する。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。 (2018年8月26日)()
6-2. リツコ、小鬼を救う。 (2018年8月26日)
7. リツコ、まきこまれる。 (2018年8月26日)
8-1. リツコ、魘される。
8-2. リツコ、龍にのる。
9. リツコ、会議にでる
10-1. リツコ、よばれる。
10-2. リツコ、地球にかえる。 (2018年8月26日)
(草稿&没原稿)
(草稿&没原稿)
(1) 朝日ヶ森 (2018年6月3日)
『 リツコへ。 第一日 』 (@中学……1年か2年?) 
(あらすじ) (プロット&目次)
(あらすじ) (プロット&目次)
【投稿用】プロットメモ (2018年7月22日)
400字~800字程度のあらすじ。 (2018年8月17日)
(設定資料集)
(設定資料集)
このコだ! 「鍵になるキャラ」…っ!www (2018年6月30日)
(( ことばよ、つうじよ! ))  (2018年8月9日)
(サ行前の雑談など)
(サ行前の雑談など)
【ぐれてる理由】。(--;)。 (2018年5月13日)
『 リツコ 冒険記 』 ~ 夏休み ・異世界旅行 ~ (1) (2018年6月3日)
(案の定【天中殺中】で頓挫している) (2018年7月22日)
…ちっ! …やっぱり…『落ちた』か…★ (2018年8月12日)
次ぃ征くぞ! 次っ! (2018年8月12日)
★ 【講談社 『 青い鳥文庫 』 の呪い!?】の謎。 ★
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48 / 104ページ

3-1-4. リツコ、市場へ行く。

 3-1-4. リツコ、市場へ行く。

「ちょっと待っててくれる?」
 鋭を見送ったあとリツコにそう言って、大きな立派な黒馬の世話を最後まで仕上げたマシカは、まわりの人間たちや動物たちに挨拶らしい言葉をかけてまわると、広場のすみの水場に行って手と顔を洗い髪をほどいた。
 ふわりと広がった朽葉色の巻き毛は、とても豪華だ。
「きれ~い!」
 リツコが思わずそう誉めると、マシカはにこっと笑った。
「そう? ありがとう。リツコの髪もすてきよ?」
「えぇ? あたしのなんか焦げ茶色で癖毛でへろへろで~。全然ダメ」
「そうなの? ダレムアスでは《大地の色》って言って、一番いい色だけど?」
「そうなの?」
「えぇそうよ。ほら可愛い。あたしたち姉妹みたいね?」
 マシカはそう言ってリツコの固く縛っていた癖毛もほどいてふわっと広げてしまった。
 リツコは「姉妹みたい」と言ってもらったのが嬉しくて、「えへ~」と照れた。
 マシカはそんなリツコを見てにこっと笑って、それからちょっと下がった。

 何をするのかなとリツコがキョトンとして見ていると、リツコのことを上から下までじっくり観察している感じで、それからにこりと笑い、リツコの両頬に両手を添えて、額を合わせて、気息を整えて、…歌うように叫んだ。
「ま~りえった! れっと、せっと、えッ!」…(ことばよ、通じよ!)
「え?」
「まうれいにあ、あむにや、あむねえむね?」…(わたしの言うこと解る?)
「えっ? …解る! …???!」
 リツコは目を丸くした。何がどうなったの??
「マーシャは神力ってヤクしてるけど、鋭はマホウって呼ぶわね。あたしは血の力は弱いから、マーシャみたいに言ってることを相手に解らせるようにする術まではむりなの。効き目も弱いし、時間も短いと思うんだけど… とりあえず、それでやってみましょう?」
 リツコはまったくわけが解らなかったが、とりあえずうんとうなずいた。
 マシカは追いかけて来る小鳥や小動物たちに話しかけたり構ったり、ちょっとあっちへ行っててと追い払ったりしながら、とても楽しそうな顔でリツコを連れてずんずん市場に分け入っていく。
 リツコはきょろきょろしてしまって大変だ。質問したいことを全部聞いていたら一歩も前に進めなくなるだろうって思うくらい、目にはいるものがすべて珍しい。

