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29.経理知識の必要性

29.経理知識の必要性

 

企業活動の中でもっとも理解し難い知識の一つが経理の知識ではないでしょうか。なんと言っても例の「貸方・借方」という複式簿記を理解することが大変です。その上、営業部門などでは優れた販売管理システムが導入されているため、難しい経理知識の必要性がまったくないといってもよいでしょう。

現在では、パッケージソフトでも多くの業務を短時間で処理してくれます。例えば、見積書の作成、売上票の作成、請求書の発行、売掛金等の回収状況の把握、在庫照会などに対応しています。さらに毎日の販売実績、月次実績、期間実績資料の作成や得意先別、エリア別、担当者別のこれらのデータを簡単に出力してくれます。特に経理知識を必要としなくとも販売に関する多くの作業とデータ作成をおこなってくれます。

それでも経理知識が必要でしょうか、と質問されそうです。

私は、それでも必要だと考えています。

何故かといえば、企業活動の全体としての結果、いわば経営活動としての結果に関しては、最終的に数字に置換えられます。いわゆる財務諸表になります。

企業活動の総括として表す財務諸表を読む力が必要になると考えていますし、部門活動においてもたとえ販売部門に所属していても、開発部門や生産部門におけるコスト構造を理解しておく、あるいは物流部門のコストを理解しておくといった全社的な活動における経営数字の理解は、全体最適と部門最適というバランス感覚を育てる上では非常に有効な方法だと思われます。

  一般には、経営数字をそこまでオープンにした経営をおこなう企業が少ないのでしょうが、今後の企業成長の原動力は、このような経営数字を認識した各部門や各課の担当者の自主的な判断、あるいは独自性を発揮する企業活動に光りがあたってくると思われます。その意味でも部門経営をおこなうという認識にたって経理、あるいは財務の知識習得にチャレンジしてください。

では一体どのくらいの経理知識が必要なのでしょうか。

私見で言わせていただければ、先ず(1)簿記の3級~2級程度、仕訳の基本が理解でき原価計算の基本的な部分が理解できる。(2)財務諸表の基本的な仕組みが理解できる。いわゆる貸借対照表と損益計算書が理解できる。(3)販売や購入(仕入)業務における経理的な流れが理解できる。売掛金・買掛金の流れが理解できる。(4)費用計上における発生主義の理解ができる。(5)予算管理と管理会計が理解できる。

前記の内容程度が理解できると企業活動を数的側面から眺めることができ各個人の仕事の幅ができてきます。また、経営的側面から自らの仕事を捉えることができますので、自分のやっている仕事をより客観的、相対的に見ることが可能になります。


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最終更新日 : 2010-11-11 08:38:32

30.仕事とリスク

30.仕事とリスク

 

  経理を担当しているときに、ファームバンキングを利用した仕入取引に関する支払業務や給与支払、あるいは地方税納付を省力化するために新規システムの導入を検討していました。

  当初、メーンバンクのA銀行のファームバンキングシステムを採用して実施しようかということで検討をはじめました。

  そんなある日、B都市銀行の営業担当者が飛び込みで会社を訪問してきました。当然、ソニーシステムサービスの主力銀行を理解しており、新規取引開始が非常にむずかしいということも担当者は十分理解していました。それでも、なお、「なんとか口座の開設ができないか」と積極的に訪問していました。

  偶然にもファームバンキングを利用する支払業務の効率化計画を進めている状況でしたから、私は「それならB銀行のファームバンキングのサンプルバージョンをテストしよう」と担当者に報告しました。複数銀行のファームバンキングシステムの機能テストの意味あもあり、テストを実施することにしました。

 ファームバンキングシステムのテスト結果は、B銀行のシステムについて、次の点で高い評価を下しました。

 

(1)DOS版でありながら非常に操作性がよく機能的な設計になっている。

(2)ソニーシステムサービス経理システムと連動のためにシステム開発をおこなう際

      B銀行関連のシステム開発会社のシステム開発能力が高いこと。

(3)導入に対するトータルコストがA銀行に比べて低い。さらに導入後の支払業務

  に関 する運用コストがA銀行よりも低くなる。

 

