目次
第1章  パドルビー
page 1
page 2
page 3
page 4
第2章  動物語
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
page 8
page 9
page 10
page 11
第3章  またお金の問題
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
第4章  アフリカからの便り
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
第5章  大旅行
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
第6章  ポリネシアと王様
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
第7章  サルの橋
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
page 8
page 9
第8章  ライオン総長
page 1
page 2
page 3
page 4
第9章  サルの会議
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
第10章 この世でもっとも珍しい動物
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
page 8
第11章 キモメン王子
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
第12章 医学と魔法
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
page 8
page 9
page 10
第13章 赤い帆と青い翼
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
第14章 ネズミの警告
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
第15章 バーバリー・ドラゴン
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
第16章 ホーホーは耳のプロ
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
第17章 海の情報屋
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
第18章 におい
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
page 8
page 9
第19章 岩
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
第20章 小さな漁村
page 1
page 2
page 3
page 4
page 5
page 6
page 7
最終章  ふたたび、わが家へ
page 1
page 2
page 3

閉じる


<<最初から読む

73 / 137ページ

試し読みできます
王子はおどろいてイスから飛び上がると、あたりを見回しました。

「今のはなんでおじゃるか?」

王子は叫びました。

「わかったでおじゃる。この甘い鈴の音のような声は……きっと妖精さんの声でおじゃるな。ううん……ファンタスティックゥ!」

ポリネシアは、バンポ王子に姿を見られないよう気をつけながら続けました。

「さすがは王子様! 真実がわかるのね。そう。わたしの名はトゥリプシティンカ。妖精の女王よ。いいこと? わたしはは今、バラのつぼみにかくれているの」

「やっぱりぃ!」

バンポ王子はよろこびに両手をにぎりしめて叫びました。

「ああ、マロにお教えください、妖精の女王さま! どなたが、マロをイケメンにしてくれるのでおじゃるか?」

「今、あなたのパパの牢屋に、有名な魔術師がいれられてるの。ジョン・ドリトル博士よ。たくさんの医学と魔術につうじていて、偉大な力をもっているの。でも、王様であるあなたのパパが、博士を、ずーっと、こまらせてるのよ。ね、ステキなバンポ王子! お日様が沈んだら、博士のところへ行って! ……だれにも見つからないようにね。そしたら、王子は、モテモテのイケメンに大変身よ! わたしのいいたいことはこれだけ! もう、妖精の世界へもどらないと。さようならー!」

「さようならー!」

王子は叫びました。

「胸いっぱいの感謝を。すばらしきトゥリプシティンカ!」

王子はイスにすわりなおすと、日が沈むまで待つことにしました。
その顔には満面の笑みが浮かんでいます。

試し読みできます
第12章 医学と魔法

ポリネシアはだれにも見られないように、そおっと、そおっと木のこずえから離れ、牢屋まで飛んでいきました。

ブウブウが、窓の格子から鼻をつきだしているのが見えます。
宮殿の台所から流れてくる料理のにおいをかごうとしているのです。

「ブヒブヒ……いいにおいだなあ」

ブウブウブウブウ!」

「あれ? ポリネシア」

「話があるの。先生をよんできて!」

ブウブウはうたたねをしていた先生を起こしに行きました。
ドリトル先生が顔をだすと、ポリネシアはささやき声で話し出しました。

「聞いてください。今夜、バンポ王子が先生に会いきます。それで、なんとかしてその王子をイケメンにしてほしいんです。ただし、最初に王子と約束してくださいね。牢屋のカギを開けることと、航海に使う船を用意するようにって」

「なるほど、それは素晴らしい。しかし、イケメンにするというのはそう簡単なことじゃないぞ。お前さんの話だと、まるでお面でもかぶるみたいに聞こえるわい。そんなに簡単なもんじゃない。『ヒョウの模様を変えられるか?』ということわざは知っとるか?」

「くわしいことはわかりません。でも、イケメンにするしかないんです。がんばって、何か方法を考えてください。カバンにいっぱい薬があるじゃないですか。イケメンにさえすれば、あの王子はなんだってしてくれますよ。この牢屋からでるには、それしかないんです」

