目次
(借景資料集)
【速報!】 第2回 「青い鳥文庫小説賞」
(第4稿)
(第4稿)as(最終稿)
(添付挨拶状)
(あらすじ) (2018年9月23日)
序章 《 朝日ヶ森 》
第1章 リツコ、異世界へ行く。
第2章 リツコ、異世界で目覚める。
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、取材する。
第8章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第9章 リツコ、役に立つ。
終章 リツコ、地球に帰る。
(第3稿)
(第3稿)
(表紙)
(あらすじ) (2018年9月16日)
序章 朝日ヶ森 学園
第1章 リツコ、異世界へ行く。 (2018年9月16日)
第2章 リツコ、異世界で目覚める。 (2018年9月16日)
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第8章 リツコ、戦う。
第9章 リツコ、地球に帰る。
(第2稿)
(第2稿)
(あらすじ) (2018年9月8日)
1-0-0.朝日ヶ森「学苑」(おもて)
1-0-1.朝日ヶ森(うら) (2018年9月8日)
1-1-0.リツコ、呼ばれる。 (2018年9月8日)
1-1-1. リツコ、出かける (2018年9月8日)
2-0-1.リツコ、異世界に着く。 (2018年9月9日)
2-0-2.リツコ、挨拶する。
2-1-1.リツコ、清峰鋭にあう。
2-1-2.リツコ、異世界の村へ行く (2018年9月9日)
2-1-3. リツコ、空を飛ぶ。 (2018年9月9日)
3-0-0. リツコ、悪夢をみる (2018年9月10日)(加筆)
3-0-1.リツコ、起こしてもらう。
3-0-2. リツコ、情報交換する
3-1-0.リツコ、朝寝坊する。
3-1-1.リツコ、右将軍にあう。
3-1-2.リツコ、皇女に会う
3-1-3.リツコ、マシカとあう。
3-1-4. リツコ、市場へ行く。
3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。 (2018年9月11日)
4-0. リツコ、早起きする。
4-1. リツコ、パレードに参加する。
4-2. リツコ、誇大広告される。
5-1. リツコ、旅をする。
5-2. リツコ、記録する。 (2018年9月12日)
5-2. リツコ、話せるようになる。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第6章 リツコ、旅をする。
(第1稿)
(第1稿)
(あらすじ) (2018年8月17日)
( 目次 ) (2018年8月18日)
0-1.(おもて) (2018年8月18日)
0-2.(うら) (2018年8月18日)
1.リツコ、親善大使になる (2018年8月18日)
1-1. リツコ、出かける
2. リツコ、異世界へ行く。
2-1.リツコ、挨拶する。
2-2.リツコ、清峰鋭にあう。 (2018年8月19日)
2-3.リツコ、運ばれる。
3.リツコ、白王都へ着く。 (2018年8月22)
3-1-0.リツコ、寝坊する。 (2018年8月22日)
3-1-1.リツコ、皇女に会う (2018年8月22日)
3-1-2.リツコ、マシカにあう。 (2018年8月24日)
3-1-3. マシカ、市場へ行く。 (2018年8月24日)
3-1-4. マシカ、天幕に泊まる。 (2018年8月24日)
4-0. リツコ、目覚める。
4-1. リツコ、行列に参加する。
4-2. リツコ、センデンされる。
5-1. リツコ、記録する。
5-2. リツコ、観察する。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。 (2018年8月26日)()
6-2. リツコ、小鬼を救う。 (2018年8月26日)
7. リツコ、まきこまれる。 (2018年8月26日)
8-1. リツコ、魘される。
8-2. リツコ、龍にのる。
9. リツコ、会議にでる
10-1. リツコ、よばれる。
10-2. リツコ、地球にかえる。 (2018年8月26日)
(草稿&没原稿)
(草稿&没原稿)
(1) 朝日ヶ森 (2018年6月3日)
『 リツコへ。 第一日 』 (@中学……1年か2年?) 
(あらすじ) (プロット&目次)
(あらすじ) (プロット&目次)
【投稿用】プロットメモ (2018年7月22日)
400字~800字程度のあらすじ。 (2018年8月17日)
(設定資料集)
(設定資料集)
このコだ! 「鍵になるキャラ」…っ!www (2018年6月30日)
(( ことばよ、つうじよ! ))  (2018年8月9日)
(サ行前の雑談など)
(サ行前の雑談など)
【ぐれてる理由】。(--;)。 (2018年5月13日)
『 リツコ 冒険記 』 ~ 夏休み ・異世界旅行 ~ (1) (2018年6月3日)
(案の定【天中殺中】で頓挫している) (2018年7月22日)
…ちっ! …やっぱり…『落ちた』か…★ (2018年8月12日)
次ぃ征くぞ! 次っ! (2018年8月12日)
★ 【講談社 『 青い鳥文庫 』 の呪い!?】の謎。 ★
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3-1-2.リツコ、皇女に会う

