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tovo plus〜あおもりの100家族、わたしたちのこれから。[season 6] No.071

今号(72 家族目)のご家族 ▶

佐々木 良藏さん・幸子さん・康貴さん

撮影場所 ▶ 長横町れんさ街 洋酒喫茶プリンス(八戸市)

 

【インタビュー】

●2011年3月11日のこと、憶えていますか?

▶良藏さん「自宅にいました。めちゃくちゃ揺れてね、店の様子を車で見に来て。三陸はるか沖地震(1994年)のときに、ウイスキーの瓶から何から全部落ちたんですよ。それで落下防止の対策をしていたので、あの日はグラスが何個か落ちたのと壁掛けテレビがぶらさがっていたぐらいで済みました。」

▶康貴さん「自分は開店準備のために、歩いて店に向かっているところでした。店に着いたら父がいて。」

▶良藏さん「店は大丈夫だから帰ろうとなったんだけど、渋滞して余震もあって大変だったんです。携帯のワンセグテレビを見ていたら、津波が来る、八戸は10メートルという情報もあって。さっちゃんを1人で残してきたから、息子が心配して『なんで置いてきた』ってね。家に着いたら近所の人たちが表に出てワーワー言ってた。津波が来るから逃げないと、と声をかけたけど、『来ない、来ない』って笑われてね。僕は田舎が大槌町で、小学生のときチリ地震津波を経験したし、高3のときは十勝沖地震で津波が来たし、あの日の揺れは絶対に津波が来ると思った。うちはワンちゃんを連れて、(長者地区の)南宗寺が少し高くなっているから、そこへ行ったの。暗くなるまでしばらくいました。」

▶康貴さん「夜は家を片付けながら、水は出ていたので、カセットコンロでお湯沸かしてカップラーメン食べて。」

▶良藏さん「カートリッジ式の灯油ストーブがあったから、暖はとれたよね。ロウソクで灯りをとって。」

▶幸子さん「良藏さんのおうちに電話しようったって、大槌はつながらないわけね。親戚も誰もつながらない。」

▶良藏さん「ネットは使えたので、パソコンでずっと検索していた。どうなっているのか、だれにも分からない。1カ月ぐらいは店から帰るとネットで同級生や親戚の情報を探し続けました。」

 

●その後はどうされていましたか。

▶良藏さん「1カ月経たないころ、物資を持って大槌に行きました。実家自体は海から離れているので津波の被害はなかったけど、親戚など行方不明の人がたくさんいて…。街は自衛隊が捜索を続けていて入れず、道路にはグチャグチャになった車がいっぱい並んでいるし。とにかくあの、夢かな、という雰囲気ですよ。ただごとではないと。地震の時からそうです。地球が壊れたんじゃないかというぐらいの揺れでしたからね。」

▶幸子さん「2013年春ごろ、大槌の人が震災直後に撮った写真展を二戸でやっているという新聞記事を読んで、息子を誘って行ったんです。撮影者の伊藤陽子さんが会場にいたので、『主人も大槌なんですよ』と話をするうちに、良ちゃんと高校の同級生、部活も一緒だったと分かったの。」

▶良藏さん「さっちゃんが伊藤さんの連絡先を聞いてきて、俺が電話したんです。もともとカメラが好きで、あのときも車に積んでいたと。震災直後、報道陣が入る前の写真です。店の常連だった新聞記者に話したら、『マスター、その写真展、八戸でやったら』って。そのときは八戸で大槌のことやっても仕方ないよと答えた。でも一晩考えたら、なんで自分はそんなこと言ったんだろうって思って、次の日『やってみるよ』って。その年の8月にはっち(八戸ポータルミュージアム)で開催したんです。」

▶幸子さん「伊藤さんも被災しているし、『なんにも心配しなくていいから』と身一つで来てもらって、会場など全てうちで準備した。1,000人ぐらい見に来てくれたよね。伊藤さんがね、『写真を見ると、匂いが分かる、思い出す』と。写真を見ながら、このときの匂いがこうだった…と説明していたね。」

▶良藏さん「大槌はかさ上げが終わって家を建てられるようになったけど、6割ぐらいは空いているみたいです。あまりに期間が経って、待てなかった人はすでに内陸へ、僕の姪っ子ももう盛岡に家を建ててしまいました。」

▶康貴さん「私たちの意識もだいぶ薄れてきたというか…。前ならカップラーメンを山盛り置いてたけど、最近は体に悪いと買わなくなったり、水も結局は腐らせるからとあまり置かなくなったり。備えはおろそかになってきている気がします。」

 

●10年後のイメージはどんなでしょう。

▶良藏さん「僕ぐらいの歳になると、10年後というのはなかなか想定しないの。2~3年後だったらイメージできるんだけど。大槌のことはずっと頭にある。大槌は街をつくりなおしてるんで、コンパクトでもいい、震災とかのイメージなく、快適な街になっている、そういうのを早く見たいなと。10年なんて待てない、あと5年ぐらいで見たい。」

▶幸子さん「私はあと5年ぐらいは店に出ていたいね。10年は無理でもね。」

▶康貴さん「お店は10年後も同じ雰囲気で、同じような感じでいられればいいなと。このまま変わらないでいられればいいなというのが、一番の望みです。」

 

【取材後記】横丁に紫の文字の看板が目を引く「洋酒喫茶プリンス」。八戸市民はもちろん、県内外のファンが繰り返し訪れる“ディープ八戸”の象徴的な存在です。いつもカウンターの中でニコニコしているマスターが、取材のとき、ご自分と対話するかのように一言一言をかみしめながら、大槌のことを話してくださいました。心に故郷を秘めつつ、多くのお客さんを笑顔にしておられたのだと思います。テープ起こしをしていると、3人の優しい語り口が耳から染みこんでくるようで、大勢の人がプリンスに足を運ぶ理由が分かった気がしました。(今号No.071インタビュー&撮影:前田ふひと)

 

【寄付総額】2011年6月〜2017年12月14日まで「¥6,015,019」を、あしなが育英会「あしなが東日本大震災遺児支援募金」へ寄付することができました。ご支援に深く感謝致します。

 

【定期購読のご協力を!】1年間の定期購読を承ります。1,800円(送料・寄付含)/1年間(12号)です。このフリーペーパーは定期購読の皆様のご支援で発行されております。ご支援の程、宜しくお願い致します。ご希望の方は、ウェブショップ(http://shop.tovo2011.com)よりお申し込みください。


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最終更新日 : 2018-02-16 10:12:18

この本の内容は以上です。


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