目次
第1章  パドルビー
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第2章  動物語
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第3章  またお金の問題
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第4章  アフリカからの便り
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第5章  大旅行
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第6章  ポリネシアと王様
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第7章  サルの橋
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第8章  ライオン総長
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第9章  サルの会議
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第10章 この世でもっとも珍しい動物
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第11章 キモメン王子
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第12章 医学と魔法
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第13章 赤い帆と青い翼
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第14章 ネズミの警告
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第15章 バーバリー・ドラゴン
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第16章 ホーホーは耳のプロ
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第17章 海の情報屋
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第18章 におい
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第19章 岩
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第20章 小さな漁村
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最終章  ふたたび、わが家へ
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第11章 キモメン王子

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第11章 キモメン王子

川のほとりで立ち止まり、みんなでお別れをいいました。
お別れは長い間つづきました。
何千匹ものサルがドリトル先生と握手をしたがるからです。

やっと、なかまだけになってから、ポリネシアがいいました。

「ジョリギンキをとおるときは、そおっと歩いて、声もおとして行かないといけません。見つかったら、またつかまってしまいます。私がだましたことを、きっと根にもってますから」

「それにしても、こまったのう。帰りの船をどうしたものか。……ま、いいかあ。海辺にだれも使ってない船が転がってるかもしれん。取り越し苦労はやめておこう」


ある日、ジャングルの中の、とても木々の深い場所を通っていたときのことです。

チーチーが、ココナッツをさがしに木の上へ登っているすきに、道を知らないみんなは迷子になってしまったのです。
ジャングルの中をグルグルグルグルまわってしまい、全然海にいけません。

チーチーは、みんながいないことに気づいて、大あわてです。
高い木に登り、こずえのてっぺんから見渡して、先生の背高帽子をさがします。

「おーい! どこいったー!?」

手をふり、大声をあげます。
みんなの名前も呼びます。

でも、見つかりません。
まるで、いっせいに消えてしまったかのようです。

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じつのところ、みんな、かなりひどい目にあっていました。

本来の道から大きくそれてしまい、ヤブやツルがひどくおいしげったジャングルの中では、身動きをとるのですら、大変でした。

先生はポケットからナイフを出し、道を作りながら進みました。

しめってジュクジュクしたところでよろめきます。
ヒルガオのツルが足にからまります。
イバラが肌をさします。
ヤブの中で、薬カバンを二度もなくして、さがしました。

永遠の責め苦のようでした。
どうしても、元の道にもどれないのです。

苦難は何日も続きました。
服はやぶれ、顔は泥だらけになり、そして、こともあろうに王の住む宮殿の裏庭に出てきてしまったのです。

王の兵隊はあっというまに飛び出して、先生たちを捕まえてしまいました。

しかし、ポリネシアだけはに庭の木に飛んで逃げました。
だれもそれを見てなかったので、まんまと隠れることができました。
先生と残りの動物は王の前までつれていかれました。

王は大きな声を上げました。

「ハッハッハッ! やっと捕まえた! こんどこそ逃げられんぞ。全員、牢屋にぶちこんでカギを二重にかけておけ。そいつには、一生台所の床みがきをさせるのじゃ!」

みんな、またもや牢屋に逆戻りです。
朝には台所の床みがきをするよう命じられました。

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みんなの落ち込みようといったらありませんでした。

「こりゃあ、困ったことになった。ぜったいにパドルビーに戻らんといかんのに。でないと、あの貧しい船乗りが船を盗まれたと勘ちがいする。早くしないと……もしや、あそこの蝶番(ちょうつがい)がゆるんだりしてないかな?」

しかし、そのドアはとても頑丈でガッチリしまってます。
外に出る方法はなさそうです。

「うえーん……ブヒブヒブヒブヒ」

ブウブウは、また泣き出しました。

その頃、ポリネシアは、ずっと宮殿の庭の木の枝にとまっていました。
無言で目をパチパチさせています。

これは、ポリネシアが困ったときのクセでした。
だれかが厄介なことを起こすと、ポリネシアはいつもだまって目をまたたかせます。

そうやって、解決方法を考え、最終的にポリネシアを困らせた者は、たいてい後悔することになるのです。

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まずポリネシアは、チーチーを探しあてました。
チーチーは、あれからもずっと、みんなを探してジャングルの枝から枝へと飛び回っていたのです。

「ポリネシア! みんなは?」

「また捕まって牢屋よ! 道に迷った上、まちがって宮殿の庭にはいりこんでしまったのよ」

「ポリネシアがついていながら、どうしてなんだよ!」

チーチーは、自分がいないすきに道に迷わせてしまったポリネシアをなじりました。

「全部、あのヤッカイ豚のせいなのよ。ショウガの根っこを探して、道からはずれてばっかりで! つかまえてはもどす、つかまえてはもどすをくりかえしてたら、左に曲がるところを右に曲がって、沼にでちゃったの」

「やれやれ……」

「シッ! 見て! あれは王子のバンポよ。庭にはいろうとしてる! 見つからないようにしなくっちゃ――ちょっと、じっとしてて!」

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それは確かに王の息子のバンポ王子でした。
妖精の本を腕に抱えて、庭の門を開けようとしています。

「ふーふーふふふー……ハーンハンハハハーンー……」

悲しげな歌をハミングしながら、けだるい雰囲気で石のイスのところまで歩いて来ました。
ポリネシアーとチーチーは、まさにその上の木の枝に隠れているのです。

王子はイスに横になると、ひとりぼっちで妖精の本を読み始めました。
チーチーとポリネシアは、体じゅうカチカチにして、王子を見ていました。

しばらくすると、王子は本を横において、深いため息をつきました。

「ああ……。マロがもっとイケメンだったら……」

夢見るような声です。
そのまなざしは、ずっと遠くを見つめています。

そのときです。
ポリネシアは幼い少女のような細く高い声を出しました。

「バンポ王子! その望み、きっと、あるお方がかなえてくれますよ!」

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王子はおどろいてイスから飛び上がると、あたりを見回しました。

「今のはなんでおじゃるか?」

王子は叫びました。

「わかったでおじゃる。この甘い鈴の音のような声は……きっと妖精さんの声でおじゃるな。ううん……ファンタスティックゥ!」

ポリネシアは、バンポ王子に姿を見られないよう気をつけながら続けました。

「さすがは王子様! 真実がわかるのね。そう。わたしの名はトゥリプシティンカ。妖精の女王よ。いいこと? わたしはは今、バラのつぼみにかくれているの」

「やっぱりぃ!」

バンポ王子はよろこびに両手をにぎりしめて叫びました。

「ああ、マロにお教えください、妖精の女王さま! どなたが、マロをイケメンにしてくれるのでおじゃるか?」

「今、あなたのパパの牢屋に、有名な魔術師がいれられてるの。ジョン・ドリトル博士よ。たくさんの医学と魔術につうじていて、偉大な力をもっているの。でも、王様であるあなたのパパが、博士を、ずーっと、こまらせてるのよ。ね、ステキなバンポ王子! お日様が沈んだら、博士のところへ行って! ……だれにも見つからないようにね。そしたら、王子は、モテモテのイケメンに大変身よ! わたしのいいたいことはこれだけ! もう、妖精の世界へもどらないと。さようならー!」

「さようならー!」

王子は叫びました。

「胸いっぱいの感謝を。すばらしきトゥリプシティンカ!」

王子はイスにすわりなおすと、日が沈むまで待つことにしました。
その顔には満面の笑みが浮かんでいます。