 3-1-2.リツコ、皇女に会う

 心なしか少し足早になって歩いて行く。そこはかなり大きな広場で、馬?車や人が曳く荷車らしきものや、きのう乗せてもらったような鳥の人が運ぶ用のカゴと似たものが大量に並べられ、ひっきりなしに人や獣が荷物を運び込んできて、移し替えたり、整理して積み上げたり…何か同じようなものを観たことがある…とリツコが思い出してみると、前にテレビで見たシルクロードのキャラバンの準備風景に似ていた。
 どうやら大勢で旅に出る?仕度をしているらしかった。
 その前庭を抜けると両脇を綺麗に手入れされた植え込みで飾られた広い道に出て、少し伸びすぎた芝生のような、そこで昼寝したら気持ち良さそうだと思うような草の花壇?の脇を少し歩くと、正面に宮殿?らしいものがあった。
 リツコの知識でいうと一番似ているのが奈良とか日光とかにあるハチマンサマとかの女性的な寺院建築で…鮮やかな朱金と紅と緑の曲線的な飾り彫の細工で覆われた広壮な木造建築。ってところなんか、かなり似てると思う。
 鋭は案内も請わずにすたすたと宮殿の奥の奥の廊下にまで入っていくのでリツコも遅れないようにがんばって後を追う。
 通りすがりの役人らしい人たちが鋭を見るとみな頭を下げる。
「マウレィディア!」
「マウレィディア、リレク、エイセス!」
「マウレィディア。」

「アノエ、カイネ。」
 鋭はうなずくだけで軽く返して、どんどん歩いて行く。
「アウレクセス、マルニエン、エネ?」
 広間の入り口前の椅子に何かの順番待ちらしく並んで腰かけている人たちの先頭に、頭を下げて手刀で拝むようなしぐさをしながら声をかけると、
「マウレニエン、エネ、エネ!」
(どうぞお先に!)と言っているのだろう仕草で、相手の人は喜んで順番を譲った。
 広間で拝謁の最中だった人がそのやりとりの声にふりむいて、慌てて自分のいる場所を譲ろうとする。
「アウネ、ソノ!」
 若い女性の声が鋭く響いて、その人はちょっと困った顔で、また前に向かいなおした。
(構わない、続けて!…って言った?)
 リツコは推測する。
 どうやらそこが謁見の間…正面に座っているのが、これから挨拶する「皇女サマ」らしかった。
 若い女の人だ。さっきの男の人…翼雄輝…と同じくらいの年齢に見える。つまり、鋭よりは何歳か年上? 

 …まぁ地球人の時間の感覚で、だけど…
 碧緑色の豪華な巻き毛を肩のまわりにふわっと広げて、瞳の色も髪と同じ碧緑色だ。朱色と金色の華麗だけどすっきりと美しい衣装を身にまとい、色が白くて唇が真紅で、ものすごい美女だけどかなり性格がキツそうな顔立ちで、ちょっとかなり苛苛した感じで眉をしかめながら、前に座った人の報告を聴き、いくつか指示を出してその返事を得てから、仕種と声とで退出を命じる。
「…遅いわよ、あなた!」