 長年使いこまれた木彫りの柱の立派な天幕や、掘っ立て小屋のように粗末な屋台。二階建ての大きな飲食店に、屋根と柱だけで壁がない気軽で安そうな茶飯屋。

 色とりどりの布地屋、服屋、装飾品の店、革細工の店、野菜の店、果物の店…

 占い屋さんかしらと思う地べたに座った賢そうなお婆さんや、兎の人や羊の人たちをおしゃれな感じに毛刈りしている店。

 ひたすらまわりじゅうを見回しながら歩いていたリツコは、やがて、自分のほうも周囲の人たちから、びっくりした目で眺められているのに気づいた。
「…ティケット?」…(地球人?)
「ティケットィアナン?」…(地球人か?)
「あやけったていか!」…(おっとびっくり!見てごらん!)
 市場を行き交う通りすがりの人々が、リツコのTシャツと短パン姿を見て珍しいものを見るように目を丸くして声をあげている。
(………え? なんであたし、言ってる意味が解るの? ティケット…ってチケット? 英語? 切符?…じゃないよね…???? こっちの言葉だと「地球人」って意味?なの…????)

 まったく解らないはずの言葉が、一瞬遅れてだけど、だいたいの意味がするっと判る。まるで頭の中に映画の字幕でも映っているみたいな感じだ。

(???????)

 目を丸くして混乱しているリツコをしりめに、すたすたと前を歩いていたマシカがひょいと曲がって入ろうとした店先で、続こうとしたリツコを睨んで鋭い声をあげた男がいた。

「エベルディン、スレイガ!」…(出て行け、敵め!)
「…あんま、のうでぃあ、あーろんでーぃ。」…(なにか御用で?お客さん)
 店員らしい人も、誰だこの怪しい奴め、という顔で、リツコを見ている。
 リツコは知らない人から突然( 敵め! )と言われたらしい事に心底びびった。
「まるまっかあれ。」…(あたしの連れよ。)

 どうやら鋭と同じくらいに周りの人たちから顔が知られているらしいマシカがぴしりと言うと、ざわめきが収まった。
「ジョルディイリヤン、ダレッカ。リレキセース、オルディイイン。」…(諸侯会議に出るお客様。リレク様からお預かりしたの。)

 出て行けと言った男の人が、困った顔で不機嫌そうに口をつぐんだ。
「あんにや、ましか!」…(いらっしゃい、《星の娘》!)
 奥から転がるように店主が出てきて、あとはもう買い物が大変だった。
 あれやこれやと店主が出してきてくれる衣類や旅行用品?の山を見て、

「ちょっと待ってマシカ!こんなにたくさん買っても背負いきれないよ?」

 リツコが悲鳴をあげると、

「馬車で運ぶから大丈夫よ」とマシカは余裕で笑った。

 マシカがかけてくれた言葉の魔法?とやらのおかげで、相手が言っていることは何語であれリツコにはなんとなく意味が解るのだけど、リツコが喋ってる日本語は、相手には全く通じてないらしい。

 半分はマシカに通訳してもらって、マシカにもうまく翻訳できない時はとにかく身振り手振りで、好きな形や嫌いな色や、肌触りがどうとかを色々説明しまくって、それから試着してみてあーだこーだと、似合うとか似合わないとかと集まってきたみんなで品定めをして、最後にマシカが押しの一手で強気の値切り交渉までしてくれて…

 一通りの品物を揃えて支払いを済ませて配達まで頼んで店を出た時には、リツコはもう疲れてしまって、喉が枯れて、おなかもぺこぺこだった…。
 マシカが気を利かせてくれて、通りすがりの屋台で何か甘いものを食べさせてくれる。色とりどりの豆と何かぷにっとした食感のものが入った、あんみつとぜんざいが混ざったような味のおしゃれなスイーツだ。
「おいしーーーい!」
 叫んだリツコに、マシカは笑った。
「元気でた? じゃ、ちょっと遠いけど私のテントまで歩きましょう。」
「あ、ちょっと待って! あたし今朝、洗濯物を干してきちゃったの!」
「センタクモノ?」
 なぜかこれがマシカに通じなかった。リツコはがんばって身ぶり手ぶりで説明してみた。
「服を洗って~、干して~、こう…。昨日泊めてもらった部屋の中に、干して置いてきちゃったの!」
「…あぁ。洗った。干した。で、…乾いた?」
「そう。洗濯物。」
「センタクモノ。」
 マシカはうんとうなずいた。
「リツコ、わたしのニホンゴまだまだみたいだわ。旅のあいだ、たくさん教えてね?」
「うん!こっちの言葉も教えてね?」
 リツコとマシカはすっかり意気投合して、大の仲良しになった。

