目次
第1章  パドルビー
page 1
page 2
page 3
page 4
第2章  動物語
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
page 8
page 9
page 10
page 11
第3章  またお金の問題
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
第4章  アフリカからの便り
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
第5章  大旅行
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
第6章  ポリネシアと王様
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
第7章  サルの橋
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
page 8
page 9
第8章  ライオン総長
page 1
page 2
page 3
page 4
第9章  サルの会議
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
第10章 この世でもっとも珍しい動物
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
page 8
第11章 キモメン王子
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
第12章 医学と魔法
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
page 8
page 9
page 10
第13章 赤い帆と青い翼
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
第14章 ネズミの警告
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
第15章 バーバリー・ドラゴン
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
第16章 ホーホーは耳のプロ
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
第17章 海の情報屋
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
第18章 におい
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
page 8
page 9
第19章 岩
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
第20章 小さな漁村
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
最終章  ふたたび、わが家へ
page 1
page 2
page 3

閉じる


<<最初から読む

79 / 137ページ

試し読みできます
海岸まで来ると、ポリネシアとチーチーが船の近くの岩場で待っていました。

「あの王子には悪いことをしたわい」

先生がいいました。

「あの薬のききめは、それほど長くはもたん。明日の朝には、また元に戻っとるかもしれん……鏡をあげなかったのは、それもあったんだ。あるいはもしかして、そのままかもしれん……何しろあんな薬を作ったことなかったからな。ホントのことをいうと、自分でもビックリしとるんじゃ。あんなうまくいくとはな。しかし、やるしかなかった。そうじゃろ? 一生、宮殿の台所をみがき続けるわけにはいかん。あんな汚い台所! 牢屋の窓から見てもわかる……まあ、よかった! ……王子にはわるいことしたがな!」

「当然、私が妖精のふりしてからかったこともばれるでしょうね」

ポリネシアがいいました。

「あたしたちを閉じ込めたりするからいけないのよ」

ダブダブが怒って、しっぽを小刻みに振りました。

「なんにも悪いことしてないのに。いい気味よ。もしまた元にもどるなら、もっとキモくなればいいのよ!」

試し読みできます
「でも、あの王子は関係ないよ。悪いのは、わしらを閉じ込めた王、父親の方じゃ。王子には罪はない……やっぱり、もどってあやまるべきか」

先生は、少し考えました。

「……ま、いいかあ。パドルビーに帰ったらアメでも送ろう。もしかしたら、ずっとイケメンのままかもしれんしな」

ダブダブがいいました。

「だとしても、眠り姫はムリね。元の方がまだ自然な気がするし。なんにせよ、もてるタイプじゃないわね」

「でも、悪いヤツじゃない。かなりお花畑なところはあるが……いいヤツだよ。ほら、『美しさは内面からしみ出す』というじゃろう」

先生はかばいますが、イヌのジップも口をはさんできます。

「そもそも、あのバカが眠り姫を見つけたなんてインチキに決まってるよ。おそらく、そのへんの農家のデブいババアにでもキスしたのさ。リンゴの木の下かなんかで寝てるとこをね。キモがられて当然だよ。あーあ、今度はどこのだれにキスするのやら。バッカバカしい!」


試し読みできます
さて、オシヒッキー、白ネズミ、ブウブウ、ダブダブ、ジップにホーホーは先生といっしょに船に乗り込みました。

しかし、チーチーとポリネシア、ワニは残ります。
アフリカこそがふるさとで、うまれたところですから。

先生は船の上に立ち、海のかなたを見やりました。
そのとき、思いいたったのです。
パドルビーに帰る道を、だれも知らないことを。

月明かりのなか、広い広い海は、おそろしいほど大きく、さびしく見えます。
先生は不安になってきました。

陸地が見えなくなってしまったら、海で迷ってしまうかもしれない。

ところが、そのとき、妙なささやくような雑音が聞こえてきました。

「なんだ? あの音は……」

その音は、夜空の高いところからやってきます。
みんな、別れのあいさつはやめて、耳をすませました。

音はますます大きくなってきます。
すぐ近くまできているようです……秋の風がポプラの葉を揺らすような、強い強い雨が屋根を叩いているような音にもきこえます。

試し読みできます
ジップが鼻をつきだし、シッポをまっすぐに立てました。

「鳥だ! 何百万もいる……すごい速さでとんでくる……あれだ!」

空を見上げると、丸い月を横切る筋のようなものが見えました。
まるで、小さなアリが巨大な群れをなしているような筋です。
それは、何百何千もの小さな鳥でした。

やがて、空全体が鳥でおおわれました。
それでも、鳥の数はまだまだふえつづけます。

あまりの数に月が隠れて光が見えず、海は、嵐の雲が太陽をさえぎった時のように、黒々としたものになってしまいました。

やがて、すべての鳥が舞い降りてきました。
水面をかすめて浜におりてきます。
夜の空はふたたび晴れ上がり、月の輝きがもどりました。


鳴き声を出したり、さえずりを立てる鳥はいません。
しかし、あまりにおびただしい数の鳥の、羽のこすれあう音が耳を圧倒します。

鳥は砂地に広がっています。
船のロープに列をなします。
森以外のすべての場所をうめつくします。

鳥は青い羽と白い胸を持ち、足にはとても短い羽毛がはえています。

試し読みできます
すべての鳥がおりたつと、音がやみました。

あたりを静寂と平穏が包みます。

静かな月明かりの中、ドリトル先生はいいました。

「こんなに長くアフリカにいることになるとは思ってなかったんだ。そうか……。家に帰ったら、もう夏か……。ツバメが帰る季節だ。なのに、ツバメたちよ! わしらを待っていてくれたんだね。……感謝する。なんという思いやりだ!」

先生はみんなの方をふりかえりました。

「さあ、もう何も恐くはない! 海で迷うことはない。イカリをあげろ。出発だ!」

船が海へとこぎ出されました。

チーチーとポリネシア、ワニは残ります。
急にさみしさがつのります。
三人とも、沼のほとりのパドルビーの、ドリトル先生が大好きでした。
今まで生きてきて、こんなに好きな人はいなかったのです。

みんな、何度も何度も何度も、さよならをくり返しました。
岩場にたちつづけて、涙が枯れるまで泣きました。
船が見えなくなるまで手をふりつづけました。


読者登録

麻野一哉さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について