 次にいきなり日本語で怒鳴られてリツコは飛びあがった。

「は、はいッ!…ごめんなさいッ!」
「昨夜は歓迎の宴を用意したのにすっぽかすし! 今日は私もう出かけなくちゃいけないのにいつまでも待たせるし!…それになに?チビな上にタダビト組なの?…なんで清瀬律子が自分で来なかったのかしら!」
 これはもう挨拶とか自己紹介とか、マトモにさせてもらえる状況ではない。
 リツコは震えあがり、涙目になりかけながら必死で言い訳をした。
「あのぅ…ゆうべと今朝はすいませんでした。あたし時差ボケで、寝ちゃって… それに大叔母様たちは今すごく忙しいんです。最近かなり大掛かりなテキハツがあって、大勢タイホされちゃったんで…」
「…あら、そう…」

 美人皇女は、素早く眉をしかめた。
「鋭、その報告は後で聞くわ。今はとにかく忙しいのよ。その御チビさんで大体揃ったし。明日もう出発するわよ! 正午発! あなたも準備急いで!」
「らじゃ。」
 鋭はちょっとふざけた感じで地球式の挙手の礼をすると、あわあわしているリツコの肩をさっきと反対側に押して、とっとと逃げ出そうとした…。

 


3-1-3.リツコ、マシカとあう。

 3-1-3.リツコ、マシカとあう。

 さっき順番を譲ってくれた先頭の人に軽く頭を下げてとっとと退出しようとした時、鋭は急に気がついておっと!と立ち止り、慌ててふり向いた。
「…マーシャ。今の。決定事項でいいんだよね?」
「え? あぁ。…日本語で言っちゃったわね。」
「伝令まわすよ?」
「えぇ。お願い。」
 鋭は部屋と廊下に並んでいる者たちみなに聴こえるように大声で呼ばわった。ぴんと張った声だ。
「アウレイメイ! ミウンテア! ソンナイ!」
 列をなしていた人たちの間にざわ!と波がはしる。
 鋭は繰り返して言った。
「アウレイメイ! ミウンテア! ソンナイ! …ディウンディアーイ!」
「アゥッ! ディエンディアーイ!」
 短く返事をして走り出していく、何かの制服を着て剣や槍を帯びている人たち。
 並んでいた列から慌てて離れて、宮殿の外へ急ぎ足で去って行く人たちも大勢。
「…いま、何て言ったの?」
 おそるおそる鋭に聞いてみると、
「マーシャが言ってたことだよ。出発は明日!正午!…伝令ッ!」
 それから鋭も今度はリツコの歩調を気遣いながらも、足早に歩き始めた。
「行こうか。…怖かったでしょう?」
 苦笑している。
「ううん。あたしこそごめんなさい。きのう寝ちゃったりしなければよかった。」
「いや~、彼女は最近ずっとあの調子だから。きみが悪いわけじゃないんだよ。」
「そうなの?」
「きみとは全然関係ない理由で機嫌が悪いんだ。八つ当たりされてるだけなのに、かばってあげられなくて、ごめんね?」
「ううん。それならいいけど…」
 やがて宮殿の外に出ると、先ほどの広場でごったがえしていた荷駄や人のざわめきが、さらにいっきに活性化していた。
「ミウンテア! ソンナイ! ディウンディ!」
「ミウンテア!」