 


3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。 (2018年9月11日)

 3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。

 じゃあセンタクモノを取りに一度戻ろうという話まで進んで、リツコは困った。
「どうしよう!あたし帰りも鋭と一緒だと思ってたから、道を覚えてない!」
「ヨーリア学派の寺院でしょ? わかるから大丈夫よ」
「ほんと? よかった~!」
 しばらく歩いて、なるほど見覚えのある植え込みの門のちかくまで着くと、マシカはその手前の店先で買い物をしてくるからその間にセンタクモノをとってきて、と言う。
 ひとりで門を入って、見覚えのある玄関まで行って、勝手に上がるのもまずいかと思って、とりあえず声をかけてみた。
「すいませ~ん! …誰かいませんかー?」
「…もうどれいやなっ、えんにやえん。」…(*********)
(??? …あれ…!???)と、リツコは困った。
 さっきまで声と一緒になんとなく判っていた「ことばの意味」が…また、分からなくなってる!
 魔法?をかけてくれた時にマシカが言ってた「時間も短いと思うんだけど」の意味のほうが判ったー! 

と思いながらも、幸いにして出てきてくれたのが今朝リツコを部屋から案内してくれたあの女の人だったので、もう一度「センタクモノ!」を説明する身振り手振りをして、「取りに行きたいので部屋に入っていいか?」という許可を得るのは、そんなに難しいことでもなかった。
 どうやら鋭の私室だったらしい今朝の部屋に案内しなおしてもらって、洗濯物がきれいに乾いていたのをこれ幸いと、急いで畳んでリュックに詰め直す。
「どうもすいません! ありがとうございました!」
 ぺこりと頭を下げてお礼を言って退出すると、女の人はにこにこして手を振って見送ってくれた。
 それからまた教えられた店の前で誰かと談笑していた小動物まみれのマシカと合流して歩きだしながら、もう言葉がわからなくなったということを説明する。
「う~ん、だいたい半日なのね…」
 マシカはちょっと悔しそうな顔をした。
 すぐにまた術をかけなおしてくれるかなと思ったけど、そういうわけでもないらしい。
「もしかして、実はすっごく難しいとか、マシカがものすごく疲れるとか…する?」
「そんなことはないけど。だってもともとあの三人といっしょに旅してた時に、あたしだけ言葉が通じなくて不便だったから覚えようと思って、意味が解るようになれって自分で自分に毎日かけてた術なのよ。でもあれ使っている間、アタマがとても疲れるでしょう?」
「…そう言われてみれば、そうかも…。」

 頭よりむしろおなかがものすごく空いたけど。と思いながらリツコは一応うなずいた。
「今日はもう眠るだけだから、また明日にしましょう。」
 それから日本語で色んな話をしながら平坦な街道を歩いて、沈み始めた夕陽と夕焼けを眺めて一番星が光りはじめる頃まで30分くらい歩いて、マシカの仲間たちが寝泊まりしている旅天幕の村に着いた。

 マシカの仕事は薬師と言って、医者と看護師と薬剤師と獣医さんと村の学校の先生まで兼任しているような職業集団らしい。

 みんな明日の出発に向けて忙しそうに飛び回っていたので、簡単な挨拶だけして温かい夕飯だけ分けてもらって、リツコたちはすぐにマシカの天幕にひっこんだ。

 何枚かの革と布を張り巡らせて木枠で支えた一人用の天幕は、二人で入るとちょっとだけ手狭になったけど、居心地よく乾いて清潔で暖かくて、きちんと整理整頓の行き届いた、いかにもマシカの部屋!という感じがするすてきな場所だった。
「マシカは用意はしなくていいの?」
「たぶん明日出発になるだろうというのは昨日のうちに解っていたので、もう準備は済んでるの」
「そうなんだ」
「でも明日は早起きしなくちゃだから、今日はもう寝ましょう?」
「うん!」

