目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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「もう夜だ。こんなに暗くては見つからないだろう」

「かぎタバコ『ブラック・ラピー』をやる人をさがすのに、光なんかいりません。」

ジップは階段を登りながらいいました。

「糸とか、お湯とか、そういうむつかしいにおいだったら別ですけどね。でも、かぎタバコだ! 楽勝です!」

「お湯にもにおいがあるのかい?」

「もちろんありますよ。お湯は、水と全然ちがいます。お湯、それから氷は、かぐのが本当にむつかしいんです」

「へえ」

「一度、真っ暗な夜に10キロ以上、ある男を尾けたことがあるんです。そのときは、その男がひげそりにつかったお湯のにおいがたよりでした。貧乏で、セッケンなんかつかってなかったんでね」

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みんなは甲板に出てきました。

「じゃあ、風向きをみますね。遠くのものをかぐのに、風はとても重要なんです。あんまり強くてもダメです。もちろん、方向も大切です。ちょうどいい、安定した、湿り気のあるそよ風が最高です。……お! この風は北風だ」

ジップは、船のへさきにいき、風をかぎ、低い声でひとりごとをいいます。

「タール。スペインの玉ねぎ。灯油。ローリエの粉。ゴムが燃えている。レースのカーテンを洗ってる……いや、ちがった。外に干してあるレースのカーテンだ。それから、キツネ……何百匹も……子ギツネも、それから……」

「ひとつの風に、そんなに違うにおいが混じってて、本当にわかるのかい?」

「ええもちろん! こんなのは、数も少ないし、はっきりした簡単なにおいばかりです……。どんなつまらないイヌでも、カゼひいてたってわかります。待ってください。なにかややこしいにおいがしてきた……おいしそうなにおいだ」

ジップは、目を固くつむり、空中に鼻をまっすぐに立て、口を半開きにして、においをかぐのに没頭しています。

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長い間、沈黙がつづきました。

ジップは石のようにかたまったままです。
息をするのさえ、つらそうです。
やがて口を開いたとき、ジップはまるで、夢の中で悲しそうに歌っているかのようでした。

「レンガ……」

ジップは、とても低い声でささやきました。

「古い黄色いレンガ……庭のレンガべいが長い年月をかけて、朽ちている。こなごなになっている。山のせせらぎにいる、若いウシの甘い息。屋根に……ハト小屋の……あるいは穀物倉庫の屋根に、昼の光がふりそそいでいる。子供用の黒い手袋が、クルミ材の机の引き出しにはいっている。小さなマッシュルームが、腐葉土の中から今にも顔をだしそうだ。それから……それから……」

ブウブウが聞きました。

「甘くておいしいニンジンはある?」

「ねーよ! ていうか、お前はなんでそう、食いもんのことばっかなんだ。ニンジンなんかどこにもねーっつーの! ……そんなことより、かぎタバコのにおいがしないなあ。パイプやふつうのタバコのにおいはいくらでもするのに。あと、葉巻もすこしだけするな。でも、かぎタバコはない。南風に変わるのをまつしかないか……」


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「そうかい。この風だと弱いのかい」

ブウブウが鼻をならします。

「ガフッ! ウサンくさい話だな、ジップ。こんな海のど真ん中で、においだけを頼りに人をさがすなんて、きいたこともない! ぜったいに見つからねーよ。断言するぜ!」

「なんだと!」

ジップは本気で怒りました。

「そのハナ、かみきるぞ! 先生が甘いからっつって、なめたマネしてんじゃねえ!」

「ケンカはストップ!」

先生がとめました。

「ストップだ! 人生はみじかい。聞かせてくれ、ジップ。そういったにおいはどこから吹いてくる?」

「ほとんどが、デボンやウェールズからです。風がそっちから吹いてるんです」

「なるほど、そうなのか! 本当に驚くべきことだ。いや、まったく。次の本のためにメモしておかないと。わしもそんな風にかげるように、教えてくれんか。……いや……やっぱり、今のままでいいか。『知らぬが仏』ともいうしな。さあ、下へおりて晩ご飯にしよう。すっかり腹ペコだ。」

「ブヒブヒ、オレもー」

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第19章 岩

次の朝早く、みんながシルクのベッドから飛び起きると、太陽はまぶしく輝き、風は南から吹いていました。

ジップはその南風を30分間かぐと、先生のところへやってきて、首をふりました。

「かぎタバコののにおいはまだしません。東の風をまちましょう」

しかし、お昼の3時になり、東風が吹いてもかぎタバコのにおいはしませんでした。

男の子は、ものすごくガッカリして、また泣き出しました。

「やっぱり見つからないんだね……」

ジップは先生にこういうしかありませんでした。

「この子にいってください。西風に変わったら、たとえおじさんが中国にいたって、見つけてやるって。かぎタバコの『ブラック・ラピー』のにおいさえすれば、きっと見つかります!」


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