「ミウンテア!」
 大声で伝達しながら駆けて行く複数の声がどんどん遠ざかり、周囲に復唱されてまた広がっていく。
「…ねぇ、もしかして鋭ってかなり偉い人なの?」
 いっせいに動きだした人々や動物たちの騒ぎをきょろきょろ眺めながら聞いてみる。
「なんでそう思った?」
「だって若いのに宮殿のみんなが膝を曲げてあいさつしてたし。順番もすぐに譲ってもらえたし。とってもエラそ~な、あのお姫さまのこと名前で呼んで、ため口きいてたし。」
「…うーん、そっか。いい観察力だね。」
 鋭はまた苦笑した。
「まぁ偉いっていうか…皇女サマの幼馴染の友人…というか、今は側近って立場かな?…ってことになってるし…最近じゃなんかヨーリア学派の…あ、さっき居たあの家の連中だけど、長っぽくなってるし…」
「…やっぱり、かなり偉いの?」
「うーんまぁ、さっき会った雄輝ほど有名人ではないよ。まぁぼくは、たんなる雑用係だねぇ…」
「そうなんだ?」
「そう。それで、明日出発ってことはぼくも準備しなくちゃで忙しくなっちゃったんで、旅のあいだキミの世話をしてくれる人のとこにこれから連れてくからね。」
「そうなの?」
 リツコは旅と聞いてもずっと鋭と一緒なのだろうと思って安心していたので、びっくりして目を丸くした。
「うんそう。だって昨日はもうしょうがなかったからぼくのとこに泊めたけど、旅のあいだずっと男のぼくの部屋に女のコのきみが同室ってわけにはいかないでしょ? ほんとは昨日からそっちに泊めてもらうはずだったんだけど… あ、いたいた!」
 広場の一角に妙にたくさんの生き物たちで混みあっている場所があって、鋭がかまわずまっすぐ突っ込んでいくと、小鳥たちや猛禽たちや小動物や四足獣や人間の子どもや大人が、一斉にわっと散って通路をあけてくれた。
「マシカ!」
「リレク!」
 呼ばれて振り向いて鋭の名前を嬉しそうに呼びかえしたのは、鋭と同じくらいの年齢に見える…大人に近いけどまだ少女というか…かなり若い女の人だった。
 秋の黄葉と紅葉をまだらにまぜたような華やかな色彩の長い巻き毛を首の後ろでぎゅっと結んで、緑と茶色の動きやすそうな服装に、歩きやすそうな柔らかい皮の靴。

 瞳の色は皇女サマと同じ碧だ。色が白くて額の広い、すっきりした美人なところもちょっと似ている。

 手には草の束?のようなものを持って、大きな黒馬の世話をしていた。
「動物たちの調子はどう?」
 鋭はそのまま日本語で話しかけ続けた。
「モンダイないわ。あしたシュッパツですって?」
 驚いたことにその人は、ちょっと発音が怪しかったけれども、なめらかな日本語で答えた。
「そう。で、この子が例の子。頼める?」
「わかったわ。よろしくね、リツコ? あたしは、マシカよ。」
「こんにちわ! びっくりした。日本語が話せるんですね!」
「リレクやマーシャたちからナラッタのよ。」
「そうなんだー!」
 リツコはほっとして笑った。さっきの怖い皇女サマと違ってだんぜん優しそうだし、異世界の人なのに、言葉が通じるなんて!
「マシカこれから時間ある? リツコを市場に連れて行って、着替えとか旅に必要なものを一式買ってあげてほしいんだ。これ予算。足りるかな? 諸侯会議にも出るからさ、ちょっと豪華っぽい正式な服も必要なんだけど。」
「えぇ。足りると思うわ。知り合いの店が安くしてくれるのよ」
 マシカは渡された袋の中身をかるく確認してにこっと笑った。
「あと例のあの、言葉の術のやつも頼める?」
「あら? マーシャに会いに行ったんじゃなかった?」
「ものっすごい機嫌が悪くてさー。頼むどころじゃなかった。」
「あらあら…」
 マシカも、よ~くワカッタ、という身内に特有の仕種で肩をすくめた。
「わかったわ。あたしの神力じゃ弱いけど。全然ないよりマシでしょ。」
「じゃ、ごめん、リツコ。また明日ね。もしぼくに用がある時はマシカにそう言ってくれれば、すぐに連絡がつくから。」
「うんわかった! ありがとう!」
 リツコが慌てて手を振るうちにも、鋭はどんどん歩いて行ってしまった。
 それを後ろから追いかけてきていた人たちが次々に群がって話しかけたり、書類らしいものを渡したり左印をもらったりしている。
 …やっぱり、本当は偉い人で、ほんとうに忙しかったらしい…
 リツコは、二日間もあたしみたいな子どもの世話なんかさせて、悪いことしたなー、と、

