目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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ホーホーが先生に耳打ちしました。

「あの海賊、ずうっとしゃべらせときなはれ。おもろなりまっせー。わしらのボロ船、すぐに沈んでしまいよるわ。明日の晩までには海の底、ちゅう話でした。ネズミのいうことは確実ですわ。ああ、おもろい! 船が沈むまで、ずっとしゃべらせときまひょ」

「なに、明日の晩までか? わかった。頑張ってみるよ……。えーと――何をいえばいいかな?」

ジップがいいました。

「くそっ! あいつら、こっちに呼んでください! 汚らしいゴロツキなんか、やっつけてやります。6人しかいないんだから。呼んでください! 帰ったら、となりのコリーに自慢できる。本物の海賊をかんでやったって。ね、呼んでください。やっつけますから!」

「しかし、あいつら、ピストルも剣ももってるぞ。むむ、いかんな。まずは話かけてみるか……。おい、こっちを見ろ、ベン・アリ――」

しかし、それ以上はコトバが続きませんでした。海賊が、ゲラゲラ笑いながら船を近づけてきたのです。
「だれが最初にブタをしとめるかな」などといっています。

「あわわわわわわわ、ガクガクブルブル……」

かわいそうに、ブウブウはふるえています。

オシヒッキーは、戦闘にそなえて、頭のツノを船のマストを使ってとぎはじめました。
ジップは飛びはねながら、吠えたり、イヌ語でベン・アリをののしったりしています。

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しかし、そのうち海賊の様子がおかしくなってきました。
笑ったり、ギャグを飛ばしたりしてたのをやめました。
困った顔をしています。
何か、心配なことが起きたのです。

ベン・アリは、じっと足元を見つめていましたが、突然、どなりました。

「なんてこった! 野郎ども、水だ!」

他の海賊は、船の側面をじぃーっと見ました。
船の水位はどんどん低くなっています。

海賊のひとりがベン・アリにいいました。

「でも、ほんとに沈むボロ船だったら、ネズミが出て行きますぜ」

ジップが海賊たちに向かって叫びました。

「このバーカ! ネズミはもう、逃げたあとだよー! 2時間前に出てったよー! ハハハ! 逃げられないのはそっちの方だぜ、お客さん!」

しかし、もちろん、海賊にはジップが何をいってるのかわかりません。

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やがて船のへさきが傾き始め、どんどん下がっていって、逆立ち状態になりました。
海賊は、船の手すりやマストやロープやらなにやら、とにかく滑り落ちないよう、つかまるのに必死です。

そこへ、海の水がうなりながら窓やドアから侵入します。
やがて、ごうごうという恐ろしい音とともに、ついに船は海の底へと沈んでしまいました。
6人の海賊は深い海に放り出されて、アップアップしています。

そのうちの何人かが、島の海岸に向けて泳ぎ始めました。
先生の船を目ざす連中もいます。
しかしジップが、そいつらの鼻にかみつくので、恐くて上がってこれません。

突然、恐怖の叫び声があがりました。

「サメだ! サメがいる! 船にのせてくれ、食われちまう! 助けて、助けて――サメ、サメ!」

先生の目にも見えました。
入り江一面に、サメの大きな背ビレが、スイスイと泳ぎ回っているのです。

その中から、大きなサメが一匹、船に近づいてきて、鼻先を海面からつきだして先生に話しかけました。

「ドリトル先生でございますか? 有名な動物のお医者さまの?」

「ああ、そのとおりだ」

「よかった。この海賊ども――とくにベン・アリは、とんでもない悪党なんです。もし、先生がお困りなら、てまえどもでよろこんで頂いてしまいますが、いかがいたしましょう――そうすれば、面倒なことはすべて消えますが」

「ありがとう。その心づかい、まことに感謝する。しかし、食べてしまうまでもないだろう。それより、あの海岸に向けて泳いでる連中、あれの邪魔してもらえるかな。わしがいいというまで、しばらく泳がせておきたいんだ。いいかな? それから、ベン・アリをここまで連れてきてくれんか。話があるんだ」

サメはベン・アリのところへ行くと、先生のいるところまで追い立ててきました。

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先生は、船から身をのりだしました。

「聞くのだ、ベン・アリ。お前は悪いことばかりしてきた。たくさんの人を殺してきたことと聞いている。ここにいる親切なサメが、わしのために、お前を食ってしまうのはどうかといってくれた。正直、この海からお前がいなくなるのは、大賛成だ。しかし、もしもお前がわしのいうことをきくのなら、逃がしてやってもいい」

「なにをすればいいんだ?」

海賊はたずねました。
横目で見ると、水面下で、大きなサメが右足のにおいをかいでいます。

先生はいいました。

「もう絶対に殺さない。盗みもやめる。他の船を沈めない。全員、海賊はやめるんだ」

「そしたら俺たちゃ何をすればいい? どうやって生きていくんだ?」

「お前もお前の子分も、この島で、鳥のエサを育てるんだ。カナリアのエサをな」

バーバリー・ドラゴンことベン・アリは、怒りで顔が真っ青になりました。

「鳥のエサだとお!」

腹をたてて、うめき声になっています。

「もう、船にはのっちゃいけないのか?」

「だめだ。のっちゃいかん。もう船には十分のっただろう。そして、たくさんの立派な船や大勢の罪のない人を海の底に沈めてきた。残りの人生は、静かに畑仕事をして暮らすんだ。ほら、サメがまっとるぞ。時間がもったいない。返事は?」

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「なんてこった!」

ベン・アリはこぼしました。

「鳥のエサ!」

もう一度下を見ると、大きなサメは今度は左足のにおいをかいでいました。

「わかった」

ベン・アリは、泣きそうな声でいいました。

「鳥のエサを作る」

「それから忘れるな!」

先生がいいました。

「もしも、約束をやぶったら――またもや殺人や盗みを働いたら、それはかならずわしの耳にはいってくる。なぜなら、カナリアが教えてくれるからだ。そうしたら、かならず、お前に罰をあたえる。わしは、お前ほど船に乗るのはうまくないかもしれない。しかし、鳥や動物や魚が友達であるかぎり、わしは海賊のボスなど怖くはない。たとえそれが、『バーバリー・ドラゴン』と名乗るようなヤツでもな。さあ、行け。行って、おとなしく鳥のエサを作って暮らすんだ」

そして、先生はくるりとサメの方を向くと、手を振りました。

「これでよし、だ。あいつらをそのまま島まで泳がせてやってくれ」


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