目次
(借景資料集)
【速報!】 第2回 「青い鳥文庫小説賞」
(第4稿)
(第4稿)as(最終稿)
(添付挨拶状)
(あらすじ) (2018年9月23日)
序章 《 朝日ヶ森 》
第1章 リツコ、異世界へ行く。
第2章 リツコ、異世界で目覚める。
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、取材する。
第8章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第9章 リツコ、役に立つ。
終章 リツコ、地球に帰る。
(第3稿)
(第3稿)
(表紙)
(あらすじ) (2018年9月16日)
序章 朝日ヶ森 学園
第1章 リツコ、異世界へ行く。 (2018年9月16日)
第2章 リツコ、異世界で目覚める。 (2018年9月16日)
第3章 リツコ、皇女様にあう。
第4章 リツコ、仲良しができる。
第5章 リツコ、旅に出る。
第6章 リツコ、旅をする。
第7章 リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第8章 リツコ、戦う。
第9章 リツコ、地球に帰る。
(第2稿)
(第2稿)
(あらすじ) (2018年9月8日)
1-0-0.朝日ヶ森「学苑」(おもて)
1-0-1.朝日ヶ森(うら) (2018年9月8日)
1-1-0.リツコ、呼ばれる。 (2018年9月8日)
1-1-1. リツコ、出かける (2018年9月8日)
2-0-1.リツコ、異世界に着く。 (2018年9月9日)
2-0-2.リツコ、挨拶する。
2-1-1.リツコ、清峰鋭にあう。
2-1-2.リツコ、異世界の村へ行く (2018年9月9日)
2-1-3. リツコ、空を飛ぶ。 (2018年9月9日)
3-0-0. リツコ、悪夢をみる (2018年9月10日)(加筆)
3-0-1.リツコ、起こしてもらう。
3-0-2. リツコ、情報交換する
3-1-0.リツコ、朝寝坊する。
3-1-1.リツコ、右将軍にあう。
3-1-2.リツコ、皇女に会う
3-1-3.リツコ、マシカとあう。
3-1-4. リツコ、市場へ行く。
3-1-5. リツコ、天幕に泊まる。 (2018年9月11日)
4-0. リツコ、早起きする。
4-1. リツコ、パレードに参加する。
4-2. リツコ、誇大広告される。
5-1. リツコ、旅をする。
5-2. リツコ、記録する。 (2018年9月12日)
5-2. リツコ、話せるようになる。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。
第6章 リツコ、旅をする。
(第1稿)
(第1稿)
(あらすじ) (2018年8月17日)
( 目次 ) (2018年8月18日)
0-1.(おもて) (2018年8月18日)
0-2.(うら) (2018年8月18日)
1.リツコ、親善大使になる (2018年8月18日)
1-1. リツコ、出かける
2. リツコ、異世界へ行く。
2-1.リツコ、挨拶する。
2-2.リツコ、清峰鋭にあう。 (2018年8月19日)
2-3.リツコ、運ばれる。
3.リツコ、白王都へ着く。 (2018年8月22)
3-1-0.リツコ、寝坊する。 (2018年8月22日)
3-1-1.リツコ、皇女に会う (2018年8月22日)
3-1-2.リツコ、マシカにあう。 (2018年8月24日)
3-1-3. マシカ、市場へ行く。 (2018年8月24日)
3-1-4. マシカ、天幕に泊まる。 (2018年8月24日)
4-0. リツコ、目覚める。
4-1. リツコ、行列に参加する。
4-2. リツコ、センデンされる。
5-1. リツコ、記録する。
5-2. リツコ、観察する。
6-1. リツコ、囚われてはいないお姫様にあう。 (2018年8月26日)()
6-2. リツコ、小鬼を救う。 (2018年8月26日)
7. リツコ、まきこまれる。 (2018年8月26日)
8-1. リツコ、魘される。
8-2. リツコ、龍にのる。
9. リツコ、会議にでる
10-1. リツコ、よばれる。
10-2. リツコ、地球にかえる。 (2018年8月26日)
(草稿&没原稿)
(草稿&没原稿)
(1) 朝日ヶ森 (2018年6月3日)
『 リツコへ。 第一日 』 (@中学……1年か2年?) 
(あらすじ) (プロット&目次)
(あらすじ) (プロット&目次)
【投稿用】プロットメモ (2018年7月22日)
400字~800字程度のあらすじ。 (2018年8月17日)
(設定資料集)
(設定資料集)
このコだ! 「鍵になるキャラ」…っ!www (2018年6月30日)
(( ことばよ、つうじよ! ))  (2018年8月9日)
(サ行前の雑談など)
(サ行前の雑談など)
【ぐれてる理由】。(--;)。 (2018年5月13日)
『 リツコ 冒険記 』 ~ 夏休み ・異世界旅行 ~ (1) (2018年6月3日)
(案の定【天中殺中】で頓挫している) (2018年7月22日)
…ちっ! …やっぱり…『落ちた』か…★ (2018年8月12日)
次ぃ征くぞ! 次っ! (2018年8月12日)
★ 【講談社 『 青い鳥文庫 』 の呪い!?】の謎。 ★
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3.リツコ、白王都へ着く。 (2018年8月22)

