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第二章 :彼女(カヨ)を探しにタイへ

 

奥村洋一は登録バイトを解約すると社員に告げ、タイへと出国する予定だった。

しかし、飛行機も乗ったことがない、ましてや、海外旅行なんてもっての他だ。

どうやって、飛行機のチケットを予約したらよいのかさえも分からなかったのだ。

彼にとっては、この旅は最大の冒険だった。貯金も30万円程度しかなかったため、

できるだけ格安飛行機で行かないと、あとで困ると考え、朝から晩までずっとインターネットで

チケットを探していた。今までの人生でこんなに自分から熱心に、調べごとをしたことがなかった。

食事を忘れるほど夢中になっていたのだ。

両親には、タイ旅行へ行くと話したが「あ、そう、気を付けてね。お土産買ってきて」とあっけない

返事だった。彼にとっては、人生最大のイベントになると考えていたので、いってきますと

一度敬礼をし、タイ・バンコクとへ旅立った。

 

タイ・バンコクに到着すると、まず格安の日本人ゲストハウスを探した。

タイといえば、微笑みの国というイメージをもっていたので、

現地に行けば、なんとかなると考えていた。

日本ゲストハウスは空港から40分ぐらいの所に位置しているとインターネット上で

書かれていたため、大きめのリュックを背負った奥村は地図用紙を片手に電車に乗り、最寄り駅まで

行くことにした。初めての海外だったので、日本語ではない言葉で会話している人を見て、内心、

ビクビクして緊張していた。

最寄り駅に到着したが、ゲストハウスまで徒歩で30分はあるみたいだ、

タクシーを呼んで快適に行けば、楽だろうと考えるが、彼の根暗な性格からは、金銭を脅し取られでしまったら、変なところへ連れていかれて首を絞められることもあるかもなど余計な心配ばかりしていたのでとりあえず、猛暑の中重い荷物を背負って歩いていくことになった。

バンコクの温度は35℃、湿度も高く、まるでサウナと同じだった。

快適な生活ばかりしていた彼にとって、バンコクは砂漠と同じように感じていた。

彼の額からは、大量の汗が流れ落ち、次第に目眩までするようになってきた。

5分から10分歩いているうちに、7と書かれた、コンビニを見かけた。

「あれ、どこかで見たことがある。あそこはオアシスか」と独り言をつぶやき

入っていたところは、セブンイレブンだった涼しく、快適な空間、水も置いてあり

心から喜んだ。2Lの水を購入し、ゴクコクと飲んだ水は、人生でも数えきれないほどのおいしさと感じた。そして、ゲストハウスまで歩くので歩き続けた。

 

ゲストハウスに到着すると、受付にいたのはタイ人男性だった。

片言の日本語も話すことができるため、安心した。滞在期間はビザの関係上、1ヵ月を予定しており、

タイの価格で1日300バーツ(日本円で1000円)の宿泊施設で生活することになった。

エアコン、ベット、wifiも環境整備されていたため、特に問題はなかった。

日本人バックパッカーがよくここに宿泊するらしい。

彼の目的はバックパッカーになることでも、観光でもなく、

日本で会った彼女(カヨ)を探すためにタイへ来たのだ。

まだ、彼女からの連絡はなかったため、とりあえず、写真とタイマッサージが得意という情報だけを

頼りに、探すことにした。

バンコクはマッサージパーラーが多いこともインターネットで調べていた。

日本人はマッサージが好きなため、格安でサービスの多いバンコクへ旅行に来るそうだ。

夜になって、マッサージパーラーに行くと、あらゆるところに胸元が開いた服装で、巨乳のミニスカートを履いているタイ人女性が「お兄さん、マッサージどう?、安いよ」

「H好きでしょ」と誘惑してくる。

確かに、マッサージ店には行こうとはしているが、求めているものが違う。

こんな不純なものではない、彼はそもそも風俗に行ったことがなく、なかなか入る勇気がないのだ。

はじめてのHは好きな人とと高いプライドを持っている彼はなかなか行くことができなかった。

とりあえず、好奇心を持ちながらも、心を落ち着かせて、宿泊所へ帰ることにした。

 

バンコクへ滞在してから、1週間が過ぎようとしていた。彼はだらだらと携帯電話をいじりながら、安い30バーツ(日本円で150円)のガパオ(タイ飯)をただ食べ、そして寝る。それの繰り返しだった。

ほとんど、日本の生活と変わらなくなってしまった。

そんな生活をしている彼も少し変化したことがあった。人と会話することができたり、

自分で洗濯、清掃などができるようになっていたのだ。

自分のことは一切できない、友達と会話するのも苦手だった彼が、自然と色々なことができるようになってきたのだゲストハウスにいると、目的が旅をする人が多かったり、バンコクの失敗談を話してくれる人がいて心の中から生活していて笑うことができたのだ。