この結果、B銀行と取引を開始することは、システム開発や開発コストの優位性だけではなく、将来的にも安定した運用が可能であり、システム拡張の場合も効果的である。さらに運用コストを下げることができるので、B銀行との新規取引を開始する判断を下しました。

  早速、私はB銀行のファームバンキングシステム導入の企画書を作りあげ承認をもらうことができました。

  その後、ソニー関連会社を訪問したB銀行担当者の口から、他の関連会社で新規取引ができました、という報告を聞くことはできませんでした。

  確かに、既存の枠組みや仕組みを変更するということは、今まで普通に運営できていたものを変更するわけですから少なからず担当者として不安が生じるものです。リスクが高いと考えるのももっともな理由だと思います。しかも長い年月と諸先輩たちが築き上げた制度の変更ともなれば躊躇することが普通なのかもしれません。

  しかし、そのような状況にあっても、企業活動の次の展開に向けて新しい仕組みをつくる感性と自らリスクをとって実行する勇気が必要です。

たとえ、長い間継続的に、しかも問題なく日常業務がおこなわれていても、新たな仕組みやシステムと比較検討することは、いつの時代でも、どのような場合でも必要なことです。比較検討することで相対的に現在の内容を判断することが可能になります。自社の現状を客観的に理解することができます。その上で、新たな仕組みや新規システムの検討をおこなったり、あるいはこれまでの仕組みを見直すことで、企業活動にとってよりよい選択を求めることに意味があると思います。常に仕事の中身を見直し、その時々のベストの選択をおこなうことが担当者としての努めであると、私は考えています。

  実際、比較した内容の優劣までわかっている人達が企業の中には多数います。最終的に過去のしがらみなどにとらわれることなく、大胆に実行できる人達が少ないといえます。

  私の転職経験から見ると、どのような企業の担当者も新規にリスクをとって、従来からの仕組みを変えていくことに消極的でした。私がこれまでつくった仕組みなど、そのときどきで選択した結果に他なりません。新しい人達によって、また、そのときどきに優れた選択により変更され、より充実した内容にしていけばよいと考えています。

  また、新しい視点で主体的に仕事をすることが個々人の個性を存分に発揮させ、自己責任にもとづく自由で創造的な仕事を可能にする方法であると確信しています。

  企業のトップは、必ずしも組織のなかでノーリスクを望んでいるわけではありません。むしろ人間がリスクをとりながら事業展開していくことに、どのようなトップも寛容であると思います。但し、適法性にもとづくことは言うまでもありません。

  むしろ、企業のなかにいる我々世代の人間が前例主義の呪縛にとらわれ、組織的硬直を招いていることのほうが多いのではないでしょうか。

  最後に、必ず実施した結果はすべて自分が負うという責務がともなうことも忘れずに胸に刻んでおいてください。その上で、新たなものを作り上げたときの喜びはひとしおなのです。

  どちらを選択していくかは、みなさん次第です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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最終更新日 : 2010-10-18 08:19:46

31.企業活動を眺めて

31.企業活動を眺めて

 

現在、私は、あるベンチャー企業の総務人事マネージャーとして勤務しています。社員数は、役員3名を入れて16名です。驚くほど小さな企業です。スタートは、社長と同じ企業で働いていた仲間4名です。自分達のアイデアが商売になるというシンプルなもののようです。まさにソニーがスタートしたときのように井深さんや盛田さんを中心にみなんが夢を描いているように見えます。

現在の課題は、なんといっても売上を上げて利益を出すことですか。ほとんど何もない、就業規則も福利厚生もなにもない状況です。まるで銀河が生まれるときの小さな超新星の輝きのようなものでしょうか。ほんとうに企業の進化過程を見ているようです。

