目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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「よろしい。大丈夫なようだ。ではこっちに来て、光に……ああ、その前に、いっとかないと。まずは、浜辺へ行って、船の用意をしてもらいたい。それから、航海中の食料も。すべてないしょでな。それから、望みがかなったなら、わしらみんなを必ず牢屋からだしてもらいたい。ジョリンギンキの王冠に誓って、約束してもらえるか?」

「誓うでおじゃる!」


王子が戻ってきて、「用意はすんだ」と告げると、先生はダブダブに洗面器を持ってこさせました。
そこにたくさんの薬を混ぜ入れると、王子に顔をつけるよういいました。

王子は身をかがめ、そこに顔をつけます。
耳元まで深く。

長い間そうしていました……あまり長い間そうしていたので、先生はだんだん心配になってきました。
そわそわして足を組み直したり、混ぜるときにつかった薬ビンを出してきて、なんどもラベルを読みなおします。

牢屋の中に、強烈な匂いがたちこめてきます。
ハトロン紙を燃やしたような匂いです。

「ブッハー!」

ついに王子は洗面器から顔をあげ、大きく息を吐きました。

「おお!」

動物たちがおどろきの声をあげます。

なんということでしょう。
王子の顔がイケメンになっているではありませんか。
しかも、なぜだか背も少しのびています!

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「みてごらん」

ドリトル先生が小さな手鏡を渡すと、王子は自分の姿を見て、うれしさのあまり、牢屋の中で、歌い踊り始めました。

「ヒャッホー!!」

「おい、静かにしてくれ!」

先生は急いで薬カバンを閉じると、牢屋のカギをあけるよう頼みました。

「博士、この国には鏡がないでおじゃる。この手鏡、マロによこしてたもれ! マロは、もう、ずっとずっと自分の顔を見ていたいでおじゃるよ!」

「ダメ! それがないと、ヒゲがそれん」

王子はポケットから銅のカギのたばを出してくると、大きな二重カギを解きました。

先生とみんなは海岸へ向けて、走れるだけのスピードで走って行きました。

バンポ王子は、空っぽの牢屋の壁にもたれて、走っていくみんなの姿をみて幸せそうに笑っています。
月に照らされ、その顔は光り輝いていました。

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海岸まで来ると、ポリネシアとチーチーが船の近くの岩場で待っていました。

「あの王子には悪いことをしたわい」

先生がいいました。

「あの薬のききめは、それほど長くはもたん。明日の朝には、また元に戻っとるかもしれん……鏡をあげなかったのは、それもあったんだ。あるいはもしかして、そのままかもしれん……何しろあんな薬を作ったことなかったからな。ホントのことをいうと、自分でもビックリしとるんじゃ。あんなうまくいくとはな。しかし、やるしかなかった。そうじゃろ? 一生、宮殿の台所をみがき続けるわけにはいかん。あんな汚い台所! 牢屋の窓から見てもわかる……まあ、よかった! ……王子にはわるいことしたがな!」

「当然、私が妖精のふりしてからかったこともばれるでしょうね」

ポリネシアがいいました。

「あたしたちを閉じ込めたりするからいけないのよ」

ダブダブが怒って、しっぽを小刻みに振りました。

「なんにも悪いことしてないのに。いい気味よ。もしまた元にもどるなら、もっとキモくなればいいのよ!」

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「でも、あの王子は関係ないよ。悪いのは、わしらを閉じ込めた王、父親の方じゃ。王子には罪はない……やっぱり、もどってあやまるべきか」

先生は、少し考えました。

「……ま、いいかあ。パドルビーに帰ったらアメでも送ろう。もしかしたら、ずっとイケメンのままかもしれんしな」

ダブダブがいいました。

「だとしても、眠り姫はムリね。元の方がまだ自然な気がするし。なんにせよ、もてるタイプじゃないわね」

「でも、悪いヤツじゃない。かなりお花畑なところはあるが……いいヤツだよ。ほら、『美しさは内面からしみ出す』というじゃろう」

先生はかばいますが、イヌのジップも口をはさんできます。

「そもそも、あのバカが眠り姫を見つけたなんてインチキに決まってるよ。おそらく、そのへんの農家のデブいババアにでもキスしたのさ。リンゴの木の下かなんかで寝てるとこをね。キモがられて当然だよ。あーあ、今度はどこのだれにキスするのやら。バッカバカしい!」


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さて、オシヒッキー、白ネズミ、ブウブウ、ダブダブ、ジップにホーホーは先生といっしょに船に乗り込みました。

しかし、チーチーとポリネシア、ワニは残ります。
アフリカこそがふるさとで、うまれたところですから。

先生は船の上に立ち、海のかなたを見やりました。
そのとき、思いいたったのです。
パドルビーに帰る道を、だれも知らないことを。

月明かりのなか、広い広い海は、おそろしいほど大きく、さびしく見えます。
先生は不安になってきました。

陸地が見えなくなってしまったら、海で迷ってしまうかもしれない。

ところが、そのとき、妙なささやくような雑音が聞こえてきました。

「なんだ? あの音は……」

その音は、夜空の高いところからやってきます。
みんな、別れのあいさつはやめて、耳をすませました。

音はますます大きくなってきます。
すぐ近くまできているようです……秋の風がポプラの葉を揺らすような、強い強い雨が屋根を叩いているような音にもきこえます。


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