 ちょっと反省した。

 


3-1-4. リツコ、市場へ行く。

 3-1-4. リツコ、市場へ行く。

「ちょっと待っててくれる?」
 鋭を見送ったあとリツコにそう言って、大きな立派な黒馬の世話を最後まで仕上げたマシカは、まわりの人間たちや動物たちに挨拶らしい言葉をかけてまわると、広場のすみの水場に行って手と顔を洗い髪をほどいた。
 ふわりと広がった朽葉色の巻き毛は、とても豪華だ。
「きれ~い!」
 リツコが思わずそう誉めると、マシカはにこっと笑った。
「そう? ありがとう。リツコの髪もすてきよ?」
「えぇ? あたしのなんか焦げ茶色で癖毛でへろへろで~。全然ダメ」
「そうなの? ダレムアスでは《大地の色》って言って、一番いい色だけど?」
「そうなの?」
「えぇそうよ。ほら可愛い。あたしたち姉妹みたいね?」
 マシカはそう言ってリツコの固く縛っていた癖毛もほどいてふわっと広げてしまった。
 リツコは「姉妹みたい」と言ってもらったのが嬉しくて、「えへ~」と照れた。
 マシカはそんなリツコを見てにこっと笑って、それからちょっと下がった。

 何をするのかなとリツコがキョトンとして見ていると、リツコのことを上から下までじっくり観察している感じで、それからにこりと笑い、リツコの両頬に両手を添えて、額を合わせて、気息を整えて、…歌うように叫んだ。
「ま~りえった! れっと、せっと、えッ!」…(ことばよ、通じよ!)
「え?」
「まうれいにあ、あむにや、あむねえむね?」…(わたしの言うこと解る?)
「えっ? …解る! …???!」
 リツコは目を丸くした。何がどうなったの??
「マーシャは神力ってヤクしてるけど、鋭はマホウって呼ぶわね。あたしは血の力は弱いから、マーシャみたいに言ってることを相手に解らせるようにする術まではむりなの。効き目も弱いし、時間も短いと思うんだけど… とりあえず、それでやってみましょう?」
 リツコはまったくわけが解らなかったが、とりあえずうんとうなずいた。
 マシカは追いかけて来る小鳥や小動物たちに話しかけたり構ったり、ちょっとあっちへ行っててと追い払ったりしながら、とても楽しそうな顔でリツコを連れてずんずん市場に分け入っていく。
 リツコはきょろきょろしてしまって大変だ。質問したいことを全部聞いていたら一歩も前に進めなくなるだろうって思うくらい、目にはいるものがすべて珍しい。

 長年使いこまれた木彫りの柱の立派な天幕や、掘っ立て小屋のように粗末な屋台。二階建ての大きな飲食店に、屋根と柱だけで壁がない気軽で安そうな茶飯屋。

 色とりどりの布地屋、服屋、装飾品の店、革細工の店、野菜の店、果物の店…

 占い屋さんかしらと思う地べたに座った賢そうなお婆さんや、兎の人や羊の人たちをおしゃれな感じに毛刈りしている店。

 ひたすらまわりじゅうを見回しながら歩いていたリツコは、やがて、自分のほうも周囲の人たちから、びっくりした目で眺められているのに気づいた。
「…ティケット?」…(地球人?)
「ティケットィアナン?」…(地球人か?)
「あやけったていか!」…(おっとびっくり!見てごらん!)
 市場を行き交う通りすがりの人々が、リツコのTシャツと短パン姿を見て珍しいものを見るように目を丸くして声をあげている。
(………え? なんであたし、言ってる意味が解るの? ティケット…ってチケット? 英語? 切符?…じゃないよね…???? こっちの言葉だと「地球人」って意味?なの…????)

 まったく解らないはずの言葉が、一瞬遅れてだけど、だいたいの意味がするっと判る。まるで頭の中に映画の字幕でも映っているみたいな感じだ。

(???????)

