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四 夢の塔の中へ

 

「すごいや」

 

「これが私たちの夢なの」

 

 塔の中では、以前、健太が見たように、キリンが歩いていたり、タコやイカが泳いでいたり、正義のヒーローたちが動き回っていた。「動物園や水族館が一緒になっているんだ」

 

「わたしの好きなアニメの主人公もいるわ」

 

健太や優子ちゃんの目からキラ星が飛び出している。

 

「確かにここにいたら楽しいかもしれないけれど、ここにある夢はみんなの夢なんだ。ここの夢が増える分、この夢の塔が高くなる分、僕たちの夢が吸収されていき、最後には僕たちから夢が無くなってしまうんだ。だから、ここのいる夢はみんなの所に早く戻さないといけないんだ」

 

健太は真剣な面持ちで動物や正義のヒーロたちなど、かつての自分たちの夢を見つめる。

 

正面には大きな舞台があった。そこで、アイドルたちが歌って踊っている。そのアイドルたちをサラリーマンたちが額に鉢巻を巻いて立ち上がって応援している。

 

「あれ、優子ちゃんじゃない?」

 

「応援団の中に洋介君がいるわ」

 

「どうして、あたし、あんなところで歌っているのかしら」

 

「僕だって、背広を着て、ネクタイを締めているよ。まるで、サラリーマンじゃないか」

 

 優子ちゃんと洋介は互いに顔を見合わせ、首をかしげている。

 

「アイドルやサラリーマンになるのは、優子ちゃんや洋介の夢じゃないか。以前に、君たちに将来の夢を聞いたときにそう言っていたよ」

 

健太がそう言うものの、二人とも怪訝そうに首を傾けたままだ。

 

「覚えていないんだね。君たちの夢がむにゃむにゃに奪われてしまった証拠だよ。このままだと、街中の子どもたちの夢が奪い取られて、今の大人のようにカスカスになってしまうよ」

 

健太はピーマンを生で食べたように顔をしかめた。

 

「それが本当なら、大変なことになるよ」

 

「なんとかしないといけないわ」

 

 二人とも大きく頷き、両手の拳を強く握りしめた。

 

「こら。お前たちは誰だ。勝手にこの塔に入ってきたな」

 

 さっきまでうとうとしていたはずのむにゃむにゃのリーダーが鬼のような形相で夢の塔の入り口に立っていた。

 

「勝手なのはそっちの方だろ。僕たちの夢を勝手に奪ったくせに」

 

 健太は負けまいと言い返す。

 

「この夢の塔の秘密を知っているのか。一体、誰に聞いたんだ」

 

 リーダーは、人の心の奥底までを見透かすような意地悪な目で、健太、洋介、優子ちゃんの顔や体を上から下までじっくりと撫で回す。

 

「そんなことぐらい、すぐにわかるさ。悪いことはすぐにばれるんだ」

 

 意地悪な目には正義の目で対抗する。

 

「ははん。わかったぞ。さっき、わしに立て着いたむにゃむにゃだな。お前たちもその仲間か。それなら、さっきのむにゃむにゃがどうなったのか見ていただろう。俺様がお前たちを飲み込んで、この塔の一部にしてやる。さあ、あいつらを捕まえろ」

 

 リーダーの声に反応して、一階にいたライオンやトラなど、今まで悠然と歩いていた動物たちが一斉に健太たちに牙を剥いて走ってくる。

 

 

 


この本の内容は以上です。


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