洗濯機もなく、手洗いで洗濯をしたり、ホウキで掃除をするということが良い経験だった。

そういった生活している人たちの中で飲んだビールは最高においしかった。

 

そんなある日の夜、大学生の森君と出会った。

彼も小心者で、はじめて海外旅行へ来たという、同じような境遇であったので

話している内に気が合うようになった。

そんな森君が「ねぇ、ちょっと、夜の店行ってみない?」と誘ってきた。

いわゆるゴーゴーバーだ。露出の高い女性と店でお酒を飲んだり、踊ったりするところだ森君は大学で、なかなか恋人ができないので、インターネットで調べたら

バンコクを見つけ、異国の地に旅立つことにしたそうだ。女性に慣れれば、恋人ができると考えたらしい。純朴そうで、優しい青年だったが、内心は女性とHをしたりしたかったみたいだ。

 

たしかに、そういういかがわしい店は好きではないが、森君となら、いいかもしれないと

思うようになり、行ってみることになった。

ゴーゴーバーは店外からもにぎやかで、チカチカしていた様子が見えた。

POP音楽が流れていて、タイのきれいな女性がほとんど裸体に近い状態で躍っていた。

森君も、奥村も、ほとんど女性の体を見たことがなかったため、刺激が強すぎて

朦朧としていた。「これが・・すごいね・・・」と言葉にならなかった。

ゴーゴーバーを歩いていると、一瞬、見たことがあり、面影のある女性を見た。

濃い化粧をしていて、一瞬分からなかったが、本能的に彼女と察した。

彼は試しに「カヨ、元気にしている?」と話すと、彼女から「うん」と頷いた。

日本で会ったカヨだった。彼女はキョトンとした顔であれ、どうしてここにいるのという

表情だった。「俺、心配したんだよね、どうして連絡がくれなかったの」と話したりした。

現在、彼女はゴーゴーバーで働いているらしい。彼女みたいな素朴で、笑顔が素敵な人がどうして?

と彼はうなだれた。

話を聞くと、タイ人の恋人がいるらしい。恋人は女と遊びまくる有名な不良で

金は彼女に働かせて、貢がせていると聞いた。そして会うたびに、暴力を振ってくる男らしいのだ。

「そんなことはしないほうがいい、そんな男とは別れたほうがいい」と説得したが

なかなか理解がされなかった。彼女の腕には無数のあざも見られた。

ただ、うん、うんと頷いているだけだった。

とりあえず、もう一度、連絡欲しいと一言伝えて、後を去った。

 

彼は宿泊所で涙を流しながら、森君に色々なことを話した。

彼女のこと、仕事のこと、家族のことなどだ。

心の中が悲しく、そして切ない気持ちが彼に生まれた。

日本へ帰国する1日前になろうとしていた。

カヨからはまったく連絡がない、何をしにタイへ来たのか、

貯金もほとんど底をつきそうだった。彼は悲しみを埋めるため、あれからたくさんの

タイマッサージ店やカラオケ店へ行き、豪遊していたのだ。

そんな時、カヨから電話が来た

「この前はごめんなさい、あなたがそんな気持ちがあると知らなかったの、

もしよければ、明日、会えない?」と連絡があった。

奥村は「ふざけんなよ。遅いよ。もうお前のことは好きじゃない、明日、日本へ帰国するよ」

と激怒した。

彼女は泣きながら、今までしたことを反省していた旨を伝えた。

その後、会話をしているうちに、彼女は空港で彼を送り迎えをすることになった。

 

帰国の日 お世話になった受付の人、森君、バックパッカーの人などに

挨拶をした。こんなに色々な人にお世話になったのは初めてだったので感極まった。

空港では、カヨと喫茶店で待ち合わせることになっていた。

彼が先にコーヒーを注文し、カヨが来るのを待っていた。

もうすぐ搭乗時間になる。遅いカヨに苛立っていた。

すると、顔にあざをつくったカヨの姿が見えた。

「ごめん、遅くなった」

奥村は黙ってカヨの話に耳を傾けていた。

「あの、私、もう一度、やり直そうと思っている」

「不良の彼とは、別れたよ」

「あなたにまだ気持ちがあるならば、もう一度だめな私を受け入れてほしい」

「また、連絡してくれないかな」

と一方的に口にした。

搭乗時間になったので、席を立ち、レジで会計を済まし、

搭乗口に向かった。

「また、日本で連絡するよ。カヨ」と一言話して、出国することにした。

第3章に続く・・・

 


この本の内容は以上です。


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