 目を丸くして混乱しているリツコをしりめに、すたすたと前を歩いていたマシカがひょいと曲がって入ろうとした店先で、続こうとしたリツコを睨んで鋭い声をあげた男がいた。

「エベルディン、スレイガ!」…(出て行け、敵め!)
「…あんま、のうでぃあ、あーろんでーぃ。」…(なにか御用で?お客さん)
 店員らしい人も、誰だこの怪しい奴め、という顔で、リツコを見ている。
 リツコは知らない人から突然( 敵め! )と言われたらしい事に心底びびった。
「まるまっかあれ。」…(あたしの連れよ。)

 どうやら鋭と同じくらいに周りの人たちから顔が知られているらしいマシカがぴしりと言うと、ざわめきが収まった。
「ジョルディイリヤン、ダレッカ。リレキセース、オルディイイン。」…(諸侯会議に出るお客様。リレク様からお預かりしたの。)

 出て行けと言った男の人が、困った顔で不機嫌そうに口をつぐんだ。
「あんにや、ましか!」…(いらっしゃい、《星の娘》!)
 奥から転がるように店主が出てきて、あとはもう買い物が大変だった。
 あれやこれやと店主が出してきてくれる衣類や旅行用品?の山を見て、

「ちょっと待ってマシカ!こんなにたくさん買っても背負いきれないよ?」

 リツコが悲鳴をあげると、

「馬車で運ぶから大丈夫よ」とマシカは余裕で笑った。

 マシカがかけてくれた言葉の魔法?とやらのおかげで、相手が言っていることは何語であれリツコにはなんとなく意味が解るのだけど、リツコが喋ってる日本語は、相手には全く通じてないらしい。

 半分はマシカに通訳してもらって、マシカにもうまく翻訳できない時はとにかく身振り手振りで、好きな形や嫌いな色や、肌触りがどうとかを色々説明しまくって、それから試着してみてあーだこーだと、似合うとか似合わないとかと集まってきたみんなで品定めをして、最後にマシカが押しの一手で強気の値切り交渉までしてくれて…

 一通りの品物を揃えて支払いを済ませて配達まで頼んで店を出た時には、リツコはもう疲れてしまって、喉が枯れて、おなかもぺこぺこだった…。
 マシカが気を利かせてくれて、通りすがりの屋台で何か甘いものを食べさせてくれる。色とりどりの豆と何かぷにっとした食感のものが入った、あんみつとぜんざいが混ざったような味のおしゃれなスイーツだ。
「おいしーーーい!」
 叫んだリツコに、マシカは笑った。
「元気でた? じゃ、ちょっと遠いけど私のテントまで歩きましょう。」
「あ、ちょっと待って! あたし今朝、洗濯物を干してきちゃったの!」
「センタクモノ?」
 なぜかこれがマシカに通じなかった。リツコはがんばって身ぶり手ぶりで説明してみた。
「服を洗って~、干して~、こう…。昨日泊めてもらった部屋の中に、干して置いてきちゃったの!」
「…あぁ。洗った。干した。で、…乾いた?」
「そう。洗濯物。」
「センタクモノ。」
 マシカはうんとうなずいた。
「リツコ、わたしのニホンゴまだまだみたいだわ。旅のあいだ、たくさん教えてね?」
「うん!こっちの言葉も教えてね?」
 リツコとマシカはすっかり意気投合して、大の仲良しになった。

 


3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。 (2018年9月11日)

 3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。

 じゃあセンタクモノを取りに一度戻ろうという話まで進んで、リツコは困った。
「どうしよう!あたし帰りも鋭と一緒だと思ってたから、道を覚えてない!」
「ヨーリア学派の寺院でしょ? わかるから大丈夫よ」
「ほんと? よかった~!」
 しばらく歩いて、なるほど見覚えのある植え込みの門のちかくまで着くと、マシカはその手前の店先で買い物をしてくるからその間にセンタクモノをとってきて、と言う。
 ひとりで門を入って、見覚えのある玄関まで行って、勝手に上がるのもまずいかと思って、とりあえず声をかけてみた。
「すいませ~ん! …誰かいませんかー?」
「…もうどれいやなっ、えんにやえん。」…(*********)
(??? …あれ…!???)と、リツコは困った。
 さっきまで声と一緒になんとなく判っていた「ことばの意味」が…また、分からなくなってる!
 魔法?をかけてくれた時にマシカが言ってた「時間も短いと思うんだけど」の意味のほうが判ったー! 