 寝間着に着替えて、くせ毛の髪の梳かしっことかして、くすくす笑いながら秘密の内緒話なんかして。
 それからマシカとリツコは本当の姉妹よりも仲良しになって、一つの寝床で寄り添って一緒に眠った。
 ただし問題は、リツコのために追い出されてしまったマシカの沢山の同居動物さんたちだった。
 ぶぅぶぅきゃぁきゃぁぴぃぴぃと、それぞれの鳴き声で文句を言いながら脇の長椅子に移動させられた栗鼠や仔猫や小型犬や小鳥やフクロウや翼の生えたヘビみたいな生き物や…その他いろいろ…だったが、けっきょく朝になってリツコが目を覚ましてみると、二人の少女のあいだとまわりじゅうに、たくさんの動物たちがぎっしり集まって、詰まって乗っかって、一緒に眠っていたのだった…。

 


4-0. リツコ、早起きする。

第4章. リツコ、旅に出る。

 4-0. リツコ、早起きする。

 翌朝、天幕のすぐ上で鳴き交わす鳥たちの声がすごくて、リツコはびっくりして目が覚めた。
 すでに開け放ってあった天幕の戸布の向うに見える空はまだ夜明け前で、東?の山並みの上に広がった薄い金色の線から、反対側の闇青色と最後の星の瞬きまでの、雲ひとつないグラデーションが見事だ。
 …う~ん、これは地球と同じに見えるんだけど…と、う~んと伸びをして深呼吸もしながらリツコは思った。

 一番の違いは空気だ。すごく何というか…すがすがしくて…さらりとして…透明な感じで…美味しい。

 最初の日にそれを言ったら鋭が「この世界には工場も原発もないんだよ!」と笑ってた。
「…あら、起きた?」
 広い空の下で美しい髪に櫛をかけてふんわりとまとめていたマシカがふりむいてにこりと笑った。
「今日もお寝坊さんなのかと思ってたわ」
「うーん。だって昨日は早く寝たし。マシカがいてくれたから嫌な夢も視なかったし。」
「うん。よく寝てたわね。ミーボナンにほっぺた踏まれてるのに全然起きなかったもの」
 リツコは苦笑して、自分も起きる仕度を始めた。

 寝ている間にベッドの上は動物だらけで、まだ寝こけているやつもたくさんいて、先に目を覚ました連中は今もマシカの髪にまとわりついたりして、色々と仕度の邪魔をしている。
 まわりの天幕の薬師たちもみな起きだしているようで、あちこちで出発の準備を始める賑やかな物音や声がしていた。
 寝間着のままで教えられた川辺に降りて手と顔を洗い、その水場より下流に用意された木造のトイレ!(川の流れの上に付き出していて、床に穴が開けてあって、全自動水洗式?だ…)で用をたす。

 言葉が判らないまま、すれ違う薬師の人たちにはとりあえず大声で「おはようございます!」と挨拶しておく。
 戻ってきて、はたと悩んだ。
「ねえ?マシカ。今日って何を着たらいい?」
「あ、そうねぇ…、どれしましょうか?」
 昨日買ってきた装束類の小山と、自分が持ってきた少しの着替えを並べて、天気と気温を考えて、マシカの意見も聞いて、結局「地球式」の略礼装?が良いだろうということになった。
 白い半袖シャツに動きやすい七分丈の水色のガウチョパンツを合わせて、その上に、おしゃれな私立校の制服みたいな襟のチェックの夏ワンピを羽織って、前ボタンは適当に開け放って、ちょっとこなれた感じに着崩してみる。
 靴はやっぱり履きなれたスニーカーのままにする。だって相当、歩くらしいから。
「…きゃー、リツコ可愛い♪」
 そう褒めてくれながら、マシカは以前から決めてあったらしい衣装にさっさと袖を通している。
 やっぱり昨日の仕事着?と同じような、日本で言うと作務衣?みたいな動きやすそうなデザインだけど、超新品で、手織りらしい布地がすごく手が込んでいて高級な感じで、何だか民族調っぽい刺繍とか金色の飾りとかが色々付いていて、ふわりとした軽い布のマントも羽織ったら、とても上品に華やかだ。
「きゃー! マシカすてき! とっても綺麗!!」
 リツコが手放しで誉めると、うふんと得意そうに笑った。
「そうでしょう? この布を織るのは苦労したのよ! …リツコ、髪型はお揃いにしましょうよ!」