  ここで企業規模別に企業を除いて見たいと思います。小企業、私は、大体、社員数50名程度を想像しています。良くも悪くも企業活動の全体が見えてしまいます。社長も社長業というよりは、営業をやったり開発をおこなったり、経理をやったり、採用活動をやったりとあれもこれもがんばっています。企業の成長を自らの手でおこなっています。そこへ総務や人事担当の人間が入り、そのようなサポート的な仕事が分化していきます。社長自身も本業、あるいは収益に関する部門にウェイトをかけていくといった状況です。まさに機能化の最初のはじまりですね。

  どこかにまだ、同好会的な雰囲気を残しています。企業というよりは、クラブ活動的な同志意識が先行する企業形態です。

特にベンチャー企業では、早期の上場を検討していますから、売上高の拡大と内部管理体制の確立が求められています。この辺は、小企業ながら大手企業並みの企業運営が必要になってきます。また、内部管理体制の確立のためにベンチャータイプの企業活動が一部制約される場合もあります。企業のバランスある発展をいかにおこなっていけるかが課題になります。さらに自社の製品やサービスにおける収益構造の在り方、特に事業規模を拡大する増員時における収益構造の転換等に大きな課題がありそうです。またサービス内容の高付加価値化、あるいは単純化を選択するのか、といった事業内容のむずかしい選択があります。毎日の仕事が冒険の連続といってもいいでしょう。

次に中堅クラス、社員数でいえば、500名程度までの企業では、企業基盤が確立しています。組織も部門別に機能化が進み、それぞれの部門の役割もかなり明確になっています。このクラスの企業では、大手企業の子会社の場合、ソニーシステムサービスのような企業と社長がオーナーで一代で築いたような企業では、企業規模以上に企業運営が異なっていることです。

大手企業の子会社の場合には、良くも悪くも親会社の影響を受けながら企業活動をおこなっています。就業規則、福利厚生、経理業務といった企業活動の骨格といったところは、ほとんど共通した制度を有しています。その意味では、グループ一体となって経営をおこなっていると言えます。

一方、単独の中堅企業では、まさに企業発展のプロセスを垣間見ることもあります。特に社員層における創業期からの社員とかなり大きくなってから入社してきた社員との企業文化や企業活動における認識の違いなどがあります。企業運営の仕組みにも小企業だったころの面影、例えば、全ての経営判断が社長に集中しているといったことがあります。また、社長を中心に企業活動のすべてがまわっていくというような部分も散見されます。企業の基本的システムはできあがっていますので、前述した小企業とは異なり、規定関係や福利厚生といった機能も完全ではありませんができあがっています。組織機能もマネージャーを中心とした部門責任体制が確立しています。この規模の最大の課題は、大企業へと変身できるかどうかだと思います。売上規模は、100億円以上になっていますし、次のステップとしては、300億円、500億円といったところが目標になるのでしょうが、100億円規模から突破できない企業では、企業内部になんらかの課題や問題点を抱えていると思われます。むしろ拡大できずに縮少していく実態があります。売上の好循環を維持できない、なにかが存在しています。私が在籍したこの企業も外国企業の買収を受け入れています。公開企業でしたから数度の自己資金調達をおこなっていますが、有効な開発に結びつかず収益を悪化させました。

ソニーに比べると明らかに自由度がないと感じました。ソニーの場合は、企業活動の主体は若い人達であり、常にいろいろなものにチャレンジさせます。若い人達の成果の集積が企業活動の成果になっているように感じます。主役は、自分だといわんばかりです。若い人がもつエネルギー上手く引き出しているようです。とにかく動きながら考えます。考えながら動きます。この企業では、ソニーに比べて組織運営が硬直しているように感じたものです。創造性や人のやるきがでにくい、と言えますか。

企業文化や組織価値をどのように築いていくか、ということはこれからの企業活動にとって生命線になるような気がします。

それとともに企業活動を支えるマネジメントの集中選別による経営的思考の確立が必要だと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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最終更新日 : 2010-10-18 08:20:07

32.知識の根底に必要なもの

32.知識の根底に必要なもの

 