http://85358.diarynote.jp/201808221403234175/

 

3.リツコ、白王都へ着く。


3-0.リツコ、寝こける。


 リツコは、うなされていた。

「お母さん! お父さんっ! 早くっ! …早く! 逃げてっ!!!!」

 いつもの夢だ。怖い夢。もう、起こってしまったこと。そして、…

「…リツコ! リツコ! 起きて! …夢だよ、起きて!」

「…お母さんッ!」
 リツコは飛び起きて、声をかけてくれた人に必死でしがみついた。
「あぁ良かった…無事だったのねっ!」
「…リツコ…」
 …ん??
 ぎゅっと抱き着いてみたら…違う…?
 硬いし、細いし…
 これ、お母さんじゃないし…お父さんでもないし…大叔母様でもないし…
「…………あ!? 鋭? ………ごめんねっ? …あ、あたし…寝ぼけて…っ」 びっくりして飛びすさったら、「ううん。」と、美青年は優しく笑ってくれた。
 …やっぱり見惚れる。
 鋭はまた苦笑して、
「それにしても、度胸がいいねーぇ? 天運籠のなかで気がついたら爆睡してたって。鳥人のみんな、呆れてたよ?」
 うなされていたことは無視してくれて、にやにやからかってくる。
「え? …えぇ?」
 リツコは慌ててあたりを見回した。
 知らない部屋だ。
「…ここ…??」
「うん。日が暮れる寸前くらいに白王都に着いたんだけど。いくらゆすっても起きないからさ。…運んじゃった。」
「……うわーっっ?? ごめんねっ?」
「ううん~? 軽かったし。」
「え~? 軽くないよ~?? 重いよ~??」
 リツコはぱたぱたと顔とか髪とかに手をやって赤面した。いや~ん…っっ
「だってさっ!だって向う側の木の穴からえいっって出発したのは夕陽が沈んだ後だったのにっ! こっち着いたらまだお昼前で! お昼2回も食べたでしょっ? 飛んでるあいだあたしは暇だったしぃっ!」
 とりあえず必死で言い訳してみる。
「うん。きみが適応能力のとても高い大物の卵だってことは、よく解ったよ?」
「いや~んっ!」
「知らないところでさ。一人で目が覚めたら、いやでしょ? お腹もすいてるだろうと思って。」
 優しい口調ながらまじめな顔に戻って言うと、リツコが寝かされていたベッドを覗き込んでいた鋭はひょいと立って歩いて行き、部屋の中央の食卓と椅子らしいセットのほうへ戻った。
「ごはん用意しておいたから。…あ、手と顔が洗いたかったらそっちね。トイレもそっち。」
「ありがとっ!」
 リツコは清潔で気持ちのいい木の床の草編みらしい模様入りのゴザのようなものの上をぱたぱたと裸足でかけていって、教えられた場所でトイレと洗手洗顔を済ませて、ぱたぱたと走って戻った。
 置いてあった箱形のお盆?の蓋をとると、ふわりと優しい香りがする。
「わぁ、美味しい!」
「そぉ? 良かった。」
 何種類かの野菜と何かの肉と小魚…を、香草と一緒に蒸して和えたらしい簡単だけどすごく美味しいおかずが山盛りと、おせんべいと焼きおにぎりの中間のようなしっかりしっとりした噛みごたえの、何かの穀物の粉を練って平たくして焼いた、主食らしいもの。
 箸休め?的なちょっと摘まめるコリコリした歯ごたえの何か。浅漬けみたいな感じの新鮮な生野菜が数種類。それからデザートに、食べやすいように切ってあった汁けたっぷりの甘酸っぱい香り高い果物!
 それらをがっついている間に、鋭が卓上焜炉的なものの鉄瓶からお湯を注いで、温かい草のお茶を淹れてくれる。
「ふ~ぅ。おなかいっぱーい!」
「おなか落ち着いたらもう一度眠るといいよ。まだ朝まで時間あるから。」
「もしかしなくてもあたしのために起きててくれたの?」
「まぁやることも色々あったし。夜中に寝ぼけますからよろしくって、清瀬さんからの手紙にも書いてあったし。」
「えぇ!?」(…はっずかし~っ!)
 …と、身もだえしてみせると、鋭はまたふふっと笑った。
「まぁフツウ組のひとが朝日ヶ森に保護されてるからには、何か事情があるとは思ってたけど」