 もうそれだけですごく盛り上がりながらの身支度が終わると、マシカは昨日の昼にやってくれたように、ちょっと気分を改めるしぐさをして息を整えてから、リツコの頬に手を添えて額を当てて、唱えた。
「…ま~りえった! れっと、せっと、…えっか、ろう!…ぐん!」
(あれ?昨日と少し違う…)とリツコが思う間もなく、
…( ことばよ、通じよ! …せめて日暮れまで! もつように! )
…という意味が、頭のなかに字幕が映るような感じで、急に流れ込んできたのだった…。

 


4-1. リツコ、パレードに参加する。

 4-1. リツコ、パレードに参加する。

 ちょうどその頃に朝日がしっかり差し込んできた。からりと晴れた秋の初めらしい上天気だ。
『朝ごはん出来てるよー、早く食べちまっとくれ!』と、食堂?の係の人から声がかかったので大急ぎで出かけて行った。
『おはよう!』とか『よく眠れた?』とか色々と声をかけてくれる年上の薬師の人たちに、リツコは日本語と手振り身振りで挨拶を返しながら、食堂や集会室として使われているらしい大天幕に行って、色々な野菜とか豆とかキノコ?がどっさり入った温かいスープをおなか一杯食べさせてもらった。
 食器は各自で持参制で、昨日マシカに買ってもらった新品一式を持っていった。
 また水場に行ってリツコが二人分の食器を洗って戻って拭いて収納しているうちに、マシカはどんどんと自分の天幕の中にあったものを大きな木箱と布袋の中に詰めて行き、リツコもがんばって出来るところは手伝ってみて、最後に一緒に天幕を畳むと、うんうんと二人で担いで何往復かして、少し離れたところに停めてあった木製の荷車に運び入れた。

 それからマシカが耳の短い小型の馬のようなずんぐりして大人しい動物を連れてきて繋いで、出発の準備は完了だった。
『…ごめんなさい。先に行くわねー!』
 マシカが声をかけると薬師の皆が口々に返事をして、手を振って見送ってくれた。
 荷物満載の台車を牽いた小型馬の手綱を引いて、人間二人はその横をとことこ二本足で歩く。
「これは《白の街道》というのよ。日本の言い方だと《国道》って意味ですって。」
 マシカが教えてくれる。
 夕べはもう薄暗くなった中を星を見上げながら歩いて来たので気がつかなかったが、歩きやすいように白い石畳できちんと舗装された、幅は4メートルほどの道だ。
「あ、いたいた、鋭!雄輝!」
「マシカ、おはよう!」
「似合うぜ。綺麗だな!」
 街道から街中を通って、昨日の仮皇宮前の広場に入ってすぐのところに、鋭と雄輝と、他にもたくさんの重臣?ぽい人たちがいた。
 みんなきちんとしたおしゃれというか正装ぽい服装で、ばりっと格好良く整えている。
 初めて会う人たちもみんなマシカとリツコの女のコ二人に対してきちんとした挨拶をしてくれるので、リツコも一生懸命「おはようございます!よろしくお願いします!」と日本語で言ってきちんと頭を下げた。
「リツコ、おはよう。それ可愛いね」
「おー、地球式の服にしたんだ?」
 鋭と雄輝がお世辞でもなく本気で誉めてくれたので、リツコは照れて、えへへと笑った。
「どうかしら?一応こっち式の礼服もちゃんと用意はしたんだけど。地球からの御客人が諸侯会議に参加するってことは、皆にセンデン?しといたほうが良いのよね?」
「うんそうなんだ。これだと一目見て地球人て判るね。さすが! ぼくじゃ思いつかなかったよ。やっぱり女の人に任せてよかった。」
「あら… 褒めても何も出ないわよ?」
 鋭に褒められてマシカがすこし照れて頬を赤くしたので、リツコはちょっとあれっと思った。
 それから少し打ち合わせがあって、せっかくだからと、リツコはなるべく目立つように、後方の荷馬車隊ではなくて先頭に近い鋭の馬の前に乗せてもらうことになった。

