目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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先生は、船から身をのりだしました。

「聞くのだ、ベン・アリ。お前は悪いことばかりしてきた。たくさんの人を殺してきたことと聞いている。ここにいる親切なサメが、わしのために、お前を食ってしまうのはどうかといってくれた。正直、この海からお前がいなくなるのは、大賛成だ。しかし、もしもお前がわしのいうことをきくのなら、逃がしてやってもいい」

「なにをすればいいんだ?」

海賊はたずねました。
横目で見ると、水面下で、大きなサメが右足のにおいをかいでいます。

先生はいいました。

「もう絶対に殺さない。盗みもやめる。他の船を沈めない。全員、海賊はやめるんだ」

「そしたら俺たちゃ何をすればいい? どうやって生きていくんだ?」

「お前もお前の子分も、この島で、鳥のエサを育てるんだ。カナリアのエサをな」

バーバリー・ドラゴンことベン・アリは、怒りで顔が真っ青になりました。

「鳥のエサだとお!」

腹をたてて、うめき声になっています。

「もう、船にはのっちゃいけないのか?」

「だめだ。のっちゃいかん。もう船には十分のっただろう。そして、たくさんの立派な船や大勢の罪のない人を海の底に沈めてきた。残りの人生は、静かに畑仕事をして暮らすんだ。ほら、サメがまっとるぞ。時間がもったいない。返事は?」

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「なんてこった!」

ベン・アリはこぼしました。

「鳥のエサ!」

もう一度下を見ると、大きなサメは今度は左足のにおいをかいでいました。

「わかった」

ベン・アリは、泣きそうな声でいいました。

「鳥のエサを作る」

「それから忘れるな!」

先生がいいました。

「もしも、約束をやぶったら――またもや殺人や盗みを働いたら、それはかならずわしの耳にはいってくる。なぜなら、カナリアが教えてくれるからだ。そうしたら、かならず、お前に罰をあたえる。わしは、お前ほど船に乗るのはうまくないかもしれない。しかし、鳥や動物や魚が友達であるかぎり、わしは海賊のボスなど怖くはない。たとえそれが、『バーバリー・ドラゴン』と名乗るようなヤツでもな。さあ、行け。行って、おとなしく鳥のエサを作って暮らすんだ」

そして、先生はくるりとサメの方を向くと、手を振りました。

「これでよし、だ。あいつらをそのまま島まで泳がせてやってくれ」

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第16章 ホーホーは耳のプロ

親切にしてもらったサメに、あらためてお礼をいうと、みんなは、ふたたび家への航海にもどりました。
今度は赤い帆の高速船です。

入り江から外海に出ると、先生以外はみんな階段を下りて、新しい船の中がどんなだか、調べに行きます。
先生は手すりにもたれてパイプをくわえています。
カナリア島が青い夕もやに遠くかすんでみえます。

そうして、「チーチーたちはどうしたかなあ……」とか、「パドルビーに帰ったら、庭はどうなってるだろうか」とか、ぼんやり考えていました。

そんなところへ、アヒルのダブダブがバタバタと音をたてて階段を上がって来ました。
なにかいいたいことがいっぱいあるようで、顔中ニコニコしています。

「先生! この海賊の船は、最っ高ですよ! ベッドはシルクだし、枕やクッションは何百個もあります。床のカーペットは、ぶ厚くてフカフカ。お皿は銀製。食べ物も飲み物も、なんでもあります。特にすごいのが、食料庫です。なんかもう、まるっきり、お店みたいなんです。先生も、あんなの絶対に見たことないですよ――だって、イワシの缶詰だけで500種類あるんですよ。まったくあの連中は! 先生も来て、見てください」

「わかったよ」

「あ、そうだ。それから、一箇所、カギのかかった部屋があるんです。みんな、中が見たくて、大騒ぎしてます。ジップなんか、海賊の宝を隠してあるのにちがいないって。でも
、開かないんです。先生、下におりて、開くかどうか見てください」

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下へ降りていくと、この船の立派さが、ドリトル先生にもわかりました。

「ほう……なるほど」

「あの部屋です」

みんなで小さなドアを囲んで集まっています。
中に何があるのか、ああだこうだといいあっているのです。

先生がドアノブをつかみました。

「ふーん。たしかに開かないな。カギがかかっている」

全員でカギをさがすことになりました。
マットの下を見たり、カーペットの下を見たり、食器棚や引き出しやロッカーの中も船の食堂にある大きな棚も、ありとあらゆるところを探しました。

そうやって探していると、ほかにも素晴らしいものが続々と見つかりました。
海賊どもが他の船から盗んだものです。

花の形が金で刺繍された、クモの巣のように薄いカシミアのショール。
ジャマイカ産の上等なタバコのはいったツボ。
ロシア紅茶がつまった、彫刻のほどこされた象牙の箱。
サンゴとコハクを彫って作った大きなチェスのコマのセット。
抜けば刀になるステッキ。
トルコ石と銀のふちどりのあるワイングラスが6個。
真珠貝でできた、きれいで見事な砂糖壺などです。

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しかし、船のどこにも、カギは見つかりません。

みんなは、ドアまでもどってきました。

ジップがカギ穴を、じっとのぞきこみます。
しかし、何かが立てかけてあるのか、中はなにも見えません。

どうしたものかと困り果て、立ち尽くしていると、フクロウのホーホーが突然、口を開きました。

「シッ! 聞こえる! 絶対、ここには誰かおりますわ!」

一瞬、みんな、じっと固まります。

やがて先生がいいました。

「かんちがいじゃないか、ホーホー? わしには、なにもきこえんぞ」

「絶対にいますて。シッ! またや。聞こえまへんか?」

「聞こえんな。どんな音だ?」

「誰かがポケットに、手ぇつっこんだ音がします」

「そんなの、音なんかほとんどしないじゃろ。ここまで聞こえるはずがない」


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