「…鋭は、地球のジジョウについては、どれぐらい知ってるの?」
 リツコは思い切って聞いてみた。なにしろ知らないことだらけだ。

「う~ん。清瀬さんからは何も聞いてないの?」
「そんな暇なかったもん。初恋の人だ~ってノロケ始めちゃったし。」
「えぇ? それ初耳!」
「え、うそ? しまった!」
 リツコは慌てて口をふさいだ。遅いけど…
「…言っちゃったこと、内緒ね…?」
「う~ん、まぁ時効だし…。なにしろそっち時間だと、五十年も経ってるし…。
 でも清瀬さんとはほんと喋ったこともあまり無かったんだよ? 数十年ぶりに地球側と連絡がとれて、当代の朝日ヶ森の学園長が清瀬律子サンって署名してあっても、最初は同じ人だと思わなかったくらいで。」
「そうなんだ?」
「うん。…そもそもなんで彼女が朝日ヶ森にいるのさー?」
「え? 同級生だったんじゃないの?」
「その前にいた全く普通の地元の学校でだよ。今のキミと同じ4年生の時にね。彼女転校生だったし。そのころ口がきけなくて筆談だったし」
「あ、それは聞いたことある。心因性とかのショックで喋れなかったって。」
「それで僕はIQ高かったんで《センター》に誘拐されて。」
「えぇ?」
「逃げ出して朝日ヶ森に保護されて…そしたら何故か清瀬さんも朝日ヶ森に保護されてて… まぁ色々あって僕その直後にこっち側に飛ばされちゃったから、以来五十年?お互い音信不通。」
「そうなんだー?」
 リツコはちょっと目を丸くして混乱した。話の全体像がよく解らない…けど。
「あたしはほんとにフツウなのー。お父さんお母さんがハンセイフって目ぇつけられちゃって。逮捕に来たから『逃げて!』って言って。走って逃げたらばらばらになっちゃって。それで山ん中で一人でサバイバルしてたら朝日ヶ森のひとが保護しに来てくれて。でもお母さんたちは先に亡命しちゃったんだって。次のルートが確保できるまで、朝日ヶ森で待ってなさいって。」
「…ほぼ僕と同じ状況らしいけど。…それを『普通』って言っていいのかなぁ…。」
 鋭が苦笑して遠い目をする。

「それでか。『こっちとそっちの行き来を兼ねて別の場所に出られないか』って質問」
「え?」
「聞いてない? リツコこっちに来たあと朝日ヶ森に戻すか、もし可能なら、地球上の別の場所に出してくれてもOKって。」
「そうなんだ…」

「でもキミの今回の時差の件もあるし、ルートがほんとかなり不確定なんだ…。
 ぜったい安全って確認できるかどうか、もうちょっと待っててね。」
「うん。わかった。」

 それからしばらくはリツコが地球と日本の最近の事件の話をして、うとうとしはじめたら布団に入れと言ってもらって。

 …最後にみた大きな満月が、地球より大きいな~と思ったところまでで、リツコの記憶は途切れた…。

 