と思いながらも、幸いにして出てきてくれたのが今朝リツコを部屋から案内してくれたあの女の人だったので、もう一度「センタクモノ!」を説明する身振り手振りをして、「取りに行きたいので部屋に入っていいか?」という許可を得るのは、そんなに難しいことでもなかった。
 どうやら鋭の私室だったらしい今朝の部屋に案内しなおしてもらって、洗濯物がきれいに乾いていたのをこれ幸いと、急いで畳んでリュックに詰め直す。
「どうもすいません! ありがとうございました!」
 ぺこりと頭を下げてお礼を言って退出すると、女の人はにこにこして手を振って見送ってくれた。
 それからまた教えられた店の前で誰かと談笑していた小動物まみれのマシカと合流して歩きだしながら、もう言葉がわからなくなったということを説明する。
「う~ん、だいたい半日なのね…」
 マシカはちょっと悔しそうな顔をした。
 すぐにまた術をかけなおしてくれるかなと思ったけど、そういうわけでもないらしい。
「もしかして、実はすっごく難しいとか、マシカがものすごく疲れるとか…する?」
「そんなことはないけど。だってもともとあの三人といっしょに旅してた時に、あたしだけ言葉が通じなくて不便だったから覚えようと思って、意味が解るようになれって自分で自分に毎日かけてた術なのよ。でもあれ使っている間、アタマがとても疲れるでしょう?」
「…そう言われてみれば、そうかも…。」

 頭よりむしろおなかがものすごく空いたけど。と思いながらリツコは一応うなずいた。
「今日はもう眠るだけだから、また明日にしましょう。」
 それから日本語で色んな話をしながら平坦な街道を歩いて、沈み始めた夕陽と夕焼けを眺めて一番星が光りはじめる頃まで30分くらい歩いて、マシカの仲間たちが寝泊まりしている旅天幕の村に着いた。

 マシカの仕事は薬師と言って、医者と看護師と薬剤師と獣医さんと村の学校の先生まで兼任しているような職業集団らしい。

 みんな明日の出発に向けて忙しそうに飛び回っていたので、簡単な挨拶だけして温かい夕飯だけ分けてもらって、リツコたちはすぐにマシカの天幕にひっこんだ。

 何枚かの革と布を張り巡らせて木枠で支えた一人用の天幕は、二人で入るとちょっとだけ手狭になったけど、居心地よく乾いて清潔で暖かくて、きちんと整理整頓の行き届いた、いかにもマシカの部屋!という感じがするすてきな場所だった。
「マシカは用意はしなくていいの?」
「たぶん明日出発になるだろうというのは昨日のうちに解っていたので、もう準備は済んでるの」
「そうなんだ」
「でも明日は早起きしなくちゃだから、今日はもう寝ましょう?」
「うん!」

 寝間着に着替えて、くせ毛の髪の梳かしっことかして、くすくす笑いながら秘密の内緒話なんかして。
 それからマシカとリツコは本当の姉妹よりも仲良しになって、一つの寝床で寄り添って一緒に眠った。
 ただし問題は、リツコのために追い出されてしまったマシカの沢山の同居動物さんたちだった。
 ぶぅぶぅきゃぁきゃぁぴぃぴぃと、それぞれの鳴き声で文句を言いながら脇の長椅子に移動させられた栗鼠や仔猫や小型犬や小鳥やフクロウや翼の生えたヘビみたいな生き物や…その他いろいろ…だったが、けっきょく朝になってリツコが目を覚ましてみると、二人の少女のあいだとまわりじゅうに、たくさんの動物たちがぎっしり集まって、詰まって乗っかって、一緒に眠っていたのだった…。

 


