目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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第16章 ホーホーは耳のプロ

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第16章 ホーホーは耳のプロ

親切にしてもらったサメに、あらためてお礼をいうと、みんなは、ふたたび家への航海にもどりました。
今度は赤い帆の高速船です。

入り江から外海に出ると、先生以外はみんな階段を下りて、新しい船の中がどんなだか、調べに行きます。
先生は手すりにもたれてパイプをくわえています。
カナリア島が青い夕もやに遠くかすんでみえます。

そうして、「チーチーたちはどうしたかなあ……」とか、「パドルビーに帰ったら、庭はどうなってるだろうか」とか、ぼんやり考えていました。

そんなところへ、アヒルのダブダブがバタバタと音をたてて階段を上がって来ました。
なにかいいたいことがいっぱいあるようで、顔中ニコニコしています。

「先生! この海賊の船は、最っ高ですよ! ベッドはシルクだし、枕やクッションは何百個もあります。床のカーペットは、ぶ厚くてフカフカ。お皿は銀製。食べ物も飲み物も、なんでもあります。特にすごいのが、食料庫です。なんかもう、まるっきり、お店みたいなんです。先生も、あんなの絶対に見たことないですよ――だって、イワシの缶詰だけで500種類あるんですよ。まったくあの連中は! 先生も来て、見てください」

「わかったよ」

「あ、そうだ。それから、一箇所、カギのかかった部屋があるんです。みんな、中が見たくて、大騒ぎしてます。ジップなんか、海賊の宝を隠してあるのにちがいないって。でも
、開かないんです。先生、下におりて、開くかどうか見てください」

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下へ降りていくと、この船の立派さが、ドリトル先生にもわかりました。

「ほう……なるほど」

「あの部屋です」

みんなで小さなドアを囲んで集まっています。
中に何があるのか、ああだこうだといいあっているのです。

先生がドアノブをつかみました。

「ふーん。たしかに開かないな。カギがかかっている」

全員でカギをさがすことになりました。
マットの下を見たり、カーペットの下を見たり、食器棚や引き出しやロッカーの中も船の食堂にある大きな棚も、ありとあらゆるところを探しました。

そうやって探していると、ほかにも素晴らしいものが続々と見つかりました。
海賊どもが他の船から盗んだものです。

花の形が金で刺繍された、クモの巣のように薄いカシミアのショール。
ジャマイカ産の上等なタバコのはいったツボ。
ロシア紅茶がつまった、彫刻のほどこされた象牙の箱。
サンゴとコハクを彫って作った大きなチェスのコマのセット。
抜けば刀になるステッキ。
トルコ石と銀のふちどりのあるワイングラスが6個。
真珠貝でできた、きれいで見事な砂糖壺などです。

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しかし、船のどこにも、カギは見つかりません。

みんなは、ドアまでもどってきました。

ジップがカギ穴を、じっとのぞきこみます。
しかし、何かが立てかけてあるのか、中はなにも見えません。

どうしたものかと困り果て、立ち尽くしていると、フクロウのホーホーが突然、口を開きました。

「シッ! 聞こえる! 絶対、ここには誰かおりますわ!」

一瞬、みんな、じっと固まります。

やがて先生がいいました。

「かんちがいじゃないか、ホーホー? わしには、なにもきこえんぞ」

「絶対にいますて。シッ! またや。聞こえまへんか?」

「聞こえんな。どんな音だ?」

「誰かがポケットに、手ぇつっこんだ音がします」

「そんなの、音なんかほとんどしないじゃろ。ここまで聞こえるはずがない」

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「それが、わしには聞こえますのや。ドアの向こうにだれかおって、ポケットに手ぇつっこんでます。モノ、ちゅうのは、たいてい音たてます。ええ耳してたら、聞こえるんですわ。こうもりには、モグラが地下のトンネルを歩く音が聞こえます。それが自慢ですわ。しかし、わしらフクロウは、かたいっぽうの耳で! 暗闇のなかででっせ! 子ネコがどんな風にウインクしたかで、そのネコの色までわかるんですわ」

「そりゃすごい! 驚いたな。いや、おもしろい。もういちどよく聞いて、中の男が今何をしているか教えてくれ」

「まだ、男やとは決まってまへん。女かもしれん。わしを持ち上げて、カギ穴から聞かせてください。そしたら、すぐわかります」

そこで、先生はホーホーを持ち上げると、ドアのカギに近づけました。

直後に、ホーホーがいいました。

「今、左手で顔をこすってます。小さい手で、顔も小さい。女かもしれへんな――いや、今、額の髪をうしろへ払いのけおった……まちがいなく男ですわ」

「女だって払いのけるだろう」

「もちろんそうです。そやけど、女の場合髪が長いんでまったく音がちがうんですわ……ああ、もう、うるさいッ! その落ち着きのないブタ、静かにさせとくなはれ。みなさん、しばらく息止めて。ほな、もっとよう聞こえるさかい。……うーん、これは厳しい。なんぎやなあ。ドアが厚すぎるんや。シッ! みんな、まだじっとしといてや――目ぇとじて、息もとめて」

ホーホーはうつむいて、またもや耳を傾けます。
長い間、深く集中します。

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ついに、ホーホーが顔をあげ、ドリトル先生を見ました。

「中におるヤツ、むっちゃ落ち込んでます。泣いてます。声あげたり、鼻ならしたりせんよう、気ぃつこてます。わしらに泣いていること、知られたないんでしょう。けど、わしにははっきりと聞こえました。服のそでに涙が落ちる音がしました」

「なんでわかるんだ? 天井から落ちた水がかかったんじゃないのか?」

ブウブウが聞きます。

「これやから! ――素人はこまるわ!」

ホーホーは鼻をならしまいた。

「天井から水が落ちてきたら、10倍はうるさいの!」

「わかった」

先生がいいました。

「その可哀想なお仲間が落ち込んでいるのなら、中へ入って、何があったのか聞こうじゃないか。オノはないか。ドアをこわそう」