3-1-0.リツコ、寝坊する。 (2018年8月22日)

http://85358.diarynote.jp/201808222012536184/

 

3-1.リツコ、謁見する。

3-1-0.リツコ、寝坊する。

 再び目が覚めると、どうやらもうすっかり朝も遅い、という時間帯のような雰囲気だった。大小色々いるらしい鳥の声が賑やかで、人の声や馬?のいななきとかのざわめきも遠くから聴こえる。
「…んんん……よっく寝た…?…あれ…???」
 あたりを見渡して知らない部屋だということを再確認して、昨日なぜか異世界とやらに来てしまったんだった…ということをぼんやり思い出し、
「…夢じゃなかった!」…と、正気にかえって、慌てて起き出した。
 着ていたのは持参した寝間着で、自分で着替えたのは覚えてる。
 木と竹?と紙と布でできたシンプルな…何というか和モダン?…風なしつらえの部屋のなかで慌てて昼の服に着替える。…そうだ。脱いだ服の洗濯は、どうしたらいいのかな…?
 昨日おしえてもらった場所でトイレと洗面を済ませて、水はたっぷりあったし天気も良かったので、ついでだから大きな盥でじゃぶじゃぶ洗濯もしてしまって、邪魔にならないかなー?と思いながら土間のすみっこの植え込みの枝に紐をかけて勝手に干す。
 昨日と同じように卓の上に用意されていた朝食らしいものを勝手にたいらげる。
「いただきます!………ごちそうさまでした!」
 3分でがつがつ平らげると…物音を聴きつけてやってきたのか、旅館の中居さんのような感じの動きやすそうな服装をした知らない女のひとがにっこり笑って立っていた。
「あにょんまるにえん、えなら?」
「あっ!おはようございますっ!ごあん勝手にいただきましたッ!」
 おもわず噛んじゃいながら慌てて挨拶すると、にっこり笑って「えんえん。」と返事をしてくれた。
「まによ?」
 リツコの食べ終えた食器を手早くまとめて持って、「ついて来て?」という風に首をかしげるので、リツコは急いでリュックをひっかけて、あわててついていった。

 行った先には鋭がいた。
 大きな部屋で、同じような服装と髪型をした同じような雰囲気の人たち沢山と、地図だの一覧表だのを広げて、慌ただしく何かの打ち合わせをしている感じ。
「まるにえん。えーらんてーい。」
 女のひとが声をかける。鋭が降り向いた。
「あるっくあい。…あ、リツコ起きた?」
「おはようございますっ。寝過ごしてごめんなさいっ!」
「い~よ~?」
 それから鋭は周りの人に声をかけ、自分の見ていた書類は簡単に片づけて、上衣を手にとった。
「じゃ、行こうか。」
「どこへ?」
「皇女サマにご挨拶~。」
「えぇ!?」
「あれ、ゆうべ言わなかったっけ?ここの皇女サマって朝日ヶ森に居たんだよ。
『霧の校庭・運動会行方不明伝説』って、学園七不思議になってるって聞いたけど。」
「え~っ? 何十年か前の、障害物競走の途中で生徒3人がイキナリ消えた謎?
 …あれ実話だったんだ…」
「そうそう。そん時に巻き込まれた僕がここに居るからねぇ。」
 …つくづくあの学校はフシギだらけだ…とリツコがあきれながら鋭と一緒に歩いて行くと、玄関らしき場所に出て、
「あっあたし靴っ」
「だいじょうぶ、昨日ここで脱がせたから、ここにある。」
「あっそうなんだ~。」
 ほんとに鋭って気配りというか、用意がいい人だなぁ…と感心する。

 玄関先の気持ちの良い小径を歩いていくと、すぐに大きな道に出た。
「うわ…」
 市場だった。いや…大きな町? 商店街…?
「とりあえず質問と観光は後にしてー。皇女サマは怒らせると怖いからー」
 きょろきょろしながら呆然と立ち止まってしまったリツコの肩を押して鋭が苦笑する。
「それでなくてもキミきのう寝ちゃったからさ? 歓迎パーティーすっぽかしたんだよー」
「…きゃーーーーーっ! ごめんなさいっ!」
 リツコは恥ずかしくて悲鳴をあげた。

