目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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それは確かに王の息子のバンポ王子でした。
妖精の本を腕に抱えて、庭の門を開けようとしています。

「ふーふーふふふー……ハーンハンハハハーンー……」

悲しげな歌をハミングしながら、けだるい雰囲気で石のイスのところまで歩いて来ました。
ポリネシアーとチーチーは、まさにその上の木の枝に隠れているのです。

王子はイスに横になると、ひとりぼっちで妖精の本を読み始めました。
チーチーとポリネシアは、体じゅうカチカチにして、王子を見ていました。

しばらくすると、王子は本を横において、深いため息をつきました。

「ああ……。マロがもっとイケメンだったら……」

夢見るような声です。
そのまなざしは、ずっと遠くを見つめています。

そのときです。
ポリネシアは幼い少女のような細く高い声を出しました。

「バンポ王子! その望み、きっと、あるお方がかなえてくれますよ!」

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王子はおどろいてイスから飛び上がると、あたりを見回しました。

「今のはなんでおじゃるか?」

王子は叫びました。

「わかったでおじゃる。この甘い鈴の音のような声は……きっと妖精さんの声でおじゃるな。ううん……ファンタスティックゥ!」

ポリネシアは、バンポ王子に姿を見られないよう気をつけながら続けました。

「さすがは王子様! 真実がわかるのね。そう。わたしの名はトゥリプシティンカ。妖精の女王よ。いいこと? わたしはは今、バラのつぼみにかくれているの」

「やっぱりぃ!」

バンポ王子はよろこびに両手をにぎりしめて叫びました。

「ああ、マロにお教えください、妖精の女王さま! どなたが、マロをイケメンにしてくれるのでおじゃるか?」

「今、あなたのパパの牢屋に、有名な魔術師がいれられてるの。ジョン・ドリトル博士よ。たくさんの医学と魔術につうじていて、偉大な力をもっているの。でも、王様であるあなたのパパが、博士を、ずーっと、こまらせてるのよ。ね、ステキなバンポ王子! お日様が沈んだら、博士のところへ行って! ……だれにも見つからないようにね。そしたら、王子は、モテモテのイケメンに大変身よ! わたしのいいたいことはこれだけ! もう、妖精の世界へもどらないと。さようならー!」

「さようならー!」

王子は叫びました。

「胸いっぱいの感謝を。すばらしきトゥリプシティンカ!」

王子はイスにすわりなおすと、日が沈むまで待つことにしました。
その顔には満面の笑みが浮かんでいます。

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第12章 医学と魔法

ポリネシアはだれにも見られないように、そおっと、そおっと木のこずえから離れ、牢屋まで飛んでいきました。

ブウブウが、窓の格子から鼻をつきだしているのが見えます。
宮殿の台所から流れてくる料理のにおいをかごうとしているのです。

「ブヒブヒ……いいにおいだなあ」

ブウブウブウブウ!」

「あれ? ポリネシア」

「話があるの。先生をよんできて!」

ブウブウはうたたねをしていた先生を起こしに行きました。
ドリトル先生が顔をだすと、ポリネシアはささやき声で話し出しました。

「聞いてください。今夜、バンポ王子が先生に会いきます。それで、なんとかしてその王子をイケメンにしてほしいんです。ただし、最初に王子と約束してくださいね。牢屋のカギを開けることと、航海に使う船を用意するようにって」

「なるほど、それは素晴らしい。しかし、イケメンにするというのはそう簡単なことじゃないぞ。お前さんの話だと、まるでお面でもかぶるみたいに聞こえるわい。そんなに簡単なもんじゃない。『ヒョウの模様を変えられるか?』ということわざは知っとるか?」

「くわしいことはわかりません。でも、イケメンにするしかないんです。がんばって、何か方法を考えてください。カバンにいっぱい薬があるじゃないですか。イケメンにさえすれば、あの王子はなんだってしてくれますよ。この牢屋からでるには、それしかないんです」

「わかったよ。なんとかしてみよう。そうじゃなあ……」

先生はブツブツいいながら、薬カバンの方へ歩いていきます。

「骨格柔軟……筋肉……弛緩……シリコンを埋め込んで……」

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さて、夜になりました。
バンポ王子が先生のいる牢屋へ忍んできました。

「博士。マロはとても不幸な王子なのでおじゃる。何年か前、マロは『眠れる森の美女』という本にでてくる『眠り姫』を探す旅にでたのじゃ。世界中、何日も何日も旅を続けて、マロは、ついにその姫を見つけたでおじゃるよ」

「へえ」

「姫を起こそうと、本に書いてあるとおり、とてもやさしくキスをしたでおじゃる。そしたらなんと、本当に目を覚ましたのでおじゃる! ところが、姫は、マロの顔を見るなり、『うわっ! キモっ!』って悲鳴をあげて、走って逃げたのじゃ。しかも、結婚してくれるどころか、別のところで二度寝をはじめたのでおじゃるよ」

「あれは気持ちがいいからな」

「マロは悲しみにうちひしがれ、父の王国へと帰ってきたでおじゃる。でも、博士はとても素晴らしい魔術師で、よくきく薬もたくさんもっているそうな。マロを助けてたもれ。もしも、マロをイケメンにしてくれたなら、マロは姫のもとへもどり、博士には私の土地の半分を贈るでおじゃる。他にもほしいものがあったら何でもあげるでおじゃるよ」

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「バンポ王子」

先生は、むつかしい顔をして、薬カバンの中のビンをみました。

「かわりに、髪を染めるというのは?」

「ダメでおじゃる。そんなことではごまかされないでおじゃる。マロはイケメンになるしかないのじゃ」

「イケメンになるのは、かなり大変だとわかっておるかな。魔術師のなす技の中でも、もっとも高度なものじゃ」

しかし、王子は先生の話など耳にはいってません。
うっとりとした顔つきでいいます。

「イケメンになったら、光り輝くアーマーをまとい、鋼鉄のガントレットをつけるのじゃ。それからウマにのったら、本に書いてある王子とまったく同じになるのじゃ。うーん……ワンダフルー!」

「どれくらいのイケメンがご希望かな?」

「徹底的なイケメンでおじゃる。できれば背も高くして……」

「ムリ!」

先生は即座にいいました。

「よかろう。できるだけのことはしよう。しかし、かなり我慢が必要じゃ……ご存知かと思うが、すべての薬が必ずきくとは限らん。何度か試すことになるかもしれん。皮膚は強い方かね?」

先生は、バンポ王子のほおをさわりました。



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