私は、自分の人生をどのように考えているのでしょうか。何気なく考えていたことですが、死ぬときにどのような人生のアルバムをもって死んで行けるかどうかを考えてきました。それは、自分の家にあったアルバムにある写真は、どれも楽しそうにしている写真ばかりでした。当然といえば当然ですが、写真を撮るときですからにこやかな笑い顏が自然にでる場面なのです。実は、自分の人生も写真の笑い顔のようにいつもにこやかな笑い顔を絶やさない人生でありたい。とりもなおず、心の中にどれだけ笑い顔の写真を数多く撮ることができるかどうかだと考えています。そのような人生をいかに築いていくか、ということが大きな課題だと感じています。

サラリーマンの前に、人間としてどう生きるべきか、と。

確かに企業組織に入れば、職制があり課長であれば課長のやるべき仕事、総務であれば総務の専門性が必要です。また、仕事をマネジメントすることも自分の部下をマネジメントすることも求められます。そのような仕事の中にあっても人間的な視点を忘れない、否人間性を大事にしながら生きていこうと努力しています。100%満足できる環境があるわけではありませんが、意識するかしないかは人生という長丁場にとっては重要な意味があるように感じています。さらにそのような考えていると自然と人間性が自分の行動を縛っていくことがあります。

例えば、特殊暴力関係で相手に向かう際に自分のスタンスを確立することができます。何が重要で何が本質なのか、人間的な視点で判断することができます。こうしていくつかの危機は乗り越えることができました。案外、このような気持をもって仕事に取り組むほうがより創造的でより自分の可能性を発見できるのかもわかりません。

企業活動では、企業活動に必要な多くの知識を学ばなければなりません。書物を読むことも必要ですが、なんといっても実戦的に実務を習得しなければなりません。さらに昇格することで、人や仕事そのもをマネジメントするという高度の役割を学ばなければなりません。しかも全社的な立場からは、リーダーシップを発揮して部門や課を企業目的に合致するように引っ張っていかなくてはなりません。企業で仕事をすることは、想像以上にハードな環境です。

しかし人間は、ロボットではありません。企業活動で知り得た知識や実戦で学んだ仕事だけで人生に向き合っているのではありません。

やはり自分が生きていく上で、自分の人生を決めている根本的な視点と向き合う必要性があると思います。

アサヒビール名誉会長樋口広太郎氏は、著作「知にして愚」の中で「組織のために個人は何ができるか、そして自分は自分のために何ができるかという自分主役型の思考こそ、実り多い人生につながるのではなかろうか。受けのバランスではなく、『攻めにまわった組織と個人のバランス』こそが、これからの組織と個人の新しい関係論でなければならないと思う。 中略 自分らしさを発揮できないまま、組織の論理・体制に身を委ねざるをえないというのは、組織にとっても個人にとっても有益とはならないのである。ここで断っておきたいのだが、『自分らしさ』とは、ビジネスマンとして会社という組織の中でどう『個』を発見するかということではなく、自分の人生をいかに生きるか、である」と言われています。

まさにこれが、人生観になるのだと思います。

企業社会で学ぶスキルやリーダーシップの根底に必要なものは、このような個人の人生観、哲学、理念、あるいは考え方ではないか、と考えています。

その上にこそ、すばらしい知識や経験、あるいは感性といったものが花開くのだと確信しています。優れたリーダーとは、個人の確固たる人生観や哲学をもった人のことをいうのだと思います。(図11)

 

 

 

 

 

 

 


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最終更新日 : 2010-10-18 08:20:28

33.ソニースピリッツを探す旅

33.ソニースピリッツを探す旅

 

ソニーシステムサービスでの約7年間の生活に終わりを告げようとしていました。会社を去ろうと決意した第一理由は、社長の小林さんが退職されてからソニーらしさを感じなくなったことでしょうか。小林さんが在職されておられる間は、そんなに強くソニーを意識したことはありませんでした。ただただ毎日が面白い、楽しい、時間の過ぎるのがあっという間でした。ソニーの上の人達は面白い人だなぁ、と思っているくらいでしたか。小林さんが退職されるとそんな雰囲気もなくなり、なんだか普通の企業に変っていくようでした。これは、どうも小林さんの存在がソニーシステムサービスの存在を作っていたなぁ。