 牽いて来た荷車は雄輝たちの部下の人が列の後方から持ってきてくれることになる。
「じゃ、私はマブイラに騎せてもらうことにするわ」
 そう言ってマシカがどこかから連れてきたのは…なんと!
 見事に枝分かれした角を堂々と掲げた、ものすごく立派な…銀灰色の雄鹿だった。
「………マシカが、鹿に乗る………」ついつい小声で言ってしまうと、
「…ね、やっぱりちょっとそこで笑っちゃうよね?」と、鋭がこそっと相槌を打ってくれた。
 それからどんどん広場に人が増えてきて、中央に列をなした着飾った旅装束の人たちと、周囲に並んだ見送りらしい町の服装の人たちで、ぎっしりと隙間もないくらいになっていった。
(昨日みた山のような荷馬車や荷車は、後方と脇に順序良くきちんと寄せられていた。)
『…刻限!』

『まもなく!』

『刻限!』
 これ以上もう広場に人が入れない…という頃、ドンドンと威勢よく大鐘と太鼓が打ち鳴らされた。
 居並んだ人たちが、ざっと威儀を正す。
『みな、御苦労!』
 例のおっかない皇女サマが、昨日マシカが世話をしていた特別に大きくて立派な黒馬にまたがって、みごとに華麗な正装で着飾って、堂々と広場の中央の人並みを分けてまっすぐに進んできた。
『少し長い旅になりますが、みな無事であちらへ着くように! 留守の者たち、不安もあろうが、必ず和平を為して来る。しっかり頼みます!』
『…道中、御無事で!』
 留守役の代表らしい身分の高そうな衣装の女の人が門の脇から進み出て来て、深々とお辞儀した。
 みな、唱和する。
『道中、御無事で!』
『…出発!』
 雄輝が、みごとな金鹿毛の馬を皇女のすぐ後ろの右脇に並べて号令した。
『出発!』『出発!』
 伝令が次々と声を並べていく。
「…行くよ? 笑って!」
 白い優雅な馬に身軽にまたがり、鞍の前にリツコを引き上げて乗せてくれながら、鋭はやはり皇女殿下のすぐ後ろ、雄輝と並ぶ左側の位置に、するりと当たり前のように並んだ。

(……………えーーーーーーーーッ!!)
 …つまり、リツコの位置するところは、一国の代表として和平会議の旅に出る皇女サマの、すぐうしろ。という順番だ。ってことで…………… その後ろに、偉そうなお爺さんとか、賢そうな女官たちとか、着飾った美女の集団とか、武装した兵士の集団とか…何百人もいそうな大行列が堂々と居並んで続く。
(……… 嘘っ! 聞いてなーーーーーーーい………ッ!)
 心の中で絶叫してみても後の祭り。リツコはとにかく、必死で愛想笑いを、してみた…