4-0. リツコ、早起きする。

第4章. リツコ、旅に出る。

 4-0. リツコ、早起きする。

 翌朝、天幕のすぐ上で鳴き交わす鳥たちの声がすごくて、リツコはびっくりして目が覚めた。
 すでに開け放ってあった天幕の戸布の向うに見える空はまだ夜明け前で、東?の山並みの上に広がった薄い金色の線から、反対側の闇青色と最後の星の瞬きまでの、雲ひとつないグラデーションが見事だ。
 …う~ん、これは地球と同じに見えるんだけど…と、う~んと伸びをして深呼吸もしながらリツコは思った。

 一番の違いは空気だ。すごく何というか…すがすがしくて…さらりとして…透明な感じで…美味しい。

 最初の日にそれを言ったら鋭が「この世界には工場も原発もないんだよ!」と笑ってた。
「…あら、起きた?」
 広い空の下で美しい髪に櫛をかけてふんわりとまとめていたマシカがふりむいてにこりと笑った。
「今日もお寝坊さんなのかと思ってたわ」
「うーん。だって昨日は早く寝たし。マシカがいてくれたから嫌な夢も視なかったし。」
「うん。よく寝てたわね。ミーボナンにほっぺた踏まれてるのに全然起きなかったもの」
 リツコは苦笑して、自分も起きる仕度を始めた。

 寝ている間にベッドの上は動物だらけで、まだ寝こけているやつもたくさんいて、先に目を覚ました連中は今もマシカの髪にまとわりついたりして、色々と仕度の邪魔をしている。
 まわりの天幕の薬師たちもみな起きだしているようで、あちこちで出発の準備を始める賑やかな物音や声がしていた。
 寝間着のままで教えられた川辺に降りて手と顔を洗い、その水場より下流に用意された木造のトイレ!(川の流れの上に付き出していて、床に穴が開けてあって、全自動水洗式?だ…)で用をたす。

 言葉が判らないまま、すれ違う薬師の人たちにはとりあえず大声で「おはようございます!」と挨拶しておく。
 戻ってきて、はたと悩んだ。
「ねえ?マシカ。今日って何を着たらいい?」
「あ、そうねぇ…、どれしましょうか?」
 昨日買ってきた装束類の小山と、自分が持ってきた少しの着替えを並べて、天気と気温を考えて、マシカの意見も聞いて、結局「地球式」の略礼装?が良いだろうということになった。
 白い半袖シャツに動きやすい七分丈の水色のガウチョパンツを合わせて、その上に、おしゃれな私立校の制服みたいな襟のチェックの夏ワンピを羽織って、前ボタンは適当に開け放って、ちょっとこなれた感じに着崩してみる。
 靴はやっぱり履きなれたスニーカーのままにする。だって相当、歩くらしいから。
「…きゃー、リツコ可愛い♪」
 そう褒めてくれながら、マシカは以前から決めてあったらしい衣装にさっさと袖を通している。
 やっぱり昨日の仕事着?と同じような、日本で言うと作務衣?みたいな動きやすそうなデザインだけど、超新品で、手織りらしい布地がすごく手が込んでいて高級な感じで、何だか民族調っぽい刺繍とか金色の飾りとかが色々付いていて、ふわりとした軽い布のマントも羽織ったら、とても上品に華やかだ。
「きゃー! マシカすてき! とっても綺麗!!」
 リツコが手放しで誉めると、うふんと得意そうに笑った。
「そうでしょう? この布を織るのは苦労したのよ! …リツコ、髪型はお揃いにしましょうよ!」

 もうそれだけですごく盛り上がりながらの身支度が終わると、マシカは昨日の昼にやってくれたように、ちょっと気分を改めるしぐさをして息を整えてから、リツコの頬に手を添えて額を当てて、唱えた。
「…ま~りえった! れっと、せっと、…えっか、ろう!…ぐん!」
(あれ?昨日と少し違う…)とリツコが思う間もなく、
…( ことばよ、通じよ! …せめて日暮れまで! もつように! )
…という意味が、頭のなかに字幕が映るような感じで、急に流れ込んできたのだった…。

 



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