小林さんから教わったソニーの雰囲気、当時ソニースピリッツという言葉は知らなかったような気がしますが、何故か自分の中で膨らんでいくのです。経理業務から総務業務へ戻りたいという気持が強くなり、しかも総務業務の中でも株式関係の仕事を経験したいという気持があり、平成8年12月31日付でソニーシステムサービスを退職することになりました。

同年11月22日には、小林さんにも退職の報告をさせていただきましたが、一方ならぬご心配をいただきました。また、今日に至るまで多くの応援と変らぬお付合いをいただき感謝の念に耐えません。

ソニーで学んだ人間として他社で通用するどうか、というチャレンジでした。ところが再就職どころか就職活動に苦労する日々でした。ソニーシステムサービスを退職して、みずから20数社の小さな企業を訪問してみました。過去の実績など真摯に聞いてくれる企業は、殆どありませんでした。毎日悔しい思いの連続です。何故、チャンスを与えてくれないのか?だめならば、自ら去るぐらいの決意は、十分もっているつもりです。我々の世代の転職に関して中小企業は、閉鎖的で、チャンスを与えることに臆病すぎるようでした。

むしろ大手企業の労働条件などを持ち込まれたら企業として迷惑千万な話だ、と考えている節があります。このへんのギャップは非常に大きいような気がします。なんだかんだで3ヶ月間も就職活動をやっていました。

このときの就職活動で決めていたことは、できる限り小さな企業に就職できないか、ということでした。何故かといえば、ソニーの前身東京通信工業の創業のときのように企業の骨格ができる前の企業発展を実感できるところで仕事をやってみたいということでした。やはりこの段階の企業を見てみないと企業の本当の発展過程を理解することなどできないと考えたからです。その上、井深さんや盛田さんの起業スピリッツに触れたいという大きな願望、否無謀な願望があったからですが。

いかんせん企業がそれを許してくれませんでした。結果は、社員数300名というある中堅ゲームソフト開発会社に就職することになりました。小企業入社の夢やぶれるでした。しかしこの企業は、店頭公開をおこなっていましたので、第二の目標である株式業務を経験することができました。また、この企業では、多くの転職者がはいってきた関係で今なおお付合いいただいています。まるで人材の宝庫でした。勿論、社長ともお付合いをさせていただいています。不思議な魅力がある社長です。まだ55才とお若いのでこれからのご活躍をお祈りいたしております。きっと何か新しいことに挑戦されるでょう。

さて、そんな企業も2年半で退職することになりました。理由は二つありました。一つは、自分自身でやってみたいことがあるということでした。もう一つは、この企業で総務を担当していましたが、このとき約2年半部下を育ててきました。ソニーシステムサービス時代社長の小林さんから受けた薫陶、上司を異動させて私に総務・人事の責任者として仕事をさせるという小林流マネジメントのお返しをする局面だと確信したからです。そうです、私の変わりに部下が責任者として総務をまとめていく時期だと決心したからです。これも小林さんから教えていただいた納得性が高い人材育成方法だと信じていたからです。

部下は、見事なチャレンジで私なき後の総務をマネジメントしています。この企業でもソニー小林流のマネジメントが真価を発揮しています。

さて、第一の退職理由は、ソニーシステムサービス時代に小林さんをとおして知ったソニースピリッツに関して、今般はやりのメールマガジンを活用することで書いてみたいという希望をもっていたからです。さらにメールマガジンから独自のセミナーを開催していきたいという思いがありました。セミナーの中心は、大学生ですが、企業実務の実態と企業入社時に感ずるギャップをどのように克服していくかをテーマにしています。また、大学の就職部をとおしてセミナーの開催ができないかと東京を中心に数十校の大学および短期大学の就職部を訪問させていただきました。残念ながらすべての就職部から評価をいただけませんでした。一方大学生のセミナーは、数回開催して一部の学生のみなさんとは、今日交流できるまでになりました。来年、彼らが企業に入社してからの楽しみができました。今後は、大学生をはじめとして新入社員から入社2~3年目までの社員を対象にしたセミナーを開催していきたいという希望を膨らませていますが、どうなることやらといったところです。