 さらに歩いて行くと開放的な感じの大きな門があって…
 特に検問とか見張りとかは何もなくて、ひょいとくぐると、入ってすぐのところに、大きな男の人が立っていた。
「おう鋭! 来たか! そのコか?」
「うん雄輝。この子だよ~、高原リツコ嬢。」
「あっこんにちわっ! タカハラですっ! よろしくお願いしますっ!」
「リツコ、これが『校庭行方不明事件』のもう一人。翼雄輝。」
「おう、よろしくな。タカハラって何県のタカハラ家?」
「…………翼…………!」
 リツコは質問されてることに返事ができなかった。紹介された人の背中に大きな翼があったから。
「ん?珍しいか? 朝日ヶ森にも居るだろう?」
「居るけど… 怖くて殆ど話せなかったし…」
「あ~、天狗系のやつらは、気難しいからな~…」
 そういう問題だっけ…
「おれは善野の鷹羽ヶ峰の一族の、元主家の翼の最後の一人。…って解る?」
「ごめんなさい。わかんないです。うちは一族って滅んじゃて残ってないので。
あたしたちは、分家の分家で。…大叔母様か、お父さんなら知ってるかもだけど…」
「あ~気にすんな、そんなもんそんなもん。」
 からからと笑って男の人はリツコの肩をぽんと叩いた。
「マダロ・シャサ!」
 ちょっと離れたところから呼ばれたのは、その翼のある人のこっちでの名前らしい。
「じゃな。マーシャ怒ってるからな~。せいぜい庇ってやれよ?」
「…うへぇ…」
 鋭が、すっごい嫌そうな声を出した… (リツコはびっくりした。)

 


3-1-1.リツコ、皇女に会う (2018年8月22日)

http://85358.diarynote.jp/201808222150112690/

 

3-1-1.リツコ、皇女に会う

 少し足早になって歩いて行く。そこはかなり大きな広場で、馬車?や荷車らしきものや、きのう乗せてもらったような飛び籠と同じようなものが大量に並べられ、そこへひっきりなしに人や馬が荷物を運び込んできて、移し替えたり、積み上げたり…何か同じような風景を観たことがある…とリツコが思い出してみると、前にテレビで見たシルクロードのキャラバンの準備に似ていた。
 どうやら大勢で旅に出る?仕度をしているらしかった。
 その前庭を抜けると綺麗に手入れされた植え込みに飾られた広い道に出て、そこを少し歩くと正面に宮殿?らしいものがあった。
 リツコの記憶でいうと一番似ているのが奈良とか日光とかにある寺院建築で…鮮やかな朱紅と緑の飾り彫りで覆われた木造建築。ってところなんかそっくりだと思う。
 案内も請わずに鋭はすたすたと宮殿の小道の奥まで入っていくのでリツコも遅れないように後を追う。
 通りすがりの役人らしい人たちが鋭を見るとみな頭を下げる。
「マウレィディア!」
「マウレィディア、リレク、エイセス!」
「マウレィディア。」
 鋭はうなずくだけで軽く返して、どんどん歩いて行く。

「アウレクセス、マルニエン、エネ?」
 広間の入り口の椅子に並んで腰かけている人たちの先頭には頭を下げ手刀で拝むようなしぐさをしながら声をかけると、
「マウレニエン、エネ、エネ!」
(どうぞお先に!)と言っているのだろう仕草で、相手の人は喜んで順番を譲った。

 広間で謁見の最中だった人がそのやりとりにふりむいて、急いで自分の席を譲ろうとする。
「アウネ、ソノ!」
 若い女性の声が鋭く響いて、その人はまたちょっと困った顔で、前に向かいなおした。
(構わない、続けて!…って言った?)
 リツコは推測する。
 どうやらそこが謁見の間…正面に座っているのが、これから挨拶する「皇女サマ」らしかった。
 若い女の人だ。さっきの男の人…翼雄輝…と同じくらいの年齢に見える。つまい鋭よりは何歳か年上? まぁ地球人の時間の感覚で、だけど。
 碧色の豪華な巻き毛を肩のまわりに広げて、朱色と金色のすっきりと美しい衣装を身にまとい、美人だけどかなり性格キツそうな顔で、ちょっと苛苛した感じで眉をしかめながら、前に座った人の報告を聴き、いくつか指示を出して確認を得てから、仕種と声とで退出を命じる。

