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抱っこが苦手

 優太がアスペルガー症候群と診断されたのは、3才の時で、それまで、私達夫婦はアスペルガー症候群について、全く無知だった。
 優太が他の子と少し違うな、と思ったことはあったが、無知な私達は、あまり気にしていなかった。歳をとってからの子供は可愛いというが、それは本当だなと思うだけの毎日だった。
「お父さん、優太は抱っこしても体を後ろに反らすのよね。抱っこされるのを、嫌がってるみたい」
「普通、赤ちゃんは抱っこされると、親の胸に体を預けるような気がするけどな」
「そうよね、でもほら、又後ろに反らした」
 美由紀は、体を後ろに反らし、イナバウアーのような優太を抱きにくそうにしていた。
「でも、体を後ろに反らしてるのも可愛いな」
 私は、イナバウアーの優太の頭を手で支えながら、アトピーで少し赤くなっているほっぺを指で押した。


 アスペルガー症候群と診断されてから、その特徴を調べてみると、触感が過敏、と書いてあった。抱っこした時に、体を後ろに反らしていたのは、衣服が顔に触れるのを嫌がっていたのかもしれない。
 無知な私達は、優太が嫌がっていたとも知らず可愛いなと笑っていた。優太に申し訳ないことをしていたのかもしれない。

 


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芝生が苦手

 今思えば、他にも触感が過敏で嫌がっていたのかもしれないと思うことがある。それは芝生の触感だ。
 優太は2歳になってから保育園に通うようになった。普段は美由紀が送り迎えするのだが、週に1度だけ私が送り迎えをした。
優太は、私の送り迎えの日を喜んでくれた。美由紀は、それが少し気にくわないようだった。
「あたしは保育園から帰って、夕食の準備があるんだからね、帰りに公園に連れて行ってあげられないわ。お父さんは、優太と公園で遊べていいわね」
 美由紀は、保育園の帰りに私と公園で遊んで、嬉しそうに大きな声で「ただいま」と帰って来る優太の姿を見て嫉妬していた。
 ある日、思い切り走り回れるような広い所が喜ぶだろうと、保育園から車で20分ほど離れた公園に連れて行った。
 公園に入ると芝生が一面に広がり、所々に木が植えられ、人工の川もあった。奥の方には、近くで見れば大きいであろう滑り台が小さく見えていた。
「優太、ここは広いから、思いきり遊べるぞ」
 そう言って、優太の手を引き、芝生に向かった。
 洗濯物が増えると、美由紀に怒られるかもしれないが、泥んこになるまで、思いきり遊んでほしいと思った。
 私は芝生に寝転がって、優太を横に寝転ばせた。喜ぶかなと思ったが、そうではなかった。
 優太は芝生を嫌がって、すぐに立ち上がり手を払った。
「何で嫌がるんだ、芝生は気持ち良いぞ」
 優太の手を持って芝生を触らせたが、優太は熱い物に触れたかのように、手を引いて、すぐに払った。手に砂がついても払った。
 男の子だから、もっと泥んこになるまで、はしゃぎ回れば良いのにと思ったが、優太は几帳面に何度も手を払っていた。
 洗濯物が増えたと美由紀に怒られることは無さそうだ。綺麗好きな美由紀に似たのかなと思った。
 いつもの近くの公園でブランコに揺られている時の方が楽しそうだった。私は首を捻った。


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