目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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「わたしはそんなトリじゃないわ」

ポリネシアの声が聞こえたと思ったら、先生のコートの尻ポケットから出てきました。

「ほら、私は小さいから、あの窓の柵をすりぬけちゃうでしょ。それで、私だけ牢屋の代わりに鳥かごにいれられたら困ると思って、王様がしゃべってる間に、先生のポッケに隠れたのよ」

「おいおい!」

先生は思わず叫びました。

「たまたま、座らなかったからよかったものの……」

「それより、聞いてください。今夜、暗くなったら、私はあの窓から抜けだします。それから宮殿まで飛んでいって、それから……えーと、とにかく、王様が私たちをここから出すよう、なんとかしてきます」

「はん! なにができるっていうんだ? たかがトリに!」

ブウブウが鼻をあげて、また泣きはじめました。

「うえーん……ブヒブヒブヒブヒ」

「たしかに、たかがトリよ。でも、おぼえといて。私は、人のことばが使えるの。それに、この土地の人間のこともよく知ってるわ」

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夜になりました。

月の光がヤシの木に落ち、王の家来がみな寝静まったころ、ポリネシアは牢の窓の柵をすりぬけ、宮殿まで飛んでいきました。

食料庫の窓ガラスが割れています。
一週間前、テニスボールが飛び込んできたのです。
ポリネシアは、その割れた穴から中に忍び込みました。

「グーグー……マロは……ムニャムニャ」

宮殿の奥の寝室から、バンポ王子のいびきが聞こえてきます。
ポリネシアは抜き足差し足で階段をあがり、王の寝室まで行きます。
そおっとドアをあけ、中をのぞきます。

女王は留守でした。
いとこの家のダンス・パーティーに行っているのです。
けれども、王はベッドでぐっすりと眠っています。

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ポリネシアは、そおっとそおっと中にはいると、ベッドの下に忍びこみました。

「コホン」

せきをします。
ドリトル先生そっくりのせきです。
ポリネシアは人まねがうまいのです。

王は目を覚まして、眠そうにいいます。

「おまえか? アーミントルード」

王は、女王がダンスから帰ってきたのかと思ったのです。

「ゴホン」

ポリネシアは、またせきをしました。
今度は大きめに、男の人だとわかるように。

すると、王は体をおこし、完全に目をさましました。

「だれじゃ?」

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「医者のドリトルだ」

ポリネシアはいいました。
まるで先生がしゃべっているみたいです。

王は叫びました。

「ここで何をしておる? いったい、どうやって牢屋を出たんじゃ? どこにおる? 姿が見えんぞよ」

しかし、ポリネシアは笑うだけです。
長く、深く、楽しげに。
ドリトル先生そっくりに。

「わっはっはっはっはっはっはっは……」

「笑うのをやめて、出て来るのじゃ。すぐに。姿を見せんか」

「愚かな王よ。おぬしはだれと話しておるつもりだ。わしは医学博士ジョン・ドリトル……この世でもっとも偉大な男だ。何も見えないのは当然だ。わしは今、自分の姿を透明にしておる。わしにできないことなどない」

「……」

王はおどろいてしまって、何もいえません。

「聞くがよい。わしは今夜、おぬしに警告にまいった。わしらを解放しなければ、おぬしたちの国の人間はサルと同じ病気になる。わしは、病気を治すことも、病気にすることもできる。この小指一本動かすだけでな。だから、家来に命じて、すぐに牢の扉を開くのだ。さもないと、明日の朝、ジョリギンキの丘に太陽が昇るまでに、おぬしは、おたふく風邪になっておる」


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王はふるえはじめました。
すっかりおびえきっています。

「博士! いうとおりにする。小指を動かすのは勘弁してくれ」

王はベッドから飛び出すと走って行って、牢屋の扉を開けるよう家来に命じました。

王がいなくなると、ポリネシアは階段をそっと降りて、食料庫の窓から出て、宮殿をあとにしました。

ところが、ちょうど裏口からはいってきた女王が、窓から出て行くポリネシアを見ていたのです。女王は、寝室にもどってきた王にそのことを伝えました。

「なんじゃとー!」

だまされたとわかった王は怒り狂い、すぐに牢屋にとってかえしました。

しかし、時すでにおそし。
牢屋の扉は開かれ、中は空っぽでした。
みんなはもう逃げてしまっていたのです。


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