「遅いわよ、あなた!」次にいきなり日本語で怒られてリツコは飛びあがった。
「昨夜は歓迎の宴を用意したのにすっぽかすし! 今日は私もう出なくちゃいけないのにいつまでも待たせるし! それになに? チビな上にタダビト組なの?
 なんで清瀬律子が自分で来なかったのかしら!」

 これはもう挨拶とか自己紹介とかさせてもらえるどころじゃない。
 リツコはふるえあがった。
「あのぅ…ゆうべはスイマセンでした。あたし時差ボケで、寝ちゃって…それに大叔母様たちは今すごく忙しいんです。最近大掛かりなテキハツがあって、大勢タイホされちゃったんで…」
「…あら、そう…」美人皇女は、素早く眉をしかめた。

「鋭、その報告は後で聞くわ。今日はとにかく忙しいのよ。その御チビさんで大体揃ったし。明日はもう出発するわよ! あなたも準備急いで!」
「らじゃ。」
 鋭はちょっとふざけた感じで地球式の挙手の礼をすると、あわあわしているリツコの肩をさっきと反対側に押して、とっとと逃げ出した…。

 


3-1-2.リツコ、マシカにあう。 (2018年8月24日)

http://85358.diarynote.jp/201808242054253271/

 

3-1-2.リツコ、マシカにあう。

 謁見の順番を譲ってくれた先頭の人に軽く頭を下げてとっとと退出しようとした時、鋭は急に気がついたようにおっと!と立ち止り慌ててふりむいた。
「…マーシャ。今の。決定事項でいいんだよね?」
「え? あぁ。…日本語で言っちゃったわね。」
「伝令まわすよ?」
「えぇ。お願い。」
 鋭は部屋と廊下に並んでいる者みなに聴こえるよう大声で呼ばわった。
「アウレイメイ! ミウンテア! ソンナイ!」
 ざわ!と列をなしていた人たちの間に波がはしる。
 鋭は繰り返して言った。
「アウレイメイ! ミウンテア! ソンナイ! …ディウンディアーイ!」
「アワッ! ディウンディアーイ!」
 短く返事をして走り出していく、制服を着て剣や槍を帯びている人たち。
 並んでいた列から離れて慌てて宮殿の外へ急ぎ足で去って行く人たちも大勢。
「…いま、何て言ったの?」
 おそるおそる鋭に聞いてみると、
「マーシャが言ってたことだよ。出発は明日!正午!…伝令ッ!」
 それから鋭もリツコの歩調を気遣いながらも足早に歩き始めた。
「行こうか。…怖かったでしょう?」
 苦笑している。
「ううん。あたしこそごめんなさい。きのう寝ちゃったりしなければよかった。」
「いや~、彼女は最近ずっとあの調子だから。きみが悪いわけじゃないんだよ。」
「そうなの?」
「きみとは全然関係ない理由で、機嫌が悪いんだ。八つ当たりされて、ごめんね?」
「それならいいけど…」

