目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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妹のサラが先生にいいます。

「兄さん。あの生き物、送り返してよ。でないと、お百姓もおばあさんも、こわがって全然、来ないじゃない。せっかくうまくいきかけてたのに! このままじゃ、破滅への道まっしぐらだわ。これがラストチャンスなのよ。あのアリゲーター追い出してくれなきゃ、私もう、兄さんの身のまわりの世話しないから!」

「あれはアリゲーターではない。クロコダイルだ」

「そんなこと、どうだっていいわよ! あのいやらしいのが、ベッドの下とかにいるのよ。あんなのが家にいるなんて耐えられない」

「しかし、あいつは約束したよ。だれもかみませんって。あいつはサーカスがイヤなんだ。かといって、ふるさとのアフリカに送るほどの金もない。自分のことは自分でするし、全体として、かなり行儀もいい。そんなに神経質になるなよ」

「私は、あんなのがまわりをウロウロしてるのがイヤだっていってるの。あいつ、床のリノリウム食うのよ! もし、いますぐにあいつを追い出さないなら、私、私、家出るわ! 結婚してやる!」

「いいじゃないか。そうしなさい。それもありだ」

先生はそういうと、帽子をとって庭へ出て行きました。

サラは、荷物をまとめて出て行きました。
先生は、とうとうひとりぼっちで動物に囲まれて暮らすことになったのです。

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先生は、あっというまに貧乏になりました。
それも、いまだかつてなく。

どの動物にもエサが必要です。
家の修理もしないといけません。
やぶれた服をぬってくれる人はいません。
肉屋にはらう金はありません。
金のはいるメドもありません。
大変なことになりました。

しかし、先生はまったくもって平気でした。

「金なんて、めんどうなだけだ」

先生はいつもそういいます。

「あんなもの発明しなけりゃよかったんだ。金がどうしたっていうんだ? 楽しけりゃ、それでいいじゃないか」

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しかし、そのうち動物の方が心配するようになってきました。

ある日の午後、先生が台所でのイスに座ってうたたねしているすきに、ひそひそ声で動物会議がはじまりました。
算数が得意なフクロウのホーホーが計算すると、あと1週間しかお金がもたないとわかったのです。
ご飯は1日1回という計算で、です。

オウムのポリネシアがいいました。

「私たちも家のお手伝いをするべきだと思うの。少なくとも、できることはしないと。だって、先生がひとりぼっちで貧乏になったのも、全部私たちのせいでしょう?」

そりゃそうだということで、サルのチーチーは料理とぬいものを、イヌのジップは床掃除を、アヒルのダブダブはハタキかけとベッドの整頓、ホーホーは家計簿をつけて、ブタのブウブウは庭の手入れをすることになりました。
オウムのポリネシアは一番年上なので、家政婦と洗濯係です。

もちろん最初はみんな大変でした。
チーチーをのぞいて。
チーチーは手があったので、人間と同じようにできたのです。

でも、みんなすぐに慣れてきました。
イヌのジップが、ボロきれをシッポに巻いて、ほうきがわりに床をはく姿など、なかなかの見ものでした。

ついには、ドリトル先生が、「こんなにキチンとして、家がきれいになったのははじめてだ!」と驚くほど、みんなの腕もあがったのでした。

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こんな感じで、しばらくはうまくいっていました。
しかし、お金がないというのは厳しいものです。
みんなで、庭の外に野菜や花の店を出して、道行く人に、ダイコンやバラを売ったりもしました。

それでも生活費が足りません。
なのに、ドリトル先生はのん気です。

オウムのポリネシアが、

「もう魚屋で魚を買うお金がありません」

といっても、

「気にするな。ニワトリが卵をうんでウシがミルクを出しさえすれば、オムレツだってプリンだって食べられる。庭には野菜がたくさんある。まだ冬は来ないし」

「でも、先生……」

「さわぐでない。サラじゃあるまいし。あいつはうるさいんだよ。そういえば、どうしてるかなあ……。ある意味ではよくできたヤツだったがなあ。わっはっは」

しかし、その年の雪はいつもより早かったのです。
よれよれの25歳のじいさんウマが、森からマキをいっぱい運んでくるので、台所の火は申し分ありません。
でも、野菜はほぼなくなり、残った分も雪にうもれ、みんな、とてもひもじくなってきました。

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第4章 アフリカからの便り

とても寒い冬でした。

12月のある晩のことです。
みんなは台所の火のまわりに寝そべり、先生は自分の書いた動物語の本を大きな声で読んで聞かせていました。

突然、フクロウのホーホーがいいました。

「シッ! 何か外で音せえへんか?」

耳をすませると、誰かが走ってくる音が聞こえてきます。

バッとドアが開いて、サルのチーチーが息を切らせて走りこんできました。

「先生! 今、アフリカのいとこから連絡が来ました。むこうで恐ろしい病気がはやってるんです。みんなにうつって、サルが何百匹と死んでます。先生のうわさを聞いて、先生にアフリカに来てもらいたいって、病気をとめてほしいって、いってます」

先生はメガネをはずし、本を閉じました。

「だれから聞いたんだね?」

「ツバメです。外で雨どいにとまっています」

「火のそばにつれてきてあげなさい。寒さでまいってるにちがいない。ほんとうなら、ツバメは6週間前には南へ行ってるはずなんだ」


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