最終章 ふたたび、わが家へ
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最終章 ふたたび、わが家へ
3月の風が来ては去っていきました。
4月の春雨が終わり、5月のつぼみが花開きました。
6月の太陽が心地よい大地にふりそそぎ、ジョン・ドリトル先生は、ついに、ふるさとに帰ってきたのです。
しかし、まだパドルビーの家には帰りません。
まずは、ワゴン車にオシヒッキーをのせて、国中を旅してまわるのです。
行く先々で、お祭りがあると車をとめます。
そこでやっているアクロバットや人形劇のすきまにわりこんで、大きな看板をかかげます。
「よってらっしゃい、みてらっしゃい。世にも珍しい、アフリカのジャングルからやってきた、頭の2つある動物。お代はたったの600円」
オシヒッキーがワゴンの中にいるあいだ、ほかのみんなはワゴンの下にもぐりこんでいます。
先生は、ワゴン車の前のイスにすわって、600円を受け取り、お客さんに愛想をふりまきます。
アヒルのダブダブは、先生をしょっちゅう、しかってばかりです。
というのは、見張ってないと、すぐに子どもはタダにしてしまうからです。
動物園やサーカスの関係者が、「その奇妙な動物を売ってくれないか」と頼みに来ます。
とてつもない金額を提示してくることもあります。
しかし、先生はいつも手をふっていうのです。
「断る。オシヒッキーはオリには決していれさせない。わしやあんたたちと同様、いつでも自由であるべきなのだ」
この旅めぐりの生活でも、色々と珍しい景色を見たり、おもしろい事もありました。
でも、アフリカ冒険の、あのすごい経験に比べると、なんだか色あせて見えます。
最初は、サーカスの仲間入りのようで、それなりにおもしろかったのですが、何週間かするとあきてきて、家が恋しくなってきました。
さいわい、たくさんのお客さんがワゴン車に殺到し、オシヒッキー目当てに600円払ってくれたので、かなり早くに店じまいすることができました。
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ある晴れた日、朝顔の咲き乱れる中、先生はパドルビーにもどってきました。
それも、大きな庭の小さな家に住む「大金持ち」となってです。
馬小屋にいた、よれよれのじいさんウマも、笑顔でむかえました。
屋根のひさしに巣を作り、ヒナを育てていたツバメも、先生の顔を見て大よろこびです。
アヒルのダブダブも、住み慣れたわが家に帰れて、大満足です。
けれども、やっかいな大そうじが待ちかまえています。
あちこちクモの巣だらけなのです。
ジップはとなりの家の、えらそうななコリーに金の首輪を見せに行きました。
帰ってくると、狂ったように庭じゅうを走りまわり、前に埋めた骨をさがし、物置小屋のネズミを追い掛けて遊びました。
ブタのブウブウは、庭の生垣のすみで1メートルの高さまで伸びたホース・ラディッシュ(西洋ワサビ)を掘り返します。
先生は、船を貸してくれた船乗りに会いに行き、船乗りに新しい船を2つと、赤ちゃんにゴムの人形を買ってやりました。
雑貨屋に後払いにしていた食料代を払いました。
白ネズミに、新しいピアノを買って、住むところを作ってあげました。
机の引き出しだと、すきま風がはいるらしいのです。
タンスの上の古い貯金箱には、お金が入りきりません。
大きな貯金箱をさらに3つも買いました。
「お金というのは、ほんとうに面倒だ。しかし、心配ごとがなくなるのはたすかるな」
先生がそういうと、アヒルのダブダブが、ティータイムのマフィンを焼きながら答えます。
「はい。本当にそのとおりです」
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また冬がきました。
台所の窓を雪が吹きつけます。
みんなは、晩ご飯のあと、大きな暖かい火を囲んでいます。
先生はみんなに、自分の書いた本を大きな声で読んであげています。
一方、遠くはなれたアフリカでは、ヤシの木の下で、サルが寝る前のおしゃべりをしています。
大きな黄色い月のもと、サルが話題にするのは……。
「ドリトル先生は今ごろ何をしてるんだろう。パドルビーでさ。ねえ、また来てくれると思う?」
すると、ポリネシアの甲高い声がブドウのつるから聞こえてきました。
「来てくれると思うよ……来るんじゃないかな……来て欲しいね!」
こんどは、ワニのうなり声が川の黒い泥の中から聞こえてきます。
「きっと……きっと来てくれるって! さ、もう寝よう!」
おわり
※最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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