 

ソニースピリッツ(ベンチャースピリッツ)とは、人間の向上と組織価値の向上を目指し、既成概念にとらわれることなく将来にわたって常にチャレンジし、チャンスをつかみ、変化を尊ぶことができる自己能力を確立し、真の人間形成を目指す実戦なのだと信じています。

 

自分ひとりではじめた挑戦ですが、約10ヶ月になろうとしていました。残念ながら最初の挑戦は失敗でした。先ず持って時間が足りない、費用がたりない、大学生の仕事観と企業実務のギャップの大きさといい、多くのことがはじめて体験することでした。セミナーに対する根本的な見直しをしなければなりませんでしたが、時は自分の活動をさせてくれるほど甘くありませんでした。再就職活動をおこなわないと生活自体が成り立たないという状況になりつつありました。

 

今回の就職活動も前回に引き続き、3ヶ月あるいはそれ以上の期間が必要ではないかと考えていました。取急ぎデジタルビーイングをはじめとするWebの就職媒体から就職先を探すことにしました。先ず、ベンチャー企業の採用活動の活発さに驚きました。しかしどの企業も年齢40才まで、私のような47才では到底採用に達するのはむずかしいと思えました。事実、厚かましくも履歴書を送付した大半の企業からは早々にお断りのメールをいただく毎日でした。私の長所は、それでもめげずに出すところですが。そんなある日次のようなメールが渋谷のベンチャー企業、トライコーン株式会社から舞い込みました。

 

長野

トライコーン株式会社 人事部です。

この度は弊社求人にご応募いただき誠にありがとうございます。

これ以降は貴殿とトライコーン株式会社とのやり取りになります。

以下にここから先のプロセスをご説明致します。

 

1)まず、このメールへの返信として以下を記述したファイルを添付して、

    メールにてお送り下さい。書式は自由に作成していただいてかまいません。

    ファイル形式は、 Excel97Word97、テキスト形式のどれかで作成して下さい。

    この応募書類の返信を持ちまして正式な応募と認識させていただききます。

    なお、応募書類は返却できませんのでご了承ください。

 

    【すべての方】

     △ 履歴書

     △ 職務経歴書(新卒の方は不要です)

     △ 自己PR

       ・これまでのインターネットの利用方法

       ・自分がやっていきたいこと、将来のビジョン

       ・自分が関わったウェブサイトの紹介(URLを明記)

       ・その他セールスポイント

 

    【技術系職種のご希望の方】

     △ テクノロジーバックグラウンド

       ・使用OS、言語、DBMS、その他のサーバーアプリケーション

       ・システム構築経験、システムの概要とそのときの役割等、

          インターネット上で見られればURL

       ・今後、取り組んでいきたいテクノロジー

       ・その他

 

2)いただいた応募書類を元に、弊社にて簡単な書類審査をさせていただきます。

 

3)書類審査の結果は、書類受領後、1週間程度以内にご連絡いたします。

    書類審査合格の方は、面接の日時も同時にご連絡いたします。

 

4)弊社担当者と、弊社にて面接をしていただきます。

 

5)面接合格後、採用となります。

 

何か不明な点などございましたら、採用担当まで

メールにてご連絡頂ければ幸いです。

 

それでは、ご応募心よりお待ちしております。

今後ともよろしくお願いいたします。

 

トライコーン株式会社

採用担当

というようなメールです。

これは、自分のためのある企業だぁ、とひとりで叫んでいました。何故か。まさに

「△自己PR」に可能性を見つけたのでした。

これなら書ける。ひょっとするといけるかもわからないなぁ、と。

早速、次のような内容の自己PRを返信させてもらいました。

                                                                        