「わかったよ。なんとかしてみよう。そうじゃなあ……」

先生はブツブツいいながら、薬カバンの方へ歩いていきます。

「骨格柔軟……筋肉……弛緩……シリコンを埋め込んで……」

試し読みできます
さて、夜になりました。
バンポ王子が先生のいる牢屋へ忍んできました。

「博士。マロはとても不幸な王子なのでおじゃる。何年か前、マロは『眠れる森の美女』という本にでてくる『眠り姫』を探す旅にでたのじゃ。世界中、何日も何日も旅を続けて、マロは、ついにその姫を見つけたでおじゃるよ」

「へえ」

「姫を起こそうと、本に書いてあるとおり、とてもやさしくキスをしたでおじゃる。そしたらなんと、本当に目を覚ましたのでおじゃる! ところが、姫は、マロの顔を見るなり、『うわっ! キモっ!』って悲鳴をあげて、走って逃げたのじゃ。しかも、結婚してくれるどころか、別のところで二度寝をはじめたのでおじゃるよ」

「あれは気持ちがいいからな」

「マロは悲しみにうちひしがれ、父の王国へと帰ってきたでおじゃる。でも、博士はとても素晴らしい魔術師で、よくきく薬もたくさんもっているそうな。マロを助けてたもれ。もしも、マロをイケメンにしてくれたなら、マロは姫のもとへもどり、博士には私の土地の半分を贈るでおじゃる。他にもほしいものがあったら何でもあげるでおじゃるよ」

試し読みできます
「バンポ王子」

先生は、むつかしい顔をして、薬カバンの中のビンをみました。

「かわりに、髪を染めるというのは?」

「ダメでおじゃる。そんなことではごまかされないでおじゃる。マロはイケメンになるしかないのじゃ」

「イケメンになるのは、かなり大変だとわかっておるかな。魔術師のなす技の中でも、もっとも高度なものじゃ」

しかし、王子は先生の話など耳にはいってません。
うっとりとした顔つきでいいます。

「イケメンになったら、光り輝くアーマーをまとい、鋼鉄のガントレットをつけるのじゃ。それからウマにのったら、本に書いてある王子とまったく同じになるのじゃ。うーん……ワンダフルー!」

「どれくらいのイケメンがご希望かな?」

「徹底的なイケメンでおじゃる。できれば背も高くして……」

「ムリ!」

先生は即座にいいました。

「よかろう。できるだけのことはしよう。しかし、かなり我慢が必要じゃ……ご存知かと思うが、すべての薬が必ずきくとは限らん。何度か試すことになるかもしれん。皮膚は強い方かね?」

先生は、バンポ王子のほおをさわりました。


試し読みできます
「よろしい。大丈夫なようだ。ではこっちに来て、光に……ああ、その前に、いっとかないと。まずは、浜辺へ行って、船の用意をしてもらいたい。それから、航海中の食料も。すべてないしょでな。それから、望みがかなったなら、わしらみんなを必ず牢屋からだしてもらいたい。ジョリンギンキの王冠に誓って、約束してもらえるか?」

「誓うでおじゃる!」


王子が戻ってきて、「用意はすんだ」と告げると、先生はダブダブに洗面器を持ってこさせました。
そこにたくさんの薬を混ぜ入れると、王子に顔をつけるよういいました。

王子は身をかがめ、そこに顔をつけます。
耳元まで深く。

長い間そうしていました……あまり長い間そうしていたので、先生はだんだん心配になってきました。
そわそわして足を組み直したり、混ぜるときにつかった薬ビンを出してきて、なんどもラベルを読みなおします。

牢屋の中に、強烈な匂いがたちこめてきます。
ハトロン紙を燃やしたような匂いです。

「ブッハー!」

ついに王子は洗面器から顔をあげ、大きく息を吐きました。

「おお!」

動物たちがおどろきの声をあげます。

なんということでしょう。
王子の顔がイケメンになっているではありませんか。
しかも、なぜだか背も少しのびています!


読者登録

麻野一哉さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について