 宮殿の外に出ると、先程の広場でごったがえしている荷駄や人のざわめきが、さらにいっきに活性化していた。
「ミウンテア! ソンナイ! ディウンディ!」
「ミウンテア!」
 大声で伝達しながら駆けて行く複数の声がどんどん遠ざかり、周囲に復唱されて広がっていく。
「…ねぇ、もしかして鋭ってかなり偉い人なの?」
 いっせいに動きだした人々や動物たちの騒ぎをきょろきょろ眺めながら聞いてみる。
「…なんでそう思った?」
「だって若いのに宮殿のみんなが膝を曲げてあいさつしてたし。順番もすぐに譲ってもらえたし。とっても偉そ~な、あのお姫さまのこと名前で呼んで、ため口きいてたし。」
「…うーん、そっか。いい観察力だね。」
 鋭はまた苦笑した。
「まぁ偉いっていうか…皇女サマの友人…というか側近かな?…ってことになってるし…最近はヨーリア学派の長っぽくなってるし…」
「…やっぱりかなり偉いの?」
「うーんまぁ、さっき会った雄輝ほど有名人ではないよ。まぁ雑用係だねぇ…」
「そうなんだ?」
「そう。それで、明日出発ってことはぼくも準備しなくちゃで忙しくなっちゃったんで、旅のあいだキミの世話をしてくれる人のとこにこれから連れてくからね。」
「そうなの?」
 リツコは旅とかいってもずっと鋭と一緒なのだろうと思って安心していたので、びっくして目を丸くした。
「うんそう。だって昨日はもうしょうがなかったからぼくのとこに泊めたけど、旅のあいだずっと男のぼくと女のコのきみが同室ってわけにはいかないでしょ?
ほんとは昨日もそっちに泊めてもらうはずだったんだよ…
 …あ、いたいた!」
 広場の一角のへんにたくさんの生き物たちで混みあっている感じの場所へ鋭がまっすぐ突っ込んでいくと、小鳥たちや大鳥たちや小動物や四足獣たちや人間の子どもやら大人やらが、一斉にわっと散って隙間をあけてくれた。
「マシカ!」
「リレク!」
 呼ばれて振り向いて鋭の名前を嬉しそうに呼びかえしたのは、鋭と同じくらいの年齢に見える…大人に近い少女というか…まだとても若い女の人だった。
 秋のイチョウの黄葉とモミジの紅葉をまぜまぜにしたような明るい色彩の長い巻き毛を首の後ろで結んで、緑と茶色の動きやすそうな服に歩きやすそうな柔らかい皮の靴。手には草の束?のようなものを持って、大きな黒馬の世話をしていた。
「動物たちの調子はどう?」
 鋭はそのまま日本語で話しかけ続けた。
「モンダイないわ。あしたシュッパツですって?」
 驚いたことにその人は、ちょっと発音が怪しかったけれども、なめらかな日本語で答えた。
「そう。で、この子が例の子。頼める?」
「わかったわ。よろしくね、リツコ? あたしは、マシカよ。」
「こんにちわ! びっくりした。日本語が話せるんですね!」
「リレクやマーシャたちからナラッタのよ。」
「そうなんだー!」
 リツコはほっとして笑った。さっきの怖い皇女サマと違ってだんぜん優しそうだし、言葉が通じるなんて!
「マシカこれから時間ある? リツコを市場に連れて行って、着替えとか旅に必要なものを一式買ってあげてほしいんだ。これ予算。足りるかな? 諸侯会議にも出るからさ、ちょっと豪華っぽい服も必要なんだけど。」
「えぇ。なんとかなると思うわ。知り合いの店が安くしてくれるのよ」
 マシカは渡された布袋の中身をかるく確認してにこっと笑った。
「あと例のあの、言葉の術のやつも頼める?」
「あら? マーシャに会いに行ったんじゃなかった?」
「ものすっごい機嫌が悪くてさー。頼むどころじゃなかった。」
「あらあら…」
 マシカも、よ~くワカッタ、という仕種で肩をすくめた。
「わかったわ。あたしの神力じゃ弱いけど。全然ないよりマシでしょ。」
「じゃ、ごめん、リツコ。また明日ね。もしぼくに用がある時はマシカにそう言ってくれれば、すぐに連絡がつくから。」
「うんわかった! ありがとう!」
 リツコが慌てて手を振るうちにも、鋭はどんどん歩いて行ってしまった。
 それを追いかけてきた人たちが次々に話しかけたり、書類らしいものを渡したりしている。
 …やっぱり、本当は偉い人で、ほんとうに忙しかったらしい…
 リツコは、あたしみたいな子どもの世話なんかさせて、悪いことしたなー、と、ちょっと反省した。

 


3-1-3. マシカ、市場へ行く。 (2018年8月24日)

http://85358.diarynote.jp/201808242228407081/

 

3-1-3. マシカ、市場へ行く。

「ちょっと待っててくれる?」
 鋭を見送ったあとリツコにそう言って黒馬の世話を最後まで仕上げたマシカは、まわりに挨拶らしい言葉をかけると手を洗って髪をほどいた。
 ふわりと広がった朽葉色の巻き毛は、とても豪華だ。
「きれ~い!」
 リツコが思わずそう誉めると、マシカはにこっと笑った。
「そう? ありがとう。リツコの髪もすてきよ?」
「えぇ? あたしのなんか焦げ茶色で癖毛でへろへろで~。全然ダメ」
「そうなの?ダレムアスでは大地の色って一番いい色だけど?」
「そうなの?」
「えぇそうよ。ほら可愛い。あたしたち姉妹みたいね?」
 マシカはそう言ってリツコの固く縛っていた癖毛もほどいてしまった。
 リツコは「えへ~」と照れた。
 マシカはそんなリツコを見てにこっと笑って、それからちょっと下がって気息を整えて、ひとこと歌うように叫んだ。

「ま~りえった! れっと、せっと、えッ!」((ことばよ、通じよ!))