 平成12年5月17日

                          自 己 P R

                                                   長 野 修 二

1.インターネットの利用法

メールマガジンを利用した大学生、および新入社員向け実務講座を開設。

同メルマガを利用した無料セミナーの実施。

同メルマガから実務書出版の依頼がありウェブの有効性を発見。

 

2.将来のビジョン

これまでの実務経験を活かし、若い人達に仕事の面白さ&作り上げることの楽しさを教えていきたい。

さらにベンチャー企業の基盤整備にチャレンジしていきたいと考えている。

 

3.ウェブサイトの紹介

http://www.mag2.com/m/0000018150.htm

http://www.mag2.com/m/0000028869.htm

 

4.セールスポイント

    ソニーらしく、営業職から管理部門を担当することには意味がある、と異質性を買われ、総務、人事、経理職として複数部門において成果を出すことができた。

    特に経営と実務をつなぐマネジメントに秀でており、経営的視点を踏まえ納得性が高く付加価値がある業務遂行ができる。

    事業計画、管理会計、経理知識ならびに監査システムに関しては相応なレベルにある。モットーは『チャレンジスピリッツ』。

 

                                                        以 

 

 

 

すぐにこのトライコーン株式会社から面接の予定をいただき、管理部門担当役員、社長面接を含めて1週間で採用を決定していただきました。しかも37才以下の平均年齢29才の企業にたったひとり47才が入ったのです。入ったほうも入ったほうですが、採用したほうも採用したほうですね。(笑)またひとつ「人がやらいことをやる」というソニースピリッツの成果です。しかも前述のトライコーン応募メールは、社長のHさんが自分で作ったオリジナルメールです。他のベンチャー企業では、大手企業と変らない応募フォーム、大体、大手企業等から転職した担当者が採用業務を動かしているのだと思います。まったくオリジナルな部分を感じません。社長のHさんのモットーに「人の真似をしない」があります。ソニーとどこか相通ずる姿勢があるのです。だからこそ年齢に係わらず採用していただいたのだと思っています。

トライコーンは、メールマガジン発行機能とデータベース機能を有する「アウトバーン」というメールマガジン発行システムのASP事業をメインとしている企業です。ソニーマガジンをはじめ大手企業を中心に約200社に導入実績があります。設立1997年2月ですが、過去3期連続黒字を計上しています。

Hさんは、年齢35才です。立派の一言です。また、Hさんはプライスウォーターハウス時代の仲間4名でトライコーンをはじめられています。みなさん優秀です。最初の面接をしてくださった管理部門担当のSさんは、公認会計士の資格をもたれていますが豪放磊落でとても会計士にみえないユニークな人柄です。現在直属の上司です。社員数は役員3名を含む16名、まさに自分がチャレンジしたい企業規模なのです。本当に東京通信工業の創業期を彷彿させる企業活動だと思っています。やっと井深さんや盛田さんが起業されたころを想像できる企業規模の会社に入社させていただいたことは、感動そのものです。自分の思いが通ずる。人生の不思議な出会いの一こまです。まだまだ課題がありそうですが、ソニーの成長のように一歩一歩チャレンジしていかれることと思います。本当にソニースピリッツを証明できる場を与えていただいたと心から感謝しております。

一方で、メールマガジンの挑戦からこのような本の執筆依頼を受けるチャンスをいただきました。こちらもまたすばらしい感動であり心から感謝しております。セミナーそのものは失敗でしたが、チャレンジしたことで多くの新しい可能性を発見できました。人間のやることは、一見無駄なようですが挑戦する姿勢にこそチャンスが訪れるのだと、改めて人生の不思議さを噛み締めています。

 

ソニースピリッツを探す旅は、これからもずっとずっと続くことでしょう。ソニーシステムサービスで小林さんと巡り会え、まばゆいばかりの仕事に挑戦させていただいたあの日々の感動をいつまでも忘れることなく生きていくことこそが、ソニースピリッツを探す旅の原点だと信じて筆を置きたいと思います。

 


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最終更新日 : 2010-10-22 11:51:45

この本の内容は以上です。


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