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サイゴンの雪

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サイゴンの雪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ます。朝が来たことには気付いていた。私は目を覚まし、まどろみ、まどろんだ意識の中で、それが明晰さを取り戻していくのにまかせ、朝、私は目をさましたが、Lì Lyがいない。ベッドの上の、からっぽの空間を撫ぜた後、かすかに体温の痕跡だけ残っている気がしたが、私はややあって身を起こし、シャワールームの中にも、どこにもいない彼女を、私は探さなければならない。どうやって?頭の中でだけ、彼女の名前を呼んでみても、うなだれてベッドにもう一度座り込むしかない私に、記憶を呼び覚まそうとしてやまない、白い、おだやかな光線が部屋の中を満たしているのに気付く。確実に、いつか、何度か経験したことのある、冷たく、ただひたすら白んだ光線が、記憶のあらゆる部分を覚醒させようとするが、何ものを思い出させるわけでもない。意識に、何かの小さな切片が触れようとした瞬間に、私は立ち上がる。カーテンを引きあける。確かに、雪が降っていた。窓の外の熱帯の平野を、向こうの果てにまで、降り積もった雪が埋め尽くし、いまだ降り止まないそれらは、空間のすべてを、光さえをも、冷たい白い色彩の中に埋め尽くす。すべての色彩は、既に失われた。すべては、ただ、白い。探さなければならない。私は、彼女を。この雪の中に、彼女が生まれてから一度も出会ったことのないこの雪の、純白の結晶の膨大な堆積の中に、彼女は凍えているに違いない。褐色の白百合は、つめたい雪の温度の中に、彼女が凍り付いてしまう前に。私は、着の身着のままに、飛び出すと、突き刺すような冷気と、反射光の微かな温度の共存した、醒めた大気が肺の中を撃つ。ふくらはぎ近くにまで積もった雪が足を、踏み出すたびに一瞬抱いたあとに、すぐさま雪は崩壊し、外は交通さえも途絶えて仕舞っていた。誰もが初めて見る雪に、ただ、戸惑うしかない。何をすればいいのかさえわからないままに。立ち尽くし、警備員は信じられない顔をして、除雪という仕事さえ思いつかずに、ただ、何かをののしるしかない。空間は静まり返り、私の息遣いと、果てまでも、白く染め、白く染まり、降り続ける雪は私の肩に触れ続け、その、雪の、抱きしめて離さない接触が、すぐに、とけて、失われてしまう。Lily、褐色だった白百合。立ち尽くすことさえできない。探してやらなければならない。彼女を。探し出して、抱きしめてやらなければ、雪のこの純白の中に、凍える、雪の、彼女の、その、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017.8.13-.10.01.

Seno-Lê Ma