「え?」
「まうれいにあ、あむにや、あむねえむね?」((わたしの言うこと解る?))
「えっ? …解る! …???」
 リツコは目を丸くした。何がどうなったの??
「マーシャは神力ってヤクしてるけど、鋭はマホウって呼ぶわね。あたしは血の力は弱いから、マーシャみたいに喋るほうまで出来るようになる術はむりなの。
時間も短いと思うんだけど… とりあえず、それでやってみましょう?」
 リツコはまったくわけが解らなかったが、とりあえずうなずいた。

 マシカは楽しそうな顔でずんずん市場に分け入っていく。
 リツコはきょろきょろしてしまって大変だ。質問したいことを全部聞いていたら一歩も進めなくなるだろうってくらい、目にはいるものがすべて珍しい。
 それはリツコを見る側からもそうらしかった。
「ティケット?」((地球人?))
「ティケットナン?」((地球人か?))
「あやけったていか!」((おっとびっくり!見てごらん!))
 通りすがりの商街の人々がリツコのTシャツと短パン姿を見て目を丸くする。
(………え? なんであたし、意味が解るの?? ティケット…ってチケット? 英語? 切符?…じゃない。よね…????)

「エベルディン、スレイガ!」((出て行け、敵め!))
 マシカが入ろうとした店の角で、鋭い声をかけてきた男がいた。
「…あんま、のうてぃあ、あろんでろぃ。」((なにか御用で?お客さん))
 店員らしい人も誰だこの怪しい奴め、という顔で見ている。
 リツコは知らない人から突然(( 敵!))と言われた事にびびった。
「まるまっかあれ。」((あたしの連れよ。))
 マシカが言うと、ざわめきが収まった。
「ジョルディイリヤン、ダレッカ。リレキセース、オルディイイン」((諸侯会議に出るお客様。リレク様からお預かりしたの。))
「あんにや、ましか!」((いらっしゃい、星の娘!))
 奥から店主が出てきて、あとはもう買い物が大変だった。
 マシカがかけてくれた魔法?のおかげで、相手が言っている言葉は何語であれリツコにはなぜか意味が(なんとなく)解るのだけど、リツコが喋ってる日本語は、相手には全く通じてないらしい。
 あれやこれやと店主が出してきてくれる衣類や旅行用品?に、半分はマシカに通訳してもらって、マシカにもうまく翻訳できない時にはとにかく身振り手振りで、好きな形や嫌いな色や肌触りかどうとか説明しまくって、試着してみてあーだこーだと、最後にはマシカが値切り交渉までしてくれて、一通りの品物を揃えて店を出た時には、リツコは喉が枯れて、おなかもぺこぺこだった…。

 マシカが気を利かせてくれて、通りすがりの屋台で何か甘いものを軽く食べさせてくれる。色とりどりの豆と触感の違う何かが入った、あんみつと冷しるこの混ざったようなお菓子だ。
「おいしーーーい!」
 叫んだリツコに、マシカは笑った。
「元気でた? じゃ、ちょっと遠いけど宿まで歩きましょう。」
「あ、ちょっと待って! あたし今朝、洗濯物を干してきちゃったの!」
「センタクモノ?」
 なぜかこれがマシカに通じなかった。リツコはがんばって説明してみた。
「服を洗って~、干して~、こう…。部屋の中においてきちゃったの!」
「あぁ。洗った。服を干した。乾いた?」
「そう。洗濯物。」
「センタクモノ。」
 マシカはうなずいた。
「リツコ、わたしニホンゴまだまだみたい。たくさん教えてね?」
「うん!こっちの言葉も教えてね!」
 リツコとマシカはすっかり仲良しになった。

 



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