4-2. リツコ、誇大広告される。

 4-2. リツコ、誇大広告される。

 後から思いかえしてもつくづく、前から二番目なんて身の程知らずの大それたポジションに強制参加じゃなくて、ただの沿道の観客でいたかった…というのが、リツコの素直な感想だった。
 豊かな碧緑の巻き毛を風になびかせて紅朱に金糸の刺繍織のあでやかな衣装をまとい、その腰には同じ意匠で飾った華麗な大剣を佩き、美しい無紋の黒毛の大戦馬にまたがった、華麗なる美人皇女殿下をその先頭に。
 右後ろに並ぶ金色馬にまたがるのは真紅と漆黒の戦士装束の背中に鷹の翼を堂々と掲げている雄輝。
 左後ろに並ぶのが白銀の馬にまたがり青と水色の控えめな礼装を整えた、絶世の美青年の鋭。
 二人のすぐ後ろにぴたりとつけて、堂々たる枝角をそびえ立たせた大鹿に騎る薬師装束の美女マシカ。
(…鋭の鞍にちょこんと載ってるあたしみたいな小荷物なんかこの際この絵づらのジャマだ。…とリツコは真剣に思った…。)
 沿道に居並ぶ見送りの人々は、歓呼の叫びと噂話で、ぶんぶん唸るハチの巣のような有り様だった。
『見ろよ!あのかたがたが戦を終わらせてくれた四軍神だ!』
『なんてお美しいのかしら皇女様!』
『きゃーーーーーーっ! リレク(鋭)様すてきっ!お凛々しいッ!』
『ちょっと何よ、あのチビ?』
『泥球界(地球)からのお客人らしいよ。何でもさる有力な部族の長の縁者とか』
『泥球界の?王族なの?』
『お使者様なんだから、そうじゃないかぃ?』
(えぇぇぇぇっ!)とリツコは思った。
 いくらちょっとだけオシャレめワンピを着てみたからって、実は通販のしかもバーゲンで買った安物だ。『さる有力な部族』ってなに!

 たしかに大叔母様は朝日ヶ森の学長だけど、それって別に王家でもなんでもナイわよ!??
 むしろこの国の言葉が喋れなくて良かった。と、つくづく思った。

 話が出来たら絶対に、必死になって噂話を否定しにまわってしまっただろうから…
「…鋭ッ?なんかあの人たち、すっごい大誤解してない?」
 思わず小声で叫んでしまったリツコの赤くなったり青くなったりの一人百面相をにやりと笑い飛ばして、行列の間中、鋭はとにかく、「笑って! ほら笑って! 手を振って!」としか言ってくれなかった。

 その鋭自身も率先して、まわりじゅうに手をふり愛想をふりまき、観るひとすべてをその超絶美形な笑顔でうっとりとさせていた…。

(その間、二頭の龍たちは、上空でゆったりと浮いて旋回しながら「出立の騒ぎを見届けて」いるようだった。)

(街から行列が出るのを見届けて、西の空へと飛び去って行った。)

 そんなこんなで街から出るだけでもしばらくかなりの時間がかかり。
「ねぇ鋭。もう笑うのやめていい?」
 ようやく道沿いに見送りの人が少なくなってきて、やっと聞けたころには、むりやり笑い続けていたリツコの顔は、ばりばりに強張っていた…。

 それから歩いて来た時よりゆっくりぐらいの速度で《白の街道》を西の方角に戻ると、途中の河原で待っていた薬師たちの一行の、半分くらいが荷馬車隊を率いて皇女の行列の最後尾に入る。
 あとの半分くらいは、列には入らずそのまま流れ解散する?らしい。
 休憩をはさみながらゆっくり進んで夕暮れ前にその日の野営地らしい場所に着き、行列の後ろから荷馬車隊ががらごろと追いついてきて、食糧や天幕を降ろし火を起こして大人数分の食事の仕度を始める。
 荷を降ろすと、そのまま手を振って別れて元の街の方角へと戻る人たちも百人くらいいた。
「リツコ、今日もあたしと一緒の天幕だけど、いいわよね?」
 あいかわらず小鳥とかの群れに取り囲まれながら大鹿から降りてやってきたマシカにそう言った頃、ちょうどリツコの「聞いた話が解る魔法」はとけてしまったのだった…。
(鹿は勝手に歩いて行って、そのへんの草で食事を始めた)
 そんな風にして、この旅は始まった。

 

 

(次の日はみな普通の旅装束に着替えて、荷馬車隊が置いていった荷物の山は皇女の馬の背にまで積まれた。

軍人は3隊に分かれて半日先と後と左右の脇道の警護にまわる。

雄輝が前に行っちゃってマーシャの機嫌がますます悪くなる。

ご飯の仕度は現地スタッフが饗宴してくれる場合が多い。)

(鋭が手配係)



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